横浜マタタビバージョンのFUNI WORLD

おバカショート劇場。

FUNI WORLD (18)


第、561話 いよいよですよ  (2010.03.27)
日本では世紀の大イベントを前に国民が浮き足だっているに違いない。。
私も、そんな日本国民の幸福と健やかなる事を願っているぞよ。。
そして、全国民が一丸となって、この世紀の大イベントを見守っておくれ。。
時代の生き証人たちよ!血湧き肉躍るものたちよ!光の中で舞い踊り手を翳せ!
そうだよ!明日は、待ちに待った、私とアキラの初デートの日だよ!
お母さん、私を生んでくれてありがとう。。
お父さん、私を育ててくれてありがとう。。
今頃は多くの聖火ランナー達が、世界各国を駆け巡っているだろう。。
アメリカ合衆国の大統領からは、祝電が届く事だろう。。
ローマ法王からは、祝福の祈りが捧げられる事だろう。。
偉大な海外のミュージシャンたちは、皆、愛の歌を口遊み、
偉大な海外のデザイナーたちは、皆、幸福の輝きを写し出す。。
勇者たちよ、私とアキラの初デートを、心を合わせ祝すが良いぞよ。。
あぁ!世界の夢物語が私とアキラを中心に現実に動き出すのだわ!!!
いよいよですよ!全世界の皆様方!!!
・・・・・・あ、アキラから電話!!?
「悪りーなぁ、風邪で熱出て明日無理だわ」
コイツ、世界中からの私とアキラへの祝福を、どう処理しろと言うのよ!バカぁ!!!
お母さん、私はまだまだ小さな存在ですね。。
お父さん、私はいつでもあなたの娘ですから。。
そして、全世界の皆様!!! ホント、妄想で踊らせて申し訳ない m(*`ΘヱΘ´*)m
最後に、アキラめ!!! バーーーカぁ!!! バーーーカぁ!!! バーーーカぁ!!!
・・・・・・しゃーない、見舞いに行ってやるか。。``r(^^;*) ポリ


第、560話 ジワジワと大根おろしを添えました  (2010.03.20)
将棋なんて全く持って興味ゼロ!!!
・・だったのだけど、私。。
だって、私ったら調理部部長だし。。
ある日、何気に将棋部の部室を廊下からチラッと覗くと、何だか、暗ぁ〜w(゜_゜*;;)
私、なんで此奴らの部長とバトルせにゃあかんのだ???
事の発端は、将棋部と調理部をダブル顧問している摩訶不思議な先生の一言から。。
「おまえら、4月から、将棋部と(調理部と)部室が一つになるぞ!!!」
何故だ!美女子だらけの調理部とむさ苦しそうな男子のみの将棋部の部室が一つだってかぁ!
更にブーイングを跳ね返すように「無理が通れば道理がひっこむんだぞぉ!!!」
・・・・・・流石、本職、国語教師、判ってやがるんだ、『無理』って意味を;;
そして顧問は最後に言い放ちました→「調理部は将棋部の意見を元に日々のメニューを決めなさい」
そもそも、この顧問、将棋部は己の趣味で、調理部は、自分では全く料理も出来ないくせに、
美女子生徒の作った料理を味わいたいという身勝手な理由から、どさくさで顧問になった輩。。
でも、でも、顧問は自腹で調理部のユニホームを用意してくれているんだとか o(゜▽゜*)o
・・・・・・4月を待たずに配布して頂きましたよ!そう言う事ですか!そうですか!
・・メイド服でした。。・・猫耳カチューシャ付き。。・・調理部の新入部員は男子禁止らしいです。。
納得いかないので、調理部を代表して、この私が将棋部の部長と対戦し目出度く勝った暁には、
将棋部は調理部のために一生懸命将棋を指すという有り難い約束を・・・・・・ いらん!!!
そして、望みもしなかった、将棋部と調理部のバトルの日。。
将棋なんて全く持って興味ゼロ!!!
・・だったのだけど、私。。
・・・・・・将棋部の部長って、恐ろしくイケメン ヾ(*゜o゜*) ポッ
将棋部部長の最初の一手は、何やら『歩』と書かれた駒を動かしたので、
この私は、その『歩』の横に、さり気なくジワジワと大根おろしを添えました。。
将棋部部長は次の一手で、左手に大盛りご飯のお茶碗、右手に箸を持った。。
ならば私は、メインディッシュのブリの煮付けを将棋台の上に、どーーーん!!!
・・・・・・将棋部部長のお腹が鳴った!勝負あったか!!?
将棋部部員とエロ顧問は私たちに改めて、「調理部部員様方の味見係をさせて頂きます」
・・・・・・私たちの偉大さに漸く気付いたかぁ!この愚か者め <(*`^´*)>
でね、4月になり、将棋部に目出度く勝利した、調理部部員の私たちは・・・・・・
猫耳カチューシャにメイド服姿で将棋部部員の食事作ってます <(*^ ΦェΦ ^*)> あれぇ?!!
それにしても、何時も、調理室で将棋指してる此奴らって;;
まあいいか;; 将棋部の部長だけ、コロッケビックサイズ! _(^^*;)ゞ いやぁ
顧問曰く、「何時も先生のだけ、ちっこくねー?」(´っω<。) _(^^*;)ゞ 気のせいだろ


第、559話 桜の歌  (2010.03.13)
我が校の音楽同好会の、今現在、3年生の私が卒業したら唯一の部員、
啓蟄穴出太郎(仮名)くんが、放課後、アコギを掻き鳴らし、卒業生(私)を送る歌を作っていた。。
出太郎(仮名)「あ、先輩は卒業式の日まで聴いたらダメですよぉー」
私「ねえ、なんてタイトルなの?」
出太郎(仮名)「桜の歌」
私「バカねぇ!この世の中にこれ以上、『桜』の歌を増やしてどう責任が取れるのよぉ」
出太郎(仮名)「じゃ、『金木犀の歌』」
私「金木犀じゃ、季節が違うでしょ、ちょいと」
出太郎(仮名)「沈丁花の歌」
私「演歌かよ!」
出太郎(仮名)「すかんぽの歌」
私「春の花なら何でもありかっ!」
出太郎(仮名)「絵踏の歌」
私「キリシタン断絶??!」
出太郎(仮名)「チューリップの歌」
私「僕は汽車の中かいなぁー」♀_(`O`* )
出太郎(仮名)「北国の春」
私「あっぷるるー」
出太郎(仮名)「先輩、それは『味噌汁の』・・」
私「卒業する前に、一発殴ったろうか」d(・ε・*メ= )
出太郎(仮名)「卒業する先輩のために心を込めて作っているのになぁ;;」
私「私が卒業したら新1年生勧誘して正規音楽部に負けず同好会盛り上げろよぉ」
出太郎(仮名)「先輩がいたからこの音楽同好会に入ったんだけどなぁ」
私「『イエス、フォーリンラブ』って、先輩からかってコラー!」
そういえば、啓蟄穴出太郎(仮名)くんが入部した頃、コイツったら、
楽器弾けなかったし、歌も音程取れなかったし、ヒット曲すら全て知らなかったし。。
・・・・・・『先輩がいたからこの音楽同好会に入ったんだけどなぁ』・・、か。。
卒業の日、その頃、気象屋の開花予想によると、桜が程良く八部咲きだって!!?
出太郎(仮名)「桜の歌」
私「あっぷるるー」
出太郎(仮名)「あっぷるは『リンゴ』・・」
私「私が卒業したら、落研かよ」
出太郎(仮名)「じゃー、特別に既に出来あがっている1番を先輩のために歌ってあげるよ」
出太郎(仮名)作、『桜の歌』1番が流れる教室の窓の外、桜の木の蕾が膨らみ始めていた。。


第、558話 ぼくときみ  (2010.03.06)
ファッション誌 『nan-na 2005年版:破』
押し入れの中の古本がいい加減ウザく、重い腰を上げ片付けていたら、
男の一人暮らしの部屋から、うきうきるんるんした雑誌が一冊掘り起こされた。。
5年前、コンビニに立ち寄り買ってきたとか言って、帰る時に此処に忘れていったきり・・
別にぼくは、後生大事に仕舞い込んでいたわけではないのだけれど。。
ファッション誌 『nan-na 2005年版:破』
表紙のモデルは、今ではすっかり女優気取りの、あの頃はnan-naの専属モデルで、
巷の女の子からはそれはそれは生き神様として崇められていた、ファッションモデル。。
そして、その生き神様モデルのファッションが、空前の大ブームを引き起こした、時代。。
『鯛とゑびす様』の刺繍絵入りニットワンピースが女の子に流行していた、あの頃。。
カラスの等身大ぬいぐるみがひょっこり顔を出した、編み込みの赤いお買い物かごを左腕に下げ、
右腕で刺股を持ち、アメリカンハットを頭に被り、渦巻きほっぺメイクが流行していた、あの頃。。
首から巨大束子をぶら下げ、迷彩柄のパンツに、足にはぽっくり履きが流行していた、あの頃。。
生き神様は実は仕事以外では、激安カジュアルウエアばかり着ていたんだよ。。
ファッション誌 『nan-na 2005年版:破』
5年前、コンビニに立ち寄り買ってきたとか言って、帰る時に此処に忘れていったきり・・
今ではすっかり女優気取りの、あの頃はnan-naの専属モデルだった、きみ。。
突然のサヨナラと、あの頃の景色、、
5年前のファッション誌から溢れ出てきて止まらない、ぼくときみ、遠い記憶。。


