横浜マタタビバージョンのFUNI WORLD

おバカショート劇場

FUNI WORLD (1)


第、29話     12月31日    (1999.12.31)


「初日の出も、初詣も、どこにも行かなくて、二人っきりでいいよ。。。」

あの、アパートの二階の一番端の部屋。。。

パッキング処理された小さなおそなえ餅がひとつだけの、小さな年越しのシチュエーション。。。


第、28話    雪の物語 〜第一章〜  (1999.12.10)


「すごい吹雪になったもんだ・・・」

また吉は、目に入った山小屋に避難をした。 その夜は、その山小屋に泊まることとなった。
 ふと、なにかの気配に目を覚ましたまた吉が見たものとは、枕元に不自然に積もっていた少量の雪の山だった。

「また、また吉の作り話だ !! 」

「いや、ほんとに雪女が枕元にあらわれたんだ・・・」

また吉は、作り話とは言えぬものの、かなり脳みそが羽ばたいているようだった。

「ねえ、雪女には口止めされなかったの ? 」

結局、男女4人のおバカ仲間は、その山小屋へ出向くことと相成った。 が、山小屋そのものがそこにはなかった。 

「また吉ぃ !! 」

「いや、帰りは朝で晴れてて、場所を間違えたりなんかしてないけどなぁ・・・」

そんな訳でまた吉は雪の降り出した夜、こんどはまた一人でこの場所へと出向いて来た。
雪女の話はそれこそ羽をばたつかせたまた吉の脳みそのなせた技だったが、
山小屋がどうしても見つからなかったことが仲間に対して明らかにうそ話という最終結果しか与えられなかったことに
いまだ羽ばたきつづけているまた吉の脳みその出した判断としては『意地でも探す』と言うばたばた脳みそであった。 

〜第二章〜 (1999.12.16)

大正時代のある冬のこと。。。

「そんな、もったいないことを言わないでください。 わたくしはこの家に丁稚奉公している身です。
 お嬢様のことは大切に想っております。 どうか、それだけにしておいてください」

「また吉、ふたりでこの家を出ていかなければなにも始まりません。
それに『お嬢様』はやめてくださいと何度も言っております。 お雪と呼んでかまわないのです」

「駆け落ちなんて、滅相もない・・・」

〜〜〜「それで、また吉と名前が一緒だとあとからわかったと言うまた吉の曾爺さんの弟、
・・・なんだかややっこしいなぁ。。。 が、駆け落ちの際、吹雪に遭い、亡くなられたらしいんだけど、
お雪さんって人は春になって雪が溶けていっても発見されることはなかったらしいよ。
 また吉のお爺さんから聞いた話だから、作り話の遺伝子の素ってことも考えられるけど・・・」

おバカ仲間など見守る中、昨日みんなで訪れた、山小屋があったとされる場所のあたりから、また吉の捜索が開始されていた・・・。

〜最終章〜  (1999.12.23)

「よっ、同士。 今年も帰ってきたか」

「よっ、今年もお墓参りに行くのか」

「まったく、あれから10年もたったけれど、今もってよくわからない出来事だったよな・・・」

「また吉の曾爺さんの言ってたこともまんざらうそじゃなかったんだよな・・・」

「また吉といっしょに雪の中から出てきた若い女性の死体、結局身元もなにもわからなかったのに、
大地主の大爺が『お雪じゃ、お雪が帰ってきよった』なんて騒ぎ立てたもんだから・・・
でも、家族の反対を押し切って、本当に自分たちの墓に入れてしまうなんて・・・ TVのワイドショーまで騒ぎ立てて・・・」

「また吉は『また吉さん』の生まれ変わりなのかな・・・」

「なんにしろ、お雪さんに抱きつかれてなかったら、
また吉は雪の中で凍え死んでただろうって医者も言ってたし、また吉にとっては命の恩人って訳だな」

「最初は、また吉が女をこの村に連れこんだって大騒ぎだったけれど・・・」

「おっ、やっぱ、また吉が最初にお墓参りに来てたな。 おーい、また吉ぃー★★★」


完。。。


第、27話    背中あわせの12月  (1999.12.02)


『ぼくの探し物は12月です。』

それだけが書かれた、いわゆる"ふつおた"に目をとおしたラジオ番組のパーソナリティーをしている川村ヒロカは、
デェレクターも構成作家も怪訝そうにしていたその手のハガキを、いざ本番、
ブースからちらりとデェレクターに不敵な目配せをしたかと思えばいきなり
「『ぼくの探し物は12月です。』 こんなハガキがきてたんだけど・・・」
 とリスナーに向かってFAXのテーマとして呼びかけていた。

本来だったら今日のテーマも先週同様"フリー"だったのだが、
そんな手抜きテーマにあきあきしていたヒロカには『ぼくの探し物は12月です。』
この一枚のハガキはなによりも新鮮でならなかった。

差出人の名前もない一枚のハガキ。 

「私、メジャーなレーベルと契約できたから、このチャンス逃したくないの・・・
東京に出たら今までのようにちゃんとお付き合いできないと思うの・・・
クリスマスには早いけど、あなたが探していた百日鬘♪1年分★私からの最後のプレゼント・・・」

あんなことを言って別れを切り出していたあの日の自分・・・・・・ 

結局、歌なんか売れずに唯一地方のラジオ番組に一本だけのレギュラー。。。

「次は、こんなFAXが来ています。 『ヒロカさん、こんばんは♪ ぼくのハガキをテーマにしてくれたのですね』」

構成作家がさっきの仕返しにと突然ヒロカに渡した一枚のFAX用紙。。。

「『百日鬘がきれてずいぶん経ってしまって、
ヒロカさんもご存知のうぐいす踏ん張り第二公園での"歌舞伎おにいちゃん"としてのぼくの、
子供たちからの築きあげてきた信頼が薄れてきてしまいそうなんですけど・・・』
・・・・・・弘明のバカ。。。」

