横浜マタタビバージョンのFUNI WORLD

おバカショート劇場。

FUNI WORLD




第、673話 空気入れでは膨らまない事は良く分かっています (2012.05.19)
彼は、戦隊ヒーローが嫌いなのだそうです。
彼は子供の頃、下半身露出オヤジに追い掛けられる事件に遭遇。
犯人が捕まらぬまま、数日後、両親に大好きな戦隊ヒーローショーに
連れて行って貰うと、偶々覗いてしまった戦隊ヒーローショーの楽屋にて、
マスクを脱いで素顔を晒したあの下半身露出オヤジがそこにいたらしく。
・・・・・・彼は、戦隊ヒーローが嫌いなのだそうです。
でも、あたしは、二十歳を過ぎた今も、戦隊ヒーローが好きなのです。
だけど、彼の前で戦隊ヒーローの話なんて出来る訳がありませんでした。
戦隊ヒーローのコスチュームで、デートに行く訳にはいきませんでした。
もちろん、下半身露出オヤジのコスプレでデートなど、以ての外でした。
なのに、あたしがこっそり、隠れ切支丹鏡の如く、銅鏡に潜ませていた
戦隊ヒーロー像を、些細な事から、遂に彼に発見されてしまったのです。
その日、彼のあたしに対する愛情は一気に萎んでしまったのでしょう。
下半身露出オヤジのマネージャーかと勘違いされたかも知れません。
電話を掛けても、メールを送っても、彼からの返事はもうありません。
空気入れでは膨らまない事は良く分かっています。
米式でも、英式でも、仏式でも、例え、ゲージ付きでも、
空気入れでは膨らまない事は良く分かっています。
山頂のような気圧が低い場所に出向いたとしても、
ポテトチップスの袋のように膨らまない事は良く分かっています。
四千年の歴史が謳い文句の国で、何も知らぬ母親から女性ホルモン入り
粉ミルクを飲まされた赤ちゃんの胸のように膨らまない事も、
それはそれはあたしなりに良く分かっています。
寄せてあげてみても、膨らまない事は良く分かっています。
寄せてあげたくても、寄せてあげるものがあたしにはほぼ無いのです。
彼は、戦隊ヒーローが嫌いなのだそうです。
でも、あたしは、二十歳を過ぎた今も、戦隊ヒーローが好きなのです。
それにも況して、下半身露出オヤジのトラウマを抱える彼が大好きです。


第、672話 去年までは怪力でした (2012.05.13)
「その頭で電車乗ってきたのか?」
「そうよ、デートだから極めてきたわ」
「お団子ヘアーで、一角獣がかぁ?」
「お団子ヘアーでバッファローが良かった?」
「この前のデートでは、風神雷神ヘアーだっただろー」
「強さをアピールしたいのよ!」
「この前のデートでは、アイスラッガーヘアーだっただろー」
「何よ!去年、リフトアップして歩いてあげたら、通行人に、
『女に担がれているぞ』って陰口叩かれ悄気られたのを機に、
あたし、筋力鍛えるのをセーブしてあげているのよ!
せめて、髪型で強さをアピールしたっていいじゃないのよ!」
「・・と言われながら、何故に今、リフトアップされているのかなぁ。
筋力鍛えるのをセーブしているとはちっとも思えないけれどなぁ」
「去年までは、大人1人をリフトアップした状態で、金刀比羅宮の階段、
御本宮までの785段を一気に駆け上がるだけの筋力が余裕であったわ!」
・・妻と離婚後、小学生の娘と斯うして会う事が年々恐ろしく成りつつある。
やっぱり母親の遺伝子、完璧に受け継がれいるよな。あゝ可愛い我が娘よ。


第、671話 ギャップ萌え (2012.05.06)
ギャップ萌え。。
それは、ミスマッチなワンダーランド。。
それは、キャラクターが瞬時に変化する事で起こるファンタジー。。
委員長キャラなメガネっ娘がメガネを外した時の意外な小動物臭に萌え。。
鼻ピアス娘が鼻ピアスを外した時の意外な大和撫子臭に萌え。。
クマさんお団子ヘアーな娘が実はウィッグで外した時のスキンヘッドに萌え。。
ギャップ萌え。。
それは、人物像から人物像への振幅が高速移動される事で生まれるほろ甘いトリップ。。
それは、人物像から人物像への空間が瞬間縮小される事で生まれるほろ苦いトラップ。。
浴衣姿の女の子がサンバダンサー宜しく孔雀の髪飾り。。
スタンガンをバチバチと火花を散らし襲ってくる美人ナース。。
アニメ声娘の火の輪くぐり。。
我が家のお爺ちゃんが『番号忘れちまった』と開けられなくなった古い金庫を
「あたしが開けてあげようか」と、ものの数分で開けてしまった幼馴染み。。
僕が日夜熱く胸を焦がしている女性がふと見せた、エキセントリックな輝き。。
ギャップ萌え。。
それは、瞬ぎの彼方で待ち受けている恋愛事件。。


