横浜マタタビバージョンのFUNI WORLD
★おバカショート劇場。★
FUNI WORLD (21)
第、654話 バナナ頑固プロジェクト (2012.01.07)
バナナ頑固プロジェクトに参加することになった。
『バナナde頑固』を合い言葉に、我がチームは動き出した。
あたしはチームの紅一点。
「ミカンではなくピーチでもなくバナナなんだ」
「強情ではなく腕白でもなく頑固なんだ」
「厳密に言えば、テクニカルなバナナと頑固なんだ」
プロジェクト会議は連日熱い戦いの場となった。
あたしはチームの紅一点。
「限界を超えた神社から生まれる何かとバナナなんだ」
「薄雲が広がる空と生まれたての仔猫とバナナなんだ」
「・・・・だから、その事から感じさせる頑固なんだ」
プロジェクト会議は連日熱い戦いの場となった。
あたしはチームの紅一点。
「驚愕とバナナとちょっとその前にウクレレ製作はどうだ」
「右眼で直視する頑固と左眼で事実を掴み取るバナナでどうだ」
「なだらかな丘を登ると譲り合う頑固と接触するバナナでどうだ」
プロジェクト会議は連日熱い戦いの場となった。
あたしはチームの紅一点。
あたし「あのー。走り去る女子生徒の眉間はバナナ色はどうでしょう」
男性は皆あたしに注目をした。
「正に女性の視点から捉えた繊細さだ」
「バナナの鼓動が伝わってきました」
「そして、様々な頑固が引き出し紡ぎ出される新発想だ」
チームリーダーの「そのプランでスタートだ」の声とステキな笑顔に、
あたしの、胸の中のドキドキも、どうやら走り始めてしまったようだ。
『バナナde頑固』が合い言葉。あたしはチームの紅一点。
第、653話 ひとりでも多くの方に (2011.12.31)
あたしの彼は、風呂敷マニアです。
外出時には必ずマイ・風呂敷を持参する彼。
「人間、何時如何なる場所で風呂敷が必要になるか分からない」
と、彼は事あるごとにあたしや知人や街行く人に力説します。
街中でコスプレをした西洋人に、『Oh!
Very
フロシキ忍者』
と、それはそれは、喜ばれる事もしばしばです。
「ひとりでも多くの方に、風呂敷の素晴らしさを伝えたい」
と、彼は事あるごとにあたしや知人や街行く人に力説します。
街中でウナギを手掴みした爺さんに、『おやまあ、風呂敷忍者』
と、それはそれは、目を丸くされる事もしばしばです。
「何時の日か人類は、自在に包む事ができる技の数々に気付かされる」
と、彼は事あるごとにあたしや知人や街行く人に力説します。
街中で目立ち過ぎるメイクの婆さんに、『あれまあ、風呂敷忍者』
と、それはそれは、ライカで激写される事もしばしばです。
「ひとりでも多くの方に伝えたい。風呂敷は決してマジックなんかじゃない」
と、彼は事あるごとにあたしや知人や街行く人に力説します。
街中で木の葉隠れの術を研究するインド人に、『一番強い武器はフロシキ』
と、それはそれは、目から鱗を落とさせてしまう事もしばしばです。
「社会情勢が不安定になればなるほど、イソフラボンやコラーゲンではなく風呂敷」
と、彼は事あるごとにあたしや知人や街行く人に力説します。
街中でお座敷に向かう芸妓さんに、『三味線の音色に合わせて風呂敷』
と、西洋人や爺さんや婆さんやインド人を巻き沿いに舞い踊られる事もしばしばです。
初詣には、風呂敷の持参をお忘れなく。何方様もお元気で良いお年を。
第、652話 MANY
栗きんとん (2011.12.25)
「研究進んでるの?」
「・・・・・・・まだまだ。」
「研究に余念が無いって感じね」
「この研究には多くの子供達の未来が掛かっているからね」
「私たちが、今、立ち向かわなければならない状況なのね」
「この研究は深刻化する食糧問題に大きく影響するからね」
「安全な食料を安定的に、多くの子供達に与えるために・・」
「栄養不良に陥る子供達を我々の手で救うために・・」
「多くの子供達の未来のために・・」
「多くの子供達の平和のために・・」
「・・・・・・栗きんとんなのね」
「・・・・・・栗きんとんなのさ」
「そして、私のお腹には既に新しい命が・・」
「そうか、17人目の家族が誕生するのか」
「栄養不良に陥る子供達を我々の手で救うために・・」
「・・・・・・栗きんとんなのさ」
「・・・・・・栗きんとんなのね」
「HAPPY!MANY
栗きんとん」
「HAPPY!MANY
子供達の人生」
「あのさ、テレビ局から大家族番組への出演の依頼が来たのよね」
「どうせ、ヤラセで傷付くのは我々だぞ!キッチリと断っちまいな」
第、651話 嘆きのスマートフォン (2011.12.18)
奴からメールの返信がさっぱり来ない。
未熟者ならきっとこう考えてしまうだろう。
ー
奴からメールの返信がさっぱり来ない。
あたしのスマートフォンに何があったのだろう。
○○子や○○美からのメールはちゃんと届いている。
我がクラスの担任(35歳中年♂)からのメールもストーカーレベルで届く。
今日学校で生存確認済み。
シークレットだから学校では奴とは会話しない。
奴は毎日部活が終わると仲間の男子共と帰宅。
奴からの近況が数日途切れたままだ。
カスタマーサービスに連絡。
「買ったばかりのスマートフォンぶっ壊れたぞ!・・・」
すると、電話の向こうでスタサの女、「メールの相手に問い合わせて下さい」
・・・薄々気付いている事を事務的に刃先をこちらに向けて口走りやがって!ー
更に、未熟者ならここで両の手は耳無し青猫状態。
生姜焼きの分厚い豚肉を引きちぎらんとするかの如く下唇を噛み締める。
だが私はひと味違う。
メールがダメなら直接電話してやる!
「全く繋がらなーーーーーーーーーーい!!!」
奴のスマートフォンに何があったのだろう。
未熟者ならきっとこう考えてしまうだろう。
ー
奴のスマートフォンに全くさっぱり繋がらない。
今日学校で生存確認済み。
シークレットだから学校では奴とは会話しない。
奴は毎日部活が終わると仲間の男子共と帰宅。
奴からの近況が数日途切れたままだ。
カスタマーサービスに連絡。
「お知り合いのスマートフォンに繋がらないぞ!・・・」
すると、電話の向こうでタマビの女、「お知り合いに問い合わせて下さい」
・・・こっちだって分かり切っている事を事務的に剣を振り落としやがって!ー
更に、未熟者ならここで両の手は耳無し青猫状態。
硬く仕上がっちまった手羽先を引きちぎらんとするかの如く下唇を噛み締める。
だが私はひと味・・・
そんな時、ママから、「○○くんから電話よ、学校の緊急連絡網だとか?」
うぅ....
我が家の据え置き電話の受話器を握るなんて、何ヶ月ぶりだろうか。
「・・・今、スマートフォン修理中なんだ・・・・・・・・・・」
未熟者ならきっと、耳無し青猫の事も、血みどろ下唇の事も忘れ、歌えや踊れや!