『ぼくの探し物は12月です。』

振り向いたそこには、ヒロカがいて、弘明がいた。。。


第、26話     情熱  (1999.11.26)


たしかに時代はたれイボイノシシかぴよギーかと言われるほど
女子校生の間では主題歌が着メロにつかわれるほどの・・・ うそです。。。

そんなわけで、氷ぴよギーのおはなし。。。

地球が氷河期だった頃、幾つかの化石ぴよギーに生命が宿り
『寒風摩擦は禁止技』でみごと氷河期オリ*(・▽・)*コン(おりがみでこんにゃく気取りの訳
・・・じゃなく)で初登場1位♪を獲得★
その後、イメチェンをはかり"情熱ぴよギー"を名乗るが、その寒々とした本来のキャラクターが災いし、
どんどんと冷たい存在へと流れて行ってしまう・・・

流れていったのはそれだけではなかった。。。

氷河期が終わりを告げ、氷ぴよギーは溶け出して川になり、
海へ流れ、一部の種族は海ぴよギーになった。。。

しかし、死に絶えようとしてたほとんどの氷ぴよギーはその後、蒸発の最中、
神様に連れられて両極の門番を任せられることとなった。。。

でも、ときどき氷ぴよギーの思いは空を駆け巡り、オーロラと呼ばれる光の神秘と化すのであった。。。

オーロラを見た人々は、寒い土地で心にぬくもりをおぼえるが、
それが、遠い先祖たちが気づくことがなかった氷ぴよギーの交流を求めた"情熱"だと言うことは、
今更ながら気づくものは誰一人いないのでした。。。


第、25話      Birthday Song   (1999.11.19)


青いリボンに包まれた箱を下駄箱から取り出した一郎は、おおきなため息をひとつ吐きながら自転車置き場まで行くと、
自転車のかごに箱をほおリ投げ、家に向かってペダルを漕ぎ出した。

去年の悪友からの誕生日のプレゼントは
一郎が男のくせにとからかわれる原因のひとつでもあるスヌ@ピーの手のひらサイズの、
野犬に食いちぎられて内臓が飛び出て血だらけなリアルな人形であった。

下駄箱から取り出して箱を開けて青ざめてお昼の給食をぜんぶ吐いてしまった一郎は、
その日から年が明けるまではそのことを笑いのネタにされてしまったのだった。

だから今年は大急ぎでその場を離れ、家にこうして向かっている。

けして箱を捨てないでいるのは去年の箱を開けるまでのあのときめきが再び一郎を支配してしまっているからだろう。
家に帰った一郎は恐る恐る箱を開けるとそこにはちゃんとしたス@ーピーの人形・・・ ときめきが一郎に体当たりしてきた。

・・・が、中にはいっていた手紙は憎き悪友からのものであった。

『よっ、一郎 ! 俺んち親父のボロ会社が晴れて倒産しちまってな、今晩あたり夜逃げだ !!もう会うことないよな。 さらばだ !!』 

一郎は、家からさほど遠くもない学校へと自転車を漕ぎ出していた。。。


第、24話      ガールフレンド   (1999.11.12)


奈美子は鏡に映る自分自身に『ジェニファー』と言う名前をつけて会話をする癖がある。

「ねえ、ジェニやん♪ ちょっと聞いてよ☆
バイト先でさぁ、店長のおやじがいやらしくってさぁ、ちょっと聞いてるの ?
ジェニ助 !! その店長が商品のペットというペットに真っ赤な口紅を口に塗りたくって
女子店員にも同じ色で統一させようとするのよ !!
信じられる ? ジェニ公 !! そのおやじも同じの塗って店に出てるの・・・
お客さんも『店長を一匹もらおうか♪』なんて本気でゆうもんだから、店長買われちゃって、
新しく来た店長が『くるぶしに口紅を塗れ !!』なんて言い出すから毎日たのしいじゃん♪
・・・んっ ? たのしいんじゃない♪ もう、やだったらジェニ乃助ったらん☆ ・・・そうじゃないのよぅ、話をそらさないでよ !
ジェニ丸ぅったら☆ そうそう、お向かいの家のババアがやな奴でさぁ、裏庭にいたニワトリを一匹どこかに持って行っちゃったのよ !
わたし、窓からずっと見てたんだけどさぁ、最初、2羽いたのよぅ ! 庭にも2羽いたのよぅ !
早口ことば、どうしてくれるのよぅ !! ・・・そうじゃないのよ !!
・・・・・・ねぇ、ジェニファー、わたしね、わたし、今日、ふられちゃったの・・・・・・
ふられてきちゃったの・・・・・・ 理由なんて、わからないの・・・・・・」

鏡の中のジェニファーは、怒ってたのかとおもえば笑いだし・・・ 突然、涙も流しだす。。。


第、23話       予感     (1999.11.05)


