横浜マタタビバージョンのFUNI WORLD

おバカショート劇場。

FUNI WORLD (23)


第、739話 同窓会での会話 (2013.09.01)
皆さん、こんにちは。
青春ドキュメンタリー擬き『オレたち、アタイたち』の時間です。
本日の主人公は、歩道や公園などの屋外で路上ライブを行っている、
自称エアマグロ解体ショーアーティスト、ランドセルうさ美々さんです。
「切っ掛けは、当時、片想いしていた人が、エアマグロ解体ショーに憧れを抱いていたからです。
その人は、風の噂では、現在、証券アナリストとして活躍しているらしいのですが・・・・・・。
最近、高校卒業後、何度目かの同窓会が開かれて、顔を出してはみたけれど、
友人グループは、大学卒業後には就職したり、結婚して子育てしながら働いていたり。
そんな人達から見たら私なんて遊んでいるようにしか見えないのかも知れません。
実際、『やだ、うさ美々ったらいい年してまだ夢を追い掛けているの?』とか、
『うさ美々もいい加減に現実を見ることを覚えたら?』とか、
罵るように忠告してくる人達もいました。でも、私のポリシーは、『遣り切ること』。
それは必ずしも結果ではないのです。私は私を決して諦めません」
本日の主人公は、歩道や公園などの屋外で路上ライブを行っている、
自称エアマグロ解体ショーアーティスト、ランドセルうさ美々さんでした。
さて、来週の、青春ドキュメンタリー擬き『オレたち、アタイたち』の時間は、
『ガトーショコラ隊 VS 紅ショウガ団、仁義なきバックギャモン対決!』
を、お送りする予定です??? 乞うご期待???


第、738話 ふたりで虹を見ませんか (2013.08.24)
「ツナマヨサンドイッチを貪り喰らう、そんな自分に憧れを抱いている。
あなたは、アニメ顔瞳子さんではないですか」
「え?わたし、ツナマヨサンドイッチは偶に口にすることはあっても、
決して、ツナマヨサンドイッチを貪り喰らう自分に憧れを抱いてなどいませんよ」
「そうとも言う」
「では、わたしはこれで」
「お待ち下さい。群の中から厳選された10匹のトムソンガゼルをこよなく愛している。
あなたは、アニメ顔瞳子さんではないですか」
「え?わたし、トムソンガゼルをこよなく愛してなどいませんし、
何故に、群の中から厳選された10匹なのか理解しがたいのですが・・」
「そうとも言う」
「では、本当に、わたしはこれで」
「扉の向こうのまだ見ぬ世界から訪れる。右肩に園芸ショベルを担ぎ、
左手でシュレッダーハサミをチョキチョキしている、そんな王子様を待ち望んでいる。
あなたは、アニメ顔瞳子さんではないですか」
「では、わたしはこれで」
「そうとも言う」
ー 本当に伝えたい言葉は、口に出すのは容易くはない。
「あの〜〜、ホースで水まきしてふたりで虹を見ませんかぁ〜〜〜」
ー 特に、淡く切ない胸の内は・・・・・・・・・・・。
「そうとも言う」


第、737話 猛暑だ!怪談だ!マタタビの、『むかさり絵馬』 (2013.08.18)
『むかさり』とは、東日本の古い言葉。
『嫁入り祝言』。詰まりは、婚礼を表す。
『むかさり絵馬』とは、山形県に古くから伝わる風習。
子どもを失った親などが、その子どもが成人した姿を
絵師などに描かせ、寺などに奉納した絵馬の事を言う。
せめて婚礼だけは挙げさせたいと、婚礼の様子を描いた絵馬が多く、
『むかさり絵馬』と呼ばれている。
但し、絵馬に描く、亡くなった人物の、婚礼の相手は、
架空の人物でなければならない。実在する人物を描いたら、
その人物は、あの世に連れて行かれてしまうから。
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某月某日。
いじめ自殺事件が発生した。
母一人、子一人だった家庭。
その被害者の母親は、我が息子の、
婚礼が描かれたむかさり絵馬を寺に奉納した。
ある日、いじめ自殺事件の被害者と同級生だった少女が、
その被害者が描かれたむかさり絵馬の婚礼の相手が
自分に似ていると耳にして、その事を確認しに、寺にやって来た。
驚いたことには、故人の戒名はともかく、少女に確かに似ている
花嫁には、少女の氏名がはっきり記載されていたのだ。
少女は、被害者の親にその事を訊ねようと寺の階段を下りようとしたその時、
背後に人の気配を感じたその瞬間、背中を強く押され、階段を転げ落ちた。
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警察での事情聴取。
いじめ自殺事件での、いじめた側とされる生徒数人が、
少女を寺の階段から突き落とし殺害したことを認めた。
その生徒達の自供によると、いじめ自殺が捜査され始め、
学校側が隠蔽を謀ろうとしていた時、少女がいじめた側の名前
全てを警察側に話そうとしていると匿名の手紙が届いたらしく、
最初は、絵馬の婚礼の相手が少女に似ている事を利用し、
花嫁の絵に少女の氏名を嫌がらせのつもりで書き込んだが、
震えながら寺の階段を下りようとしている少女の姿を目撃して、
脅しになると咄嗟に判断し、みんなで突き落としたという。
ただ、殺すつもりはなかったと、いじめ自殺事件の、
いじめた側とされる生徒の誰もが、殺意だけは否定した。
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墓参り。
いじめ自殺事件の被害者の母親が、
息子の墓に向かってこう囁いた。
「警察には提出しないでいた、おまえの日記に、
片想いだと書かれていた少女とあの世で幸せに暮らしているかい。
彼奴らに出した匿名の手紙の御陰で、おまえが大好きな少女も、
おまえの元へ無事旅立つことが出来たし、彼奴らも正式に殺人犯として
裁かれているんだよ。さあ、母さんも今からそちらへ行くからね」
そして、いじめ自殺事件の被害者の母親は、
息子の墓の前で、己の首にナイフを突き刺し、生涯を閉じた。


第、736話 恋する爆裂水晶 (2013.08.10)
ー 街には今日も恋の歌が流れている。
♪恋する爆裂水晶 イボ痔を触ってみたいよね ヘィヘイヘーイ♪
「ねえ、犬江、ここの飲食店、食後になんで爆裂水晶玉が出て来るの?」
「以前はフォー●ュンクッキーが出されていたらしいんだけど、
『占いが当たらない』とか一々ケチ付けられたことに店長が反発して、
『これで占いやがれ』と爆裂水晶玉が出て来るようになったらしいよ。
猫美、折角だから、片想いしている牛太郎君との相性とか占ってみたら?」
「何言っているのよ、犬江、こんな店長の嫌がらせ爆裂水晶玉を覗いて、
もし、牛太郎君が鼻血を垂らしながら、パンティを履いた木彫りの熊を
一心不乱に彫っている姿が浮かんできたとしよう。だとしたならば、
あたしはあたしの牛太郎君へのこの想いに今後どう言い訳したら、
まだ高校生のあたしはこれからの人生、大人の階段を無事昇れるというの?」
ー そんな会話が弾んでいる席の意外に近くの席でこのような会話も聞こえてきた。
「よう、馬次郎、ここの飲食店、食後になんで爆裂水晶玉が出て来るんだ?」
「以前はフォー●ュンクッキーが出されていたらしいんだけど、
『占いが当たらない』とか一々ケチ付けられたことに店長が地団駄を踏んで、
『これで占いやがれ』と爆裂水晶玉が出て来るようになったらしいけどな。
牛太郎、折角だから、片想いしている猫美との相性とか占ってみろよ!」
「何言ってるんだ、馬次郎、こんな店長の嫌がらせ爆裂水晶玉を覗いて、
もし、猫美が鼻息を荒くして、フンドシ姿のマッチョウサギブロンズ像を、
目を血走らせながら制作している姿が浮かんだとしよう。だとしたならば、
俺は俺の猫美へのこの想いに今後どのような解説を付け加えたら、
まだ高校生の俺は、明日へ続く坂道を転がり落ちずに登れるというんだ!」
ー 街には何時だって恋の歌が流れている。
♪恋する爆裂水晶 イボ痔を摘んで引っ張って ヘィヘイヘーイ♪


第、735話 星の夜 (2013.08.04)
星の夜。
科学的根拠も、証拠に基づいた判断も、
心の中に潜む伝承を消し去ることはない。
星の夜。
50億年後の未来の真実だって今は幻影に近い。
君がいた部屋。君が座っていた揺り椅子。君が壁に貼ったポスター。
星の夜。
ただ僕は、宇宙を見上げ、今夜、君に語りかけている。


第、734話 君が君を生み出す時 (2013.07.28)
芋虫だったらやがて成長して蝶に変容するよ。
カブトムシの幼虫だって、その頃はまだ土の中。
アヒルの雛扱いされた鳥は風貌が違うと虐められ続けたが、
その後、遺伝子に逆らうことなく見事に美しい白鳥に成長。
あの正義のヒーローも番組終了間近に姿を変え悪から人類を守り、
あの印籠の爺さんも、『だってなんだかだってだってなんだもん』
と言わんばかりに縮緬問屋から徳川光圀に一瞬でキャラ変し、
『あなたの人生、変わるわよ!』的に、悪代官を見事成敗する。
人生を振り返ればそれは予測不能に変わり続ける万華鏡の模様。
今現在、心に映る心象だって、瞬いた後には遙か過去のイメージ。
君が君を生み出す時、君はその時、必要な誰かを輝かせる。
その輝きは次に君を照らしてくれる。伝えた心が反射する。
未来を自ら失わせず。未来に逆らわず。未来を決して恐れず。
君が君を生み出す時、君はその時、必要な愛を手に入れている。