だが私はひと味違う。
「ムカついて、木っ端微塵にあの世に旅立ったあたいのスマートフォンどうしてくれるのよぉーー」
数日後、奴には無事、スマートフォンが戻ってきた。
そしてあたしは、誰よりも、我がクラスの担任(35歳中年♂)から心配される日々が続いた。
第、650話 姫奈 (2011.12.11)
培養液に浸っている繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』が、今、僕を見詰めている。
『水野姫奈』、数年前まで僕と一緒に暮らしていた女性。
彼女の心が僕から離れてしまっている不安に苛まれ始めていた頃、
彼女が腕を蚊に刺され怒り狂っていた時に血をたらふく吸った蚊を発見し、
その蚊を何気に捕まえ冷凍保存していた事が功を期し、彼女と別れ早1年、
培養液に浸っている繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』が、今、僕を見詰めている。
・・繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』に、足や手が生えてきたら素敵だろうなぁ。
初めてのデートで、僕の手を両手で握り返してくれる、繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』。
お化け屋敷で、僕の腕にしっかりしがみつく、繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』。
仕事から戻った僕に、駆け寄り抱き付いて燥ぐ、繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』。
・・・繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』に、足や手が生えてきたら素敵だろうなぁ。
『水野姫奈』、数年前まで僕と一緒に暮らしていた女性。
初めてのデートで、僕の手を両手で握り返してくれた、あの頃の、『水野姫奈』。
お化け屋敷で、僕の腕にしっかりしがみついていた、あの頃の、『水野姫奈』。
仕事から戻った僕に、駆け寄り抱き付いて燥いだ、あの頃の、『水野姫奈』。
培養液に浸っている繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』が、今、僕を見詰めている。
培養液に浸っている繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』が、きっと、僕を癒やしてくれる。
培養液に浸っている繊毛虫テトラヒメナ似の『姫奈』に、ずっと、僕は膝を抱えている。
第、649話 良い笑顔 (2011.12.04)
ぼくは、どうやら笑顔が苦手のようだ。
強面のせいなのか誰からもぼくの笑顔は『作り笑顔』と称される。
これではいけないんだ。
実は、今日は我が部活『源平碁・赤田白夫大先生ルール部』の
紅一点、1年生部員の大事な全国大会の新人戦の日なのである。
『源平碁』それは、明治時代に日本に入って来たリバーシというボードゲームを、
日本向けに源氏と平家の戦いに見立て、赤と白の石で相手の石を自色で挟み、
その挟んだ石をひっくり返し勝敗を競うルールに、我が部活の前身である
『源平碁部』の初代部長こと赤田白夫大先生が作り上げた新ルールを用いる事で、
最早、ボードゲームと芸術性を併せ持った戦いを繰り広げられる競技である。
彼女なら優勝だって夢ではない。いや、ぼくはそう堅く信じている。
彼女が優勝した暁にはぼくは満面の笑みで彼女を讃えてあげたいんだ。
だがしかし、『作り笑顔』と称される強面のぼくの笑顔ではダメなんだ。
そこで前日、思い切ってぼくは彼女に尋ねてみた。
「ぼくの笑顔って、正直どう思うかな」
「部長の笑顔ですか?作り笑顔っぽいー」
うわー!純度100%ダメだ;;
そんなこんなで、早くも彼女は決勝戦で相手と鎬を削っている。
油断をすると形勢が一気に引っ繰り返ってしまうのが『源平碁』、
そして、『赤田白夫大先生ルール』なのである。
彼女は赤石で、新人戦とは思えぬむさ苦しい髭面男の白石を挟んでは引っ繰り返す。
髭面男も、リボンをクルクル回しながら彼女の赤石をこれでもかと返してしまう。
彼女は高く投げたボールを回転し受け止めながら、髭面男の白石を引っ繰り返す。
髭面男も、シルクハットの中から真っ白なハトを飛び出させ赤石を返してしまう。
彼女は無作為に選んだゲストの頭を断頭台に固定!ギロチンの刃の落下と共に、
髭面男の白石を全返し!見事、新人戦優勝である!!!
彼女、「部長、優勝しましたぁー」
駆け寄ってくる彼女にぼくは不覚にも笑顔どころか涙を零してしまった。
でも、零れ落ちる涙をよそに僕は力業な笑顔で彼女を称えてあげた。
ぼく、「新人戦優勝、おめでとー」
すると、彼女はぼくに言ったんだ。
彼女、「部長、その笑顔、何だかとっても素敵です」
・・それはそうさ。ぼくはキミの事、精一杯大好きなんだから。
抱きしめたい気持ち全てを笑顔に変えて、でもきっとぼくはクシャクシャな顔をして、
強面の『作り笑顔』と称される笑顔で、僕より遙かに素晴らしい笑顔の彼女を称えた。
第、648話 霧生殿 (2011.11.27)
私の名前は、仕込み杖(仮名)♀。
私の幼馴染みの名前は、苦無(仮名)♂。
苦無(仮名)♂は自作のネットワーク解析ツールをネットで公開・配布している。
ある日、私は苦無(仮名)♂に「好きな人ネットワーク解析ツールを拵えてみてよ」と言ってみた。
苦無(仮名)♂は、「好きな人の情報を監視出来れば世話ないよな」とだけ、無表情で答えた。
そして、まるでプログラムが恋人であるかの如く、コンピュータのモニタを見詰め続ける。
私は毎度呆れて、とっとと隣の我が家に戻って自分の部屋のベッドに寝ころび不貞腐れる。
数週間後、苦無(仮名)♂のホームページに『霧生殿』と言う名のツールが新たに加わっていた。
苦無(仮名)♂も私もまだ幼稚園だった頃、子犬を拾って家に連れ帰り、
『霧生殿』と名前を付けて餌をあげたり散歩に連れて行ったりしていたけれど、
それは、飼い主が見つかった事で、一週間で打ち切りになってしまった思い出。
そう、幼稚園だった頃、苦無(仮名)♂は確かに一度だけ私にこう言ったのだ。
『大人になったら仕込み杖(仮名)♀をお嫁さんに貰って犬を沢山飼うよ』って。
ところで、『霧生殿』って、それって、どんなツールなのでしょうかって???
それはね、強力な復元率を誇る、ファイルデータ修復ツールなんだって!!!
第、647話 ココア (2011.11.19)
その昔、近辺の町内会合同の、嫌がる子供達をむりくり集めて結成された、名付けて、
『差し出された限りなく湿気たお煎餅を満面の笑みでパリッと食する人間になれるクラブ』。
そんな集まる価値のないクラブでも出向く事で月に1〜2回ほど君に会う事が出来た。
僕が、君のことで覚えていること。
乗ってくる自転車には、当時の女の子たちの憧れの対象だった、
居並ぶ敵をばったばったと薙ぎ倒す、ゴスロリのアニメの主人公、
『ティアラ戦士・黒髪オールバック丸眼鏡』の、ステッカーが1枚張られていたこと。
僕が、君のことで覚えていること。
持ってきていた子供用トートバックは、女の子らしい深海生物柄だったけれど、
アラミド繊維で編み込まれた戦闘装備を感じさせる一品だったことは周知の事実。
僕が、君のことで覚えていること。
どこかに手裏剣を隠し持っていたことは噂の範囲。
僕が、君のことで覚えていること。
帰りには必ず自販機で○○社のココアを1缶買って飲んでから帰っていたこと。
因みにご使用のお財布は花カマキリ柄の、これも、アラミド繊維による戦闘装備と思われる。
僕が、君のことで覚えていること。
僕ほどのバカで、僕ほどのいい加減で、僕よりも僅かにチビで、
でも、僕よりも確実にイケメンだった、当時の僕のお友達に、
君がこっそり告白していた現場を僕が気付かれぬままに目撃していたこと。
その翌日、一週間ほど前から耳にしていた話ではあったけれど、
現実に確かに君が家族と共にこの町を離れていってしまったこと。