「吉村くんじゃないの ! ひさしぶりだね♪ 聞いたわよ !
念願だったプロの"誰にも描かせない絵描き歌作り職人"になったんだってね ! おめでとう」

「よっ ! ひとみ。そうなんだ ! "山奥に捨てられた犬が、
どうして元飼い主にビデオレターを送りつけてくるのか"と言う論文が認められたんだ」

「わたし、実はね、山崎先輩を待ってるのよ」

「あれ、ニ年間、断られ続けてた恋が実ったのかな」

「そうなの・・・ わたしも半分あきらめかけてたところだったんだけど・・・」

「じゃあ、ぼくがこんな所にいたら、じゃまだな☆ じゃあ、またこんど・・・
でも、なんでまた恋人と別れてしまう迷信のあるここで、待ち合わせているの ?? 」

「えっ !! 恋人とうまく行く迷信の駅の西口の"ブリッチするダンゴムシ像"って、あってるよね・・・」

「ちがうよ ! うまく行くのは南口の"逆立ちをするダンゴムシ像"だよ」

「いけな〜い !! まちがえちゃったぁ〜 どうりで山崎先輩こないと思った・・・」

「急いで南口いかなくちゃ !! 」

「うん。 じゃあね・・・ ほんとにおめでとう。。。 ほんとにすごいよ。。。
自分の夢を叶えちゃうなんて・・・ すごく、かっこいい。。。」

ひとみは、駅の階段を小走りに駆け上がって行ったかと思うと、また、すこし舞い戻ってきて、
吉村に向かって大きな声で「おめでとう♪」と叫んだかと思うと、
また、小走りに駅の階段を、人ごみの中を駆け上がって行った。。。


第、22話    トマトのきもち   (1999.10.29)


・・・まったく、なんで隣の部屋の人の荷物がここに来ちゃうわけ !
よりによってトマトだなんて・・・

それをまた、あいつがここに来たものと思って受け取って、
わたしのいない間に開けていくつか食べちゃうなんて・・・

なんでトマトが大好物なのよー そんなこと一言も聞いてないわよ !
大体、いつの間にわたしの部屋にあいつが住んでるわけ・・・

一人暮しをしたいと思って親をなんとか説得してやっと念願の一人暮しを始めたと言うのに、
たった半年でこの様なんて・・・

ディズ(^^;)ーランドに行きたいと言えば、中原第二公園に連れてかれて公園にいた子供たちと砂遊び。

子供たちの母親に『不衛生なことさせないでよ !!』と頭をはたかれ、
動物園に行きたいと言えば、中原第二公園に連れてかれて公園にいた野良ねこたちにえさを配布♪

近所に住むおばさんに『庭にうんこされたら責任とれるの !!』と頭をはたかれ、
映画館に行きたいと言えば、中原第二公園に連れてかれて
公園にいた紙芝居同好会と言うあやしげな大学生とすっかり仲良し♪

集まっていた子供たちの母親に『あんたらね !! 子供たちにくだらないものを見せているのは !!』と頭をはたかれ・・・
結局、あいつとわたしとでは性格が合わないわけじゃない・・・

なぁんで、あいつと一緒に暮らそうなんて思っちゃったのかしら・・・

トマトどうしよう・・・ 子供の頃からずっとたべてないなぁ・・・
食べず嫌いなのかも知れないなぁ・・・ あいつの第一印象もかなりだったからなぁ・・・


第、21話    時をかける稲蔵  (1999.10.22)


「かあちゃん、ハンバーガー買いにどこまで行ったんだよー」

「稲蔵、お雑煮つくってやっかにゃ ? 」

「ばばぁの雑煮なんかいらねーよ ! 年がら年中、雑煮つくって食べててよくあきねーな」

「ばばぁは、雑煮大好きにゃんだけどにゃ」

「うるせーよ ! 大体、家族の反対押し切って"稲蔵"なんて名前つけやがって」

「ばばぁのおかあさんから一文字頂いた有難い名前にゃ」

稲蔵は、ふて腐れて自分の部屋にもどりベットに寝っころがっているうち、つい、うとうとと・・・ 

目の前で山菜を取っていた少女は、稲蔵の手を引き「約束どおりにご馳走してあげる」と言って
萱葺き屋根の農家の家に案内してくれた。

事の経緯は、稲蔵が池のかえるを集めてハワイアンを踊っていると、
いつのまにか拍手しまくって「手がもぎれる様にいたい・・・」と涙目になっていた時枝と言う少女に稲蔵は一目ぼれしてしまい、
さらに、踊らずにはいられなかったハワイアンを披露♪ そのお礼にと家に連れてこられたのだった。

縁側に座り稲蔵は、時枝の作ってくれたお雑煮を一気に平らげてしまった。

稲蔵の隣では、時枝の父と名乗る男がかえるの被り物姿で「この子は小さい頃におかあさんに先立たれているのに、
最近、この子の作る雑煮はおかあさんがよく作ってくれたのと同じ味になってきたんだにゃ」
 と言っては、しみじみとお雑煮をすすった。。。

ガチャァン !! と言う音に起こされた稲蔵が台所に行ってみると
「わるいわるい !! ばばぁ、鍋落としちまったにゃ」と、かえるの被り物姿のばばぁは言った。

稲蔵は「腹へったから雑煮食わせろよ」と言うと

「ばばぁの雑煮、食う気ににゃったか !! このおたまじゃくし野郎」と甘えられながらも雑煮をGET !!