第、670話 顔 (2012.04.28)
一週間に起きた様々なニュースをお伝えする、
201*/04/28、”News Surprise”の時間です。
巷では、覆面で顔を覆った、覆面人間がすっかり認知され始めています。
覆面児童、覆面学生、覆面教師、覆面銀行員、覆面公務員、覆面政治家。
覆面医師、覆面弁護士、覆面竹細工職人、覆面被告、覆面ホームレス、etc.
最近では、田畑で覆面作業する農家の人々も多く見掛けるようになりました。
産地偽造で逮捕された社長さんも、盗撮で逮捕された自衛隊員も、今や、覆面姿です。
刑事さんも、覆面姿です。
原宿や渋谷には、トレンドに敏感な女子中高生をターゲットにした
覆面ショップが軒並みオープンして話題を呼んでいます。
こちらでは、結婚式が行われています。
覆面新郎に覆面新婦、牧師さんも、覆面です。
顔は恋愛対象ではないけれど、覆面は恋愛対象とする若者も増え続けているようです。
次のニュースです。
この度、QacebookやQicrosoft、Qppleが、Qoogleへ売却され、
ネットユーザーから個人情報を掻き集め他社などに委託することで
問題視されてきたQoogleの更なるポリシー改正が波紋を呼んでいます。
世の中に出回る殆どのスマートホン利用での、メール・会話・写真・動画などが、
Qoogleに例外なく送信され、その情報の全てはQoogleに帰属されると言う事です。
また、世界各地でインターネットへの法律の改正が進み、Qoogleへの送信を妨害する
アプリの製作者や、それらを利用した人物には、厳しい罰則が加えられるようになります。
顔は覆面で覆っても、インターネットでは、『素顔』を覆面で覆い隠せない時代の到来ですね。
それでは皆さま、また来週?????? ´Θ ◆Θ`;=)ノノ


第、669話 何をですか (2012.04.22)
四月のスイカジャグリングオヤジが現れません。
新一年生が授業中にこっそり窓から校庭を見ると、
校庭のど真ん中、フンドシ姿で、スイカでジャグリングをしている、
何気に、校長似のオヤジを見る事があるという我が学校の都市伝説。
四月のスイカジャグリングオヤジを見る事が出来た新一年生は、
夏にスイカを食べる事が出来るかも知れない。または、
夏までに恋人が出来るかも知れない。とされる、我が学校の都市伝説。
今年はまだ、四月のスイカジャグリングオヤジが現れません。
四月だって何時しか過ぎてしまいます。
私は何のために校庭が見える窓側の席に幸運にも座っているのでしょう。
若しや、四月のスイカジャグリングオヤジを目撃したにもかかわらず、
まだ誰にも報告していない愚か者が今年の新一年生にいるのでしょうか?
四月のスイカジャグリングオヤジを見る事が出来た新一年生は、
夏にスイカを食べる事が出来るかも知れない。または、
夏までに恋人が出来るかも知れないのは、必ずや、
全ての同級生にその事を告げる事が前提なのです。
然もなければ、夏にスイカを食べる事など出来ない。または、
夏までに恋人なんて出来ない。最悪、どちらも叶わない恐れだって
あるとされる、とても注意が必要な、我が学校の都市伝説。
放課後の教室、小学校時代から幼馴染みの、スカートめくり野郎が私に耳打ちをした。
「この学校の前校長って去年、電車でスカートめくりして依願退職したらしいぞ!
オレはもう中学生だし、スカートめくり卒業するけど、おまえは反対かぁ?」
此奴の頭を引っぱたこうとしたその時に、スカートをめくられ逃げられた。
・・・・・・昔から、他に、男子生徒が付近にいる時は絶対にやらないくせに。
四月のスイカジャグリングオヤジが現れません。
新一年生が授業中にこっそり窓から校庭を見ると、
校庭のど真ん中、フンドシ姿で、スイカでジャグリングをしている、
何気に、校長似のオヤジを見る事があるという我が学校の都市伝説。
私に、スカートめくりをきちんと卒業した恋人が出来るのは、
果たして、果たして、何時の日になる事でしょう。