第、557話 お鉢が回って来ましたよ  (2010.02.27)
卒業式、奴にコクった女どもが、奴からバッサバッサと一刀両断。。
戦意喪失者が続出し、「あんた、良かったらコクってきたらぁ」みたいな。。
わたしゃ、一言も『奴を好きだ』とか『いい男だわなー』とか、ほざいた試しがないぞ!
しかも、わたしに「・・コクってきたらぁ」とか言いながら戦意喪失者どもは、
「奴は女に興味がないのではないか」とか「ならば女っぽさが無いコイツは有利だったり」とか、
わたしをジロジロ横目で睨みながらこちらに聞こえるように会話を繰り広げている。。
わたしゃ、一言も『奴を好きだ』とか『いい男だわなー』とか、ほざいた試しがないぞ!
更に、わたしに「・・コクってきたらぁ」とか言いながら戦意喪失者どもは、
「奴は男に興味があるのではないか」とか「ならば女子トイレで悲鳴を上げられるコイツ・・」とか、
わたしをジロジロ横目で睨みながらこちらに聞こえるように会話を繰り広げている。。
まあ、女子なのに、女子トイレで悲鳴を上げられるのは慣れっこですし、、
警官呼ばれ、警官に身分証明書の提示を求められる事も慣れっこですし、、
婦人警官に、怒鳴られながらすっぽんぽんにされる事も慣れっこですし、、
・・その婦人警官の、「辛うじて女のようです」な、上司への報告の声も耳にする昨今;;
わたしゃ、一言も『奴を好きだ』とか『いい男だわなー』とか、ほざいた試しがないぞ!
戦意喪失者どもの「実験だから、サッサとコクって来いよ」な、温もりの無い声援に後押しされ、
気が付けば、わたしの目の前に奴が・・ そして、植え込みに隠れた戦意喪失者Aが・・
更に、体育館外壁と同じ色合いの布で身を隠す戦意喪失者BとC・・
土に掘った穴に身を隠す戦意喪失者D・・ サクラの木に化けている戦意喪失者E・・
F・G・H・I・J・K・L・M・N・O・P・Q・R・S・T・U・V・W・X・Y・Z・・
奴から「卒業してからも逢ってくれるよね、Boy」と、渡された第二ボタンと大量のカエルの干物。。
奴が去った後に飛んできた手裏剣が、胸ポケットに入れてあった奴の第二ボタンに刺さる。。
次々と襲ってくる戦意喪失者どもにカエルの干物を投げつけ、敵が怯んだ隙にわたしはドロン。。
わたしゃ、一言も『奴を好きだ』とか『いい男だわなー』とか、ほざいた試しがないぞ!
ずっと、胸に仕舞っておくはずだった気持ちだけど、もう、こりゃまた、引き返せないわ!!!
決して悟られてはいけない、わたしの性・・ 男と女のはずなのに、何故か禁断の愛・・
でも、ふたりの愛と平和のために、私は闘う ヾ(0ロ0*)ゞ...
『仮面ロイダー棚ぼた』第二話 「敵は地獄の戦意喪失者ども」
近日公開無しだけど、想像・妄想は、あなた方の自由さ ゞ(0ロ0*ゝ)☆\バキッ


第、556話 次の日は、雨  (2010.02.20)
このままふたり続いても、サヨナラをしても、癒やせない痛み。
雨雲を見上げながら、暮れゆく今日に流されてゆく。
次の日は、きっと雨・・・
このままじっと見詰めても、背を向け合っても、隠せない不安。
突風におびえながら、去りゆく今日に身を縮めてる。
次の日は、きっと雨・・・
このままふたり歩いても、歩みを止めても、終わらない明日。
幸せを求め合って、抱き締め合った、記憶を探る。
愛おしくてたまらない・・・


第、555話 こんなご趣味がありました  (2010.02.13)
付き合いだして、数ヶ月、、
デート帰りに突然、彼女がぼくの住むボロアパートに来ると言い出した。
・・・・・・ヤバい!!! パイプベッドの枕元に、アレが置いてあるんだ。
・・・・・・こりゃまた、見られたら恥ずかしいなぁ;;
そうだ!彼女には、『ちょっと散らかってるから待ってて』と、
ぼく一人で部屋に突入して、アレを押し入れの中に隠そう!!!
もしかしたら、彼女が押し入れを開けてしまう可能性も無きにしも非ず;;
よし!アレの上に、ぼくのお宝の、あっはんうっふんなDVD、
【限界Tバック爆乳娘が虫料理を喰らい尽くす】とか、
【訳ありミスキャンパス、ダンボール製造会社で一日工場長】とか、
【若奥様が女同士で息を荒げてガチ腕相撲】とか、・・を、アレの上に乗せて隠そう!
・・・・・・でも、それだけではちょいとまだ心配だなー;;
よし!更にぼくのお宝の、あっはんうっふんなDVDの上に、
ぼくのお宝の、メイド服がぎっしり詰まった衣装ケース・・を、アレの上に乗せて隠そう!
・・・・・・でも、それだけではちょいとまだ心配だなー;;
よし!更にぼくのお宝の、メイド服がぎっしり詰まった衣装ケースの上に、
ぼくのお宝の、三角木馬と鉄球の足枷を乗せてしまえ!!!
・・・・・・やっぱりアレは、彼女に見られたら恥ずかしいからなぁ;;
まだ、ぼくが彼女に告る前に、どうしても、彼女のワンショットが欲しくって、
バイト先のお好み焼き屋で、「新しいデジカメを買ったからテスト撮りさせて」とか言って、
取り敢えずは、店長や、むさ苦しいバイト仲間の野郎どもや、パートタイマーのおばちゃんや、
業務用お好み焼き粉を運んできた顔見知りの宅配のあんちゃんを捕まえて適当に撮ったりして、
「どうせすぐ、解除するけどなぁー」なんて言ったりして、
その序での振りして彼女に、心臓バクバクさせながら、「・・テスト撮りさせて」って・・
・・・・・・やっぱりアレは、彼女に見られたら恥ずかしいからなぁ;;;
彼女が始めて、ぼくのためだけに、飛び切りの笑顔を見せてくれた、
ぼくの大切な大切な大切な、枕元に置いてある写真立てに収まった、彼女の一枚の写真。


第、554話 傘が不思議と役に立つ  (2010.02.06)
例えば雨の日に、コロコロと風に飛ばされているポリバケツ。
貴男(あなた)が歩道橋から街を眺めると、職場で男性陣憧れの女性が雨宿り、
おしゃれ着を濡らしてはなるものかと、涙目でポリバケツに潜り込み、
ゴミキャップを家にするヤドカリの如く歩き出そうとしている。
・・そんなとき、貴男(あなた)が差し出す一本の傘。
例えば雨の日の、工事現場のカラーコーンと呼ばれる赤い三角柱。
貴女(あなた)が車でそこを通り掛かると、職場で女性陣憧れの男性が雨宿り、
ヘアスタイルが崩れぬようにと、両手でカラーコーンを頭の上に翳し、
蠢く巨大アポロチョコの如く歩き出そうとしている。
・・そんなとき、颯爽と差し出す一本の傘。
自動開閉ワンタッチボタンでオープン・ザ・傘!街行く人々は足を止めて拍手喝采。
開いた傘にカラーコーンやポリバケツを乗せ、いつもより余計に回しております。
野良猫を数秒傘で隠し、傘を持ち上げると首輪を付けたどこかの飼い猫に早変わり。
最後は舞踊衣裳に早き替え!傘を使って日本舞踊を惜しみもなく披露。
わちゃわちゃと賑やかに投げ銭が飛び交い、こりゃまた目出度く狂喜乱舞!
ストリートライブを終えたら警官が来る前に、彼・彼女とその場を立ち去るのがポイント。
持っていると傘が不思議と役に立つ、例えば雨の日のさり気ないラプソディー。


第、553話 キモチ  (2010.01.30)
ボクは今、キミの笑顔を見ている。
ボクは今、キミの笑顔を描いている。
「だって幸せな事が沢山あったんだよ」って、
辛い事を乗り越えてきたキミが、沢山、笑っている。
キミの笑顔をキミのために描き写している。
キミの笑顔をボクのために描き写している。
キミが笑えば、ボクもいつだって笑っている。