そして稲蔵は 「あっ、さっき夢でばばぁ出てきたぞ」

「夢にまでばばぁが出てきてわるかったにゃ」

「ちがうよ、夢に出てきたのは、ばばぁが『昔のばばぁは可愛きゃっただろう』と
おれが子供の頃見せびらかして来た古いあの写真の中の時枝ばばぁだよ」

稲蔵はそう言って、また一口、お雑煮の味を噛み締めた。。。


第、20話     空耳      (1999.10.15)


京子がうらやましい・・・


里美は、幼稚園から小学校、中学と、何の縁だかいつも一緒のクラスで顔をあわせる羽目にあう京子に、

どうしてこれほどまで自分は正反対で損な人生を送っているのか、

目の前に神様でもいたら、襟首でもつかんで聞いてみようか・・・

などと、これまで何度、思ったことだろうと、恒例行事として考えていた。

 もっとも、神様の襟首をつかむ勇気がほんのちょっとでもあったら里美のこの悩みなど最初からなかった訳だが・・・

それでも、神様の乳首をスッポンに噛み付かせてやろうと、密かに計画だけは練ってはいた。


京子が何やら里美に「わたし、和之先輩のことが好きなの」と言い始めたかと思えば、

いつのまにやら京子は和之先輩と仲良く手を繋ぎながら、校門を額縁にしたかのように、

夕映えに映える一枚の絵のごとく、

里美の目の中に、心の底に、その光景を焼き付けてしまっていたのであった。


ある日、部活も終わり、里美が帰宅しようと校庭を歩いていると、

和之先輩がちょうど部室に戻って行く姿を見かけた。

たしか、京子は部活をサボってあるロックバンドのコンサートを観にいったはず・・・

里美は今まで出したことがないような大きな声で・・・

の、つもりだったが、和之先輩は、ちょっと後ろを振り向き、かるく小首を傾げて、部室へ入っていった。


『あなたが好きです・・・』


もう一度、今度は心の中で里美は繰り返して言った。


第、19話     花瓶地蔵   (1999.10.08)


「いえ、本当に間に合ってますので・・・」

邦彦は肩をまるめ、そのアパートの外付け階段をおりていった。

3ヶ月前リストラに遭い、仕事も見つからないので始めた花瓶の訪問販売。

小学4年の時、工作で銀賞をもらったことのある腕を惜しみもなく活かし、
ゴミ捨て場から拾ってきたペットボトルを改造して作ったお手製の花瓶軍も、一つも売れたことはなかった。

邦彦は気を取りなおし、次の家を尋ねた。 

「いまなら安くしときますよ」

「いりませんよ ! 」

「イボ痔は、イボの分だけ、なぁ〜んかお得♪」

「たまりらっきょはたまられてイェイ♪イェイ♪ですから・・・」

「モヒカン爺さん、園児集めて大暴れ !! でもですか ? 」

「金魚が見ていたんですにょ」

またもや、売れなかった。

邦彦は帰り際、夜も遅く、あたりまえに通っていた公園のそばの道に
お地蔵さんが六体並んでいるのを改めて気がついた。

なんとなく、傘地蔵を思い出した邦彦は、花瓶に、公園から水をくんできて、
お地蔵さんの足元に寝かされていた花束をそれぞれ花瓶に分け、
ついでに、たまたま趣味で持っていたパンティーを頭にかぶせて
「なんか、恩返ししてくれよな」 とつぶやくと、家に帰っていった。

それから一年。。。

あいかわらず売れることのない花瓶を持ち帰る邦彦の帰り道。

夜も遅く、あたりまえに通っている公園のそばの道の六体のお地蔵さんの足元には、
あの日、邦彦が置いていった六つの花瓶に、誰かしらが毎日生けている花と、
そして、お地蔵さんの頭には、もう、だいぶ黒ずんだパンティーが、いまだにかぶされていたのでした。

めでてし♪ めでたし♪


第、18話     HEY,BABE   (1999.10.01)


駄菓子やのその隅で、にこっと笑っていたオモチャのかえるちゃん♪

当然、ぼくの部屋のマスコットとなった。

足に吸盤のついた体を押しつけてしばらくすると、バネの力でジャンプ !!

頭の中のおもりの移動の作用によって、みごと、空中で一回転 !!

とっても芸達者なかえるちゃん♪

でも、君が部屋を出ていった日、かえるちゃんもいっしょに持って行ってしまった。。。


毎日がやさしかった日々。

"すき"と言う気持ちで、呼吸をしていた日々。


合鍵につけるお揃いのマスコットを選んでいたあの日も・・・

以前は、さよならをしていた場所を素通りして、微笑みあった帰り道も・・・

肩に乗ったさくらの花びらをはらってあげたあの春も・・・

ひぐらしの鳴き声の中、買ってきた風鈴を吊るしたあの夏も・・・

枯葉の舞う並木道で、抱きしめあったあの秋も・・・

手のひらに雪を受け止めて、ふたりで空を見上げたあの冬も・・・


ぼくの大好きなかえるちゃん♪ きみの笑顔になりたいな。。。


第、17話      うそつき    (1999.9.24)


街は小雨の中、急激にコントラストを調整しはじめる。。。

「だいじょぶ ! バス乗っちゃえばバス停降りてすぐ家だし・・・」

香奈子は、電車で帰るいとこの元晴にそう笑顔で言うと、
雨避けのあるバス乗り場へと小走りに走り出した。

元晴は「さすが、おれより一年多く生きてるだけにことはある。
加奈ちゃんに相談してよかった」と、香奈子の背中に向かって叫ぶと、駅に向かって走り出した。

「加奈ちゃんの言うとおりだった。
ペンダントやめて、思いきって貯金おろして、旋盤買ってプレゼントして正解だった。
やっぱ、女の子の欲しがってるものは、女に聞くのが一番だ !!
これであの子とつきあえるようになれたら、加奈ちゃんには溶接セットぐらい買ってやるよ。
 あの赤くて四角いお面付きだよ ! あっ、雨降ってきたよ。 溶接セットの前に、ビニール傘買ってやるよ」

「だいじょぶ ! バス乗っちゃえばバス停降りてすぐ家だし・・・」

・・・・・・陽を落とした街に、雨はしだいに強さを増してゆく。

香奈子は、バス乗り場から少しはなれたペットショップの檻の中の仔犬をガラス越しに、しばらくは見つめつづけていた。。。


第、16話    マタタビの"MAYBE TOMORROW"  (1999.9.17)