第、733話 『きゅん』を考える (2013.07.21)
「『きゅん』の暫く後に訪れる、些細な不安感」
「『きゅん』とするだけが『きゅん』ではないのなら、
その『きゅん』ではない『きゅん』に適合する言葉は何」
「『きゅん』では恐らくしゃっくりが止まらない」
「背中が『きゅん』とした場合、多くは病気が疑われる」
「『きゅん』の数日後に訪れる、溢れる想いと深い溜め息」
「『きゅん』の『ゅ』がよく見ると『ゆ』であったとしても、
それは強調するための『きゆん』ではなく、恐らく誤字である」
「『アニメのきゅん臭に、きゅん国のきゅん姫様が甚く御冠だ』
と叫ばれても、『貴様、隠れアニオタだろ!』と突っ込むより、
きゅん国のきゅん姫様に免じて、そこは、寛大に察してあげよう」
「何処ぞで因縁を付けられ、その因縁を付けられた糞野郎に対し、
何故か、『きゅん』する違和感に襲われた場合、その違和感の多くは
『きゅん』ではなく、刃物で胸を一突きされている可能性が極めて高い」
「『きゅん』のイメージカラーを問うと、『ピンク』や『カラフル』との
答えが比較的多いかも知れないが、因みに胸の中の肺の色は通常ピンクで、
狂煙家の肺はタバコのヤニでどす黒く染まり、肺胞が溶けてしまい後々切除」
「『あなたにきゅんしてま〜す』と告られ、思わず『きゅん』とした場合、
それを『もらいきゅん』と表現して良いのか悪いのかを問われた場合の回答は、
告白した人物の、告白の相手に対しての『きゅん』と、告白された人物の、
告白された事に対しての『きゅん』は違う感情の『きゅん』なので、それを、
『もらいきゅん』と表現する事は間違いと言える。だが、もし、告白された
人物が、過去に自分が誰かに対して告白した時の『きゅん』を、告白してきた
相手から思い起こす事で、告白してきた相手と同じ『きゅん』を我が事のように
『きゅん』した場合、それを『もらいきゅん』と表現する事は正しい表現と言える」
CM「パカポコきゅんきゅん音がする、サウンド缶ぽっくりは如何ですか」
第一回『きゅん』を考える。
提供は、超最先端テクノロジーで世界をリードする、『缶ぽっくり製作所』でした。


第、732話 扇風機アイランド (2013.07.13)
占い師「お二人の相性をズバリ占って差し上げます」
男「お、おうよ」
女「返り討ちにしてくれるわ」
占い師「近頃の猛暑を吹き飛ばす清涼感のあるキーワードを同時にお答え下さい。
そのキーワードを繋げた言葉から清涼感を得られたならば、お二人の相性は完璧です」
男「扇風機」女「アイランド」
占い師「扇風機アイランド?何か暑苦しい」
男「夏に島って結局陸地は灼熱じゃないか」
女「扇風機とは何よ!熱風しか来ないじゃん」
占い師「まだチャンスはあります。今度は夏の必需品を同時にお答え下さい」
男「消毒用エタノール」女「線香花火」
占い師「引火性・火気厳禁」
男「あ、危ないだろ」
女「焼かれたいのか」
占い師「まだまだチャンスはあります。夏のお奨めイベントは?」
男「カブトムシ捕ったら」女「バーベキューして鱈腹食らう」
占い師「喰うってか?」
男「喰えってか?」
女「喰えんのか?」
占い師「まだまだ判りませんよ!では、夏休みの思い出」
男「玉突き事故」女「墓参り」
占い師「・・最後のチャンスですよ、今年の夏の目標」
男「コイツと別れる」女「もう絶縁よ」
占い師「おっ!相性バッチリではないですか」
男「今後の人生の目標!もう占いは信じない」
女「今後の人生の目標!もう占いは懲り懲り」


第、731話 好きになってもらう事 (2013.07.07)
「よしよし、近いうちに、カンガルーの足でおまえの頭を撫で撫でしてあげる」
・・奴にそう言われてから既に1週間が過ぎた。
別にあたしは奴にカンガルーの足で頭を撫で撫でしてもらいたい訳ではない。
我が担任の50代女性教師に奴がうっかり『古漬け沢庵』と裏ニックネームで呼んでしまい、
仕方なくあたしが、激怒した50代女性教師に「イケメン男優Yがブログで『俺、古漬け沢庵が
大好物』って発言していましたよ」と宥めると、妄想をかきたてられた50代女性教師は御満悦。
そしてあたしは、以前から気になっていた奴からの、例のお褒めの言葉、
「よしよし、近いうちに、カンガルーの足でおまえの頭を撫で撫でしてあげる」
を頂戴し、妄想をかきたてられ、近々訪れるであろう?奴からの告白に万全を期し、
トイレにて、休み時間の度にさらさらパウダー入りウェットティッシュで体をゴシゴシ磨き、
片手間バストアップの秘術を片っ端から調べ尽くし、殿方のハートを掴む胸キュン仕草の
研究に日々明け暮れ、ネットでシェイプアップグッズをこれでもかと買い漁っている。
・・・・・・・・・・奴が後輩の女の子に告白したらしい。
別にあたしは奴にカンガルーの足で頭を撫で撫でしてもらいたい訳ではない。
あの時、あたしに対して発してくれた言葉が兎にも角にもうれしかったんだ。
あたしに眼差しを向けて発してくれた言葉が兎にも角にもうれしかったんだ。
1週間も妄想の世界へと誘わせてくれた言葉が兎にも角にもうれしかったんだ。
『好きになってもらう事』
その目標を掲げられた夢の1週間、あたしはどこかしら魅力的だったかなって、
未だ、鏡に冴えなく映る自分に、朝から晩まで、何度も何度も問いかけている。


第、730話 過去から未来へ (2013.06.30)
ー2013年6月30日 (無)ー
「みなさん、本日は、アイドルグループ『トキメキでんぐり返し』の
初ワンマンライブ、アンコール、ありがとうございました。
『トキメキでんぐり返し』リーダーの、グンパニエル【S】子です。
・・実は、突然ですが、あたし、グンパニエル【S】子は、今からちょうど
15年前の6月30日、2歳の時に、両親にパチンコ店の駐車場で車内に
放置され、死亡いたしました。正確に言いますと、本日、2013年6月30日は、
あたしが生きてきたことを前提として予測されていた、存在していない未来です。
なので、みなさん、そして、メンバーの、ゴスタニカ【A】菜。トハポッピ【K】美。
スイチョリン【M】羽。あたしは、やがて訪れる2013年6月30日の、このステージに
立つことはありません。あたしは生きていたかった。そして『トキメキでんぐり返し』の
メンバーとして、このステージに立ちたかった。だけど、あたしは永遠に、
『トキメキでんぐり返し』を、そして、『トキメキでんぐり返し』を応援して下さる
ファンの皆さんを愛しています。みなさん、メンバー、存在出来なかったあたしの未来、
さようなら・・・・・・・・・・」
ー2013年6月20日ー
「【A】菜、そろそろ、初ワンマンライブのリハーサルに行く時間でしょ。
何のんびり昔の雑誌なんて読み耽っているのよ。お父さんも無駄に溜めておいた
古い雑誌は今日こそまとめて自分で始末して下さいね!私が捨てると怒るでしょ」
「お母さん、15年前の雑誌にね、パチンコ店の駐車場で車内に放置され、
死亡してしまった女の子の記事があるの。グンパニエル【S】子っていう子なの。
どこかで聞き覚えあるような?でもそんな訳ないわよね。私もその頃、2歳だし・・」
「もう、あなたグループのリーダーでしょ、リーダーが遅刻したらみっともないわよ」
「はーい」
ー2013年6月30日ー
「みなさん、本日は、アイドルグループ『トキメキでんぐり返し』の
初ワンマンライブ、アンコール、ありがとうございました。
『トキメキでんぐり返し』リーダーの、ゴスタニカ【A】菜です。
こうして初ワンマンライブが満員のファンの方々と大盛況で終える事が
出来たのも、何というか・・・・・・・・・・
うすのろリーダーの私が『トキメキでんぐり返し』を引っ張って来られたのも、
何か、私たちを助けてくれている力というか、私たち3人以外にもう1人、
しっかり者のメンバーがいて、何時だって私たちを見守ってくれていたような・・
そんな気が、何故だか最近しています。それは、私たちを育ててくれている運営の方々や、
ファンの方々の、私たちへの優しい想いなのかも知れません。私たちはとても幸せです。
本当に、本当に、本日はありがとうございました」
アイドルグループ、『トキメキでんぐり返し』、初ワンマンライブ。
ダブルアンコールを求める声が会場に響き渡った。


第、729話 笑顔でタンバリン (2013.06.23)
我が校の校長が逮捕された。
小学生の通学路で下半身を露出。
以前から通報を受けていて張り込んでいた警官に御用。
そして、校長は停職1ヶ月からの依願退職で処分された。
とある進学校で有名だった学校が再編整備で他校と合併。
その元進学校から新しい校長が我が校にやってきた。
それからというもの、我が校の空気が一変。
受験生だった学年の我々は一番割りを食らった。
教室には体験したことのない冷たい風が吹き荒れた。
落ちぶれた生徒は汚物のような扱いをされ破壊された。
鼻の穴にチョークを詰め、廊下をゾンビのように歩く生徒。
頬を赤いチョークの粉で染め、教室の天井をただぼんやり見詰める生徒。
あたしの幼馴染みの友達は幼い頃からタンバリンが好きだった。
ある日、鼻の穴にチョークを詰め、廊下をゾンビのように歩く幼馴染みの友達に、
笑顔でタンバリンを叩いて聞かせると、幼馴染みの友達は、笑顔になった。
やがて我が校では、笑顔でタンバリンを叩いて聞かせる行為が流行し、
教室には以前のような暖かい光が満ち溢れるようになった。
でも、平和は長くは続かなかった。
元進学校からやってきた新しい校長は、タンバリンを叩く受験生を激しく嫌った。
そして、校則でタンバリン禁止令が発令されると、教室には冷たい風が吹き荒れた。
鼻の穴にチョークを詰め、廊下をゾンビのように歩く生徒。
頬を赤いチョークの粉で染め、教室の天井をただぼんやり見詰める生徒。
ある日、鼻の穴にチョークを詰め、廊下をゾンビのように歩く幼馴染みの友達に、
エア・タンバリンを叩く動作をしてあげると、幼馴染みの友達は、笑顔になった。
やがて我が校では、笑顔でエア・タンバリンを叩いて聞かせる行為が流行し、
教室には以前のような暖かい光が満ち溢れるようになった。
その頃、元進学校からやってきた新しい校長は、民家の風呂を覗き逮捕された。
そして、校長は停職1ヶ月からの依願退職で処分された。
我が校では、未だ、笑顔でエア・タンバリンを叩き合う行為が流行っている。