第、552話 ちょっと微笑いそうになった  (2010.01.23)
小さな町の駅。
半分埋められたタイヤとブランコとベンチがあるだけの公園を抜けて、
30分後にやって来る電車をこの駅で待つ。
生まれて育った町を『さよなら』の気持ちで見回している。
小さな町の駅。
この町で一番背の高い、山の上の電波塔。
錆び付いた「○○レコード店」と辛うじて判る看板の、駅前のCD屋さん。
昔っから、顔に大きなホクロがある薬局のカエルさん。
そして、
プラットホームでぐるっと後ろを振り向いたら、カエルさんがいた。
顔に大きなホクロがあるカエルのお面。
「見送りは来るなって言っておいたのに来たんだね、カエルさん」
「おまえが子供の頃、いたずら書きしたこのホクロ、消してけよー」
中身は、顔に大きなホクロがあるカエルさんの薬局の一人息子。
「あら、あなたはあの時にこにこ笑っていたんじゃない、カエルさん」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・何時の間に30分も過ぎちゃったんだろうね。
電車に乗り込み、カエルさんに手を振った。
カエルさんも手を振ってくれている。
笑顔のカエルさんに、ちょっと微笑いそうになった。
電車は正確にドアを閉めて走り出す。
映画の映像みたいに、電車を追い掛けプラットホームを走る笑顔のカエルさん。
「ずるいんだ!自分だけお面被ってさ」
やがて電車から海が見えて来る。
十代だった頃、薬局のバカ息子とプチ駆け落ちをした、海。
その後、電車で二人、どこかに無計画なまま行こうとしたけれど・・
結局は日帰りで二人ともそれぞれ家に『ただいまぁー』って帰ったから、
誰もがこの日、二人が駆け落ちまで企てた事など、未だ知らないだろう。
小さな町の駅。
プラットホームの端に佇む、小さく滲んだカエルさん。
こんなシチュエーションなのに、また、ちょっと微笑いそうになった。


第、551話 ケーキを食べる口実  (2010.01.16)
彼に小声でこっそりと「好きです」って告げた。
すると彼は「それ、ケーキを食べる口実だろ」って言い返した。
ショートケーキとチョコレートケーキ、チーズケーキ、モンブラン、マドレーヌ、etc.
とあるケーキバイキングのお店で、テーブルに並べつくしたあたしのケーキ。
「いいえ、今日は告白するための、ケーキバイキングですけど・・」
仕事仲間の彼とは、たまに街でばったり出会い、お茶をする機会が今まで何度かあった。
本日は、あたしは家を出る彼を尾行して、で、たまたま街でばったり出会ういつもの手!
「なんかヤバいよ・・」
「それぞれワンホール分は食べた後の更にワンホール分を口にしながらの告白は無礼だっていうの?」
「この店の従業員がお互いシフトが休みの日に落ち合ってのバイキング潰しのショットかよ〜」
「だって、従業員の特別割引券、この店潰れないうちに使っちゃった方がお得じゃないのよ」
「きみみたいな客が来るからこの店大赤字になるんだよー」
「あんたはケーキ食べられないんだから、御破算でしょ!」
「さっき、店長がこっそり僕に『貴様ら、大した度胸だ』って耳打ちしたんだよ〜」
「あら、やだぁ、店長さんったら、あたしにほの字で焼いてるのよ、きっと」
「・・飲み放題の紅茶を携帯ポットに入れてんじゃないよ、ちょいと」
「ところで、あんたのこと、好きなんだけど・・」
「だからなんでこのシチュエーションでそんなこと言い出せるんだよ」
「だって、従業員の特別割引券使えるうちに告白しちゃった方がお得じゃないのよ」
「???・・・・・・・・この店で同僚のうちって意味か?」
「店長ぅーー!!! フルーツタルトはもうこれで品切れなの???」
「・・きみがほとんど一人で喰っちまったんだよ、ちょいと」
「本当にこの店はゆったりと寛げるいい店だわぁ!ねえ、店長さんったら」
「店長、指パキパキした! 今、店長が僕の耳の側で指パキパキ鳴らしていった!」
「ちょっとぉー! 今、あんたは三国一の花嫁に相応しい女性と向き合っているのよー!!!」
「・・・・・・江戸初期か」
「少しはウキウキとケーキ食べてごらんなさいよ」
「僕は甘いものダメだから、あのぉ〜」
「あたしを振るような事言ったらテーブルに多量のケーキ乗っけてここから去るわよ」
「罰金取られるじゃねーかよぉーー;; ちょいとぉーー;;」
「そろそろバイキング制限時間1時間ね!どうなの? 告白の答え???」
「・・ほ、ほ、ほ、」
「あたしにほの字か!!!」
「・・・・・・江戸初期か」
「何か言った??!」
「・・ほ、ほ、ほ、保留」
「しゃーない!」
「あ、じゃあ今日はこれで解散って事で・・・・・・」
「今からこの店の系列店の寿司食べ放題に着いていってやるから、答えを用意しておくのよ」
「それって、寿司を食べる口実だろ」
穴子にアワビ、大トロ炙り、サーモン、ハマチ、たこカルパッチョ、etc.
とある寿司食べ放題のお店で、テーブルに並べつくしたあたしのお寿司。
「いいえ、今日は告白の返事を聞くための、寿司食べ放題ですけど・・」
仕事仲間の彼とは、たまたま街でばったり出会い・・・・・・
「・・いい加減にしろ;;」
「だって、系列店の特別割引券、この店潰れないうちに使っちゃった方がお得じゃないのよ」
「きみみたいな客が来るからこの店大赤字になるんだよー」
「あんたは生モノ食べられないんだから、御破算でしょ!」
「店長、指パキパキした!」
「三国一の花嫁に相応しい女性と向き合っているのよー!!!」
「・・・・・・江戸初期か」ちゃんちゃん♪。゜゛
激突亭アディ男ギル子でした。m(〃. .〃)m m(*_ _*)m どうもありがとうございました。
今日もストリート漫才のお客さんは相変わらず犬を連れた爺さん一人だけだった・・・・・・
「いっそのこと、イメージチェンジでこのコンビ、今後、夫婦漫才に変えないかい??!」
「本気??! もし本気だったら、実家がケーキ屋のアディ男にギル子は嫁入りしてあげる」
「それ、ケーキを食べる口実だろ」ちゃんちゃん♪。゜゛
激突亭アディ男ギル子でした。m(〃. .〃)m m(*_ _*)m もういいって。
ρ(゜、w、゜゛)o-----⊆^U)┬┬~.. m(。_ 。;〃)m m(。_。*)m 今言った事ってネタ??!


第、550話 星の明かりだけ  (2010.01.09)
空気が澄んでるから星が近い。
二階の僕の部屋の窓を開けると、凍てつくほどの冬の夜風。
手を伸ばせば届きそうな、キラキラと輝く無数の光。
僕は、ベッドの足に命綱をしっかり結び、二階の窓から身を乗り出し、
手には伸ばしきったポインターペン! あと少し! あと少し!
が、しかし、命綱が岩に擦れて今にも切れかかっている。 窓の下は巨大な滝壺だ!
滝の水しぶきでびしょ濡れになりながら、剥き出した木の根っこにしがみつく。 間一髪!
命綱がブツリ!木の根っこにぶら下がったままの僕に手を差し出してくれる勇士がいる。
我が家の愛犬、アナトリアン・シェパードの『シュワちゃん』だ!!!
「キャンキャンキャン」ヾU^ェ^U
・・もとへ、ポメラニアンの『スフレちゃん』だ。
・・・・・・全ては夢だったのか。
こりゃあぶない!寒さで凍死するところだった;;
慌てて窓を閉めようとして、夜空に目を向ける。
空気が澄んでるから星が近い。
二階の僕の部屋の開け放たれた窓からは、凍てつくほどの冬の夜風。
手を伸ばせば届きそうな、キラキラと輝く無数の光。
星と星を結んでいくと、君の顔が・・・・・・;; ・・もとへ、
強引に星と星を結んでいくと、君の顔が浮かんでくる。
ポメラニアンの『スフレちゃん』の散歩中に良く出会う、
70%ほどペンギンに見える何かを連れて歩いてくる、可愛いあの娘(こ)。
そろそろ窓を閉めようとした時、突然、家の外から窓枠を握り締める女性の手。
爪に、70%ほどペンギンに見える何かのオリジナルキャラクターネイルアートをしている。
「き、君は、ポメラニアンの『スフレちゃん』の散歩中に良く出会う・・」
いつの間にか僕の部屋に、70%ほどペンギンに見える何かを連れた可愛いあの娘(こ)が・・
手を伸ばせば届きそうな、キラキラと輝く目映い瞳。
だが、君は、二階の僕の部屋の窓から闇の中へと吸い込まれて遠くへ消えかかる。
僕は、ベッドの足に命綱をしっかり結び、二階の窓から身を乗り出し、
手に握りしは、初代猫ニャンぼー! あと少し! あと少し!
が、しかし、命綱が岩に擦れて今にも切れかかっている。 窓の下は巨大な滝壺だ!
「キャンキャンキャン」ヾU゜ェ゜;U
・・・・・・全ては夢だったのか。
おいおいヾU||||ェ ̄;U :″;`;:″;`;・o(ロ≦〃) くしゅん!!!
空気が澄んでるから星が近い。
二階の僕の部屋の窓を開けると、凍てつくほどの冬の夜風。
手を伸ばせば届きそうな、キラキラと輝く無数の光。
星の明かりが、こんなにも僕に近い、AM2:00過ぎの夜の冬の空。
今、あの娘(こ)は、暖かくして、安らかな寝息をたてて寝ているのだろうか。
星の明かりだけ、こんなにも僕に近い、AM2:00過ぎの夜の冬の空。
星の明かりだけ・・・・・・
・・・・・・おいおい、ワシはヾU||||ェ ̄;;A`` 「キャンキャン」