『グランプリは、25番、吉田麻美さんです』・・・・・・

真美子は、小さな部屋の中、いつもよりか薄暗く感じる蛍光灯の下、
つい、5、6時間前まで自分が立っていたステージの自分の力だけでは覆い尽くせない強い存在感を
いまだに我が身を震わしている記憶の鼓動を拭い去ることもできずに、
ただ無駄に、今と言う時間を煙のように消していってしまっていた。

最後の最後でしくじってた・・・

あきらめられずにいた。

つけていたのもわすれていたFMから流れている曲は、
幼い頃に母が聴いていたのをよく耳にしていた、あの頃のヒットソング♪

あの日の幼い自分がみていた夢は、気づかぬうちに、弱く、哀しいものに成り代わっていた・・・。 

『ここまで勝ち残ってきた彼女たちにも、暖かい拍手を・・・』

♪あきらめは出来ないの・・・♪

何度もなんども、そのフレーズだけが耳の中でこだましていった・・・。

真美子は、明日をバカなほど信じきって行こうと自分に言い聞かせ始めていた。

明日こそ、幼い頃から夢見てた女性シンガー・・・の所属する事務所の前の
焼肉屋さんのゴミ捨て場を朝方荒らすカラスさんとお話をするへんなお姉さんとしてバラエティ番組のオーデションに合格し、
テレビに出て喜ぶぞ !! と、一度はあきらめかけていた自分に約束を交わしていた。。。


第、15話    留守番電話   (1999.9.10)


『はい、早智子です。 ただいま留守にしています・・・・・・』

「あっ、もしもし、あっ、あー・・・ 元気 もしもし、誤解とけてないよね・・・
あっ、聞いてろよ ! 消すなよ ! あっ、ま、また掛けなおすけど、なっ、あの〜〜、だからぁ、
あっ、これでどうだ !!  "ケツ毛婦人の産卵〜" ん、笑った ? 笑った ?
・・・消すなよ ! おい ! 最後まで聞いてろよ、おい・・・ 誤解なんだよ〜〜・・・ 
あれは、だから・・・ あっ、そうだ ♪ "ビキニで虚無僧ブラザーズの、クラリネットで西洋気分♪"
・・・切るなよ !! 消すなよ !! そうそう、誤解はよくないねぇ〜。。。
昔の人は言いました。
『女であるならば、たとえ、ねじりハチマキにふんどし姿で人ごみの中、四股を強制されようとも、ワキゲは三つ編みリボン付き♪』
切るなよ !! 消すなよ !! あれは誤解なんだってばぁ・・・・・・」

早智子は、リアルタイムで留守番電話の言葉を耳にしながら、冬に着てもらおうと想って、
不器用な手先で手編みのセーターを編んでいた。


第、14話     九月の雨   (1999.9.03)


和子は、毎週観ているゴールデンタイム枠のバラエティー番組にチャンネルをあわせると、

CMの合間など、ありきたりの情報掲載の週刊誌をめくっては、外の雨の音ばかり耳に感じていた。

窓を開け放つと、そこには九月の冷たい雨が途切れることを知らずに、いつまでも振り続いていた。

三年前、運動神経ではことのほか自信のない和子は、運動をして"さわやか"になれる人の気が知れず、

ジョキングをしていた見知らぬ暑苦しい脂肪のかたまりについ

「脳が脂肪に命令して動いてんじゃねえ !! このロリータ・ジグゾ−パズル趣味野郎 !! 」と、声援してしまい、

脂肪激怒 !! 追いかけられ、和子は一生懸命逃げて、汗をかいて、さわやかになりました。

それが、和子と脂肪の九月のさわやかな出会いだった・・・。

和子は、開け放された窓の外をずっと見ていた。

そこには九月の冷たい雨が途切れることを知らずに、いつまでも振り続いていた・・・。


第、13話   『妖精ろろ』の物語   (1999.8.27)


「妖精ろろは、少女の願い事をかなえると、再び『ろろの世界』に帰っていきました・・・」

娘のあやかが寝息を立て始めると、母親は絵本を閉じて、そっと部屋から出て行きました。

今は、お昼寝の時間。

あやかのすぐそばには妖精ろろが、まるでお人形のようなただずまいで、あやかの寝顔を見つめていました。

あやかの母親が、仕事をさぼった父親とセーラー服プレイを昼間っから楽しんでいようと、
そんなこと、妖精ろろには関係ありません。

妖精ろろは、あやかにそっと、囁くように話し始めました。

「きみも、ろろの姿がみえないろろ・・。 きみのおかあさんもきみぐらいの頃、ろろのこと探してたけど、
ろろがそばにいるのに、いつのまにか、探すことすらしてくれなくなったろろ・・。 ねぇ・・・」

妖精ろろの耳に、あやかの母親が、
仕事をさぼった父親とセーラー服プレイを昼間っから楽しんでいる様子が聞こえてこようとも、
妖精ろろは、あやかの寝顔を見つめるままでした。 

「あやか、おきなさい。 妖精ろろがあやかの願い事を叶えてくれたわよ」

母親と父親が、買っておいた、あやかが欲しがっていたテディベアをあやかに手渡すと、
あやかはうれしそうに、こっくり、うなずきました。

妖精ろろはそんな様子を、玩具のカラフルな室内用滑り台のよこ、ひざを抱えながら、さびしそうに見つめてました。


第、12話   マタタビの"マイ・ハート・バラード"  (1999.8.20)


『前略、貴子さん、わたしです。 今、振られてきたばかり・・・ 

おぼえているでしょ、彼のこと。 ずっと、続いて行くものだとばかり思ってたから・・・

まさか、寝ているときに鼻の穴にかみきり虫を詰め込んで、
かみきり虫を"キ−キ−"鳴かせたぐらいであんなに怒る男だなんて、思わなかったから・・・

まっ、その程度の男だったんだとわかって、良かったってことなのかな。 

・・・・・・負け惜しみ

なんだか、なにも、手をつけられない。 なにをしていいか、・・・わからない。

でも、貴子さん、あなたにこの手紙、読んでもらわなくっちゃね !