第、728話 そよ風 (2013.06.15)
奴がサプライズを匂わせている。
デート中、奴は何かと顔に出る。
動物園のホワイトタイガーだって、ほら、
奴の隠し通せないドキドキ感を察しているようだ。
奴がサプライズを漂わせている。
デート中、奴は何かと顔に出る。
水族館のタツノオトシゴだって、ほら、
奴の隠し通せないワクワク感を察しているようだ。
奴がサプライズを醸し出している。
デート中、奴は何かと顔に出る。
遊園地の大道芸人だって、ほら、
奴の隠し通せないウハウハ感を察しているようだ。
廃墟の工場が建ち並ぶ夕暮れの道。
「じゃ、またね」と手を振る私に、
「暫しお待ちを」と奴が大声で叫ぶ。
すると私の前に飼育員と共に現れた動物園のホワイトタイガー。
軽トラの荷台に積まれた水槽から見詰めてくる水族館のタツノオトシゴ。
そして、遊園地の大道芸人による曲芸ショー。
みんな、みんな、サプライズの仕掛け人だったのね。
何かの記念日ではなく、誕生日のお祝いでもなく、
時折、奴の満足感のために計画されるサプライズ。
廃墟の工場が建ち並ぶ夕暮れの道。
「じゃ、またね」と手を振る私に、
「じゃ、またな」と奴が手を振り返す。
そよ風が私の髪をなびかせてゆく。


第、727話 ピスタチオ顔チャンピオンシップ (2013.06.09)
ピスタチオ顔は競技である。
ピスタチオ顔は戦いである。
ピスタチオ顔は勇者の証である。
『ピスタチオ顔チャンピオンシップ』と名付けられたこのイベント。
我が町で毎年恒例だった『カラオケのど自慢大会』を打ち破り、
見事、今年から毎年の恒例化を目指し始まる夢の新企画なのだ。
一筆書きで描けそうな、ピスタチオ顔。
ギャグ漫画から飛び出したような、ピスタチオ顔。
常にぽかんと口を開け視線が宙を彷徨っている、ピスタチオ顔。
ピスタチオ顔同士がこのイベントが切っ掛けで結ばれたとしたら、
結婚式はピスタチオ顔親族で溢れかえり、ピスタチオ顔新郎新婦に
ピスタチオ顔参列者がピスタチオシャワーを大量に撒き散らすだろう。
こりゃまた、夢が広がる、『ピスタチオ顔チャンピオンシップ』。
『カラオケのど自慢大会』を望む『カラオケのど自慢大会』賛成派は言い放った。
「ピスタチオ顔チャンピオンシップなんて、何てくだらない、何てバカげた企画だ」
バカげた企画で何が悪い。
狂ったバカは醜いバカだけれど、
平和なバカは楽しいバカなんだ。
何時の日か、『ピスタチオ顔チャンピオンシップ』は、海外でも高く評価され、
必ずや世界に進出し、優れた世界チャンピオンを次々と生み出す事に成るだろう。
そしてもう一つ。小学生だった頃、同じクラスで『ピスタチオ顔』と罵られ、
散々虐められ、どこかへ遠くへ転校してしまった、堅殻木乃実子ちゃん。
僕はキミを探しているよ。『ピスタチオ顔』が胸を張れる時代がもうじき来るよ。


第、726話 でんでん虫の楊枝入れ (2013.06.02)
「これが、梅雨時に発見される可能性を持つと言われている、
何でも一つだけ願いを叶えてくれる、でんでん虫の楊枝入れですね」
「フリーのジャーナリスト君、君もボクの長き旅を5年に
わたり追い続けてきて、良く頑張ったと言わせて頂きたい」
「いや、あなたは結婚もされず、でんでん虫の楊枝入れ探しの旅を
若き頃から続けてきた。そして現在還暦を過ぎた。素晴らしい執念です。
しかし見たところ、難の変哲もない楊枝入れですけれどね。これ」
「遠い昔、『七福神』は実は『八福神』だったという説がある。
農家の人々に梅雨の恵みを与えていた、でんでん天様だ。
だが、人間に潜む邪悪な心に苦しみ、自らを楊枝入れに変化させた。
その楊枝入れは、人間のどんな願いも一つだけ叶えてくれる。
正義も、悪も、でんでん天様は、人間の心に委ねたとされている。
信○・秀○・家○も、でんでん虫の楊枝入れを血眼で探したとされる。
そして、誰かの願いを叶えた後、でんでん虫の楊枝入れは粉々に砕け散り、
翌年の梅雨には再生された形で現れ、願いを唱える人間が現れる日を待つ」
「そして、こう呪文を唱えるのですね!角だせ槍だせ頭だせ!
俺様を世界の支配者にしろ!!!あっ!?? ・・・・・・・・・・」
「フリーのジャーナリスト君、君に『消失の呪文』を教えておいて良かった。
もう君はこの世に存在しない『無』だ。さて、願いを叶えて頂く正しい呪文だ。
角だせ槍だせ目玉出せ!幼稚園児だった頃、S子ちゃんとケンカしたあの時代へ」
★・゜・。・゜。・。・゜☆★・゜・。・゜。・。・゜☆★・゜・。・゜。・。・゜☆
「S子ちゃん、S子ちゃん、カレーはやっぱり豚肉だよ」
「カレーは鶏肉だもん。あたい、あなたとはやっていけないわ!」
(ここまでが、S子ちゃんが遠くへお引っ越ししてしまう日の、前日のケンカだった)
「ねえ、S子ちゃん、豚肉でも鶏肉でも、おいしいカレーだよね」
「うん、そうだよね!豚肉でも鶏肉でも、おいしいカレーだよね」
★・゜・。・゜。・。・゜☆★・゜・。・゜。・。・゜☆★・゜・。・゜。・。・゜☆
そしてボクが現在に戻ると、でんでん虫の楊枝入れは粉々に砕け散り、
ボクの長かった旅も終幕と相成った。幼い頃からの胸のつかえが取れた。
恵みの雨が降り注ぐ。でんでん虫の楊枝入れはまたどこかで再生される。


第、725話 俯き加減 (2013.05.25)
友人が働いていた、とある街のペットショップ。
可愛い子犬達が愛くるしい顔でわたしを見上げていた。
わたしが友人に「抱かせて」と両手を伸ばすと、
次の瞬間、「はい、どうぞ」と言う声と共に、
わたしの両手には活の良いカツオがピチピチと跳ねていた。
顔を上げると笑顔が素敵な見ず知らずの男性。
それがわたしと奴との出会いだった。
いつも、ピチピチとした活の良いカツオを抱えていた、奴。
交際して二年目の頃、突然、奴は警察に連れて行かれた。
活の良いカツオで女性が頭を強打された事件の容疑者として。
でも、カツオはそもそも太平洋海域には大量に泳いでいる魚。
活の良いカツオを手にして歩いている人は奴だけとは限らない。
だが刑事がわたしの家にやってきて、「面通しで被害者の女性が
『奴』が犯人だと証言した」と言い、そして刑事はわたしに、
「アリバイの証言は嘘ですね」と言いながら怖い顔で睨んだ。
確かにわたしは奴から『自分が犯人だと疑われるのは嫌だから』と、
嘘のアリバイを頼まれ、わたしは警察に嘘のアリバイ証言をしていた。
でもそれは、「奴が犯人であるはずがない」と頑なに信じていたから。
・・わたしは刑事に全てを打ち明け謝罪した。
数日後、わたしは被害者の女性の家に出向き、奴の代わりに頭を下げた。
だが面通しについて、「刑事さんには『断言出来ない』と言った」と聞かされた。
わたしは刑事に、警察に、騙されたのだ。そして、その後、真犯人が逮捕された。
それから数年後、わたしは逃げるように移り住んでいた町で奴とばったり再会した。
その時、もう奴は、昔のようにピチピチとした活の良いカツオは抱えていなかった。
奴の目は、わたしを睨むでもなく、何かを訴える訳でもなく、ただ、わたしを見ていた。
わたしは、俯き加減で奴の横をただそのまま通り過ぎ、振り向きもせず歩いていった。


第、724話 法医学者_X (2013.05.19)
山中にて発見された白骨化した死体。
骨には刃物で刺されたような傷が無数にあり、
その死体は殺害され遺棄された事を物語っていた。
死亡時期不詳。死後1年以上経過したものと推定。
法医学者_Xは、自分の目を疑った。
頭蓋骨から復元された顔は、その法医学者が数年前に
酷いケンカ別れをした後、連絡が取れなくなっていた女に似ていた。
「忘れた事など無かった。何時だってキミを忘れた事など無かった」
法医学者_Xは、その復元された顔に、別れた女とは全くイメージが異なる髪型を選んだ。
眉毛は驚くほどのゲジゲジ眉毛に。ほっぺにはうずまきを描き、鼻水を垂らしてみた。
でもその復元された顔は、連絡が取れなくなっていた女に似ていた。
法医学者_Xは、何度も何度も強く頭を横に振った。
けれど、アジャ・コ○グメイク&ヘアーにまで辿り着いた復元された顔は、
それでもやはり、連絡が取れなくなっていた女に似ていた。
法医学者_Xは、狂ったように強く頭を横に振った。
然れど、波平ヘアー&鼻の穴と口の間に割り箸2本まで辿り着いた復元された顔は、
それでもやはり、連絡が取れなくなっていた女に似ていた。
法医学者_Xは、外傷性頸部症候群が心配されるほど強く頭を横に振った。
しかし、五円玉を鼻につけ、メドゥーサ宜しく蛇の髪の毛に辿り着いた復元された顔は、
それでもやはり、連絡が取れなくなっていた女に似ていた。
警察は、五円玉を鼻につけ、蛇の髪の毛を生やした女の顔の写真を公開し、
身元不明死者の情報提供を求めた。お心当たりの方は是非ご連絡ください。
「忘れた事など無かった。何時だってキミを忘れた事など無かった」
法医学者_X。
彼は、連絡が取れなくなっていた女はきっとまだどこかで生きていると頑なに信じ、
今日もまた、新たな異状死体の声に耳を傾けている。