・・・・・・成人した僕にも一応彼女がいたりする。
運命さえ味方してくれるのならば結婚したいと願っている。
彼女とデート中、そう、何気に自販機で○○社のココアを買った。
彼女から「○○社のココアがとっても好きな人ね」って言われた時、
彼女の前でそれほどに○○社のココアを飲んでいた自分に気付かされた。
僕が、君のことで思い出したこと。
それは何時だってこの○○社のココアの中に溶け込んでいた。
第、646話 その名も『エノキダケワンダフルマン』。 (2011.11.13)
幼い頃から私がピンチな時には何時だって必ず現れる、
悪の組織に立ち向かい悪を打ち砕き私を守ってくれる正義のヒーロー、
全身コスチューム着用マスクマン、その名も『エノキダケワンダフルマン』。
私が小学校1年生の頃、公園で遊んでいた時、いきなりスカートの中に
頭から潜り込んできた、不祥事のデパートこと、日○放送協会の職員の
ハゲかけている頭を卸し金でガシガシ擦り悲鳴を上げさせ周りの大人達を
呼び寄せ、見事、連続変質魔の容疑者逮捕に繋げた正義のヒーロー、
全身コスチューム着用マスクマン、その名も『エノキダケワンダフルマン』。
そして、私に白エノキダケを一束手渡してその場を去っていった正義のヒーロー、
全身コスチューム着用マスクマン、その名も『エノキダケワンダフルマン』。
私が中学校2年生の頃、部活が終わり、その時ひとりで更衣室で着替えていた時、
突然のカメラのシャッター音と共にロッカーから出てきて逃げ出した、
不祥事のデパートこと、警○官のハゲかけている頭を卸し金で
ガシガシ擦り悲鳴を上げさせ、部活の仲間・顧問の先生を呼び寄せ、
見事、連続盗撮魔の容疑者逮捕に繋げた正義のヒーロー、
全身コスチューム着用マスクマン、その名も『エノキダケワンダフルマン』。
そして、私に白エノキダケを一束手渡してその場を去っていった正義のヒーロー、
全身コスチューム着用マスクマン、その名も『エノキダケワンダフルマン』。
高校3年生の私、ついこないだお台場に出掛け、何やら強引に腕を捕まれ、
韓流タレントの顔写真入りうちわを持たされ韓流やらせイベント動員に
むりくり参加させようとした偏向報道のデパートこと、フ○テレビ社員の
ハゲかけている頭を卸し金でガシガシ擦り悲鳴を上げさせ、近くを通り掛かった
デモ隊の人達を呼び寄せ、見事、韓流捏造イベントを未然に防いだ正義のヒーロー、
全身コスチューム着用マスクマン、その名も『エノキダケワンダフルマン』。
そして、私に白エノキダケを一束手渡してその場を去っていった正義のヒーロー、
全身コスチューム着用マスクマン、その名も『エノキダケワンダフルマン』。
その、『エノキダケワンダフルマン』が、まさか、事も有ろうに、
幾つになっても幼児体型、黄昏のばか師匠こと、私の幼なじみの、
榎茸丸くんだったなんて・・・・・・。だったなんて・・・・・・。
イメージがこりゃまた全然違うし、そして、イメージが全然違う!、でも、
真冬の使われない屋外プールでスタート台に乗り、海パン姿で特に何をするでもなく
佇んでいる榎茸丸くんの左足のふくらはぎに残るキスマークはそれこそ間違いなく、
韓流インチキイベントから助けて貰ったお礼に、『エノキダケワンダフルマン』の
白タイツの裾を捲り上げて左足のふくらはぎにキスをしたときに付いた、
あの時の私のキスマークに違いないし、そして、あの時のキスマークに違いない!
そう言えば、幼稚園児だった頃、確かに榎茸丸くんは私の初恋の相手だった。
榎茸丸くんは何時だって私に『ピンチな時には必ず守ってあげる』って言ってくれていた。
・・・・・・何故それを、私は忘れてしまっていたんだろう。
試しに、「助けてぇ〜」と叫んでみたり・・・・・・。
屋外プールでスタート台に乗り、海パン姿で特に何をするでもなく佇んでいた榎茸丸くんは、
更衣室へ消えたかと思うと、卸し金を片手に私の前に現れた『エノキダケワンダフルマン』。
私が『エノキダケワンダフルマン』の白エノキダケマスクを剥がすと、そこには、
『ピンチな時には必ず守ってあげる』って、何時だって私に言ってくれていた、
幼稚園児だった頃の榎茸丸くんと変わらぬ目映い瞳が、優しく私を見詰めていた。
榎茸丸くんは、白エノキダケマスクを被ると、私に白エノキダケを一束手渡して
恥ずかしそうにその場を去っていった、そんな、魅惑のポーカーフェイス、
全身コスチューム着用マスクマン、その名も『エノキダケワンダフルマン』。
第、645話 激烈早口言葉 (2011.11.06)
↓「激しく噛み締めるようにそれぞれ×30どうぞ」
≪新進シャンソン歌手総出演あの暑い夏の過ち≫
≪歌うたいが歌うたいに来て歌うたいが歌うたうだけうたい切ればあの暑い夏の過ち≫
≪ローマの牢屋の広い廊下を六十六の老人がロウソク持ってあの暑い夏の過ち』≫
「ほれ、どうぞ」
・・『ももいろ48工房Z』の握手会にこの山奥の田舎から遙々と、
都市伝説の舞台、都会へと妻に内緒で日帰りで旅立ったあの暑い夏の過ち。
本当にこの世に存在していたアイドルグループ、『ももいろ48工房Z』。
推しメンとの2ショットチェキ抽選会で見事撮影券をゲットしたあの夏の追想。
年の瀬も近い昨今、妻に2ショットチェキを発見された六十六の老人のピンチ。
「ほれ、早口言葉どうぞー」
「牢屋のような我が家で六十六の老人が妻にロウソク垂らされご免なさい」
↓「ほれ、入れ歯落としたからこれ新たに追加」
≪お綾や親にお謝り。お爺はお婆にお謝り。ご免なさい≫×30
「お綾や親にお謝り。お爺は嫉妬お婆にロウソク垂らされご免なさい」
第、644話 世田谷の地中に何かが埋まっている (2011.10.30)
「何の用だよ」
「世田谷区某所の放射線量騒ぎ知らないの?」
「俺たちが関係あるのか」
「掘るんだってよ」
「だから?」
「こないだも世田谷では放射線騒ぎあったじゃないの」
「だから?」
「次はどこ掘られるか分からないでしょ!」
「だから?」
「小学校の頃に二人でこっそり埋めたでしょ!」
「何を?」
「『大人になったら掘り返そうね』って互いに書いたラブ・レター」
「あっ!御丁寧に住所氏名入りのラブ・レターを瓶に入れて・・・・・・」
「すっかり忘れていたでしょ!」
「あれ埋めた場所って・・・・・・」
「神社の裏!掘り返しに行くわよ!」
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「まだちゃんとあったよ!すげーなぁ」
「これで、恥掻かずに済んだわよね」
「今更俺たち付き合ってもないしなぁ」
「世田谷まで来るのも久しぶりだしねぇ」
「でも、瓶の中には『バカ』とか『おたんこなす』とか書かれた手紙だけだぞ」
「それ、二人で大げんかした時の・・・・・・」
「『大人になったら改めて決闘よ』って互いに書いた果たし状」
「そう言えば他にもどこかに埋めたような・・・・・・」
「ラブ・レターは別のどこかに埋めたような・・・・・・」
「あぁあああ!世田谷区某所の放射線量騒ぎの場所付近」
「あっ、そうだよ!でもあの辺は舗装やらスーパー建設やらで掘り返されているぞ」
「そうよね。汚れた瓶なんて工事中既に適当に処分されているでしょうね。安心!」
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「たった今入ったニュースです。掘り返されていたスーパー敷地付近から汚れた瓶が見つかりました。
中には手紙のような物が入っていて、放射線量の原因に繋がる何かが記載されている可能性も
考えられると言う事です。詳しい事は分かり次第お伝えいたします」
第、643話 なのかな? (2011.10.23)
妹、「何だか、我が学校でイチモテの先輩にコクられたんだけど、
性格はどうなのかな?悪い噂は特に聞かないけれど大丈夫なのかな?
付き合いだしたらDV男で、だけど『別れられない』とか情け無く
泣き見るようなバカ女になってしまう、悲しい出逢いなのかな?
または、付き合いだしたら奴が浮気している事が発覚して、況してや、
その浮気相手が男で『男と別れてよ』と泣き叫ぶものの自分が捨てられ、
腹立たしいが誰にも愚痴られない哀れな結末を迎えてしまう出逢いなのかな?