第、668話 兄妹喧嘩 (2012.04.13)
僕には妹がいない。
うん。妹が欲しかった。
それは、一般的なイメージでのオタク向けアニメ声で、
『おにいちゃん、だいすき』とか。
『おにいちゃん、こけこっこ』とか。
『おにいちゃん、これ、50年物の梅干しだよ』とか。
などの有り勝ちな萌えボイスを求めている訳ではなく、
多分、兄妹喧嘩に憧れていたんだよなぁ。
たわい無い事で喧嘩する兄と妹。
それを毎度の如き叱り付け呆れる母親。
多分、妹と思いっ切り喧嘩してみたかったんだよなぁ。
妹との喧嘩ってどんな感じだろうなぁ。
一般的なイメージでの兄妹喧嘩って、例えば???
『お母さん、またおにいちゃんが○○子の布団に潜り込んで国語辞典を朗読してる』とか。
それに対し、『○○子の布団に潜り込んで国語辞典を朗読して何が悪いんだよ』とか。
『お母さん、またおにいちゃんが○○子のガネーシャ像をメイド服に着せかえた』とか。
それに対し、『ガネーシャ像の柔道着をメイド服に着せかえて何が悪いんだよ』とか。
『お母さん、またおにいちゃんが○○子のパンティを固めて見事な虎を一体拵えた』とか。
それに対し、『妹のパンティ固めて虎の置物を拵える兄のどこが悪いんだよ』とか。
うむ?僕は一人っ子だからか、ちゃんとしたイメージが湧かない。
ところで僕は就職浪人だ。
取り敢えずはコンビニでアルバイトをしているのだけど、
そこでは女子高生のくせに成人過ぎた新人の僕に先輩風を吹かせる女の子がいる。
少々そそっかしい僕に付きっ切りでアドバイスしてくる。
「だめでしょ」とか。『さっき教えたでしょ』とか。「これはこうでしょ」とか。
今だって、商品補充陳列の際、「梅干しはこっちだって教えたでしょ」とか。
ん?「あれ、50年物の梅干し、こっちだっけ???」
「50年物の梅干しの訳ないでしょ」とか。
ん?「もしかして、ガネーシャ像に柔道着着せていたりしない???」
「もう、何言ってるの!忙しいのに」とか。
まだ暫くはこのコンビニでアルバイトしていてもいいかなって、思ってみたり。


第、667話 運命を感じた人 (2012.04.08)
あの日、運命を感じた人。
ペットショップで出会った人。
その人が、カエルを買ったので、あたしも同じカエルを買って帰った。
それから、カエルの飼育について、たくさん調べた。
あの日、運命を感じた人。
ペットショップで出会った人。
時々、そのペットショップで顔を合わせた人。
「カエル、好きなんですね」と、始めて声を掛けられた日。
運命なのだから、それは、ごく自然な出来事と感じた。
カエルの事だったら、あたし、いっぱい調べたんだ。
ふたり、同じ趣味なのだから、会話がとても弾んだ。
運命なのだから、それは、ごく自然な出来事と感じた。
ペットショップで出会った人。
度々、そのペットショップで顔を合わせた人。
ある日、その人は、奥さんと子供を連れてペットショップに現れた。
あたしには、何時もと同じ笑顔で・・ 同じ趣味を持つ友人として・・
あたしの部屋には、飼育容器に入った巨大に育つというアフリカウシガエル。
カエル嫌いのあたしの部屋で、一晩中、自家繁殖餌用コオロギの大合唱。
あの日、運命を感じた人。
子犬を購入しようと覗いたペットショップで出会った人。
あの日、あたしには、未来がバラ色に輝いていた。
未来なんて、結局、訪れるまで分からないのに・・・・・・。
あたしの部屋には、飼育容器に入った巨大に育つというアフリカウシガエル。
その横には、ベルツノガエル。その横には、クランウェルツノガエル。etc.
カエル嫌いのあたしの部屋で、一晩中、自家繁殖餌用コオロギの大合唱。
あの日、運命を感じた人。
ペットショップで出会った人。
運命なのだから、それは、ごく自然な行動だった。
頻繁に、そのペットショップに出向き、顔を合わせた人。