第、549話 1月1日の奇跡  (2010.01.01)
1月1日、誰もが知る、今日は、午前12時に飛び上がる人が多い日です。
加藤久美子もこの日、午前12時の時報と共に飛び上がってみました。
ー今日は、2010年1月1日の寒い夜。
なんてことはない、一秒も必要とされない出来事!・・だったはずでした?
実際、久美子は無事地上に着地をして? そして、通常の日常生活の波に揺られたのでした。
久美子が某動画サイト内でサーフィンし、夜更かしまみれしていたその時、
とある動画に自分を発見したのです。でも、第三者として映り込んでいた訳ではありません。
場所はどこかの海岸だろう。映っているのは久美子ひとり。 顔だってぼかしが入っている。
でも、何より、久美子のバッグにぶら下がっている、久美子のママ手作りの久美子ちゃん人形。
そして、動画を撮っている、声からして男の人。 「洋平」と親しみを込め呼び捨てにする久美子。
・・・・・・知らない??? 『洋平』なんて人、知り得る限り、周りにいない。
久美子は気持ち悪いので、ブラウザを閉じたその瞬間、その動画の投稿日が一瞬目に入った。
その動画の投稿日は、2015年1月1日。・・だった。・・気がする。
パソコンをシャットダウンする前にメールをチェックすると、おかしなメールが届いていた。
・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。
件名 久美子へ 差出人 洋平 送信日時 2037年1月1日
はじめまして。に、なるんだね。
実は、この時代の久美子は去年の暮れから医療ミスで脳死状態なんだ。
だから、・・・君は今年は、飛び上がれなかった。
僕が君にプローポーズした日、君は僕にこう言ったんだよ。
「わたしに何かあった時には、今のわたしのメールアドレスにメールするのよ」
何十年も、普段から冗談が好きな君の悪ふざけとしか思ってなかった。
プローポーズした日に悪ふざけ? でも君は本人だから、納得できると思うけどさ。
君に言っておきたかった言葉があったから・・
もし、このメールが本当に君に届くのなら・・
久美子、僕は君を永遠に愛しているよ。
・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。
・・・・・・い・た・ず・ら・よね??!
・・・・・・あたらしい、スパムメールの類とか??!
・・・・・・でも、『君は今年は、飛び上がれなかった。』って。
家族と離れて一人暮らしを始めてからの久美子のみが知り得るこの習慣。
いや、人類の大半が飛んでいる事は予想されるものの、断言されちゃうと、このメールって真実?
兎にも角にも、久美子は洋平のメールに、思い切って返信することにした。
久美子が幼い頃から病気や怪我をした時にママに歌ってもらってた童歌をMP3にして添付して。
今は無き、久美子のママのおまじない。
次の日には、久美子はまた、洋平のメールアドレスにメールを送ってみた。
2037年の自分と、まだ知らぬ人でありながら、洋平のことがとても気になった。
でも、その日から、洋平のメールアドレスに返信が送られる事はなかった。
検索するも、洋平のメールアドレスのプロバイダらしき”○○net.co.jp”など、存在しなかった。
1月1日、今日は、午前12時に飛び上がる人が多い日です。
ー今日は、2015年1月1日の寒い夜。
岩崎洋平と岩崎久美子もこの日、午前12時の時報と共に飛び上がってみました。
「え、やっぱり新婚旅行のこの動画、一部アップするの???」
「やっぱりってなんだよぉ!相変わらず君は時々何もかも知っているような事を言うよなぁ」
「えっ;; あっ;; でも、こんな個人的な動画、世界に配信してどうするのよ」
「僕の奥さんを世界に紹介したいだけさ」
「いやよ!せめて顔にはぼかしを入れてよ」
「それじゃ、意味ないじゃないか!」
「だったら、今すぐ離婚してよ!それもイヤなら別居よ!」
「・・・・・・わかったよぉー」
洋平が某動画サイトに親ばかならぬ新婚亭主のろけ動画?をアップを済ませ一応御満悦。
自分のパソコンをシャットダウンさせ、すこぶる大あくびを連打。
久美子は自分のパソコンをシャットダウンする前にメールをチェック。
・・・・・・洋平からメールが届いていた。
・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。
件名 久美子へ 差出人 洋平 送信日時 2038年1月1日
君に送ってもらった童歌を丸一年、脳死の久美子に毎日聴かせていた。
聴かせてあげると何時だって、寝ている久美子の表情が穏やかになった気がした。
2038年1月1日、久美子は目を覚ましました。
そして目を覚ました久美子が起き抜けに言ったんだよ。
「ちゃんと、きちんと、お礼のメールを送るのよ」ってね。
相変わらず久美子は、何もかも知っているような事を言うんだ。
・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。
パソコンをシャットダウンすると、久美子はもう一度大きくジャンプした。
久美子はこの時やっと、無事地上に着地したのかも知れません。
あくびをしていた洋平は、いきなりのドスンという音に、目をきょろきょろさせていた。
1月1日、今日は、午前12時に飛び上がる人が多い日。


第、548話 12月24日の奇跡  (2009.12.24)
12月24日、誰もが知る、今日は、1年で最後の削り節の日。
家庭で手軽に鰹ダシが取れる削り節パックはとても重宝されてます。
ー今日は、2009年12月24日の寒い夜。
40歳を過ぎた何処ぞの独身おやじが、削り節パックで夕食のうどんを拵えています。
「タマゴしか入れないの?お野菜もいろいろと入れなくちゃ」
独身おやじこと、和夫は、その声に振り返った。
「やっぱり、典子なんだね。ずっと、待っていたよ、典子」
ー今日は、1995年12月24日の寒い朝。
「典子が、あなたへと、闘病中の数日間、ずっとベットで書いていた日記です」
典子の母親が、和夫にその日記を手渡す。
「まさか、風邪引いて、それを誤診され手術され医療ミスで一ヵ月後に死んでしまうなんて・・」
泣き崩れそうな典子の母親を支えながら、和夫は、何時か見た幻に縋ろうと決めていた。
1994年12月24日の寒い夜。
和夫が典子と削り節パックを買いに街に出ていた時、知らない酔っぱらいサラリーマンに、
「あたたたたたたたたたたたたたたた! 秘孔を突いた!お前はもう死んでいる」
と、遊ばれ、なんのダメージもなくキョトンとしている和夫に、典子が、
「和夫さ〜〜〜ん、死んじゃ、いやぁーーーーー!!!!!!」と、泣き崩れ事件発生。
そんな紀子に和夫は、「確かに秘孔を突かれたかな?僕は今さっき一瞬、年を取った僕が、
まだ若い君をリアルに抱き締めていた温もりが、まだこの胸に残っているんだよ」
それを聞いた紀子が「・・おつむ、大丈夫? 死んじゃ、いやぁーーーーー!!!!!!」と、
再び、怒濤の大声で泣き崩れたのは、言うまでもないでしょう。
ー今日は、1995年12月24日の寒い夜。
和夫は、紀子が残していった日記を、何度もなんども読み返していた。
ー今日は、2009年12月24日の寒い夜。
「やっぱり、典子なんだね。ずっと、待っていたよ、典子」
その一瞬で、和夫の腕の中から、典子の姿は消えてしまった。
そう、今日は、2009年12月24日の寒い夜。
和夫は、引き出しから、紀子が残していった日記と、カッターナイフを取り出した。
「今日の日を信じて待っていて本当に良かったよ、紀子。もう思い残す事は何もないよ」
和夫は、何気に紀子が残していった日記を最初から読み直し始めた。
・・・・・・最後のページ、紀子の日記が、確かに、ひとつ、多い。
・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。
1995年12月24日 AM0:05
夢を見ていたんだと思う。
ちょっと、おじさんになってた和夫さんに会った。
抱き締められた。
余りにリアルな夢だから、まだ、和夫さんの温もりがこの胸に残っている。
和夫さんは、秘孔を突かれたのにずっと生きていたんだよ。
よし!夢じゃないって、信じてみることにしよう。
長生きしてね!紀子が誰よりも好きな、和夫さん。
さあ、寝ないと看護婦さんに、怒られちゃう。
・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。・。・。★・゜・。・゜。・。・゜☆・。・。
和夫は、引き出しに、紀子が残していった日記と、カッターナイフを仕舞うと、
もうすっかり伸びてしまったうどんに野菜ふりかけを振り掛けて、
「いただきます」と手を合わせ、食べ始めた。
12月24日、今日は、1年で最後の、削り節の日。