第、723話 へちま縛り道場 (2013.05.11)
『日本の様々な伝統武術にも裏武術がある。
【へちま縛り道場】
年齢・性別・経験不問・随時門下生募集中!!』
・・・・・・と、道場を開いてみたものの、
待てど暮らせどこの道場には縛られへちまと拙者だけ。
『ダイエットから護身術、プロ格闘家も養成』
・・・・・・と、言葉を添えてみたものの、
縛られへちまの前でただ一人正座しているのは拙者だけ。
『精神鍛錬、健康維持、毛先のダメージケアに着目』
・・・・・・と、言葉を添えてみたそんなある日、
うら若き乙女が一人、道場の門を叩いた。
さて、それから数ヶ月・・・・・・・・・・。
縛られへちまと、正座する拙者と、まつり縫いが得意なうら若き乙女。
縛られへちまと、正座する拙者と、洗濯物を畳んでいるうら若き乙女。
縛られへちまと、正座する拙者と、本格的にだしを取るうら若き乙女。
稽古中、へちまを縛っている荒縄に安物の指輪が挟まれている事に、
うら若き乙女が気付いてから幾年月、縛られへちまの周りでは、
稽古に励む門下生数十人と、拙者と、門下生達に慕われるうら若き妻の姿。


第、722話 クライミングかるたジム (2013.05.05)
ー 悩みやストレス解消に。クライミングかるたジム ー
とあるビルの地下1階に、隠れ家的ジムを見付けた。
午前の部と、午後の部と、1日2回行われているらしい。
初回無料体験キャンペーンの言葉に釣られドアを開ける。
受付で説明を受ける。レンタルのシューズはちゃっかり有料。
通された部屋の壁の高い箇所に取り札が無数に掛けられていて、
その壁を登るためのクライミングウォールが設置されている。
その部屋の中央では読み札を読む読み人が正座していた。
読み人「夢に正面から・・・・・・・・・・」
取り人が一斉にクライミングウォールをよじ登る。
やられた、先に札を取られた。
『夢に正面から向き合えば一歩踏み出す方向が見えてくる』
そうだ。私は夢への近道と信じ、その夢とは薄い壁一枚隔てた、
夢とは隣り合わせであっても掛け離れた世界で燻ってしまっていた。
『全国鼻シャワー選手権』のチャンピオンを目指していたはずが、
気が付くと、動物園でゾウの飼育員を5年間もしていた。
ゾウをたっぷり観察したところで、鼻シャワーを極めるには、
時間を惜しまず己自身が黙々とトレーニングするしかなかったんだ。
読み人「自分が流した涙なら・・・・・・・・・・」
取り人が一斉にクライミングウォールをよじ登る。
またやられた、先に札を取られた。
『自分が流した涙なら、それを解決出来るのは自分しかいない』
何年経っても『全国鼻シャワー選手権』で優勝出来なかった。
涙目でゾウに愚痴っても、ゾウはリンゴをむしゃむしゃ喰らっていただけ。
ゾウに愚痴るよりも、己自身が黙々とトレーニングするしかなかったんだ。
読み人「求める笑顔は・・・・・・・・・・」
取り人が一斉にクライミングウォールをよじ登る。
やった!今度は私が先に札を取った。
『求める笑顔は手を伸ばしても探れない。笑顔は常に生まれてくるものだから』
今年、夏には『第38回全国鼻シャワー選手権』が開催される。
体力的な事を考えれば私にはラストチャンスになる大会だ。
私はゾウから学ぶのではなく、ゾウと共に鼻シャワーに磨きを掛けるべく、
飼育員と動物の間柄ではなくライバルとしてゾウと鼻シャワーを競い合う毎日を送る事にした。
例え、園長さんに怒られようと。ゾウを観覧しにきた子供たちに指を刺され笑われようと。
昔、初恋の人が放った「鼻シャワーが素晴らしい女の子が好き」という言葉を抱きながら。


第、721話 午後の日差し倶楽部 (2013.04.27)
ー 悩みやストレス解消に。午後の日差し倶楽部 ー
とあるビルの3階に、隠れ家的倶楽部を見付けた。
午後2時、3時、4時の3回、50分間ずつ行われるらしい。
初回無料体験キャンペーンの言葉に釣られドアを開ける。
受付でパンフレットを頂く。
ー 殺風景な部屋、厚手のカーテンが引かれた薄暗い部屋。
その、カーテンの隙間から僅かに漏れる午後の日差しの中、
みんなで膝を抱えてご一緒に時を過ごしましょう。
10分おき程度で人間以外の生物の鳴き声のみ小声で発せられます。
あなたの心の迷いは減少します、瞳の中には星が輝きます ー
・・やばい!此処、間違ったかも知れない。
「そこのあなた、初回無料体験キャンペーンご利用の方ですね」
「い、いえ、あうぅ、今日は一先ず帰らせて頂きます」
「おいしいケーキがありますよ!」
「・・・・・・・・・・体験してみます」
午後2時の利用者が揃ったようだ。だがしかし、ケーキが見当たらない。
「あの、おいしいケーキは?」
先ほどの案内の方にそう訊ねると、
「この建物の近くのケーキ屋さんにおいしいケーキが沢山ありますよ」
・・やばい!此処、絶対間違った。
バタン!!!
ドアが閉められた!電気が消えた!
カーテンの隙間から僅かに漏れる午後の日差しの中、
誰もが座り込み膝を抱え始めた。
「もう・・・・・・・・・・」
私がため息を吐くと、誰かが「メエ〜」と小声で鳴いた。
「ヒヒーン」「ブヒブヒ」「ホーホケキョ」
更にに誰かが「ブッ・ポウ・ソウ ブッ・ポウ・ソウ」と鳴く。
なに???ブッ・ポウ・ソウ???なに???
また誰かが「ブッ・ポウ・ソウ ブッ・ポウ・ソウ」と鳴く。
なに???ブッ・ポウ・ソウ???なに???
50分間と言う重々しい時間が漸く過ぎ去りカーテンが開け放たれた。
「是非またおいで下さい」
・・・・・・・・・・い、いや、そう誘われても。
私は何かに取り憑かれたかのように近くのおいしいケーキ屋さんに入った。
「午後の日差し倶楽部から来ましたか?良くみんな来られるのですよね」
・・・・・・・・・・だろうね。
その日の夜は、無事に家に辿り着いた安堵感でぐっすり寝入ってしまった。
夢の中で何度も「ブッ・ポウ・ソウ ブッ・ポウ・ソウ」と鳴き声が聞こえた。
数日後、午後の日差し倶楽部にて、おトクな年間パスポートを購入した私は、
厚手のカーテンが引かれた薄暗い部屋で「ブッ・ポウ・ソウ ブッ・ポウ・ソウ」と鳴いた。
・・・・・・・・・・なんて事はない。
おいしいケーキ屋さんで食べたケーキの味が忘れられないのだ。
おいしいケーキ屋さんで食べるケーキでは断じてない。
午後の日差し倶楽部後においしいケーキ屋さんで食べるケーキだ。
単にその店で食べたのでは、あのおいしさは再現されなかったのだ。
そしてそのおいしいケーキを食べる事で不思議と悩みやストレスが解消される。
失恋で、深く傷付いていた私の心が少しずつ癒やされていく。
ブッ・ポウ・ソウ ブッ・ポウ・ソウ


第、720話 あのころの、雨 (2013.04.21)
奴と出会った日は雨だった。
初めてのデートの日も雨だった。
私は奴を『雨蛙』と呼び始めた。
奴と会う日は決まって雨だった。
おニューの靴で会いたかった日も、
おニューの靴で会う事はなかった。
おニューの傘を差して出掛けた日は、
突発的な暴風雨により傘は臨命終時。
私は奴を『ゲリラ蛙』と呼び始めた。
深刻な猛暑と雨不足の夏のある日。
奴から手渡された野外Liveのチケット。
天気予報だって自信満々に『快晴』。
・・・・・・・・・・・・・・・だった。
私は奴を『妖怪・的外し』と呼び始めた。
でも、私は雨が好きだった。
雨に日は何時だって奴と一緒だったから。
北風吹く晴れ渡った冬の日。
奴が私の女友達の肩を抱いて歩いていた。
・・・・雨に好かれていたのは私だったんだ。
あのころの、雨。
きらきらと輝きながら空から舞い降りていた、雨。
雨が、降っている。
その雨の、たくさんのひと滴に、なみだ目の私が映る。