出なければ、奴は異常な程のやきもち焼きで、デート先の動物園で
ライオンの赤ちゃんを抱っこしただけで目を血ばらせたり歯ぎしりしたり、
デート先の映画館でポップコーンを頬張りながら『これに目がないのよ』
と御満悦に呟くとそのポップコーンに目を血ばらせたり歯ぎしりしたり、
デートの日に、ちょっと派手な女度アップの服装で一緒に歩くだけで
目を血ばらせたり歯ぎしりしたり己が抱えていたぬいぐるみを殴り出したり、
拡声器で『男の視線を独り占めかーーー』と叫びながら被っていた帽子から
ハトを出したり己が抱えていたぬいぐるみを一瞬にして木彫りの熊に変えたり、
ルービックキューブの攻略法を街行く人々に語り出したり、そんな男だったのかと
嘆き苦しむ果てしなくみっともないバカ女になってしまう、悲しい出逢いなのかな?
何年過ぎても笑い話にならない無様な恋愛履歴の世間的に超恥ずかしいバカ女の
代表にこりゃまたなってしまう、そんなそんな悲しい出逢いなのかな?なのかな?」
姉、「うわぁー、さっきから妹がわざわざあたしの数ある恋愛失敗談を例えに事細かく
寝言で長々と散々喚き散らしている深夜2時!ウザイ!寝られない!腹立つぅ!むかつく!」
第、642話 制御不能 (2011.10.16)
自分で自分を制御する自信を無くしている。
自分が突然何を仕出かしてしまうか予測出来ない。
もしかしたら、ある日、動物園の檻から凶暴なライオンを逃がし、
ライオンのたてがみを触覚ヘアーに変えてしまうかも知れない。
もしかしたら、ある日、動物園の檻から凶暴なゴリラを逃がし、
そのゴリラとクロスステッチ教室に通い出してしまうかも知れない。
もしかしたら、ある日、動物園の檻から凶暴なホッキョクグマを逃がし、
そのホッキョクグマと京都に旅立ち、一緒に舞妓さん体験をするかも知れない。
・・・・・・3年間思い続けてきた女の子にこっぴどく振られた。
最早、自分で自分を制御する自信を無くしている。
最早、自分が突然何を仕出かしてしまうか予測出来ない。
もしかしたら、ある日、駅改札近くで包丁を持って大暴れている男と出会し、
その包丁を取り上げるやいなや、包丁をキラキラ小物にデコレーションしてあげて、
暴れていた男に満面の笑みを浮かべながらその包丁を返してあげるかも知れない。
もしかしたら、ある日、銀行強盗に遭遇して、銀行強盗に拳銃を向けられ、
その拳銃を取り上げ、拳銃のトリガーガードにレッサーパンダのストラップをぶら下げ、
銀行強盗さんに満面の笑みを浮かべながらその拳銃を返してあげるかも知れない。
もしかしたら、ある日、日本の市街地を自衛隊の戦車が我が物顔で走り回り、
その戦車に大砲を向けられたら、その戦車をアルパカの着ぐるみでコーディネート!
・・・・・・3年間思い続けてきた女の子にこっぴどく振られた。
僕はきっと、今の僕はきっと、この世で一番危険で恐ろしい人物。
第、641話 二足歩行だけれど人間ではない (2011.10.10)
カメラマン「いいよ、いいよ、イチゴちゃん」
カメラマン「前髪を手で掻き上げてみようか」
カメラマン「次は、プールサイドに座って足でバタバタしてみようか」
カメラマン「尻尾を左右に振りながらプールサイドを歩いてきてからの・・」
カメラマン「前屈みになってお腹の袋をびろ〜んって広げてみようか」
カメラマン「今度は体からつるを出してうにょうにょ動かしてにっこり」
カメラマン「では、『鬱』をひとり人文字で!上手!上手!」
カメラマン「今度は、『麒麟』をひとり人文字で!お見事!!!」
マネージャー「とある農業試験場でイチゴの品種改良中に
突然変異で生まれたとは思えないとびっきりの瑞々しい美少女ですね」
芸能プロダクション社長「この子は必ずトップアイドルになるぞ!」
マネージャー「人間がおいそれと人間を信じられなくなった世の中ですからね」
芸能プロダクション社長「今現在、人類が一番求め愛したいアイドル性なんだよ」
カメラマン「今度はウインクしながら開いている目で弱めにレーザービーム」
マネージャー「ガイガーカウンターが反応しちゃいましたね」
芸能プロダクション社長「カメラマンさん、レーザービームはちょいとマズイわ」
マネージャー「イベント等の際にはお客さんにも全員防護服着用は仕方ないですね」
カメラマン「わっかりましたぁ!じゃ、イチゴちゃん、頭のヘタを指で摘んでアヒル口!」
第、640話 吾輩はダニである (2011.10.02)
今までどんな生き方を経て此処まで辿り着いたのかが思い出せない。
公園のゴミ箱に捨てられていた週刊誌の表紙は『人生に耐えろ道連盟会長』の写真。
それはそれは大きな豪邸に住んでいる。左腕にはロレッ●スの腕時計。背後にメルセデス●ンツ。
『人生に耐える美学』シリーズの公称部数は常に100万部を突破するベストセラー。
それに便乗してか、『人生に耐えてお小遣い』と謳う外国人が公園に頻繁に出没。
薄汚れた身なりだが前歯にはダイアモンド。浮浪者に演説をした後、怪しげな仕事を持ちかける。
一人の浮浪者のオヤジがくすねてきた束ねられた古本の週刊誌の表紙に一昔前の首相の写真。
『痛みを伴う改革』を謳い、国民に「痛みに耐えろ」と連呼。今や、自殺者数は毎年3万人超え。
公園の遊具の周り、子供の手を引く母親達の多くは、ガイガー・カウンター片手にやって来る。
足を切断された大量のハト。体に火を付けられ走り回る野良猫。闇討ちされる浮浪者。
今までどんな生き方を経て此処まで辿り着いたのかが思い出せない。
吾輩はダニである。誰の目にも留まらず、見つかったら見つかったで恐らく難無く潰される。
第、639話 お茶目なエクトプラズム (2011.09.25)
「私が美少女霊媒師の、古代蓮
泉です」
「僕が好きな娘に100回告白をして全て振られたのは悪霊の仕業と考えているのですが」
「では、あなたにはその悪霊が見えるのでしょうか?」
「犬は見えますよ。この子が最近飼い始めた犬で名前は『エクトプラズム』」
「犬ではありません。悪霊が見えるかどうかです」
「本当はバッファローを飼いたいのだけど、犬なら近所の散歩で済んでも、
バッファローは大平原を大移動させなければならないから渋々諦めてます」
「ではあなたは渋々この犬を飼っているのでしょうか?」
「カニを掴めないのは子供の頃にカニにハサミで指を切られた出来事のトラウマなんです」
「あなたは過去に入院していた昔の彼女から『つたの葉が全て散ってしまったら
あたいもおっ死ぬの』と言われ、一枚の葉の画を描いたでしょ。でも彼女は亡くなってしまった」
「そうです。余りに僕の画は下手でバレバレだったんですよ。では、悪霊はその亡くなった彼女?」
「違います。」
「あっ!エクトプラズムが下手くそな一枚の葉の画のエクトプラズムを口から出しまくっている」
「後は、あなたがカニを掴めるように修行を摘んでみて下さい」
「美少女霊媒師の古代蓮
泉先生、本日は本当にありがとうございました」
「また何かありましたらご連絡を・・・・・・」
・・・・・・それから数ヶ月。
エクトプラズムは下手くそな一枚の葉の画のエクトプラズムを未だ口から出しまくっている。
相変わらず、カニは水槽の中から僕にハサミを立てて威嚇してくる。
只今、好きな娘から150回振られ記録更新中。
僕は、美少女霊媒師の、古代蓮
泉先生に連絡をした。
「あなたはまだ渋々その犬を飼っているのでしょうか?」
エクトプラズムは僕を見上げながら、エクトプラズムを口から出しまくっている。
相変わらず、カニは水槽の中から僕にハサミを立てて威嚇している。
僕は、美少女霊媒師の、古代蓮
泉先生にこう告げた。
「美少女霊媒師の、古代蓮
泉先生、僕にも悪霊が見えました。悪霊は僕自身だったんです」
そして好きな娘には、『君の事、諦める事にしました』とメールで送った。
何時しか、エクトプラズムはエクトプラズムを出さなくなった。
カニは水槽の中で穏やかに過ごし、僕が掴んでもおとなしい。
数週間後、好きな娘から、僕に初めてのメールが届いた。
第、638話 きみの顔
(2011.09.18)
僕の好きな、きみの顔。
多様化するニーズに合致した、耳。
土壌状態を順を追って改善する、鼻。
大量の鳩たちが一斉に飛び立つ、口。