第、547話 雪が降った朝  (2009.12.19)
朝起きたら、外は雪が積もっていた。
去年の冬の朝を思い出した。
あの日も、今日のような雪景色だった。
あたしが『豆柴』と騙されて育てて巨大化した柴犬を雪の日の散歩に連れ出そうとした朝。
犬は喜び庭駈けまわらずに抵抗するうちの寒がり犬を、幼児へのやり手水の如くに、
後ろ足を抱え上げてお尻をぺったんぺったんと積もった雪に押し付けながら歩く。
すると犬「わかりました!散歩に行かせて頂きますワン」と、観念してあたしを見上げる。
雪道を歩いていくと、向こうから亀が人間を連れて歩いて来た。
ありゃ、ケヅメリクガメというデッカい亀だ。
そこで一句 o(*^^* )o--------⊆^U)┬┬~..
《 冬の朝 ケヅメリクガメ 雪景色 》
・・・・・・変だろ!!! 何か変だろ!!!
すると、その亀に連れられた人間が顔を上げ「寒いですね」とあたしにニッコリ!
「まあ、かわいい亀ちゃんですね」と、亀を散歩させていた美青年に、あたしもニッコリ!
「最近、此処に引っ越してきたんです」と、笑顔がすてきな美青年。
「まあ、それはそれは」と、少なくてもこの町内では決して敵知らずな美少女こと、あたし。
朝起きたら、外は雪が積もっていた。
去年の冬の朝を思い出した。
あの日も、今日のような雪景色だった。
ひとめ会ったその日から、恋の花咲くこともあるのさ。
・・見つめ合った、あたしと美青年。 ・・引かれ合った、犬と亀。
・・抱き締めあった、あたしと美青年。 ・・もう誰にも止められない、犬と亀。
・・永遠を誓った、あたしと美青年。 ・・未来を信じた、犬と亀。
朝起きたら、外は雪が積もっていた。
去年の冬の朝を思い出した。
あの日も、今日のような雪景色だった。
今年も『豆柴』と騙されて育てて巨大化した柴犬を雪の日の散歩に連れ出そうとする。
犬は喜び庭駈けまわらずに抵抗するうちの寒がり犬を、幼児へのやり手水の如くに、
後ろ足を抱え上げてお尻をぺったんぺったんと積もった雪に押し付けながら歩く。
「わかりました!散歩に行かせて頂きますワン」
雪は暖かくなれば溶けてしまって、何れ、元の景色に戻してしまう。
・・反対された、あたしと美青年の恋。 ・・反対された、犬と亀の恋。
・・駆け落ちを食い止められた、あたしと美青年。 ・・駅から連れ戻された、犬と亀。
・・引き裂かれた、あたしと美青年。 ・・引き裂かれた、犬と亀。
引き裂いたのは、誰でもない。 勇気が足りなかった、美少女と美青年と犬と亀さ!!!
雪道を歩いていくと、向こうから亀が人間を連れて歩いて来た。
遠くへ引っ越してしまったはずの美青年が亀を抱え駆け寄って来た。
「この雪が溶けても、もうこの恋は決して溶かしはしないさ」と、美青年と亀。
「どうか、あたしをさらって」と、美少女と犬。
・・・・・・やがて、本当の春が二人と二匹に、そよかぜと共に訪れることだろう。


第、546話 あれこれしなくちゃいけない  (2009.12.12)
デートって何だっけ??!
・・奴から不意にメールが届く。。
あぅ、デートの事じゃん!!!
今日じゃん!!! 今じゃん!!! 遅刻じゃん!!!
・・そうだ (o〃^-')b !
ー あなたの大好きなお姫様は只今記憶を失っています。
あと出来れば1時間ほどお待ち下さいませ ー
・・メール送信。完了。
さて、とにかくデートの支度をしつつ、あたしがどのような状況で記憶が無くなり;;
・・いや、どうせなら、記憶を消され;; ・・まあ、どうせなら、記憶を抹殺され、
・・この際、世界征服を企む悪の集団に拉致された、美少女戦士セーラーガニメデ。。
魔王、エウロパが釣り上げた魚を生で食べて食あたり! 板状陀羅尼助を丸囓りするも、
余りの苦さに気を失い、気が付くと我が家のベットの中、その時、王子様のメールが届く。。
・・完璧ぃ (o〃^-')b !
わあーーー!!! 言い訳考えてて、既に30分経過してる!!!
1時間じゃ間に合う訳がないので、その言い訳を考える。。
微かな記憶を手探りで掻き集める美少女戦士セーラーガニメデに休息など有り得なかった。。
魔王、エウロパの使いが、食べた魚の代金の請求書を持って現れたのだ!!!
しかし、その魚で食あたりを喰らったガニメデには代金を支払う気持ちなど更々ない!!!
何より、ガニメデには大雑把にしかその時の記憶がない!!!
そんな法的トラブルに巻き込まれそうになったガニメデだけど、実はある秘策があった。。
カリスト王国からの以前からの無理強いなセーラー戦士ライブイベントをこの際承諾する変わりに、
魔王、エウロパのご機嫌を適当に取って置いて頂くという相利共生作戦であった。。
わあーーー!!! 言い訳考えてて、既に1時間30分経過してる!!!
・・・・・・その言い訳を考える。。
カリスト王国でのライブイベントは大成功。。 魔王、エウロパとも無事和解し合えた。。
だが、そんな平穏な暮らしが美少女戦士セーラーガニメデに長く続く訳がなかった。。
≪第38話 新たな敵!土星からの使者、北欧群大佐≫
ある日の朝、美少女戦士セーラーガニメデにメールが届くぅ etc. ??!
・・・・・・って、、あっ!3時間経過してる!!! デート遅刻じゃん!!!
今からシャワー浴びて化粧して着て行く服選んでリボン選んで靴選んで;;
こりゃまたあれこれしなくちゃいけない!!!!!!
まずは、言い訳から考えなくてはどうにもならぬ  o(〃´ω`〃)o
≪第52話 木霊する鼓動と、カッパの皿を潤わすみぞれ雨≫
・・・・・・あっ!12時間経過してる!!! デート遅刻じゃん!!!
そんな美少女戦士セーラーガニメデに、怒りのメールが届く。。(/;ー\〃)


第、545話 見上げる月  (2009.12.04)
そらは日暮れてゆくばかりで、朝までの夢の扉を照らしてる、
月の明かりは翳っているから、軒先の僕までしょんぼりしていた。
君が「距離を置いてみたい」って、真剣な目で僕を見て語った。
愛の綴りは滲んでいたのに、僕から言えなくて瞳を伏せてきた。
無数に撒かれた落ち葉の音。白い息を吐きながら走ってた。
月を見上げる僕の顔は、ずっとずっと、後悔ばかり月に映してきた。
・・どこかの町で、僕が知らない君の物語が、月の明かりに毎日綴られてゆく。
風は、君の髪の香りを此処までは運んではくれないよね。
「もういないよ」と自分に呟く。軒先の僕には見慣れた家並み。
あの日「ふたりで出掛けよう」って丸く囲んだカレンダーの日付と、
引き出しの中、チケットが二枚。12月の青い、君へのイヤリング。
電車の窓から見える月も、帰り道で坂道を登る時に見える月も、
月を見上げる君の顔は、何時もいつも笑顔だって、きっと語っている。
・・いつもの町で、君が知らない僕の物語は、月の明かりに斯くして脅えるばかり。


第、544話 サヨナラ  (2009.11.27)
あまり可愛くないあたしを消し去るため、今までは、
時折、溢ふれ出る涙を、こっそり拭ってきた。
家族にも、友達にも、知られていない心の中で、
深く染み透った記憶に、サヨナラを告げた。
何かうれしい事に、出会えればいいなって、
何かうれしい気持ちに、変われればいいなって、
・・今、やっと、そう思えるようになった。
『笑顔が好きだ』って、いつだって囁かれ、あの頃は、
自然に、あのひとの側では、絶やさず微笑っていた。
泣き顔で見たラストシーン、繰り返される心の中で、
深く染み透った記憶に、サヨナラを言えた。
何かうれしい事に、出会えればいいなって、
何かうれしい気持ちに、変われればいいなって、
・・今、また、少し、微笑えるようになった。