第、666話 ばたつき (2012.04.01)
我が家の娘がばたついている。
失恋すると毎度の事だ。
まるでオモチャを取り上げられた子供のように、
我が家の娘がばたついている。
一度目の失恋の時は、ばたつきながら、
「あたし、高校中退してチンドン屋になる」と、駄々をこねた。
二度目の失恋の時は、ばたつきながら、
「あたし、大学退学してポン菓子売りになってリヤカー引っ張る」と、駄々をこねた。
三度目の失恋の時は、ばたつきながら、
「あたし、渡辺真○子のベストCDになる」と、人間放棄宣言までした。
かもめが翔んだのか??? まだブルーなのか??? 迷い道くねくねなのか???
そして、また新たな失恋・・・・・・
我が家の娘がばたついている。
「あたし、就職活動諦めてケ○ンパスになる!!!」と・・・・・・
「あたし、就職活動諦めてケムン○スになる!!!」と・・・・・・
我が家の娘がばたついている。
記憶をどう辿っても母である私が確かに平成に生んだはずの娘が、
今宵も我が家を昭和の匂いで埋め尽くしながら、ばたついている。


第、665話 桜の花学院 (2012.03.25)
男「宝くじが落ちていたよ」
女「上限が遂に10億1円の宝くじよね」
男「私立の学校とか設立出来るかな」
女「どんな学校にするの?」
男「『桜の花学院』って名前がいいな。
新入生には希望が持てて、在学生には自由がある。
卒業生には誇れる思い出になって欲しい。
国旗は掲げない。でも校舎の壁には
世界中の国旗がペイントされている。
国歌は斉唱しない。でも校歌の歌詞には
世界中の『平和』と言う言葉が使われている」
女「飲酒運転やわいせつ事件を起こした教師は?」
男「パンツの中にザリガニを大量に放り込み校庭にて磔刑からの解雇」
女「その夢も、きっと桜の花びらのように散ってしまうわね」
男「そうだね。その角を曲がったらもう交番だ」
女「ねえ、なんで学校を設立したいって妄想したの?」
男「君と僕がもし結婚して子供が生まれ育っても、
入学させてあげたい学校が無いなって妄想したんだ」
女「それって何気にプロポーズ?」
男「もしOKだったら僕には10億1円以上の幸福だよ」
女「で、飲酒運転やわいせつ事件を起こした教師は?」
男「パンツの中にザリガニを大量に放り込み校庭にて磔刑からの解雇」
女「では、それも含めて、OKよ」