理論的には間違っている、輪郭。
市販のものとは全く違う、額。
壁の汚れが目立たなくなる、眉毛。
勝負は試合の前についている、睫毛。
押し潰されそうな重圧を感じる、泣きぼくろ。
ちょうど地球の裏側にある、眉間の皺。
この橋を渡ると二度と生きて戻れない、人中。
バタバタ音をたて走り回りまる、南蛮毛。
システムが安定して稼動する、外鰓。
僕の好きな、きみの顔。
10年ぶりに同窓会で再会した、昔のままの、きみの顔。
第、637話 雨が降ると草の匂いがする (2011.09.11)
みなさんこんにちは。スイカ割りフェチやんです。
スイカを割る時にだけ変態に見えると陰口をたたかれる、スイカ割りフェチやんです。
スイカを割る時にだけ変態に見えると陰口をたたかれる、スイカ割りフェチやんです。
大事なことなので2回いいました。
だがしかし、スイカ割りの季節はもう終わりを告げています。
なので、今の季節、誰からも変態には見られないはずの、スイカ割りフェチやんです。
なので、今の季節、誰からも変態には見られないはずの、スイカ割りフェチやんです。
話の流れ上なので2回いいました。
・・・・・・昨夜、夜道で知らない女に、警察を呼ばれました。
・・・・・・今朝、とある駅で、私服警察官に尾行されました。
・・・・・・公園で幼児に近付くとパトロール隊の取り囲まれます。
近日中に、バイト先の片想いしている女の子に告白して良いものか悩んでいる、
何故か、秋なのに、未だ誰からも変態に見られている、スイカ割りフェチやんです。
何故か、秋なのに、未だ誰からも変態に見られている、スイカ割りフェチやんです。
何故か、秋なのに、未だ誰からも変態に見られている、スイカ割りフェチやんです。
3回いいました。
スイカ割りの棒は何時だって外出中の必需アイテムです。
だがしかし日常での目隠しによる生活は考えていません。
雨が降ると草の匂いがする、スイカ割りフェチやんです。
第、636話 歌姫 (2011.09.04)
僕がまだ幼稚園児だった頃、我がマンドレイク幼稚園で園児による歌真似大会が開かれた。
僕は、絶対の自信を胸に、つ○だ☆ひろの、メリー・ジ○ーンを披露し優勝を狙った。
僕が歌った、つ○だ☆ひろの、メリー・ジ○ーンは、これまでの最高得点をたたき出した。
しかしながら、意外な人物が敵として僕の前に立ちはだかったのだった。
今想うと僕の初恋の相手、清楚で可憐なアルラウネ秘子ちゃんがステージに登場。
アルラウネ秘子ちゃんはジャニス・ジ○プリンの、サマ○タイムを熱唱し見事優勝。
その日から僕は人生の目標を見失い、無気力状態が続き、心に空洞を抱え、淡々と生きてきた。
あれから幾年月、僕は嫁にも逃げられ、今年5歳になった一人息子の手を引いて、
とある工業地帯主催の、第一回工業ゆるキャラまつりの会場に遙々やって来ていた。
ゆるキャラの、十字穴付きタッピンねじくんや、ニードルローラーベアリングにゃんに、
息子との記念撮影をしてもらった後、なんと、ちびっこカラオケ大会の参加者受付中だそうで、
僕は透かさず、鍛え上げてきた息子をエントリーに加えて頂いた。そして、大会本番。
息子は、ジェームス・ブラ○ンの、It's
A Man's ○an's Man's Worldを披露。
息子の、It's A Man's ○an's Man's
Worldは、これまでの最高得点をたたき出した。
次の瞬間、僕は目を疑った。想い出のアルラウネ秘子ちゃんがステージに登場したからだ。
いや、その幼い娘に会場から声援を送っている母親がアルラウネ秘子ちゃんに違いない。
アルラウネ秘子ちゃんの娘は、アレサ・フランク○ンの、Ch○in
Of
Foolsを熱唱し見事優勝。
親子二代で敗北・・・・・・。
僕と僕の息子は人生の目標を見失い、無気力状態が続き、心に空洞を抱え、淡々と生きた。
第、635話 役割の話 (2011.08.28)
A子「今度交番に新しく来た若いおまわりさん、イケてるわよね」
B子「私たちでファンクラブ作りましょう!そうしましょう!」
C子「そうよ!イケてる若いおまわりさんを守って差し上げる事が国民の義務よ」
A子「じゃ、私、会長」
B子「そんじゃ、私、副会長」
C子「私、彼女」
A子「じゃ、私、膝枕で耳掃除」
B子「そんじゃ、私、ツンデレメイド」
C子「私は、ある日、捨てられていた仔犬を拾うの。でね、
おうちでは飼えないから神社の裏でこっそり飼って餌をやったりして、
そしたらある日、イケてる若いおまわりさんが『そこで何をしているのかな』って、
私が事情を説明してあげると、『君はなんて優しくて美しい女性なんだ』って、
そして夕日の中、二人と一匹の仔犬は・・・・・・」
A子「なげーよ」
B子「ねえ、イケてる若いおまわりさんが悪の道に走ったら大変じゃない?」
C子「そうなのよ!イケてる若いおまわりさんを守って差し上げる事が国民の義務よ」
A子「じゃ、私、イケてる若いおまわりさんが届けられた落とし物の
サイフからお金を猫糞しないように気を付けて見張ってあげる事にするわ」
B子「そんじゃ、私、イケてる若いおまわりさんがコンビニのトイレに
拳銃をうっかり忘れたりしないように気を付けて見張ってあげる事にするわ」
C子「私は、イケてる若いおまわりさんが盗撮や夜中にパンティ泥棒や
女風呂の覗きなんてうっかりしないように気を付けて見張ってあげる事にするわ」
A子「でも、イケてる若いおまわりさんが飲酒運転しようとしたらどうしよう」
B子「私、自動車免許持ってないわよ」
C子「もし、イケてる若いおまわりさんがハーレーダビットソン乗ってたら?
大型自動二輪MT免許も取得しなければ運転代行してあげられないじゃないの」
A子「イケてる若いおまわりさんを守って差し上げる事が国民の義務よね」
B子「イケてる若いおまわりさんを悪の道に迷い込まないようにして差し上げる事が国民の義務よ」
C子「イケてる若いおまわりさんを守るため、キチンとファンクラブ役割分担しましょうよ」
A子「じゃ、私、会長」
B子「そんじゃ、私、副会長」
C子「私は、ある朝、公園で捨てられていた数匹の仔猫と出会うの。でね、
私ったら猫アレルギーだし、だから顔を赤く腫らし、鼻水を垂らしながら、
数匹の仔猫を抱えつつも、公園のベンチで一日中のたうち回っているの。
そうしたら、イケてる若いおまわりさんが『そこで何をしているのかな』って、
私が事情を説明してあげると、『君はなんて清らかで魅力的な女性なんだ』って、
そして夕日の中、二人と数匹の仔猫は・・・・・・」
A子「なげーよ」
B子「あれ、イケてる若いおまわりさんが・・・・・・」
C子「すっぽんぽんになって交番の前で踊り出した」
A子「若しや、交番の上司からの虐めだわ」
B子「案外、本能の赴くままにだったりして」
C子「兎にも角にも、ファンクラブは只今を持って解散!」
第、634話 アイドル、猫耳姫イチゴ 弱冠16歳 (2011.08.20)
奴は、猫耳姫イチゴサードシングル『カンガルーでもええねんで!!』の
発売記念イベントの日に突然現れた。
「お母さん!アイドル時代のお母さんに会えて嬉しいです」
1月の小雪舞う日、ダウンコートを着た30代ぐらいの大人の男性。
「お、お母さん?私?お母さん?えっ?」
「そう、シングルマザーで苦労しながら僕を育ててくれた・・・・・・」
握手会の短い時間制限により係員の誘導に従い敢えなく「瞼の母ごっこ」終了。
次に奴は、猫耳姫イチゴ写真集『口移しのカンガルー』発売記念イベントの日に現れた。
「・・だからね、ビデオで観たアイドル時代のお母さんそのまんまなんだ」
4月の桜舞う日、ダウンコートを腕に抱えた薄手のセーターを着た大人の男性。
「あなたのほうがずっと年上だわ」と言い返してみると、
奴は、「本当は未来から物を持ち込んではいろいろと不具合が生じてね・・
でもこれはまあデータだから・・」と言って、携帯の待ち受け画像を私に見せた。
「僕の高校卒業記念も兼ねてお母さんを旅行に連れて行ってあげた時の写真だよ」
「もう!あなたの職業ってCGデザイナーか何か?」と訊ねてみたけれど・・
「この時代の携帯を古銭でわざわざ買ったんだよ」って、答えになってない!