第、543話 訳ありアウトレット (2009.11.20)
〔訳ありこわれクラリネットがドラム缶にドッサリ入って信じられない価格〕
〔足がもげてしまったカニと足がちょんぎれた産業用ロボットのセットを見逃すな〕
〔エチゼンクラゲの被害で商品価値を下げてしまった魚介類にエチゼンクラゲがもれなく〕
「美沙子、訳ありアウトレットって、今、人気あるのね」
「でも、つい、勢いで買ってしまうのよね」
「美沙子も、勢いでいいから完売目指せ!」
「あら、あたしが訳ありアウトレットだって?!!」
「そのとおりよね」
「・・でもそれって中身は高級品って意味よね??!」
「・・見た目は劣るけど、って意味よ」
「どうせ賞味期限だってギリギリですけど!!!」
「美沙子って一度、返品されてるし・・」
「どうせ化粧厚塗りの偽造よ!!!」
「カビも生えてるわ」
「・・・・・・シミよ!!!」
「で、美沙子、うちのお兄ちゃんのこと、どう思う???」
「・・・・・・はあぁ??!」
「・・まあ、うちのお兄ちゃんも訳ありアウトレッ・・・」
「・・あの、中身は極めて高級品な、あの凛々しい、ええ???」
「お兄ちゃんたら、こないだちょっと美沙子に会ってからどうやら美沙子に気があるわね」
「でも、あたしったら規格外だから;;」
「戸籍変更でもう認められてるんだから気にしなくたっていいんじゃないの」
「それで、一度、返品されたんだし・・・・・・」
「大丈夫よ、見た目は立派な年増女だから」
「・・じゃ、お取り寄せしちゃおうかな」
「はい、美沙子、お兄ちゃんの携帯番号」
「じゃ、掛けるね! あ、お兄ちゃんの名前まだ聞いてなかったよね」
「あ!お兄ちゃんの名前ね;;『友里子』よ」
「・・・・・・・・・・・・キャンセル出来ますか?!!」
「じゃ、ネットで買った足もげガニと一緒に届いたこわれ産業用ロボットを貰ってくれるぅ???」
「ダメよ!こわれクラリネッ入りのドラム缶とエチゼンクラゲの水槽に、部屋占領されてるんだもの」


第、542話 いい場所見つけたね。。 (2009.11.14)
ポジティブで行きたいと思ってる。。
でも、誤魔化したまま、自分を偽り続けて、
気が付いたら、足は一歩も動いていなかったなんて、
何日も、何日も、足は一歩も動いていなかったなんて、
そんなこと、イヤだから、本当の前向きな思いが見つかるまでは、
膝を抱えたまま、じっと動かないで、立ち向かえる日を探す。。
ポジティブでありたいと願ってた。。
でも、空元気では、自分を見詰められなくて、
気が付いたら、泣いてた事に気付いていなかったなんて、
何日も、何日も、泣いてた事に気付いていなかったなんて、
そんなこと、イヤだから、本当の前向きな思いが見つかるまでは、
膝を抱えたまま、じっと動かないで、歩き始める日を探す。。
いつも、『ネガティブ』に、安心してもたれ掛かれる、
いつも、『ネガティブ』に、信頼して育ててもらえる、
自分なりの呼吸が出来る、いい場所を探してきた。。
・・いい場所見つけたね。。 ・・ここなら優しいね。。
やがて立ち上がったら、その時は決して慌てずに、
ゆっくり背伸びして、自分を愛する事から始めよう。。


第、541話 新世紀エヴァンバビバノンノ (2009.11.06)
女はある日、突然、男に捨てられた。。
上司の娘との縁談話に浮かれた男からのまさかの、サヨナラ。。
ならば、長く伸ばした髪をバッサリと切ってスッキリ男との決別を・・
・・いや、年末間近、時期的に寒いから中止..( o*。_。)o
でも、それではどうも納得がいかないって事で。。
女は男に電話して、何だかんだと男を誘き寄せる事に決定。。
「おまえが探し続けていた新世紀エヴァンバビバノンノ3号機の限定湯上がりフィギュア、
あたいがある筋から手に入れて人質にしたぞぉ!丑三つ時に五寸釘でも打ち込んでやろうかぁ」
「おい、話せばわかる!おれがすぐ行くから人質には手を出さないと約束をしろ」
「貴様こそ、警察へ通報しやがったら、エヴァンバビバノンノ3号機フィギュアを改造して、
IC埋め込んで、早朝、『コケコッコー』って、大出力・高音質で鳴かすぞぉ!!!」
「そ、それだけは止せ!!!警察へは通報していない!!! 今すぐ行くから」
《男が失恋女の家のチャイムを鳴らす》
《静寂を切り裂く、失恋女が振り回さす電動バリカンの音》
《男の陰に隠れていた捜査員を突き飛ばし、失恋女、男を拉致》
《失恋女の家を警察機動隊が取り囲む》
《根気強く、失恋女への説得に当たる特殊捜査班》
《だが指揮官の強引な縦の命令により、機動隊突入》
《警察の失態による犯人取逃がし》
《犠牲者、坊主頭一名・フィギュア器物破損》
《『多分私は3人目だと思うから』の言葉を残し、姿を消した失恋女》
ー 坊主にされてアイを叫んだけもの ー
男は、上司の娘との結婚は端から偽りだった事に、我ながら苦笑いする日々を過ごした。。
男は、音をうねらし電動バリカンを振り回す女の姿に心を支配されながら毎日を生きた。。
そして、男は毎朝、コケコッコーって鳴くエヴァンバビバノンノ3号機フィギュアに、
それは心地よく起こされ、妻と子供の朝食を作り、そして会社に出勤するのであった。。
それはあたかも、湯気が天井からつめてぇなのシナリオ通り、一人の闘う戦士の姿であった。。


第、540話 おらが村のハロぅィンパーティ (2009.11.01)
「ウメ子ぉ、おめー、ホントにこの村を出て行くんかぁー」
「あったりめぇだぁ、オラの青春の受け皿は最早都会でなきゃ駄目だぁ」
「都会に行ったって言葉の壁に苦しめられるっぺ」
「そんなこつ、都会人に揉まれていけば、言葉の壁を乗り越えることが出来るっちゃ」
「ウメ子ぉ、この村の何が不満だっちゃぁ」
「田吾作よぉ、この村にはハロぅィンパーティがなかんべよ〜」
「ハ、ハロぅィンパーティって言ったら、海の向こうの児童と狸が稚児髷姿で輪になって、
巨大なくり抜きカボチャを、手に持った沢庵で諦念の笑みを浮かべながらペッタペタと叩き、
その回りを年頃の男女が夜更けまで例え膝が笑おうがダンシングするっちゅうあの伝説の・・」
「それじゃよ、最後はみじん切り沢庵の混ぜご飯で〆の、その、ハロぅィンパーティの事じゃよ」
「各々、河童様や天狗様に扮した男女が恋の炎をメラメラうっふんな、あの・・」
「そうじゃよ、その、ハロぅィンパーティでムラムラでメラメラじゃよ」
「じゃ、今や日本の都会は欧米文化花盛りって事なのではなんじゃかべぇじゃなほいな」
「田吾作よぉ、おめー、この御時世に時代遅れもこりゃまた甚だしいぞな、もし」
「ならば、この村の青年部会会長の轟原田吾作が全責任を持って、開催を約束するっちゃよ」
・・そして、第一回、『ぼくとわたしの、若人ふれあいハロぅィンパーティ』は開催された。
ー はあ〜 ハロぅィンハロぅィン よいよい カボチャに沢庵 ペッタペタ ペッタペタ ー
ー もひとつおまけに ハロぅィン よいよい カボチャに沢庵 ペッタペタ ペッタペタ ー
ー 今宵は月夜だぁ ハロぅィン よいよい カボチャに沢庵 ペッタペタ ペッタペタ ー
「ウメ子ぉ、第一回、『ぼくとわたしの、若人ふれあいハロぅィンパーティ』大成功じゃった」
「そだな、田吾作よぉ、この村もこれで都会に追い着いたぞな、もし」
「ウメ子ぉ、この村でわしと一緒にずっといてけれ」
「田吾作よぉ、オラ、この村、好きじゃ、田吾作も、好きじゃ」
男、轟原田吾作、45歳、、女、松林ウメ子、48歳、、
松茸香る晩秋の、ヤング・ヤング、愛の劇場有難う。m(=_ _;=)m


第、539話 冬が近づくにつれて (2009.10.24)
何時しか、ホットミルクにココアを少し混ぜて飲むのが日課になってきた。。
去年まで放送されていたアニメのキャラクターのカップが、ひとつ。。
あたしは両手でそのカップをそっと包み込み、今、カップボードを見詰めている。。
それは、5シリーズまで続いた、超人気アニメのキャラクターのペアカップ。。
あの頃、奴が突然買って帰ってきた、超人気アニメのキャラクターのペアカップ。。
奴がこだわりを持ってそのアニメのファンサイトを立ち上げたタイミングで、
突然、5シリーズで終了してしまった、思い出の超人気アニメのペアカップ。。
奴がファンレターを出した声優が次々と謎の降板をした、あの超人気アニメのペアカップ。。
奴がコスプレするキャラクターは次のシリーズには消えていた、超人気アニメのペアカップ。。
冬が近づくにつれて、ホットミルクにココアを少し混ぜて飲むのが日課になってきた。。
あの頃、奴が突然買って帰ってきた、超人気アニメのキャラクターのペアカップ。。
奴は、冬になると、ホットミルクにココアを少し混ぜて飲むのがいつもの日課だった。。
カップボードに仕舞われた、超人気アニメのキャラクターのカップが、ひとつ。。
あたしの両手にそっと包まれた、超人気アニメのキャラクターのカップが、ひとつ。。
冬が近づくにつれて、ホットミルクにココアを少し混ぜて飲むのが日課になってきた。。