第、719話 ちゃあめら (2013.04.14)
日本特有の一過性ブーム。
爆発的に流行し、僅かな時を経て一瞬で消え去ったものたち。
今は昔。心のアルバムを開くと呼び覚まされる思い出のスライドショー。
『ちゃあめら』
一時期はあれほど国民的ブームを起こした奇跡の大ヒット商品。
「今、私は、廃墟と化したちゃあめら工場の内部に進入しております。
レポーターの、ダイオウグソクムシ太郎です」
ある日、廃墟と化したちゃあめら工場に訪れたダイオウグソクムシ太郎は、
若かりし頃の思い出の、時折、風のように吹き付けてくるタイムトリップの
感触に何度となく足を止め、その度に一度、また一度、深い呼吸を繰り返した。
あれはまだ、ダイオウグソクムシ太郎が新人アナウンサーだった頃の話。
ダイオウグソクムシ太郎の先輩である女子アナウンサーが朝の情報番組で放った言葉。
「やっぱりケーキのお供は、紅茶とちゃあめらよね」
その日から、ダイオウグソクムシ太郎にとって、ちゃあめらはケーキのお供になった。
ホウライエソ洋子は、電気店に並んでいた数々のテレビから聞こえてきた、
『ちゃあめら』と言うワードに思わず立ち止まり、自分に一番近いテレビ画面に視線を向けた。
そのテレビ番組では、ダイオウグソクムシ太郎と言うレポーターが、廃墟と化した
ちゃあめら工場に訪れ、ノスタルジックを視聴者と共に味わうような構成が成されていた。
あれはまだ、ホウライエソ洋子が中学一年生だった頃の話。
自転車通学の帰り道、タイヤがパンクして困っていたホウライエソ洋子はクラスメイトの
男子に声を掛けられた。まだ、新入生だったし、その男子は何となくオタクっぽくて、
ホウライエソ洋子は最初だけ怪訝な表情を浮かべたが、その男子がちゃあめらを使い、
パンクの応急処置を手際よくしてくれた事で好感触を得たのか、「ありがとうね」と、
その男子に精一杯の笑顔でお礼を述べ、そして、心を躍らせながら家まで帰って行った。
その日から、ホウライエソ洋子にとって、ちゃあめらは恋心を刺激するワードになった。
オニキンメ大二郎は、テレビ局のスタッフにお礼を言われた後、自社が管理している、
今ではすっかり廃墟と化している元ちゃあめら工場の錆び付いた門を閉め、鍵を掛けた。
「ちゃあめらかぁ」そう一言呟きながら、オニキンメ大二郎の記憶は、遠い昔に旅立った。
初任給で購入した携帯電話。同期で入社したOLの○○子と偶然同じ機種だった。
「おや、おまえらお揃いで買ったのか」などと冷やかされた事が多少心地良かった。
退社後、食事を取ろうと入った、社から離れた店でOLの○○子とたまたま同席になった。
「この辺電波状況が悪いみたいだね」って言ったらOLの○○子は裏技を教えてくれた。
「伸ばしたアンテナにちゃあめらを上手く利用する事で電波状況が改善されるわよ」
「それ、どこから仕入れた情報」
「部長さんから聞いたのよ」
○○部長。そう言えば、○○部長もOLの○○子と同じ機種を手にしていたなぁ。
翌日からは、OLの○○子と○○部長のさり気ないアイコンタクトに気付くようになった。
もう止めてしまった会社での、正直、居心地が悪かった5年間の年月。
時代(とき)を経て、オニキンメ大二郎には既に、ちゃあめらは浄化された切なさであった。
日本特有の一過性ブーム。
爆発的に流行し、僅かな時を経て一瞬で消え去ったものたち。
今は昔。心のアルバムを開くと呼び覚まされる思い出のスライドショー。


第、718話 脳味噌垂れ子豚 (2013.04.07)
耳から脳味噌が垂れ零れている。
そう感じ始めたのはいつ頃からなのだろう。
実は、近頃やけに幼馴染み腐れ縁S子から、
「脳味噌垂れ子豚」と、そう呼ばれる。
ちゃんと、M男という名前があるんだけどなぁ。
まあ、S子は学力優秀で、ボクは試験の前日一夜漬け主義。
脳味噌垂れ子豚に見えるのも無理ない???
・・・・・・・・・・『子豚』は語弊があるだろう。
ボクはどちらかと言ったら幼い頃から痩せ形体型。
まあ、小学校の学芸会で豚の鳴き真似を披露しそれ以来S子から、
お互い中三にもなって未だ子豚ちゃんと呼ばれているボクだけど。
それが、近頃やけに幼馴染み腐れ縁S子から、
「脳味噌垂れ子豚」と、そう呼ばれる。
まあ、S子は生徒会長で、ボクは掃除の時間サボタージュ主義。
脳味噌垂れ子豚に見えるのも無理ない???
・・・・・・・・・・だから怠けるけれど痩せ形だって。
そんな訳で、S子に『脳味噌垂れ子豚』の深意を訊ねてみた。
すると、S子からこんな問題が↓
1、ドーナツの音名は?
2、取れない尻は?
3、・−・・
4、BとMの共通する隣の文字を2回叩くと?
耳から脳味噌が垂れ零れている。
そう感じ始めたのはいつ頃からなのだろう。
未だ、S子からの問題が一向に解けない。
1、ドーナツの音名は?
2、取れない尻は?
3、・−・・
4、BとMの共通する隣の文字を2回叩くと?
引き続き、2人きりだと幼馴染み腐れ縁S子から、
「脳味噌垂れ子豚」と、そう呼ばれる。
ぎゅっと、ボクの目を間近で睨みながらS子は、
1、ドーナツの音名は?
2、取れない尻は?
3、・−・・
4、BとMの共通する隣の文字を2回叩くと?
と、繰り返し、そう問いかけてくる。
謎が謎呼ぶ、『脳味噌垂れ子豚』の深意。


第、717話 美少女を提供して差し上げましょう (2013.03.31)
中学校入学間近。
そうです。出会いの季節です。
妄想男子が三次元の可愛い新入生を探しに脳内二次元から顔を覗かせる、
そうです。出会いの季節です。
それならそうと、希望にマッチした美少女を提供して差し上げましょう。
遅刻!遅刻!と、パンを咥えたまま叫びつつ、曲がり角で出会い頭、
ローリング・ソバットを、あ・な・た・に、見舞って差し上げましょう。
その日の帰り道は、神社の石段から一緒に転げ落ちて、
マウントポジションからパンチを連打、ディフェンスで手を伸ばしてきた
ところを、腕ひしぎ十字固めを、あ・な・た・に、極めて差し上げましょう。
翌朝、声を掛けられたら、『あ、それは双子の妹です』と、一人二役を演じ、
昼休みに声を掛けられたら、『やだ、あたしは妹のほうだよ』と、一人二役を演じ、
放課後、校庭で、『あの〜、姉?妹?どっち』と、声を掛けられたら、
『実は双子の兄と弟だけど何か?』と言って、チェック柄スクールスカート翻し、
朝礼台からムーンサルトプレスを、あ・な・た・に、仕掛けて差し上げましょう。
中学校入学間近。
そうです。出会いの季節です。
毎年、この季節になると、某中学校に女子新入生装い進入し、
逮捕され警察からお叱りを受けている、四十を過ぎた、おじさんです。


第、716話 出会いを始めてみませんか (2013.03.24)
何故か、今朝見た夢は夢ではないような気がしてならなかった。
僕に生まれ変わる前の僕。
前世の僕は戦争で命を落とし、また、愛する人も空襲で命を落とした。
『来世で再び結ばれよう』
夢の中、真新しく残された記憶の中、僕と彼女は、誓い合っていた。
今朝、散歩中、一匹のハクビシンに出会う。
ハクビシンが僕をじっと見ている。
激しく見つめ合う、僕とハクビシン。
「君か?君が彼女の生まれ変わりなのか?」
ハクビシンはそそくさと逃げていってしまった。
・・良かった。ハクビシンが彼女の生まれ変わりではなくて。
少し歩くと、立ち小便をしているジジイ。
立ち小便をしているジジイが僕に気付く。
激しく見つめ合う、僕と立ち小便をしているジジイ。
「君か?君が彼女の生まれ変わりなのか?」
「なんじゃい?」と、立ち小便をしながら僕に振り向くジジイ。
背後に跳び退いて難を逃れる僕。
立ち小便ジジイはそそくさと去っていってしまった。
・・良かった。立ち小便ジジイが彼女の生まれ変わりではなくて。
向こうから美しそうな女性?が歩いてきた。
いや、訂正。段々と近付いてきたその割れ顎ゴリラは低い声で僕に、
「あ〜ら、そんなにあたいの事を熱く見て!今度遊びに来てネ!」
と、僕に一枚の派手な名刺を残して去っていきました。
ーーー ニューハーフパブ『ジャングル』 ーーー
・・違う。割れ顎ゴリラは彼女の生まれ変わりでは断じてない。
草むらの中から白骨化した手が見えた。
「君か?君が彼女の生まれ変わりなのか?違うと言ってくれ!」
その時、推定身長155cm?推定体重120kg?の女が「キャー!人殺し」と叫ぶ。
「君か?君が彼女の生まれ変わりなのか?即座に違うと言ってくれ!」
警察官が数人やってきた。
「君たちか?君たちが彼女の生まれ変わりなのか?」
刑事さんがぞろぞろやってきた。
「君たちか?君たちが彼女の生まれ変わりなのか?」
挙動不審で任意同行をお願いされる僕。
警察で事情聴取を受ける僕。
気付くと強い口調で取り調べを受けている僕。
まともに睡眠を取らせて貰えず毎日刑事から罵倒される僕。
「真犯人が観念して出頭してきたからもう帰って良いぞ」と、釈放される僕。
毎日僕を罵倒した厳つい顔の刑事さん。観念して出頭してきた真犯人さん。
「とっとと白状してしまいなさい」と僕に告げた国選弁護士さん。
「誰が?いったい誰が彼女の生まれ変わり?違うと言ってくれ!」
いや、ダメだ。こんな時代に彼女は生まれ変わっていないほうがいい。
次に僕が生まれ変わったら、きっとその時、生まれ変わった彼女と出会う。
その時、彼女は風にそよぐ一輪の野の花で、その横で揺れているのが、この僕。
出会いを始めてみませんか。生まれ変わっても、また、きっとどこかで・・・。


第、715話 春便り (2013.03.17)
バイト先の先輩が故郷に帰ってしまう。
めそめそした女でいたくない。前向きな強い女で在りたい。
そう言えば近頃卒業の季節。
卒業式には憧れの先輩に、「先輩の第二ボタンを潰させて下さい」
と、せがみ、ロードローラーで第二ボタンを平たくぺったんこにする。
そんな女子が日本のあちこちで見受けられた事だろう。
そんな私だって想い出をまだ大切に保管してあるんだ。
平たくぺったんこになった、憧れの先輩の第二ボタン。
卒業と同時に新たな土地に行ってしまった、憧れの先輩。
風の噂では、大学卒業、そして就職後、海外への転勤を命じられ、
テロ組織に拉致されるも隙を見て逃亡。長い年月ジャングル暮らし。
まだ20代の先輩にしては凄まじき風の噂。
でもまだ日本に住まっていたとしたら、気付かずに再会しているかも?
もしかして、あの、近所を徘徊している髭面のホームレスが先輩かも?
もしかして、この、春めいて早々と出没している毛虫くんが先輩かも?
もしかして、その、人の形に見える、テーブルの木目模様が先輩かも?
卒業式、私は憧れの先輩にこう言った。
「めそめそした女でごめんなさい。前向きな強い女で在りたいのに」
すると、憧れの先輩は私にこう言った。
「めそめそすることは恥ずかしくない。前に一歩足を運ぶための準備運動さ」
バイト先の先輩が故郷に帰ってしまう。
前向きな強い女で在り続けるために、今、私はめそめそしていていいんだと思う。
「ね!それでいいんだよね」って、私は、テーブルの木目模様に向かってそっと呟いた。