握手会の短い時間制限により係員の誘導に従い敢え無く「瞼の母ごっこセカンド・シーズン」終了。
・・携帯の待ち受け画像には、どことなく私の母似の女性の肩に甘えるように後ろから
優しく抱き付いていた、まだ若かりし頃の?、私、猫耳姫イチゴの息子を名乗る、おかしな奴。
次に奴は、猫耳姫イチゴDVD『行くぜっ!怪盗カンガルー』発売記念イベントの日に現れた。
「・・だからね、これ、必ず読んで下さい。もう帰らないといろいろと不具合が生じてね・・」
8月の陽炎漂う暑い日に、ダウンコートと薄手のセーターを腕に抱えた、Tシャツ姿の、奴。
握手会の短い時間制限も待たずに係員の誘導も必要とせず「瞼の母ごっこサード・シーズン」終了。
イベント終了後、次の仕事に向かう車の中で、猫耳姫イチゴの息子を名乗る奴からの手紙を読む。
『・・・・・・それは、あの待ち受け画像写真のお母さんの数年後の出来事でした。』
・。・゜。☆・。・゜・。・。。・。・゜★・。・。・゜・。・゜。。☆・。・゜。・
「お母さん、タクシー来たよ!」
私は、もう随分と黄ばんでしまった一通の手紙を読み返していた。
『・・不具合を避けるため、自分が生まれる前のお母さんでなければならなかった』
部屋の中、本棚の上に飾られたフォトスタンドには、元アイドル、
猫耳姫イチゴこと、私と、私の肩に甘えるように後ろから優しく抱き付く息子の写真。
息子が高校卒業記念も兼ねて私を旅行に連れて行ってくれた時の写真。
「お母さーーーん!!!」
今から十数年後には、若くして新たな相対性理論を物理学会に発表するはずの自慢の息子です。
それとも・・・・・・
私はこれからその息子に予約を入れておいてもらった、がん検診に出掛けてきます。
第、633話 空からカンガルーを見てみよう (2011.08.14)
S川M代、12歳。
夏休み、とんでもない夢を見た。
片想いしているM田S次郎とオーストラリアで新婚旅行。
ふたり、夢の中でおとなぁ!
S次郎「これがおらが拵えた熱気球じゃ」
あたし「あら、野性のカンガルーの群れだわ」
S次郎「おらはこうして空からカンガルーが見たかったんじゃ」
あたし「大変!熱気球が見る見る萎んでいるわよー」
S次郎「だとしたらこのまま落下じゃー」
・・・・・・目覚める。
喜ばしいやら!!!恐ろしいやら!!!
小学校の一斉登校日。
S次郎がクラスでお祭り騒ぎ。
S次郎「おら、家族でオーストラリア行って来たじゃ」
・・・・・・ギクッ!!!
S次郎「熱気球乗ってカンガルー見てきたじゃ」
・・・・・・ギャッ!!!
S次郎「おら決めた!大人になったらオーストラリアに嫁っこ連れて、
手作りの熱気球で一緒に仲良く空からカンガルーしこたま見るじゃ」
・・・・・・ゾゾッ!!!
将来、あたしはS次郎と付き合う事になったらどうしたら良いやら??!
将来、あたしはS次郎と結ばれる事になったらどうしたら良いやら??!
もし正夢だったら、喜ばしいやら!!!恐ろしいやら!!!
S次郎「人生は太く短くじゃ」
あたし「だから一々言う事怖いって」
・・・・・・そうだ!未来は自らの手で変えていくものだ。
キョトンとするS次郎にあたしは言った。
あたし「オーストラリアには死体を漁るタスマニアデビルという怖〜い動物がおるぞぉ〜」
S次郎「な、なんだってぇ〜」
あたし「デビルだぞぉ〜、デビルだぞぉ〜」
S次郎「ひ、ひえぇ〜」
あたし「良く生きて帰って来られたなぁ〜」
S次郎「知らんかったじゃよ〜」
あたし「オーストラリアに新婚旅行なんて止めておけぇ〜」
S次郎「ま、まったくじゃ〜」
・・・・・・占めた!軌道修正に成功。
S次郎「新婚旅行はオーストラリア止めてアマゾンで空からおサルさんを見る」
・・・・・・・アマゾン?熱気球落下?未知の部族?拉致?人食い文化?
あたし「あ、アマゾンに新婚旅行なんて止めておけぇ〜」
S川M代、12歳。
正夢だったら、喜ばしいやら!!!恐ろしいやら!!!な、夏の日の恋心。
あたし「そもそも、熱気球手作りなんて止めておけぇ〜」
S次郎「ま、まったくじゃ〜」
第、632話 初恋の相手 (2011.08.07)
初恋の相手には会わない方が良いと言うではないか。
あたしの初恋の相手は10歳年上の近所に住んでいたお兄ちゃんのような人。
尚更の事、初恋の相手には会わない方が良いと言うではないか。
公園で、幼かった泣き虫のあたしが泣いているとお兄ちゃんが頭を撫でてくれた。
「ほら、もう泣くな!カンガルーは6500万年前の中生代にはいたと考えられているらしいぞ」
そう、幼かった泣き虫のあたしが泣いているとお兄ちゃんが頭を撫でてくれた。
「ほら、もう泣くな!マクスウェル方程式は古典電磁気学の基礎方程式らしいぞ」
何時だって、幼かった泣き虫のあたしが泣いているとお兄ちゃんが頭を撫でてくれた。
「ほら、もう泣くな!ヘロンの回転球は世界初の蒸気機関とされているらしいぞ」
だから、初恋の相手には会わない方が良いと言うではないか。
あの頃、幼かったあたしも薹が立ったのだから、お兄ちゃんはそれはそれは・・
頭は禿げ上がり、メタボ体型で、顔に巨大ホクロ、耳毛ボーボー、鼻毛に枝毛。
ソファーなどに飛び乗れなくなり緩慢、夜鳴きが酷く、排泄のコントロールが効かずお漏らし。
散歩中に一方向にクルクルと回り続ける歩行障害、最早フリスビーを投げてもキャッチ出来ず。
・・・・・・そんなお兄ちゃんの姿なんて、あたし、見たくない。
夏休み、実家に帰ると、お兄ちゃんも実家に戻っている事を親から知らされた。
少なくとも、写真のお兄ちゃんは、あたしの記憶に近いままの、お兄ちゃんだった。
派遣切りに遭い、ダンボールの寝床で亡くなっていたところを発見されたらしい。
葬儀の帰り、お兄ちゃんと遊んでもらった公園で、泣き虫のあたしはこっそり泣いた。
そんな泣き虫のあたしを、あの頃と同じように、お兄ちゃんが頭を撫でてくれた。
「ほら、もう泣くな!トリブラキディウムは先カンブリア紀に生息していた海生生物なんだよ」
第、631話 猫目耳毛子の真実 (2011.07.30)
B研究室がある建物に黒塗りの車が横付けされる。