第、538話 もう一度、忘れたい (2009.10.17)
今日の仕事での待ち合わせ駅を、それはただ、私が一駅間違えて降りてしまっただけ。。
ICカード片手に改札口に戻ろうと振り返った時、改札口から出て来る奴を偶然目にした。。
私が佇む場所から反対口へ歩いていく奴の背中を少しだけ睨んで、私は改札口へと急いだ。。
付き合ってた頃、奴は口癖のように、『オレたち前世でも一緒だった気がする』って言ってた。。
私だって月日と共に、それが妄想だとしても、前世の二人の影が次々に蘇ってきていた。。
改めて電車に乗っての僅か一駅、何時までも何時までも電車は止まってはくれなかった。。
見慣れない窓の景色の移り変わりが、奴と私との、遠い距離感に思えた。。
大切な仕事での待ち合わせが有るのに、電車から降りるとすぐ、反対ホームへ急いでた。。
もう一度、忘れたい・・ 出逢う前までは奴なんて、普通に知らない人だったのだから。。
もう一度、忘れたい・・ 奴がサヨナラを口にした、あの日からずっとずっと願ってた。。
・・・・・・今、目の前でドアが閉まり、走り行く電車。。
私は一度、深く深呼吸してから、今日の日の、私の仕事の待ち合わせに向かった。。


第、537話 どこへいくの? (2009.10.10)
キミが僕に、・・今、キミが僕に「サヨナラ」を言う前に、
キミが僕に、・・今、キミが僕に「サヨナラ」を口にして、
3年間、ふたり一緒に過ごしたこの部屋から、出て行く前に、
例えば僕が「どこへいくの?」って、キミの「サヨナラ」を遮りそう言えたなら、
僕がいつだってその言葉を掛けていた日々のように、
『すぐ戻るから』って、微笑って手を振って、この部屋を出て行って欲しい。
まるですぐそこのコンビニへ出掛けるように、 キミはいつだってそうだったように、
『すぐ戻るから』って、微笑って手を振って、この部屋を出て行って欲しい。


第、536話 傘を差して歩いた (2009.10.03)
傘を差して歩いた。
今日、傘を差して歩いた。
下ろし立ての、淡い水色の水玉の傘。
婦人傘だけど少し大きめサイズの、淡い水色の水玉の傘。
奴は何時だって、天気予報のチェックもせずに雨宿り。
・・あたしが差し出す下ろし立ての傘に透かさず奴が潜り込む。
・・「いやぁー、たすかった!たすかった!」と奴はすこぶる御満悦。
・・「この借りをどうやって返すと言うのじゃ、御主」とあたしが訪ねる。
・・「拙者とて武士の端くれ、一雨一傘の恩義は必ず返えさせていただきやす」と奴。
・・「おうおう、どのように返すと言うのじゃ、このハナタレ武士めが!」あたし。
・・「次のお休みの日に、宜しかったら、デデデデデ、デートでも;;」奴。
・・「きゃはーーーい ..(*^^)∠※PAN〜♪。゜゛」あたし。
・・・・・・のはずだったけど。
真結美から「ねえ優香子、私ね、ハナタレ武士さんが好きなの」って相談された日、
あたしったら何故、真結美の背中をポーーーンと押しちゃったんだろう。
奴はまんまと今日だって、天気予報のチェックもせずに雨宿り。
・・真結美が差し出した下ろし立ての傘に透かさず奴は潜り込む。
婦人傘だけど少し大きいサイズの真結美の傘に、寄り添う真結美と奴。
傘を差して歩いた。
今日、傘を差して歩いた。
下ろし立ての、淡い水色の水玉の傘。
婦人傘だけど少し大きめサイズの、淡い水色の水玉の傘。
小柄なあたしにちょっと大きすぎる、淡い水色の水玉の傘。


第、535話 洋菓子がすきなひと (2009.09.25)
「おまえの手作り洋菓子が喰いてーなぁ」
・・って、高校で憧れな先輩に、付き合う条件として提示された。。
実は以前から、先輩=洋菓子のキーワードを断片的に情報収集していて、、
『まあ、洋菓子の魔女って言ったらあたしの事よ!オホホ』( ̄Oノ ̄*;)
・・なーんて、噂を流しまくって見事先輩をゲットした?のはそもそもあたしだ。。
・・だがだがだが、、、、、、
例えば、焼き菓子ってどう作るんだ??!
卵は焼けば通常卵焼きじゃないか!??
プリンってどう作るんだ??!
溶き卵を蒸せば茶碗蒸しではないのか!!?
パンケーキってどう作るんだ??!
水溶き粉焼いたらお好み焼きじゃん?!!
スイートポテトって大学いもじゃん???
かりんとうと信じてたのがイナゴの佃煮じゃん!!!
おかあさんと信じて育ったのにおとうさんだった!!!
先輩も、和菓子を好きだったら良かったんだよ。。
餡こ丸めて、きなこと黒蜜ぶっかければどうにか出来上がりだもの。。d(;`_´*)\バキッ
あー、甘いお菓子喰らいながら先輩とほのぼのしてー!!!
な訳で、あたしは今、こっそり隣町まで出向き、老舗洋菓子店と看板でほざく、
”パティスリー・まんぷく堂マロニエ”と言う洋菓子店???で、佇んでいる。。
最後はズルな女が勝ち残れるのさ o(〃^▽^〃)o
結局はズルな女が生き残れるのさ ш(´ΘヱΘ`;;*ш)
世の中ズルな女が活き活きミトコンドリアよヾ( ̄m ̄*)
だがしかし、”パティスリー・まんぷく堂マロニエ”の奥から、先輩の声が・・
「おやじ、うちの新作シュークリーム、最強にうめーじゃん!」
・・・・・・o(*´^`i)o・・・・・・
おやおや、”パティスリー・まんぷく堂マロニエ”のお坊ちゃんでしたか;; そうでしたか;;
おやおや、隣町民族で御座いましたか;; そうでしたかぁ;; そうでしたかぁ;;
『おまえの手作り洋菓子が喰いてーなぁ』・・って、、、
それって、ひょっとして、”この女、嫁に適合するのかよ”、試験かぁーーー!!!
あっ!先輩が奥から出てきた!!! きゃ!目と目があった!!!
・・・・・・o(*´^`i)o・・・・・・
・・・・・・o(*;´^`i)o・・・・・・
・・・・・・o(*;´^`i;)o・・・・・・
「・・道場破りに出向いたでごわす!!!」
・・あちゃー;; 誤魔化し切れてなーい;;;
・・でな、結局な、全てがバレたあたしはな、先輩の両親のご厚意でな、土日・休日はな、
隣町まで出向き”パティスリー・まんぷく堂マロニエ”で、武者修行の身でござるよ。。
・・バイト料も良く、ケーキもちょくちょく摘み食いさ ○(@ ̄(●●) ̄@)○ ブヒー
先輩曰く、「おまえのまともな手作り洋菓子が何時か喰いてーなぁ!に訂正」だとさ。。
そう言う事で、必需的にこのショートストーリーのサブタイトルに、、、
”洋菓子がすきなひと 〜何よりあたしにゾッコンな先輩〜”と付け加えを!d(〃*(●●)*#)\却下


第、534話 空はとても、 (2009.09.19)
夕暮れを待たないと、呼吸が休まらなくて、
不透明なガラスの陰に隠れて、気付かぬふりしてた。
・・探されていても、・・叫ばれていても、
空はとても、まだ明るすぎて、
気付かれないように、ひとりでずっと泣いていた。
空はとても、まだ苦しすぎて、
自分に誤魔化し続けて、自分に演技を求めていた。
熱を出していて、体は冷え切っていて、
充分に微笑っていたけれど、ひとりで何時でも泣いていた。
・・あなたの瞳から涙が、こぼれ落ちた日まで。
・・抱き締められた時の激しい鼓動の優しさに、気付かされた日まで。
空はとても、それは当たり前に、
ふたりの頭の上で、今日も景色を変えていた。