わたし、負けたりなんかしないよ。 ちゃんと、きっと、できるよ。

あっ、そうそう、あなた、失恋したショックでやぶれかぶれになって足の指にお気に入りのパンティー挟んで逆立ちして、
すもう部屋の前を行ったり来たりして捕まる癖、もう、治ったんでしょうね ? 貴子さん、失恋したんでしょ、がんばって・・・』

貴子は失恋をすると、以前、失恋した時の自分からの手紙を読むことにしていた。

あの頃、十七歳だった自分からの手紙。

貴子は、かるく微笑かえしてから、足の指に挟むつもりでえらんであったお気に入りのパンティーを、
たたんで、タンスの引き出しの中にしまった。


第、11話   ちはるの子守唄   (1999.8.13)


何年か前のこと

"あっは〜んお姉ちゃんの撮影会" の記事を頼りに出かけたまでは良かったが、
自分はカメラなどを持っていなかったことにその時気づき、
まさか、使い捨てじゃカッコがつかないし、仕方がないので半べそをかきながらふらふら歩いていたら道に迷い、
小っちゃな公園のブランコに座り途方に暮れてた時
「おにいちゃん、ちはるとママゴトしようよ」と、5才ぐらいの女の子がぼくを逆ナンパしてきたではありませんか。

ちはるちゃんは「おにいちゃんがちはるで、ちはるがママね ! 」と、
設定を決めたかと思うと、ぼくの演技が"ちはる"ではないと思うやいなや「このスカトロ野郎 !! 」と、
金物の灰皿があったら投げてきそうなほどの激怒。

そんな、ちはるちゃんの演じるところのママは、とってもやさしいおかあさん。

この、演出家、兼、女優のちはるちゃんに「スカトロ野郎」と怒鳴られること30分ほど・・

「ちはる、家にもどってないと・・・」

と、言って、ぼくを置き去りにして慌てて家に帰って行かれました。

一週間ほど経ち、なんとなく、ちはるちゃんの町に出向いたぼくは、あの公園で、
ちはるちゃんが、ちょっと営業をサボっていた、人の良さそう風なスーツ姿のおっさんをつかまえて、
演出家ぶりを発揮している所を発見。

「このスカトロデブ野郎 !! 」の声を背に、ぼくは、その場を去って行ったのでした。

ぼくが本当の親だったら、抱きしめていてあげたいほどの女の子なのに・・・。

他人でしかないぼくは、ちはるちゃんのたくましさを信じるしかなかったのでした。

もう一度「スカトロ野郎」と、怒鳴られてみたいと思いつつ・・・。


第、10話  夏休み、子供スペシャル !!  ペンギンがえるのおはなし。 (1999.8.6)


ある村の田んぼに、いっぴきのかわったかえるがいました。

このかえるは、ちかくの家に住む、まいこちゃんと言う女の子がたいへん好きでした。

でも、まいこちゃんはとってもかえるが大キライ !! いつも、たいせつそうにペンギンのぬいぐるみをだきしめていたのでした。

ある日、かえるはごみ捨て場のなかから、ぼろぼろになった穴だらけのペンギンのポシェットを発見 !!

それをかぶるとペンギンがえるの誕生 !!

うすよごれてて、左手なんか、やぶけた穴から出てしまってるけれども、かえるはごきげん !!

田んぼのあぜ道を、ともだちのゲンゴロウといっしょにヒョコヒョコあるく練習を毎日しました。

でも、ほかのかえるたちは、そんなペンギンがえるに石をなげつけて、
逃げまどうペンギンがえるは川におち,ポシェットに水がしみこみ、おぼれてしまいました。

これには、ほかのかえるたちも、あきれながらもペンギンがえるをたすけてくれました。

わーん わーんと泣きじゃくるペンギンがえる。

やがて、泣きつかれたのか、ぐっすり眠ってしまいました。

だいすきな、まいこちゃんに、だきしめられている夢でも見れたらいいね ! ペンギンがえる。

おしまい。


第、9話  まちあわせ  (1999.7.30) 


この店に、あまりにも違和感がなく、大きな柱時計の長針が大きく動く。

テーブルの上には、飲み干された紅茶のカップと、つながらない携帯電話。

宙吊りになった網タイツ姿の中年サラリーマンが、
取引先の身なりのいい実業家風の、一見、紳士を装った若造に、ムチを入れられながら、
ストローでミルクセーキをすすっている。

 私の隣の席には、あなたが探していた、廃盤のCDが入ったポーチが、居場所も選べぬまま、横たわっている。

はじめて逢った日に、この店で流れていたBGMが、閉店まじかなこの店にまた、繰り返すように流れている。

今日はあなたの誕生日・・・。

店の外は夜遅くだと言うのに、行き交う人々と、色とりどりの灯りに染められた空間。

私はその中へ、ちっぽけになって溶け込んでいった・・・。

店の大きな窓の中では、宙吊りになった網タイツ姿の中年サラリーマンが、
取引先の身なりのいい実業家風の、一見、紳士を装った若造に、ムチを入れられながら、
ストローでミルクセーキをすすっていた。


第、8話  怪獣ゴピラあらわる 〜横浜の町はどうなるんだ?〜  (1999.7.23)