第、664話 続いての問題です! (2012.03.18)
レンタルビデオ店に出向くと新しく女の子の店員が雇われていた。
僕も一応標準な現代人らしく、それなりの『ヒーリング』が必要で、
偶に、バーチャルペットのDVDを此処に借りに来るのだが、今日はその中から、
『猫』と『金魚』で悩んだが、『ダンゴムシ』をチョイスし、レジに向かった。
すると、新しい店員の女の子は僕に向かって、「あやなはゆうきの事を
好きだと思いますか」と真顔で問い掛けてきた。ん?どこかで見た顔だが?
その女の子の名札を見ると『綾奈あやな』・・・・・・「あやなか?おまえ」
僕の名前は、『結城ゆうき』。彼女の名前は、『綾奈あやな』。
お互い、親がすっとこどっこいだったために、面白がられ名付けられた名前だ。
互いの父親は旧友同士で、僕もあやなも幼馴染みとして育った。
僕とあやなが小学四年生の頃、あやなが転校してしまい、離ればなれになった。
そうだ、ずっと気になっていたんだ。あやなが僕に「続いての問題です」と訊ねた。
その時、「あやな、そろそろ行くぞ」と、あやなの父親が急かす声。
『続いての問題です』の言葉を残し、あやなはあの日、引っ越して行ってしまった。
僕の後ろにもお客さんが並び、あやなは事務的にレジを済ませ、そして僕は店を出た。
そうだ、ずっと気になっていたんだ。『続いての問題です』の前の問題。
いや、その事よりも、『あやなはゆうきの事を好きだと思いますか』は、
あの引っ越しの日にあやなが僕に訊ねた『続いての問題です』の問いって事か?
家に戻ると、メタボ対策に悉く挫折している親父が僕に向かって言った。
「おい、ゆうき、あやなちゃんの一家が戻って来た事知っているか」
親父の後から登場は、あやなの親父。一週間前にはこの町に戻って来ていたらしい。
あやなの親父曰く、「引っ越しの日、ゆうきくんがあやなに『大好きー』って叫んだよなぁ」
あっ!何もかも記憶が回復した。あの日、あやなは棒立ちして見送っていた僕に、
『さて、問題です。ゆうきはあやなの事を好きですか』と突然訊ねたのだった。
その時の僕は見事なまでの条件反射で、『大好きー』って叫んでしまった。
そしてその後、あやなが僕に、例の、「続いての問題です」と発したのだった。
その引っ越しの日の夜、親父に散々冷やかされ、僕の脳は自己防衛反応を起こし、
どうやらその恥ずかしい事実を有りっ丈の力で消し去ってしまっていたらしい。
数日後、僕はレンタルビデオ店に借りていたバーチャルペットのDVDを返しに出掛けた。
・・・・・・そして、レジのあやなに向かって小声で例の問いに答えてみた。
「『あやなはゆうきの事を好きだと思いますか』の答え!『あやなもゆうきを好き』?」
すると、あやなはとんでもなく大きな声で僕にこう正解を告げたのだった。
「ブブー!!! ゆうきは何時もあやなのスカートをめくるから大キライー」
・・・・・・おい、小学四年生の頃の気持ちを長い時を経た今、店内に叫ぶな;;;
そう、過去にはもう僕とあやなの答えは無い。それを探せる場所はこれから訪れる未来にだけ。
取り敢えず呼吸を整え、悪戯っぽく微笑うあやなに僕は真顔でこう訊ねたのだった。
「では、僕からの問題です。あやながこの店でお仕事がお休みの日はさて何時でしょう?」


第、663話 ごま油を買って家に帰る時 (2012.03.11)
ごま油を買って家に帰る時、奴の事を何気に思い出す。
ごま油の里に代々続くごま油職人の子に生まれ育ち、
幼稚園児だった時は、園内の花壇にごま油を撒き、
小学生の時は、習字の授業中、ごま油で墨をすり、
中学生の時は、体育祭の花形、男女混合リレーで、
確かにバトンを受け継ぎトラックを一周走ってきた奴から
私の手に渡されたのは、一番絞り黒ごま油200g瓶だった。
ごま油を買って家に帰る時、奴の事を何気に思い出す。
中学卒業後、私は父の仕事の都合でごま油の里を離れ、
何時だって、ごま油の匂いがした奴とも離れ離れになった。
奴の家の製油所で、奴が家の手伝いをして働いていた時に、
「こうしてごま油と向き合っていると、ごま油の気持ちが伝わってくる」
と、サヨナラを告げに訪ねた私に語った奴の耳元にこっそりと、
「女の子の気持ちは伝わらないのね」と、想いを絞り出したのは、
あれは、私の奴への精一杯にして最初で最後の告白だった。
奴は口を真一文字にして、そのまま、ごま油と向き合っていた。
ごま油を買って家に帰る時、奴の事を何気に思い出す。
風の噂によると、奴にも漸く跡取りが出来て、代々続く製油所は
順風満帆のようだし、私は私で平凡ながら幸せな家庭を築いている。
ごま油を買って家に帰る時、奴の事を何気に思い出す。


