Specially
第、20話 空耳 (1999.10.15) 京子がうらやましい・・・ 里美は、幼稚園から小学校、中学と、 何の縁だかいつも一緒のクラスで顔をあわせる羽目にあう京子に、 どうしてこれほどまで自分は正反対で損な人生を送っているのか、 目の前に神様でもいたら、襟首でもつかんで聞いてみようか・・・ などと、これまで何度、思ったことだろうと、恒例行事として考えていた。 もっとも、神様の襟首をつかむ勇気がほんのちょっとでもあったら、 里美のこの悩みなど最初からなかった訳だが・・・ それでも、神様の乳首をスッポンに噛み付かせてやろうと、密かに計画だけは練ってはいた。 京子が何やら里美に「わたし、和之先輩のことが好きなの」と言い始めたかと思えば、 いつのまにやら京子は和之先輩と仲良く手を繋ぎながら、校門を額縁にしたかのように、 夕映えに映える一枚の絵のごとく、 里美の目の中に、心の底に、その光景を焼き付けてしまっていたのであった。 ある日、部活も終わり、里美が帰宅しようと校庭を歩いていると、 和之先輩がちょうど部室に戻って行く姿を見かけた。 たしか、京子は部活をサボってあるロックバンドのコンサートを観にいったはず・・・ 里美は今まで出したことがないような大きな声で・・・ の、つもりだったが、和之先輩は、ちょっと後ろを振り向き、 かるく小首を傾げて、部室へ入っていった。 『あなたが好きです・・・』 もう一度、今度は心の中で里美は繰り返して言った。 |