第、714話 ロボット掃除機ヌンバちゃん (2013.03.10)
「あなた、ロボット掃除機ヌンバちゃんが挙動不審なのよ」
「確かに、頻繁に停止して悲しげな音を発しているよなぁ」
「そう言えば、昨日、頂き物のイカの一夜干しを、物陰から切なげに覗き込んでいたわ」
「ロボット掃除機ヌンバちゃん、イカの一夜干しに恋しちゃったんじゃないのか」
「ねえ、イカの一夜干しを焼いた匂いがしてない?」
「おい、台所!!!」
「あっ!お爺ちゃん!!!」
「おぉ、おまえらも喰わんか!!?」
「あ、イカの一夜干しを割いちゃった!!!」
「あ、ヌンバちゃんが物陰からこっちを見てる」
「あ、ヌンバちゃんがトイレに閉じ籠もって鍵掛けちまった」
「ヌンバちゃん、出て来なさ〜い」
「ヌンバちゃん、どうやってトイレの戸を開けたんだ?」
「発見されてないバグとかがあるんじゃない?」
「ヌンバちゃん、どうやってトイレの戸を閉め鍵を掛けたんだ?」
「説明書には載っていない裏機能とかがあるんじゃない?」
「何とか、新しい恋の出会いを提供してあげられないのか」
「茄子の糠味噌漬けなんて、どうかしら?」
「すぐ、茄子の糠味噌漬けを持ってきなさい」
「あなた、茄子の糠味噌漬けを持ってきたわよ」
「おーい、ヌンバちゃん、茄子の糠味噌漬けだよ」
「あっ、トイレの戸がちょっと開いた」
「で、すぐ閉めた」
「茄子の糠味噌漬けは好みの相手ではないようだ」
「でもどうやって、トイレの戸を開閉して再び鍵を掛けたんでしょう?」
「こんな事が出来るのは、電子工学科に通っている娘の仕業ではないのか?」
「そう言えば、『お父さんの下着と私の下着を一緒に洗ったら洗濯機を改造して、
お父さんの下着を吐き出すようにしてやるからな!』って激怒した時期もあったわね」
「今度は何が望みなんだ?!おまえ、娘の携帯に電話して聞いてみろよ」
「あなた、『本日訊ねて来る事になっている彼氏との結婚を承諾して欲しい』ですって」
「今、トイレの中から着信音が聞こえてこなかったか?」
「と言うより、トイレの中から娘の声が聞こえてきたわ!」
・゜★・。結婚式当日・゜★・。
「結局、娘がヌンバちゃんを抱えてトイレに閉じ籠もってただけじゃないか」
「結局、娘がヌンバちゃんを改造していたのは、遠隔操作の機能だけだったのね」
「で、ヌンバちゃんが惚れたイカの一夜干しを割いちまって、ヌンバちゃんの心を
傷付けてしまったと頑なに信じ込んでしまい強いショックを受けてしまったお爺ちゃんは
今、どの辺をセンチメンタルジャーニーしているのだろうな」
「娘がお爺ちゃんに埋め込んでおいたGPS機能によると、どうやら、世界中の
少数民族との出会いを行く先々で楽しんでいたようだけど、最近日本に帰っていて、
今現在、この結婚式場のどこかに潜み、孫の花嫁姿をこっそり拝んでいるみたいなの」
「で、何故に結婚式の司会者が、ロボット掃除機ヌンバちゃんなんだ?」
「娘が、ロボット掃除機ヌンバちゃんに司会して欲しいからって改めて改造したのよ」


第、713話 気分をリフレッシュ (2013.03.02)
『別れよう』というメールが届く。
泣きたい時は泣くのが一番なのさ。
泣ける映画のビデオを借りにレンタルビデオ店に来た。
レジに行き、会員証が無いので身分証明証を差し出す。
「おめでとうございます。あなたが*****人目の会員です」
帰り道、旧友にばったり出会す。
「○○子ったら、今日確か誕生日だったわよね」と、
『誕生日サプライズあります』の張り紙が貼られた飲食店に放り込まれる。
・・・・・・・・・・こんな時に、きっちり身分証明証を持っている私。
お店の人全員から、他のお客さんまで、「おめでとうございます」の大合唱。
更には、「にっこり笑って」と言われ、無理くり笑顔で、ポラロイド写真。
旧友と別れ、放心状態で帰宅中、酔っぱらった学生集団から突然胴上げ。
「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」の大合唱。
胴上げ後、「ごめんなさい!人違いでした」と謝罪されるも気持ちはボロボロ。
長い時を経て、家に到着し、ビデオを再生するも、借りたはずの映画とは中身が違う。
『おめでとう!』から始まり『おめでとう!』で終わった、超ハッピーコメディ映画。
若しや、奴からのメールは幻ではなかったのかと、今一度メールを確認するも、
『別れよう』の文字の衝撃度は衰える事を知らず、私のガラケーにまだ居座っている。
このモヤモヤを解消できるリフレッシュ方法は、果たして私に訪れてくれるのだろうか?
そんな時、以前から無神経さを匂わせていた奴から、酷く余計すぎるメールが届く。
『あっ、そうそう、誕生日おめでとう!』
泣きたい時は泣くのが一番なはずだけど、突然、私は、お腹を抱えて大笑い!
その後、改めて、超ハッピーコメディ映画を観なおすと、笑える!笑える!
一変に酔いが醒めてしまったような学生達の困り顔を思い出すと、笑える!笑える!
誕生日サプライズの飲食店で撮って頂いたポラロイド写真に写る、強張り笑顔の私。
*****人目の会員記念に頂いた、レンタルビデオ店の、ど派手なキャラクターTシャツ。
笑えるだけ笑ったら、突然大粒の涙が瞳からこぼれ落ちてきた。
ふむ。コレで今夜はぐっすり眠れる。朝起きたら新しい一日の始まりだ。
私は、奴からの『別れよう』メールを、それ以前の奴からのメールも、解除した。
おめでたい!?『あっ、そうそう、誕生日おめでとう!』メールを一通だけ残し・・。


第、712話 愛と正義のヒーロー!尻文字仮面参上 (2013.02.23)
「???が?たからに??????だ」
「あのぉ、もう一度。読み取れなかった」
(WAHAHAHAHA WAHAHAHAHA)
「?文字?が来たからには???丈夫だ」
「あなたって、案外、尻文字下手糞なのね」
(WAHAHAHAHA WAHAHAHAHA)
「尻文字仮面が来たからにはもう大丈夫だ」
「尻文字仮面、あたし、とても怖かったわ・・って、
最初っから口で言って頂きませんかね、ヒーロー様」
「憎き、尻文字仮面め!また俺様の邪魔を!・・って、
最初っから口で言って頂きませんかね、怪人からもお願い」
(WAHAHAHAHA WAHAHAHAHA)
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「おーい!止めろ!止めろ!なんだこれは!今すぐ幕を下ろせ」
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「子供達へのイベントだったのに何もかも滅茶苦茶だ」
「子供達も保護者の方々も大爆笑でしたけれど・・」
「こんな、子供の教育に悪いイベントだとは聞いていなかったぞ」
「元子供の大人が思っているほど子供は天使じゃありませんよ」
「子供に悪い影響を与えるから子供は天使ではなくなるのだ」
「では、子供達を無菌室で育てるほうが子供達のためになるとでも?」
「教育界から非難を浴びるのは我々にとって非常に困るのだよ!」
「PTAの方々も大爆笑でしたけれど・・」
「今現在は、PTAを中心に苦情殺到だ」
「それは、あなたが『なんだこれは』と騒ぎ立て幕を下ろさせたからです。
それまで爆笑していたのに一部の大人達があなたの言葉でいとも容易く変心したのです。
先程あなたは『子供達へのイベントだったのに何もかも滅茶苦茶だ』と言いましたね。
でも、何もかも滅茶苦茶にしてしまったのは、それは、あなたなのですよ。
意向が脆い一部の大人達の操縦桿を、あなたが握り操作してしまったからです。
そしてその一部の大人達も今は我先にと、他の大人達の操縦桿を握りたがっている。
結果、イベントに顔を出していなかった大人達まで、『それは怪しからぬ』と騒いでいる。
全てはあなたが蒔いてしまった種からだと言う事を、あなたはまだ気付きませんか?」
「もう、尻文字でそんな長い言葉は反則だろ」
「いやいや、失敬!尻文字で討論を続けるのも骨が折れます」
「尻文字で討論をしていた事は、PTAの方々には内緒で」
「尻文字仮面の仮面を被って討論していた事も内緒にしておきましょう」
「しかし大人には結構コレ、実に楽しいものですなぁ」
「そう思うのならその楽しさを是非、子供達にも別けてあげて下さい」