第、662話 愛の形 (2012.03.04)
僕の彼女は僕の耳の形がお好みらしい。
僕からしたら、僕の耳のどの辺が他の人の
一般的な耳の形とどう違うのかが判断出来ずにいる。
僕の彼女は僕の耳の形がお好みらしい。
彼女は、購入した大きなテディベアの耳を剥ぎ取り、
新たに、僕の耳に似せて作った新規の耳を縫いつけて、
そのテディベアを僕だと思って、僕が側にいない日は
それを大切に抱きしめているらしい。
僕の彼女は僕の耳の形がお好みらしい。
なので、僕の耳の形をした大きなテディベアが何時の日か、
僕に取って代わったりするのではないかと毎日気が気でない。
そこで僕は、僕の耳に似せて作った新規の耳を新たに僕自身に
縫いつけて、彼女が好みだという僕の耳倍増計画を立ててみた。
でも冷静に考えてみると、彼女がその事に対抗して、また新たに、
大きなテディベアに、僕の耳に似せて作った新規の耳を増やした場合、
僕は、僕の耳に似せて作った新規の耳を更に増やさなければ対抗する
事が出来ず、僕は永遠に、その、耳増殖ゾーンから抜け出せなくなってしまう。
ならば、その大きなテディベアでは真似出来ない特技を身に付けてみるか。
耳で文字を読み取る!耳で匂いを嗅ぎ分ける!耳で九九を正確に言う!
うぅ... オカルト過ぎるぞ、これは!!!逆に嫌われてしまいそうだ!!!
今、彼女は僕の目の前で、その、僕の耳の形をした大きなテディベアの
話をそれはそれは楽しそうに夢中で僕の事を見詰めながら語っている。
そんな時、僕はほんの無意識にその時思いついた事を何気に口にしていた。
「キミが僕と結婚をして子供が生まれたら、
キミは僕の耳の形をした子供の母親になれるよね。」
彼女の瞳は一瞬にした輝いた。
彼女が僕の耳の形をした子供の母親になれば、その子供が、
僕に取って代わって彼女の愛情を独り占めしてしまうだろう。
そうだ、その時こそ、特技を身に付けた我が耳で、
耳で文字を読み取る!耳で匂いを嗅ぎ分ける!耳で九九を正確に言う!
だめだ、冷静になれ、自分。冷静になれ、自分。冷静になれ、自分。
彼女はにっこり微笑みながらそのキラキラ輝いた美しい瞳で僕を見ている。
そのキラキラ輝いた美しい瞳は、喜びの涙で潤んでいるようにも見えた。
その喜びは、僕の耳の形をした子供の母親になれる事への喜びばかりではなく、
いや、それ以前に、僕からプロポーズされた事への喜びなのだと、悟った。
彼女は今、僕を見ている。僕の耳ではなく、僕の瞳を真っ直ぐ見ている。
僕は今まで、彼女の何を信じてきたのだろう。彼女の何を愛してきたのだろう。
僕の彼女は僕の耳の形がお好みらしい。
それにも増して、僕と作り上げる、これからの愛の形がお好みらしい。
僕も今、彼女の瞳を真っ直ぐ見て、彼女に素直に微笑んでいる。


第、661話 舞妓さんが時々動く (2012.02.25)
「ねえ、玲子、私ね、こないだ彼から、
『舞妓さんになったキミとだるまさんがころんだをしたい』
って拝み倒されてしまって、二人で京都に行ってきたのよ」
「それで、早智子ったら八つ橋を手みやげに我が家を訪れた訳ね」
「でね、貸衣装で舞妓さんに変身して、彼がオニを買って出て、
オニ彼が後ろを向いたから私はぴたりと止まったんだけど、
オニ彼が私に、『後ろ、後ろ振り向いて』って言うもんだから、
私はオニ彼に、『動いたらダメなんでしょう』って言うと、
オニ彼『舞妓さんが増殖しているから振り向いてみろ』って。
私はオニ彼に、『動いたら負けなんでしょう』って言うと、
オニ彼は『キミが僕に告白をした日の事を覚えているかい』って」
「で、それがどしたの」
「前カノに浮気され捨てられたばかりだったあの当時の、
まだオニではなかった頃の彼に、私が告白した話だけれどね。
実は『女はもう信用出来ないから』って一度あっさり断られた。
でも私は、『時間が掛かってもいい。私はこの先ずっとあなたを
愛し続けたい。だから、信用してもいいと思ったら私に振り向いてね』
そう言ったの。だから、オニ彼も私に、『時間が掛かってもいい。
信用してもいいと思ったら、後ろを振り向いて』って言うから・・」
「で、早智子、後ろを振り向いたんだ」
「そしたら、本物の舞妓さんが数人、だるまさんがころんだに
飛び入り参加していて、『そらかんにんやで』って顔して睨んでたの」
「そりゃ想定外の時間掛けられたらたまったもんじゃないわね」
「その後、更に参加者は増え続け・・・・・・」
「で、その、だるまさんがころんだはどうなったのよ」
「北海道から観光に訪れていた自称漁師のがんこオヤジが
あず○ゃんコスプレで見事優勝して大歓声の中、幕を閉じたわ」
「それ、だるまさんがころんだ???」
「日毎増えた野次馬の希望も織り交ぜながら・・」
「日毎???日毎って言った???」
「後ろ振り向くのに時間が掛かってね。彼が私に振り向くまでの日数ぐらい」