第、533話 魔法使いのラヴ・ソング <セカンド・シーズン> (2009.09.11)
「あのぉ〜、、わたしと付き合ってくれませんか」
男は、週一のコンビニでのアルバイトを終え、スクーターに跨りメットを被るところだった。
「この手紙、受け取って下さい」
時々、バイト先の、このコンビニに買い物に来る女性だった。
正確に言うと、このコンビニに買い物に来る、男が以前から意識していた女性だった。
もっと正確に言うと、気が弱すぎて告る事は永遠に有り得ないはずの、片想いの女性だった。
女性は、スクーターに跨りフリーズ中の男の手に手紙を握らせると、小走りにその場を去っていった。
家に帰ると男は、昨日、古雑誌売りのホームレスらしき耳毛の生えた爺さんから買った、
必ず毎週読んでいる一冊の某漫画雑誌39号を慌てて読み返してみた。
《「あのぉ〜、、わたしと付き合ってくれませんか」
男は、コンビニでアルバイトを終え、スクーターに跨りメットを被るところだった。》
シチュエーションがまるで一緒の内容の漫画が、突然新連載でスタートしている。
聞いた事もない、ネットで調べても検索に引っ掛からない、その漫画家の名前。
女性からの手紙(正確にはラブ・レター)には特に女性の連絡先は書かれてはいなかった。
翌日、男は、その某漫画雑誌の同じ39号を本屋で立ち読みし、唖然とする。
聞いた事もない、その漫画家の新連載など、どこにも掲載されてはいなかった。
翌週、週一のコンビニでのアルバイトの一日前、古雑誌売りの耳毛の生えたホームレス爺さんから、
40号の某漫画雑誌を買い、家に帰り何度も新連載第2週目の漫画を読み返した。
《コンビニで、レジにやって来た例の女性に手紙(正確にはラブ・レターの返事)を手渡した男。
手紙(正確にはラブ・レターの返事)には、男の連絡先が思い切って書かれてある。
果たして、家に帰った男には、その女性から、”デートの誘いにOK!”と、メールが目出度く届く。》
そして、コンビニでのアルバイトの日に、見事に男に同じシチュエーションが訪れた。
家に帰った男には、その女性から、”デートの誘いにOK!”と、メールが目出度く届いた。
・・ただ、新連載漫画の載る某漫画雑誌40号など他では手に出来ない事に変わりはなかった。
その後、その女性とのメールの遣り取りで、翌週、男が夕方過ぎからの週一のコンビニでの
アルバイトがある日、昼間はお互い時間が空くと言う事で、朝から逢う事に目出度く決まった。
更なる翌週、41号の某漫画雑誌を、耳毛が以上に生え揃っていたホームレス爺さんから買った。
(・・明日は念願の恋い焦がれていた女性との初デートの日だ!!!)
家に帰った男は、果たして、その漫画の予想外の方向性に驚愕する事となった。
《 黒山の人集り。悲鳴。泣き叫ぶ男。救急車のサイレン。》
41号でのその漫画の最後のページの1コマに、男の目の前に現れる女性の幽霊、次号へつづく。
「・・・・・・なんじゃこりゃ!!?」 ・・・・・・男は叫んだ。
「僕は幽霊なんて信じちゃいない。いや、この際信じてもいい。けど、・・ただ、
・・ただ、僕は、生きている彼女とずっと逢いたいし、愛し続けたいんだ」
家を飛び出した男は、あてもなく街を彷徨い続けた。
「おバカショート、84話以来、公園に住んでいる魔法使いの、ババア、出たどん」
「うわぁ、誰??!」
「おまえさん、本来、おまえさんが歩む次元が歪んでいるぞよぉ」
 「・・・・・・高額な壺とかだったら、買わないよぉ」
「おまえさん、以前から耳毛が御立派なホームレス爺さんに出会ってるだろうって」
「・・・・・・古雑誌売りのホームレス爺さんのことかい???」
「其奴は『人の次元歪ませてウキウキ爺さん』と呼ばれる悪霊じゃ」
「・・・・・・ひえぇええええええ;;」
「その耳毛がビューティフルなウキウキ爺さんから購入した雑誌を全部焼き捨てなさい」
「・・・・・・どどど、どうなるの、それで???」
「おまえさんは、その、耳毛がそよ風サンバなウキウキご機嫌爺さんに出会う前に戻れるぞよぉ」
「・・・・・・僕は明日、片想いだった女性と初デートなんだよぉ」
「片想いだった女性との初デートで、何が起こるか、もう読んだのではないかな」
「・・・・・・・・・・・・」
「そして、耳毛がドキドキファンタジーなキラメキ御満悦爺さんに二度と会う事もないぞよぉ」
「・・・・・・・・・・・・」
「では、さらばじゃーーー」
「・・・・・・あっ!!!」
男は家に戻り、数週間の夢のような日々を振り返り、暫くは、ただ、うずくまっていた。
・・・・・・そして、、、
「あのぉ〜、、僕と付き合ってくれませんか」
男は、週一のコンビニでのアルバイトを終え、スクーターに跨りメットを被るところだった。
時々、バイト先の、このコンビニに買い物に来る女性と目が合い・・
正確に言うと、このコンビニに買い物に来る、男が以前から意識していた女性と目が合い・・
もっと正確に言うと、気が弱すぎて告る事は永遠に有り得ないはずの、片想いの女性と目が合い・・
「この手紙、受け取って下さい」
男はその女性の手に手紙を握らせると、メットを被り、その場を走り去っていった。
・・・・・・男は、こんな思い切れた自分自身が余りにも信じられなかった。
昨日、チャンスがあれば手渡そうと一大決心で書いて置いたラブ・レターだけど、
これ程、我ながら堂々と手渡す事が出来るなんて、以前からの自分を考えると不思議でならなかった。
そして男は、必ず毎週読んでいる某漫画雑誌をうっかりまだ買ってなかったことを思い出していた。
「今週からケチって古雑誌売りから買うつもりだったけど、何だか、やっぱ、
生まれて初めて告れた事だし、セコい男とバレたくないし、ここは一つ、止めとくかなぁ」
そんな男の走り去る姿と、頬を染めている女性を、出たどんババアは空から笑顔で見詰めていた。


第、532話 反応熱バンザイ (2009.09.05)
おがくず酵素浴。。
おがくずと酵素が抱き合い自然発酵でぽかぽか。。
これっていいじゃん!!?
加熱式弁当。。
生石灰と水が結び合い激しく反応してアツアツ。。
ズゴーいいじゃん!!?
インスタントカイロ。。
鉄が酸素と興奮してどうにでもしてよサビサビ。。
お、大人な出逢い!!;
で、奴とあたしの場合。。
尿素と硝酸アンモニウムで冷たい態度ヒエヒエ。。
冷却パックかよー!!! 冷えすぎだろ!!!
・・実は、こないだデートで突然摩擦が生じ火花散りバチバチビリビリ。。
給油の前には静電気除去してね!!!
・・奴もあたしもどうにか変わらなければいかんぞなもし。。
奴とあたし 〜セカンド・シーズン。。ー摩擦なら乾布摩擦。。
肌とタオルなチームプレーで心身が磨かれピッカピカ。。
これでいいじゃんかいーーー!??
早速、奴にメールでこの案を伝えようとしたけれど、既の所で気付く・・
・・・・・・・・これってちょいエロ??????
ヤバヤバヤバ...って、ありゃ、送信ポチッとやらかしちゃってるよ、あたし;;
・・・・・・・・これってめちゃエロ??????
で、奴から返信メール『乾布摩擦は反応熱じゃねーだろ』
・・・・・・・・これって無知小っ恥ずかしい;;
奴とあたし 〜サード・シーズン。。
「今度デートしようね仲直りしようね」送信ポチッっと。。
で、奴から返信メール『デートも仲直りもOKー』
なんだ、これでいいじゃんかぁーーー!!!!!!
ー案ずるより産むが易しー 素直に伝え合いましょう仲直り案。。
「逢いたい」と「逢おうよ」の反応で二人は心がホクホク。。
反応熱バンザイ ヽ(゜▽゜`)乂( *゜▽゜)ノ やっぱ反応熱は違うか;;;


第、531話 秋になっちゃう (2009.08.30)
秋になっちゃう。。
うわぁ、ツボにはまるー!! ウケるー!!
このまま、秋になっちゃうんだなぁ。。
うわぁ、ドツボにはまったー!!
・・このまま二学期に突入。。
・・事実上繰り返される、一学期と変わらない日々。。
・・あたしを待ち受ける、一学期と変わらない日々。。
このまま秋になっちゃう。。
何やってたんだぁ!あたし!!!
夏休み、何やってたんだぁ!あたし!!!
バッカじゃないの!!!あたし!!!
クラスメートな奴とは家が非常に近所。。
だが幼馴染みでもなく、微かな会話すら未定。。
夏休みに入る前に『予言』と崇められた、あたしの脳を支配していた映像は、
恐らくは『妄想』『幻覚』『お調子者』に、置き換えられてしまってたのよ。。
バッカじゃないの!!!あたし!!!
クラスメートな奴とは家が非常に近所。。
だが幼馴染みでもなく、微かな会話すら未定。。
夏休みに入る前に『実行』と定められた、あたしの脳を支配していた計画は、
正しくは『かき氷』『スイカ』『昼寝』に、書き換えられてしまってたのよ。。
バッカじゃないの!!!あたし!!!
クラスメートな奴とは家が非常に近所。。
だが幼馴染みでもなく、微かな会話すら未定。。
夏休みに入る前に買って置いたカラフルビキニが、何だか既に色褪せて見える。。
夏休みに入る前に入手した引き出しの中のチケットは、このままペアで未使用なまま。。
うわぁ、ドツボに落下ー!!!
バッカじゃないの!!!あたし!!!
・・秋になっちゃう。。・・秋になっちゃう。。・・秋になっちゃう。。
超ウケるー!!! あたしったら必死ぶっこきゃいいのに、超ウケるー!!!
・・・・・・だって、『玉砕』に免疫ないんだよなぁ、、告り体験0だもの;;;
そりゃ、どんぐりだってころころでお池にどんぶりこだわよ!栗ご飯鱈腹喰いてー!!!



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