第、711話 宅配便が来る (2013.02.17)
宅配便が来る。
休日だというのに早起きして朝一から待機中。
家にいるのに不在票など郵便受けに入れられてたまるものか。
今日は、宅配便が来る。
宅配業者のサイトの輸送お問い合わせでは、
既に配達に出た事が紛れもなく証明されている。
いよいよ、宅配便が来る。
ダメだ!眠気に襲われている場合ではない。
家にいたのに不在票など郵便受けに入れられてたまるものか。
何故だ!こんなときに限って便意を頻繁に催すあたしの悲しい体質。
家にいたのに不在票など郵便受けに入れられてたまるものか。
友人から電話。深刻且つ真剣な悩みの相談?『今から会って欲しい』?
だが、この友人の『今から会って欲しい』が、くだらない愚痴のオンパレードである事は、
あたしとこの友人の、歴史上の観点から判断しても、それは極めて明白なのである。
でも、友人はきっと涙目・・ あたしは別の意味で涙目・・
家にいなくては不在票など郵便受けに入れられて当然すぎてしまうよ。
そんな時、チャイム!チャイム!チャイム!
皆様方、大変お騒がせいたしました。
この度、無事に宅配の荷物を受け取る事に成功いたしました。
実家に置きっ放しだったあたしの中学生時代の卒業アルバム。
お母さんに頼んでおいた、あたしの中学生時代の卒業アルバム。
この度、無事に宅配の荷物を受け取る事に成功いたしました。
テーブルの上には、出席・欠席を訊ねる一通の同窓会開催通知。
同窓会で初恋の相手とは再会しないほうが良いと人は言うが、
あたしだって同じようにそれなりの年輪を重ねてきているのだ。
卒業アルバムを捲るごとに蘇る想い出と切ない気持ち。
あたしは、同窓会で初恋の相手に再会してしまう許可と勇気を、
その当時の、その季節を生きていた自分に問いかけたかったんだ。
テーブルの上には、出席・欠席を急がせている同窓会開催通知。
会ってみたい気持ちを置き去りにして明日に足を運べないよね。
さて、涙目の友人ともこれから会わなければならない事だし、
あたしは、同窓会開催通知の『出席』を丸で囲み、いそいそと家を出た。


第、710話 願い事 (2013.02.09)
流れ星が流れても 願い事をした記憶はない
七夕の短冊に 祈りを書き込んだ記憶はない
四つ葉のクローバーは 植物の葉に過ぎなかったし
虹は水滴のプリズムだって 何時しか習わされていた
子供の頃に感じていた 時折見せる大人達の顔色は
僕が大人になった今も 僕の心を切り刻み続けている
ただ、守ってあげたい君のために 人類を信じてみたい
ただ、守ってゆきたい君のために 人類に語ってみたい
戦争でどれほど多くの生命が今まで失われたかなんて
常日頃から深刻に考えていると何時しか心が病むだろう
でも、終着地点が存在しない愚かさは 現実の闇だから
誰も、愛する人のために武器を持つのではなく
誰も、愛する人のために武器に触れて欲しくない
人類は祈り続けなくてはいけない 地球の未来へ 平和の願い事


第、709話 南部鉄器のような男 (2013.02.03)
南部鉄器のような男。
貧血症のあたしだけど、ありがたい男とは思えない。
あたしがまだ幼い頃から、我が家のひい爺さんが、
あたしの許嫁にしてしまった、南部鉄瓶のような男。
アルミニウム系男子ばかりの世の中で異彩を放っている。
あたしの許嫁になってしまった、南部鉄器のような男。
「一度心が過熱させられてしまうと、高い蓄熱効果で、
愛情が美味しく仕上がるぞ」と、見事に南部鉄瓶顔の、
南部鉄器のような男の父親も、そりゃ猛然と乗り気満々。
お互い二十歳も過ぎたら結婚させられてしまいそうな気配。
モダンデザインの現在に、溶け込もうとする努力は絶え間ない。
17世紀頃から受け継がれる歴史を感じさせる、南部鉄器のような男。
伝統工芸品として揺るぎない地位を感じさせる、南部鉄器のような男。
因みに、南部鉄器のような男はあたしの事を、『土佐打刃物のような女』と呼ぶ。
あたしの母が『鉈(なた)?』で、父が『斧?』。生まれたあたしは『出刃包丁?』
だけど、ふとした時に見せる此奴の笑顔が何時だっであたしの心をまろやかにさせる。
あたしがまだ幼い頃から、我が家のひい爺さんが、
あたしの許嫁にしてしまった、南部鉄瓶のような男。
アルミニウム系男子ばかりの世の中で異彩を放っている。
あたしの許嫁になってしまった、南部鉄器のような男。


第、708話 美貴子君はタイムトラベラー (2013.01.27)
「助手の美貴子君、どうやらタイムマシンの研究の副作用で、
生物に対し時間の長さが日々縮まっているようなのだよ」
「博士、それはどういう事なのでしょうか???」
「以前わしが君に説明したように、時間の長さは時折変わる。
種によっても同一ではないし、現在、わしと君とでもそれは異なる」
「楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいますね」
「更に不味い事には、変則的に地球上の空間が歪んでしまっている」
「博士、それはどういう事なのでしょうか???」
「恐らく地球の重力が変則的に重くなって時間を度々歪ませているのだよ」
「100人乗っても大丈夫な物置にデブは乗せるなって事ですね」
「そう、わしを乗せては・・ って、誰がデブじゃ」
「詰まりは、デブの横にいると時間が経つのが遅いのですね」
「そう、わしの横にいると・・ って、誰がデブじゃ」
「と言う事は、あたしが彼氏とのデートの日を待ちわびている時は、
博士の研究を極限にサボり、彼氏とのデートの日は博士同伴って、おい!」
「助手の美貴子君、事態の深刻さを漸く呑み込めたようだね」
「それでは研究する博士も困るだろうし休日のあたしだって困ります」
「・・・・・・・・・・って、おい!わしは地球の重力ではないぞ」
「詰まり、現在、多くの人類の1年は、過去の人類では3ヵ月が経つ早さで、
歪みに足を取られている人類の24時間は、過去の人類では3ヵ月が過ぎゆく遅さ?」
「このように、わしの弛んだ腹を伸ばし直線を引く。伸ばすのを止めると弛む。
伸ばしていた時の直線は縮み、端から端までの距離が短くなるが、弛みに沈んだ
線は存在し、隠れた曲線となり、そこには過酷なアドベンチャーワールドが生まれ、
脱出不可能な蟻地獄と化し、それを含むと2点間距離の最大値は長くなってしまう」
「では、あたしが博士と今こうして同じ場所の空気を吸っている屈辱中に、
極限の歪みに襲われた場合、あたしは博士に密着ぺっちゃんこの辱めですか」
「いや、二人とも死ぬ」
「博士、既に博士と今こうして同じ場所の空気を吸っている屈辱中に、
デブ博士の重量で空間が歪んでしまっているようです。時計を見て下さい。
博士と会話していた長いながい時間なのに、まだ数分しか経っていないのです」
「では、美貴子君、この実験室から1時間外に出てみて下さい」
1時間後
「あれ、1時間も経っているはずなのに、ただボーと過ごしていたのにあっという間」
「助手の美貴子君、君はわしより未来人になったのだよ」
「なーんだ、あはははは」
「そうじゃ、あはははは」
「で、博士、タイムマシンの研究の副作用は如何で・・」
「恐らくは直しようがない」
「あたし、気付いたんですけど、ひょっとして貴様のその重量が原因では???」
「なーんだ、あはははは」
「やっぱり、あはははは」
「助手の美貴子君、分かったぞ!タイムマシンに必要なのは大量のデブだ!!!」
「博士、今日限り博士の助手を辞めさせて頂きます」
「助手の美貴子君、君はわしより未来人になったのだね」


第、707話 この穴は果たして万華鏡 (2013.01.20)

「天文学者を目指す生徒諸君、現在から50億年前に発見された
この時空の穴の向こうは第380宇宙と名付けられた天体空間で、
その中から、『地球』と呼ばれている星をご覧頂きたい」
「先生、何ですか、あの落ち着きのないまだらなカラーリングは?」
「地球は大量な水を湛えいる惑星だからね。その地球の表面は、
酸素などを主成分とする大気で覆われているんだよ」
「え、では、天候の変化など激しいのではないですか?
そんな天候不順な星で生物が暮らしていけるのですか?」
「先生、況してや酸素で覆われているだなんて・・・・」
「地球に暮らす生物の多くはその酸素を体内に取り込んで生命を維持している」
「酸素って猛毒ではないですか!!!」
「我々には確かにその通りだね」
「そんな星に生物が生存するなんて信じられない」
「そうだよ、生物が生存可能な星には到底思えないよ」
「でも我々の星のように多様な生物が生存しているのだよ」
「本当ですか???」
「君たちはまだ7歳〜8歳の児童だからそのように考えてしまうのも無理ないね。
それでも、地球の『人間』と呼ばれる、『知的生命体』と自分たちの事を
信じて止まない生物の天文学者達は、君たちより幾分劣っている訳だがね」
「観点を客観的に変えて考えるべきなのですね、先生」
「その通りだ。ところで先生は若い頃、この地球をとても研究していてね。
この地球に生息する生物に『植物』という生物がいて、その植物は『花』と言う
生殖器官を咲かせる。それはとても美しく、先生は地球上の生物で何より恋している」
「先生、地球の『人間』は美しくはないのですか?」
「長い胴体に長い手足がだらしなく垂れ下がっていて何とも見っともない体型をしているな。
そして『人間』とは、恐らくは『地球』と言う星にとって有害な作用をもたらす生物であろう」
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地球とは別の時空に存在する天体空間に輝くとある星に現在から50億年前に発見された穴。
その星の生命体に第380宇宙と名付けられた天体空間もまた、観察者の主観的な判断から、
観点を客観的に変える事により、さまざまな背景・色合い・模様を覗き込む事が出来る。