第、660話 私は卵を割れません。 (2012.02.18)
私は卵を割れません。
卵を上手く割るコツを知りません。
思いも寄らぬヒビによって破損するのが怖いのです。
大切な形が潰れてしまう事を恐れています。
私は卵を割れません。
何時だって、言い知れぬ不安との戦いです。
止めどないこの恐怖は一体どこから来るのでしょう。
失ってしまう事への心的外傷からなのでしょうか。
私は卵を割れません。
目の前の扉から一歩を踏み出す勇気と行動力が欲しい。
機会を逃さず、覚悟に脅えず、目を背けず、失敗を恐れず、
決着を付けなければならない日が必ず訪れる事でしょう。
卵の形をした日常と、遠い日の痛みと、待ち受ける未来。


第、659話 お洒落は野暮い (2012.02.12)
「お姉ちゃん、あたし、彼氏に振られちゃったよ」
「一体どうしたの?」
「幅広ベルトにトンボメガネ、厚底サンダルが似合うあたしを連れ歩くのは、
去年だったらお洒落だったけれど、今年の流行最先端は、トレーナー、
巻きスカートにペッタンコ靴なので、今年のあたしは野暮いからいらないって」
「まあ、お洒落の正体は、話がピーマンなノータリンだからね」
「おたんこなすのすっとこどっこい男の事なんてもう忘れるわ」
「そう言えば、あなたに同窓会の招待状が届いていたわよ」
「お姉ちゃん、小学生の頃、あたしの誕生日に毎年、瓶入りダンゴムシを
家まで持ってきていた男の子がいたでしょ。彼は最近、ダンゴムシ研究家の第一人者
として世界から注目されていて、その彼の功績を称えて同窓会を開くらしいのよ」
「だったら、あなた、是非出席したら」
「あたし、大急ぎでダンゴムシ柄オリジナルTシャツを発注するよ」
「それは素敵なファッションだわ」
同窓会の日、小学生の頃は、『ダンゴムシと会話するダンゴムシ妖怪』と呼ばれ、
何時も、からかわれ泣いていた男の子は、この日はダンゴムシ柄オリジナルTシャツ
を着た同級生達に祝福され、それはそれは幸せそうに、うれし涙を零した。


第、658話 交際宣言 (2012.02.05)
「僕たち、職場で堂々と恋人として振る舞えるように交際宣言しよう」
「もう、休憩時間に、あなたにこっそり携帯メールを打つために、
木の葉で身を隠したり、布を用い壁と同化したり、誰かが側に歩いて来たら
砂と灰で目潰し攻撃、火薬玉の爆煙に身を隠して逃げたりしなくて済むのね」
「そのために、僕とキミのコンビ名を考えてみたんだよ」
「町の小さなダンボール製造会社で働く派遣社員が交際宣言するためにコンビ名が必要なの?」
「コンビ名のない恋人同士なんて考えられるかい?」
「たまらんほど考えられるけど・・・・・・」
「僕もキミも魚肉ソーセージが好きだから、『ザ・ギョニソ』なんてどうだい?」
「何故、『ギョニセ』ではなく『ギョニジ』でもなく『ギョニソ』?」
「・・・・・・そこ???」
「・・・・・・そこ!!!」
「兎にも角にも、職場で堂々と恋人として振る舞えるように交際宣言しよう」
「もう、町の小さなダンボール製造会社であなたと素知らぬ振りをする辛さから、
時折、滝に打たれたり、洞窟に籠もって座禅をしたり、敷き詰められた、熱した
炭の上を裸足で歩いたり、インドの山奥まで精神修行に行かなくて済むのね」


第、657話 転んで膝を擦り剥いた方がマシ (2012.01.29)
転んで膝を擦り剥いた方がマシ。
膝を擦り剥いた痛みに耐えながら、
裸足で玉砂利の道を歩いた方がマシ。
裸足で玉砂利の道を歩きながら、
回り続ける大縄にタイミングを合わせ、
何度も繰り返し飛ぶ方がマシ。
玉砂利の道を素足で繰り返し飛びながら、
上から大きなタライが落ちて来る方がマシ。
大きなタライが落ちて来る、素足による玉砂利の道で、
見知らぬ爺さんに謂れ無く無期限に指浣腸される方がマシ。
見知らぬ爺さんに無期限に指浣腸されながら、
通りすがりの宇宙人に指刺され笑われる方がマシ。
通りすがりの宇宙人に指刺され笑われる道で、
転んで膝を擦り剥いた方がマシ。
転んで擦り剥いた膝を抱き抱えるように、
ぼくはまだ、キミとのサヨナラの痛みと共に、
風に転がる紙くずの如く、過ぎる日々を彷徨っている。