ゴピラ 「あ、あのー・・・」

少年 「なんだよ、おっ、怪獣じゃねーか」

ゴピラ 「そうなんですけど・・」

少年 「おまえ、ビルとか壊せるか ?」

ゴピラ 「め、滅相もありません」

少年 「そうだよな、俺よりちっちゃいもんな・・」

ゴピラ 「そんな問題じゃぁ」

少年 「よし、火を吹け」

ゴピラ 「な、なんでまたぁ」

少年 「怪獣が暴れないとウピトラマンが来ないじゃないか」

ゴピラ 「な、なんですか、それ」

少年 「いいから火を吹けよ」

ゴピラ 「火なんて吹けませんよ」

少年 「ダメなやっちゃなー、よし、爪で乳首をつまんでみー」

ゴピラ 「え゛っ !! ぼくの爪、円柱で尖がってるんですよ」

少年 「いいからやれよ」 ゴピラ「あひ〜」

少年 「あひ〜じゃねーよ、火を吹くんだョ」

ゴピラ 「あ、あひ〜〜」

少年 「もう、いいからおまえ帰れ」

ゴピラ 「あっ、できればこのへんに住もうかなって思って・・ いい物件知りませんか」

少年 「どんなのだよ」

ゴピラ 「たとえば、おしりをふりふり、頭から地面にもぐって10分ぐらいの物件・・」

少年 「帰れ !! このやろう」

ゴピラ 「あ、あのー、ぼくも、あなたも、一人ぼっちになっちゃうんじゃないかと・・・」

少年 「とっとと、帰れ !! 」

ゴピラ 「は、はい、わかりました・・・」


こうして、横浜の町は少年の手によって救われた。

ありがとう、少年。そして、ありがとう、ウピトラマン。


  完


    ゴピラ 「あ、あのー・・・」


第、7話  マタタビの"ぼろぼろババァ物語" (1999.7.16)


掘建て小屋のような駄菓子やに、ぼろぼろババァが生息してました。

この駄菓子や、ぼろい鉄板のテーブルがいっちょ前に一台あり、
メニューは、市販されている一人前の半分ほどのやきそばの麺(具なし)と、水溶き小麦粉(もちろん具なし)

ババァいわく、お好み焼きの二品。

ぼろぼろババァ、またの名を、入れ歯をルアーに釣り三昧。
乳房の面積、底辺×高さ÷2。・・は、お釣りをかならず間違える明瞭会計派。

駄菓子をパクッても気づかない。

たまに「ババァの昔の家は金持ちだったんじゃ」などと抜かすものだから「うそつけ、ババァ」の大合唱 !!

すると「ババァはボケてっから、昔のことは忘れちまったな。ガハハハハ」と、きまって言うのでした。

それが、小ニから小四の頃のぼくと、ぼろぼろババァとの出会いでした。

・・ぼくが中三の時、友達の、中学生にもなって、学校でしょんべん漏らしたたかし君・・

ん、余計なこと書いたかな ? 元へ、中学生にもなって、学校でしょんべん漏らしたたかしのカアちゃんが
パートしてる本屋で立ち読みしていたら、古い写真の本に、
でっかい家の前で身なりのいい家族にかこまれた二十歳前後のきれいなどこかのおねえちゃんの写真。

その時、なんだか頭の中が、ぼろぼろババァでいっぱいになってしまったぼくは、
後から母さまから借金をして、その本を買ったのでした。

それ以来、古い、きれいなおねえちゃんの写真に弱くなってしまったぼくは、
たまに、その手の本を買っては、ぼろぼろババァのことを思い出し、
どうにもならなくなってしまうマタタビなのでした。   


第、6話  七月の唄  (1999.7.8)


秋葉原などへ買い物に出る時ぐらいしか電車に乗らないぼくが、

たまたま乗って、たまたま、最寄の駅からそう離れてはいないが、

一度もまだ降りたこともない駅の近くの細い上がり坂で、

たまたま、坂の途中の自販機で缶ジュースを買って飲む、

近くの高校の制服を着た女の子を見かけたのが、一昨年の七月だった。

梅雨の合間のよく晴れた土曜の午後だった。

電車の窓から、その小さく写る映像を、出きるだけ鮮明に頭に焼き付けたつもりだった。

だから、まちがえてなんかいない。

去年の七月、梅雨の合間のよく晴れた土曜の午後、あの子を同じシチュエーションで、確かに見かけた。

けして、女装をした秋田犬ではないことぐらい、ぼくにだってわかる。

たから、今年の梅雨の合間のよく晴れた土曜の午後、電車がその駅に止まっていた時、

ぼくは、この一度も降りたことのない町に、一度も歩いたことのない坂道に、

足を踏み入れてみようかなって、衝動に駆られてしまった。

でも、結局は電車の窓から、おそらく最後の制服姿を目で追っただけだった。

確かに同じ子なんだ。

女装をしたA(^^;)BOでないことぐらい、ぼくにだってわかる。

なにはともあれ、少なくても来年、女子大生になったあの子の姿を見かける時までは、

細い上がり坂のある、その駅の町に足を踏み入れることはなさそうだな・・

なんて思う、七月の今日この頃なのでした。


第、5話  七夕祭りで大パニック ! !  (1999.7.02)


大好きだった先生がいました。

たとえるなら、藤(^^)紀香−ドラマ+平凡な現実=なんにしたっておっぱいがデカイ ! !
・・・と言えば、おわかりいただけるかと存じます。

しかし、愛しき紀香先生は結婚するため先生を辞められました。

思い出されるのは授業中、バカだったぼくによく「この未熟者 !!」と、お叱りになって下さったことと、
すもう大会で、貧乏暮らしの和式ボットン便所生活でやしなった足腰で、水洗洋式連中を下し優勝。

「マタタビ、御褒美におっぱい、もまさせてもらえ !!」の悪友たちの声に押されながらも、
当時"シャイ"だったぼくは、どうしていいかわからず、紀香先生のおっぱいをわしづかみ !!右ねじり !!