車から降りてきた身なりの良いスーツ姿の男性が一人、建物の中に入る。
まだ若いがこの道のスペシャリストな科学者が、薬品をスーツ姿の男性に手渡す。
「これが、『服用すればご主人様にワンワン薬』かね」
「一錠服用すれば丸一日はワンワン効果が持続します」
スーツ姿の男性は、とある大手芸能事務所の社長である。
最近は、タレントがblogやTwitterなどに己の正しい意見を素直に書き込んで、
結果、芸能事務所に闇の圧力が加えられ、そのタレントの解雇にまで発展する。
もちろん、blogやTwitterへの事務所側などのチェック態勢は強化するも、
チェックをする側のチェック、そのまたチェックなど、永遠に切りがない。
困り果てていた芸能事務所の社長に顔見知りだったこの科学者がこの薬を薦めた。
早速、翌朝から社長は所属タレント及び全社員にこの薬を栄養剤と称し強制した。
だがしかし、事務所の所属タレント及び全社員にはニャンニャン効果が効き始め、
その事務所の所属タレントのblogやTwitterは、裏ネタ・闇ネタ騒動で大騒ぎ。
その闇ネタの中に、自殺したと言われているアイドル、猫目耳毛子の真実があった。
数ヶ月後には警察が重い腰を上げ、この大手芸能事務所の社長並び一部の社員は逮捕。
「社長に手渡したあれは、『服用すればマイペースでニャンニャン薬』だったかな」
まだ若いがこの道のスペシャリストな科学者が、B研究室の中、ひとり呟いた。
暫く倒しておいた、机の上の、猫目耳毛子の写真を入れたフォトフレームを立て起こし、
「まだ闇の奥に真相が隠されているんだよね」と、また一言、科学者は、ひとり呟いた。
第、630話 足の形をした軽石のような人生 (2011.07.24)
日曜の午後、話題の映画のDVDをレンタルにて鑑賞。
『足の形をした軽石のような人生』という作品。
ある日、主人公の美人妻がショッピングに繰り出す。
とある店で足の形をした軽石が大量に売られていた。
ならば、笹かまぼこの形をした軽石は無いのかと主人公の
美人妻は散々探し回ったが残念な事に探し出す事は出来なかった。
美人妻はスーパーの食品売り場にて笹かまぼこを恨めしく睨む。
あたしはこの映画のDVDを観ながら我が担任の先生を思い出した。
あぁ!先生に恋い焦がれている。だがしかし、あたしは生徒。小学4年生。
なんと同じクラスに先生の甥っ子。奴はあたしに恋い焦がれてやがる。
美人妻はスーパーの食品売り場にて笹かまぼこを恨めしく睨む。
美人妻は笹かまぼこを購入し家に持ち帰り浴槽で足の踵をゴシゴシ。
だが、笹かまぼこには伝わぬ想い。心の行き場を失った美人妻は・・
なんと同じクラスに先生の甥っ子。でも貴様では先生の代行すら無理。
あぁ!先生に恋い焦がれている。だがしかし、あたしは生徒。小学4年生。
その時、あたしは話題の映画のDVDの中の美人妻の驚きの行動に驚愕した。
美人妻は足の形をした軽石を購入し家に持ち帰り、ヤスリでゴシゴシと加工。
売っていないのなら己で作れば良いだけさ!笹かまぼこの形をした軽石。by.美人妻。
一つ前の席に座る、恋い焦がれている先生の甥っ子の後頭部をヤスリでゴシゴシ。
そんな事を妄想しつつ、やっぱし映画は現実と似て非なるものと悟る、日曜の淡い午後。
by.小学4年生。
第、629話 恋愛量保存の法則 (2011.07.18)
あたしが格闘靴下人形部のP太郎くんのことを好きな素振りをする。
その後、お喋りなA子やB子がコソコソと噂話を始めるに違いない。
それを耳にしたK次郎やR左右衛門は格闘靴下人形部の連中に耳打ち。
やがてP太郎くんがあたしの淡い気持ちに気付く日が来るに違いない。
あたしを気になり始めたP太郎くんが、あたしを気になる素振りをする。
それに気付いた格闘靴下人形部の連中が、K次郎やR左右衛門に耳打ち。
K次郎やR左右衛門の噂話にお喋りなA子やB子なら必ず飛びついてくる。
A子やB子があたしに、P太郎くんのあたしに対しての噂話を伝えてくる。
ある系に外部から力が加わらないかぎり、その系の恋愛量の総和は不変。
M咲はP太郎くんの幼なじみで学校への行き帰りは時折ふたり一緒なんだ。
どうやらM咲がP太郎くんへ幼なじみからの進展第一歩を踏み出したようだ。
A子やB子の噂話。K次郎やR左右衛門の妄想。格闘靴下人形部連中の鼻血。
完全弾性素振りの恋愛エネルギーは破壊され、恋愛量バランスが崩れ去った。
A子やB子、K次郎やR左右衛門、格闘靴下人形部の連中、遠巻きに、遠慮がち。
・・・・・あたしとP太郎くんだって、廊下で気まずく擦れ違う。
そんなある日、あたしがひとり帰宅途中、とある曲がり角から飛び出した・・
「ぼくはね、きみに一番夢中なんだ」。顔を覗かせた靴下人形があたしに喋った。
P太郎くんの心が直接あたしに衝突して弾けたあたしをP太郎くんが抱きしめた。
閉ざされたままの恋愛エネルギーの総量は変化しないが破壊された事により進展。
あたしとP太郎くんの恋愛エネルギーはそれ自身は不滅であり永遠に保存される。
・・・・・あたしとP太郎くんのこの淡い出来事は不滅であり、永遠に保存される。
第、628話 ロッカールーム (2011.07.10)
深夜2時、S子はどうにも眠れなかった。
それは、熱帯夜のせいだけではなく、
小さなカフェインおじさんの悪戯でもなく、
S子の心に引っ掛かった、何かのせいだった。
S子は昨日朝からの自分の行動を思い返してみる。
いつものように、起きたらまず目薬を差した。
歯を磨き顔を洗い・・・・・・。ここらは省略か。
駅までの道も電車移動も、まるで見飽きたB級映画。
職場に到着。みんなに『おはよう』。平凡なOL稼業。
昼休み。お調子者のN男が気持ち元気がなかったかな。
まあ、それは良しとして・・・・・・。
在り来りな午後を経て、ロッカールームで帰りの着替え。
女三人寄れば何とやらで着替え終わってもぺちゃくちゃ。
まあ、それも良しとして・・・・・・。ん、その時確か、、
お喋りC子、『E子がN男にコクられたから振ってやったとか』。
お調子者のN男はE子が好きだった?
だから元気がなかった?