第、656話 転校生の女の子 (2012.01.21)
「最近我がクラスに転校してきた女の子、
もうすっかり我が校のアイドルだよなぁ」
「あのアヒル口がたまらないんだよなぁ」
「でも、口、黄色くねーし。池で小魚を狙っている姿を見た
事ねーし。卵を産まなければピータンも製造出来ないねーし。
そもそも、彼女は、人間であると考えられる訳だし。」
「更にはあの八重歯がたまらんだろ」
「そもそも八重歯は上顎犬歯の唇側転移だな」
「でも、犬じゃねーし。自分の尻尾を追い掛けて
クルクル回っている姿を見た事ねーし。犬ならば
人間と同じ給食メニューは健康上問題大ありだし。
そもそも、彼女は、人間であると考えられる訳だし。」
「更には、えくぼちゃんだよ、おいおい」
「なんたって、笑顔が大きなウリだよな、おいおい」
「大きなウリ科植物に冬瓜があり、原産はインド、東南アジア。
でも、彼女はれっきとした日本人だし。池で小魚を狙っていたら
自分の尻尾を追い掛けてクルクル回り出す冬瓜なんて、
想像を絶する化け物だし。それは彼女に対しての侮辱だし。
そもそも、彼女は、人間であると考えられる訳だし。」
・・・・・・な〜んて、只今、クラス担任の教諭から紹介されている
転校生の女の子にチラ見を繰り返しながら数日後に我が校で起こり得る
男子を中心に交わされる会話を模索してみたりな、にんまりしている始業前。


第、655話 おばあちゃんの一番長い日 (2012.01.14)
「私の指示通りにATMを操作してください」
「税金が戻ってくるのじゃな」
「まず、認証番号を右から一桁ずつ数字を読み上げてください」
「はいはい。」
「ATMの左側のボタンを押してください」
「はいはい。」
「左側のボタンを押したら、犬が電柱におしっこするモノマネをして下さい」
「はいはい。こんな感じで?」
そこで、不審に思った銀行員が・・・・・・
「おばあちゃん、『還付金詐欺風辱め詐欺』に遭っているのではないですか?」
「・・・・・・とまあ、今日一日、大変だったじゃよ」
それを聞いて孫娘が・・・・・・
「で、それからおばあちゃん、どうしたの」
「むしゃくしゃして歩いていたら道に迷ってしまってねぇ。
そしたら古めかしい建物の老舗風お煎餅屋さんがあったから、
きっと手焼きの美味しい店だと思ってばあちゃん入ってみたじゃよ」
「で、お土産がこのハッピータァーン」
「売っていたお煎餅が全て既製品だったからじゃ」
「で、お土産がこのぽたっぽた焼き」
「売っていたお煎餅が全て既製品だったからじゃ」
「で、それからおばあちゃん、どうしたの」
「初恋の人に良く似てたじゃよ」
「お煎餅屋さんのご主人が?」
「銀行員さんがじゃ」
「戻ったねぇ、話、、顔真っ赤にしちゃってさぁ」
「おまえさんだって年を取ったら何れ分かる日が来るじゃ。
銀行で、犬が電柱におしっこするモノマネをしていたら、優しく
声を掛けてきた銀行員さんが初恋の人似だった事へのときめきと驚き」
「で、それからおばあちゃん、どうしたの」
「ばあちゃんとは別の銀行に入ってゆく本当の初恋の人を偶然見掛けてねぇ」
「それを早く言いなさいよ。同じ町に住んでいるのかなぁ。で?」
「本当の初恋の人が、ATMの前で携帯電話片手に
犬が電柱におしっこするモノマネをしてたじゃよ」
「・・・・・・;;」
「おまえさんだって年を取ったら何れ分かる日が来るじゃ。
銀行で、犬が電柱におしっこするモノマネをしている、
年老いた初恋の人を目撃した事への驚愕と残酷な時の流れ」



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