痛がりびっくりした紀香先生は、つい「この未熟者 !!」と、お叱りになって下さいました。

そして、お別れ・・・。

一年後、母さまと七夕祭りに出かけたぼくは、紀香先生と再会。憎き恋敵も一緒でした。

でも、なつかしかったぼくは「すもう大会で優勝した御褒美に、おっぱいもませてもらったんだけど、
ぼくが未熟者だったからおこられたんだよね」と言うと
、なぜか恋敵が紀香先生に「おまえは子供たちにと゛んな教育をしてきたんだ !!」と激怒。

母さまは、へんな空気を察し、ぼくの襟首をわしづかみ、とっとと、その場を立ち去っていったのでした。

それ以来、愛しき織姫には一度も出会ってません。

毎年、七夕が近づいてくると、紀香先生のおっぱい恋しさに涙ぐむマタタビなのでした。

へびも、とぐろでイェイ !!イェイ !!です。


第、4話  マタタビの"夜間飛行"  (1999.6.24)


父、「おっ、涼子、おかえり。また夜中までたかしくんのメールを待つのか?」

母、「たかしさんも残業ばかりで出張先で大変そうね」

父、「遠距離恋愛ってのも、けっこう続くもんだな。
思えば、たかしくんが無数の産まれたてのカマキリの赤ちゃんに甘えられているところを
わしがたすけてやった縁での恋愛だもんな。
早く帰ってきてもらって涼子をもらってもらわないとな。
そして、ミニスカートでスイカわりおじさんとしての、わしのあとを継いでもらわなければ・・・」

午前一時、涼子は見つめていたスクリーンセーバーに、一つ、溜息をつくと、
メールソフトのアドレス張の中から、たかしのアドレスを解除した・・・ 。


第、3話  あぁ、和同開珎 〜時空をこえて〜 (1999.6.18)


小さかった頃、おばあちゃんちに行くたび不思議に思ってたことがありました。

おばあちゃんちのお風呂は五右衛門風呂で、かなり古くからのものでした。

シャンプーなどが置いてある壁の出っ張った部分の必ず決まった位置に置いてあった和同開珎があったのです。

幼稚園児だった頃、小学生になった頃、卒業する頃と、かならず、そこにはあったのです。


ある時、ぼくは考えました。

きっと、これは遠い昔、ご先祖様が、宴会の席かなんかで、
ポコチンの尿道の中に和同開珎を無理やり詰め込み
「コブラじゃあ〜コブラじゃぞ! !」と(時代考証はこの際・・・)バカ騒ぎ ! !

やんややんやの多うけ

そのうち「風呂に行ってくる」と、その場を抜け出し、
風呂場に隠れるや否や半べそ状態で和同開珎を引っこ抜き、そこに置かれたのではないかと・・・

そんな風に思ったり・・・

いや、おそらく・・・

いや、間違えなくそうに違いない。


血です。血縁なんです。

自分を振り返ればわかります。

いつだったか、その、五右衛門風呂に入りながら、ふと、和同開珎をちょっと動かしてみようか・・・
などと思ったことがありましたが、やめときました。

また今度、おばあちゃんちに来た時に、
再び、遠い昔のご先祖様に出会えるような気がしてならなかったからです。 


第、2話  名犬『なぁに』物語  (1999.6.8)


『なぁに』と言う野良犬がいました。

小首傾げて「なぁに」って顔をしてたので『なぁに』でした。

「お手」と言うと、お手をしました。

「ちんちん」と言うと、腹這いになり、チンチンを振りました。

・・・バカ犬でした。

いつの間に『なぁに』の姿が消えたので保健所に言ってみると、いました。

保健所のおじさんは「仔犬ならもらわれるけど、この老犬じゃねぇ」といいました。

檻の中の『なぁに』に「お手」と言うと、お手をしました。

「ちんちん」と言うと、チンチンを振りました。

・・・まさにバカ犬でした。

まぁ、こんなもんです。

公園に行くと、野良猫がわびしそうにぼくを見上げます。

まぁ、こんなもんです。

子供の頃、好きだったブランコも、なんだか低くなって、うまくこげなくなりました。

まぁ、こんなもんです。


第、1話  ひまわり  (1999.6.8)


はいっ !

 あたいは、ひまわりなんですけど、

まぁ、なんでこんなクソ暑いときにあたいらは咲くんでしょうかねぇ。

しかも、なにが哀しくて迷路にされてるんでしょうか?

 あたいらは・・・ 右が乳首なら、左も乳首と言いまして・・・

 いえ、ひまわりと言いまして・・・

えーっと、あっ、そうそう、さっきから女の子が隠れてて・・・

 おいっ、ここで何してる。

あっ、あのおばちゃんが怖いのか?

ありゃ、野村なんとか言う、野球監督の・・・

えっ、あっ、ちゃう。

じゃあ、あれが怖いんか? ありゃ、小堺なんとか言う、チューの経験を無理やり聞いてくる・・・

あっ、ちゃうの。

おっ、あいつら、まだ子供のくせに男と女がこのクソ暑いのにおててつないで・・

おい、おまえ、同じぐらいの年じゃないか? ともだちか?

・・・なに泣いてる?

・・・あーぁ、そう言うことね。

あたいら、ひまわりもな、太陽さんのことをずっとずっと見つめてて、届かぬ想い、はかない恋か・・・。


END

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