『ふ〜ん、、だから、、』としかその時は答えようがなかった。
「・・・・・・・・・・・・」
深夜2時半、S子はどうにも眠れなかった。
それは、熱帯夜のせいだけではなく、
小さなカフェインおじさんの悪戯でもなく、
S子の心に引っ掛かった、何かのせいだった。
「あっ!そうかぁ!!!ロッカールームだ・・」
S子はロッカールームのロッカーの上にその日何故か一個だけ置いてあった
ビックサイズなこんにゃく芋が心に引っ掛かって眠れなかったのだと気付く。
やれやれ、これで眠れると、S子は目を閉じる。
「・・・・・・・・・・・・」
深夜3時過ぎ、S子はどうにも眠れなかった。
それは、熱帯夜のせいだけではなく、
小さなカフェインおじさんの悪戯でもなく、
ロッカーの上のビックサイズなこんにゃく芋でもなく、
S子の心に引っ掛かった、何かのせいだった。
第、627話 夏だ!怪談だ!マタタビの、『金魚村』 (2011.07.02)
僕の住む村は金魚村と呼ばれている。
とは言え、そう呼んでいるのは村の人々だけで、
そもそも、僕たちはこの村の中だけの生活しか知らない。
村には広範囲に渡って頑丈な柵が設けられており、
その向こうでは顔まで隠した作業着の人物が入れ替わり監視を続けている。
僕たちは、鑑賞用に育てられている金魚なのだ。
そしてこの村は、恐らくは養殖場なのであろう。
この村の人間の肌の鱗模様が鑑賞用の基準になるのだろうか、
度々、顔まで隠した作業着の人物に一人、二人と、選ばれ、捕まえられて、
この村からどこかへと連れ去られ、そして、二度とこの村には帰ってこない。
この村には成人が極めて少ないのである。だから僕にも既に親はいない。
どこか遠い村に住む愛好家に売り捌かれてしまったのだろう。
そもそも、僕たちはこの村の中だけの生活しか知らない。
実はこの村の本当の名前すら知らない。
『金魚村』なんて名称、それは、この村に代々語り継がれたものだ。
そして、『金魚村』には続きがある。
この村には、海が見渡せる絶壁に大きな石碑があり、そこには何体もの地蔵が並んでいる。
その石碑にどのような文字が掘られていたか判らないほど古めかしい。
僕たちは本来の人間には鱗模様など無かったはずと伝えられてきた。
実は、この村は遠い昔、よそ者を排除する意識がそれはそれは強い村であった。
ある日、年頃の男女が駆け落ちをしてきたらしく、この村に身を隠すために立ち寄った。
だがしかし、この年頃の男女は我々の村のご先祖様に斧や鍬で殺害されてしまった。
それ以後、この村の人々には体中に飛び散った血のような模様が浮き出るようになった。
しかも殺害された男女の年齢に近付く者は原因も判らないまま次々と亡くなってしまう。
まだ幼い内から亡くなってしまう子供らも増え続け、それは現在まで延々続いている。
何故かと言うと村のご先祖様に殺された女はその時身ごもっていたそうである。
我々の村のご先祖様は、祟りを鎮めるために石碑を立て、祟りで亡くなった人々も地蔵で供養した。
だから、この村には、海が見渡せる絶壁に大きな石碑と何体もの地蔵が並んでいる。
海沿いにはコンクリートで覆われた巨大な幾つかの建物とそこにも顔まで隠した作業着の人物。
よそ者を排除する意識が強かった村は、現在、よそ者に支配されてしまっている。
僕の住む村は金魚村と呼ばれている。
とは言え、そう呼んでいるのは村の人々だけで、
そもそも、僕たちはこの村の中だけの生活しか知らない。
遠い昔に本当は何があったかなんて、実は、この村に住む人々は何も知らない。
第、626話 夏だ!怪談だ!マタタビの、『人面瘡』 (2011.06.26)
『人面瘡』。
それは、人の顔のように見えてしまう腫物とされる。
・・ある夏の夜。そこは、とあるアパートの一室。
別れを拒み泣きやまぬメイド服姿の女を男が絞殺してしまった。
メイド服姿の女に引っ掻かれた男の右手からは血が滲んでいた。
男は女の屍体からメイド服を脱がせ左肩に担ぎ上げ浴槽に運んだ。
翌日、ノコギリを購入する前に屍体から血を抜いておこうと思い、
台所から持ってきた果物ナイフの柄を男は強く握り締めた。
「うぅっ..」
・・・・・・思いの外、右手が痛い。
気付くと何時の間に右手がかなり腫れ上がっている。
そして、男の意思とは関係なく、それは、蠢いている。
やがて、見る見る膨れ上がり、それは、浴槽に横たわる女の顔のように見えた。
腫れ上がった右手は男のその痛みを無視するかのように開き、まるで、開いた口だ。
その開いた口は、ヘビが子牛を丸呑みするかのように浴槽に横たわる女を呑み込んだ。
その口は、最後には男をも呑み込んで、全てが大きな人面瘡の塊となった。
人面瘡の塊は殺される前の女へと復元しつつ、ミイラ化した男の体をそこから吐き出した。
・・朝日がカーテンの隙間から差し込む頃。
メイド服を着て復元を終えた女は警察を呼び、メイド服姿の女はその変死体の第一発見者となった。
パトカーのサイレンを耳にしながら、メイド服姿の女は心の中で何度もなんどもこう呟いた。
『これであなたの魂は永遠に私の中から逃れる事は出来ないわね』
第、625話 女傷心一人旅 ザリガニが教えてくれた事 (2011.06.19)
3年間付き合ってきた彼氏に振られた。
一人旅と言えばやはり見知らぬ土地の田んぼ。
蛙の合唱をBGMに私は一心不乱にザリガニを釣る。
コスプレ娘が好きという噂を耳にしてザリガニの着ぐるみを着て待ち伏せしたあの日。
水辺の自然が大好きという噂を耳にして、立体音響で聴く、水辺のせせらぎCDと、
立体そのものを観察出来る、バケツ一杯のザリガニをプレゼントしてあげたあの日。
デート中にカミツキガメに噛まれてじたばたしながら「この外来種めがぁ!」と叫ぶ姿に、
アメリカザリガニも食用蛙の餌として日本に連れてこられ養殖池から逃げ出してしまい、
野生化して増殖した外来種だという事を分かり易く何度も繰り返し説明してあげたあの日。
・・・・・・あゝ想い出は尽きる事はない。
『自由になりたい』と叫び、新たな門出を選んだひと。
脱皮するザリガニのように私を脱ぎ捨てて私を抜け殻にした。
私は釣ったバケツ一杯のザリガニに、「この外来種めがぁ!」と語りかけた。
バケツ一杯のザリガニは私を見上げながら、只、なすがままに。ありのままに。
田んぼに映える夕日が綺麗ね。そして、明日は必ず訪れるんだね。
女傷心一人旅。ザリガニが教えてくれた事。
蛙の合唱をBGMに私は脱皮するザリガニのように過去の小さな私を脱ぎ捨てた。
第、624話 異常接近でアルマジロが舞う (2011.06.12)
・・・・・・日本ではすっかりアルマジロショップが建ち並ぶ勢いだ。
近年、日本では原発事故の影響か、奇形の子の生まれる確率が増加し、
子供を作れずアルマジロを飼う家庭が増えたためのアルマジロブームだ。
甲状腺癌で子供を失ってアルマジロで寂しさを紛らかす夫婦も多く見受けられる。
だがしかし、アルマジロ違法輸入が横行し正規の売買に関しても世界中から保護を訴える声が加速。
そこに目をつけたアルマジロブリーダーがアルマジロ御殿をおっ建てるほどの盛況ぶり。
でも、更なる問題が浮上!日本で出産されるアルマジロに奇形が増え続けてしまい、
奇形アルマジロを山中に捨てるアルマジロブリーダーの連日の逮捕劇が新たなる社会問題に。
五体満足アルマジロは値段が跳ね上がり五体満足アルマジロはセレブな生物と化す。
そこで無闇に建ち並んでいたコンビニエンスなアルマジロショップはどうしたかと言うと、
『奇形なアルマジロを救おう運動』を起こし、庶民でも手の届く値段設定で起死回生。
うさ耳・垂れ耳アルマジロや、大きくつぶらなお目々の二重まぶたなアルマジロ、
手足が長いスレンダーアルマジロや、体色変化可能なカメレオンアルマジロなどが大人気。
そんなある日、とあるアルマジロショップに訪れた高校2年生のアル子(仮名)が、
「このアルマジロ、先輩のマジロー(仮名)くんにとてもそっくりだわ」と目を輝かす。
店員はここぞとばかり「入荷したばかりのイケメンアルマジロですぐ売れてしまいますよ」。
高校2年生のアル子(仮名)は速効「買います!」と声高らかに意思表示し、見事、購入に成功。
幸せ一杯の高校2年生のアル子(仮名)が振り向きざまに先輩のマジロー(仮名)くんと目があった。
思わぬ異常接近で目出度く高校2年生のアル子(仮名)の所有となったアルマジロが宙に舞う。
それを先輩のマジロー(仮名)くんがナイスキャッチ!粋にクラッカーを鳴らす店員と居合わせた客。
・・・・・・日本ではすっかりアルマジロショップが建ち並ぶ勢いだ。
そこで生まれる愛も多いが、子供を作れずアルマジロを飼う家庭も増え続けている。
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