第、706話 軟体戦隊頭足類レンジャー (2013.01.11)
西暦2**3年、太陽系の遙か彼方では、
タコちゃん星とイカちゃん星との戦争が、
他の星まで巻添にして繰り広げられていた。
タコちゃんA「このクラゲちゃん星も酷い有り様よね」
タコちゃんB「あたしは、軍医として軍隊に随員していたはずが、
気付けば武器を持たされて、兵士として連れ回されていたのよね」
イカちゃんA「あ、あなた達はタコちゃん星の・・・・・・・・・・」
タコちゃんA「君たち、二杯とも負傷しているではないか」
イカちゃんB「さあ、殺すならさっさと殺せばいいわ!殺しなさいよ」
タコちゃんB「あたしは、医者なの。今、大した治療は出来ないけれど」
イカちゃんA「あたいらより、この星のクラゲちゃん達を治療してあげてよ」
タコちゃんA「こ、これは、何て有り様なの・・・・・・・・」
タコちゃんB「ごま油と醤油ににどっぷり漬けられているじゃないのさ」
イカちゃんA「クラゲちゃん達、戦時中の食料にされ掛かっているのよ」
そこに、タコちゃん軍がやってきた。「貴様ら、そこで何してる」
更には、イカちゃん軍もやってきた。「タコごと食料として頂きだ」
その時、ごま油と醤油ににどっぷり漬けられていた一匹のクラゲちゃんが話し掛けてきた。
「あなた達は一体何と争っているの?あなた達は敵が誰だか判っているの?
あなた達が本当に守らなければならないのは何?それは自分たちの星なの?」
タコちゃんA「一体何を言おうとしているんだい?」
虫の息のクラゲちゃん「あのモニターのスイッチを入れて。以前から、
ウツボ星の動きが怪しくて私たちの星のスパイがウツボ星に進入し、
ウツボ星軍のあちらこちらに隠しカメラを設置しておいたのよ」
イカちゃんB「あの、椅子に踏ん反り返っているのは、ウツボ星の元首」
タコちゃんB「その横に跪いているのは、我が星の元首だわ」
イカちゃん軍一同「跪いているもう一杯は、イカちゃん星元首」
タコちゃん軍一同「一体これはどういう事なんだ」
虫の息のクラゲちゃん「モニターのボリュームを上げてみて」
ウツボ星元首「全く、愚かな奴らが殺し合いをしてくれる御陰で、
こちらには常時大金が面白いほど転がり込んでくれるって訳だよ」
タコちゃん星元首「ホント、笑いが止まりませんなー」
イカちゃん星元首「御陰で、ウツボ星に大豪邸を建て、家族で暮らさせて頂いています」
タコちゃんA「あたしらが倒さなければならないのは此奴等じゃないのさ」
タコちゃん軍一同「その通りだ」
イカちゃんB「我々が本当に守らなければならないのはこの宇宙の平和だわ」
イカちゃん軍一同「イカ同文」
斯くして、西暦2**3年、太陽系の遙か彼方では、
死の商人に成り下がった、タコちゃん星元首とイカちゃん星元首、
首領であるウツボ星の元首の汚れた思惑を食い止めるべく、
タコちゃん軍とイカちゃん軍の精鋭で軟体戦隊頭足類レンジャーが結成され、
宇宙平和を守るため、新たな戦いが繰り広げられていった。


第、705話 今年の目標 (2013.01.05)
「今年の目標はでっかく持つ事にしたぞ!!!
おい、マネージャーの助作よ。我々鼻唄部は、
年内中に国立競技場でコンサートを行うことにした」
「新部長、それは一体どういう事ですか」
「国立競技場は大規模改修計画が進められているため、
今年を逃してしまったら5年後になってしまうらしいからな」
「鼻唄部が国立競技場だなんて余りに世間を舐めてますよ」
「日本武道館でジャンケン大会をする集団だっているんだぞ」
「一般の人でも借りられるようですけど、鼻唄部はどうでしょうね」
「おい、助作の父ちゃん、村議会議員だよな。口利きお願い出来ないか」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「え?なんだって」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「え?なんだって」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「仕方ないか。なら、学校の講堂でガマンしておく」
「それだったら、卒業生を送る会で我々鼻唄部が式に参加する事になってますよ」
「なんか、今年の目標がちっこくなっちまったよなぁ。
どうにかして、マラ○ア・キャリーとかゲストに呼べないか?助作」
「到底無理でしょう」
「おい、助作の父ちゃん、村議会議員だよな。口利きお願い出来ないか」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「え?なんだって」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「え?なんだって」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「仕方ないか。なら、学校の講堂で鼻唄部オンリーでやるか」
「一応、卒業生を送る会で我々鼻唄部が式に参加するだけの話ですよ」
「そうだ、バラク・オ○マ米大統領に司会進行して頂けないか?助作」
「到底無理でしょう」
「おい、助作の父ちゃん、村議会議員だよな。口利きお願い出来ないか」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「え?なんだって」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「え?なんだって」
「そんな、村議会議員なんて、この村の中でしか権力通用しませんよ」
「え?なんだって」
「わざと言わせてます?」
「だったら、助作の姉ちゃんをオレと付き合わせろ」
「・・それをボクにお願いするための前振りだった?」
「オレの今年の目標だからな」


第、704話 イラストのピエロ (2012.12.29)
まだ、泣いているのかい?
いま、笑っているのかい?
瞳の中から絶えず軋む音が聞こえてくるから、
何かを言葉にする事は恐ろしくて出来ないよね。
今、キミもボクも、滑稽に事実な、イラストのピエロ。


第、703話 今年、やり残した事 (2012.12.23)
2012年度、私の今年の目標。
『好きなあの人に告白するぞ!』
はい、まだ達成されていません。
だって、告白してしまったら、
気まずくなってしまうかも知れない。
『おはよう』の日々の挨拶だって、
『さよなら』の日々の挨拶だって、
そんな言葉も交わせなくなってしまうかも。
それが切っ掛けで嫌われてしまうかも。
虫嫌いな私の机の上に、それはそれは芸術的な、
アマゾン川流域に生息するオオキバウスバ
カミキリの落書きを一晩で彫られてしまうかも。
私の携帯番号入りで、『迷い猫探します』の
張り紙をそんじょそこらに貼られてしまうかも。
だから私だって大好きなあの人の机の上に、
それはそれは芸術的な、通称『まこと○ゃんハウス』を、
高度な宮大工の職人技で釘を一本も使わず、だがしかし、
赤・白の派手な色彩は現代的に、更には、苦情を宣う、
精密な近隣住民ミニチュアフィギュア付きで拵えてやろう。
そりゃもちろん、大好きなあの人の机の上に膠で固定。
そして、大好きなあの人の携帯番号入りで、
『ツチノコを一緒に探しましょう』の張り紙と、
インターネットにホームページを新設して、
一杯いっぱいあの人を困らせてあげるかも・・・。
2012年度、私の今年の目標だった、
『好きなあの人に告白するぞ!』
はい、まだ達成されていません。
来年は揃ってこの中学校を卒業です。
離ればなれになってしまう事は分かっています。
今年、私がやり残した事は、幼児が卵を割るより簡単そうで、
私がゆで卵の殻をきれいにむくより難しい事だと悟ってしまった。
「好きです」の、そのたった一言が言えない。
でも、高度な宮大工の職人技でのミニチュアハウス制作ならば任せて下さい。


第、702話 歌ってくれないと (2012.12.16)
「先生、これが僕たちの禁断の愛を貫くために、科学者の
父の手によって開発されたセキュリティグッズの数々です」
「あの〜、先生は園児のキミと交際する気は更々ないのよ」
「この一見肩に乗った鳥にしか見えないセキュリティグッズは、
盗聴電波をキャッチすると耳元でアラームをさえずり教えてくれる
盗聴探知器で、先生とボクとの、禁断のラブラブ会話を漏洩から
守ってくれる、優れものなのです」
「あの〜、先生は園児のキミと交際する気は更々ないのよ」
「この一見腕にしがみついたコアラにしか見えないセキュリティグッズは、
携帯電話など、無線通信を広範囲でジャミングするための電波妨害機で、
敵が仲間に連絡をしてしまったがために、応援の武装部隊、武装偵察ヘリ、
戦車、巨大戦闘ロボットが駆け付けるのを阻止するための優れものです」
「あの〜、先生は園児のキミと交際する気は更々ないのよ」
「そして何より、この、『指浣腸跳三郎』&『尻突悶絶子』の偽名名札。
更に、ボクが付けひげ、先生はうさ耳カチューシャ、この変装で完璧です」
「あの〜、先生は園児のキミと交際する気は更々ないのよ」
「最後に、先生が子守歌を歌ってボクを寝かしつけてくれないと、
ボクはパワーが有り余って、この幼稚園周辺の家々の家電製品が、
恐ろしいほどの誤作動に見舞われて、武装部隊、武装偵察ヘリ、戦車、
巨大戦闘ロボットが駆け付ける事態が想定されますが、如何いたしましょう」
「お昼寝の時間は、今、終わったばかりなのよ」
「そんな、歌ってくれないと・・・・・・・・・・」
「武装部隊、武装偵察ヘリ、戦車、巨大戦闘ロボットが駆け付ける事態が想定される?」
「ボクが夢から覚めきってしまい、現実に引き戻されて、現代社会に潜む劣悪な環境に
晒され続け、心がズタボロになってしまいます。ボクは先生と恋に落ちていたいのです」
「名門私立幼稚園に落ちて、幼稚園児にして燃え尽き症候群とは聞いていたけれど・・」
「先生が、歌ってくれないと・・・・・・・・・・」


第、701話 グッズ紹介 (2012.12.09)
先ずは、我がアルバイト先の姫こと『赤遠藤蜜子(仮名)』の隠し撮り笑顔生写真。
一応、迷惑防止条例などの、取り締まり対象の類ではない。・・かも知れない。
そして、自腹で誂えた、応援・声援衣装。刺繍入り鉢巻きに、刺繍入り法被を身に纏い、
自腹で誂えた隠し撮りベストショットカレンダーに向かって、サイリウムを手にケチャ。
ある日、事態は一変。バイト後に、『赤遠藤蜜子(仮名)』をカメラを手に、こっそり、追跡中、
『赤遠藤蜜子(仮名)』のスカートの中を盗撮する不埒者発見、奴の目をサイリウムで目眩し!
そして、毎日鍛えられたケチャで、ケチャチョップ!透かさず法被を頭から被せ、
光の速さで、鉢巻きで奴の手首を縛り上げた!召し捕ったり!!!これにて一件落着!!!
喜ばしい事なのか?不埒者が縁で、その日から、『赤遠藤蜜子(仮名)』と交際スタート。
とんとん拍子に季節は流れ、交際一年後には、『赤遠藤蜜子(仮名)』と入籍。
そして、今、僕が手にしているのが、『赤遠藤蜜子(仮名)』が編み上げた、
間もなく生まれてくるだろう、僕と彼女の赤ちゃんへの靴下が数足。
僕が赤ちゃんに携帯させようと揃えた、防犯ブザー、防犯スプレー、平型スラッパー、
刺又、スタンガン、合金特殊警棒、更に赤ちゃんを守る、防弾・防刃ベスト&ジャケット、
防弾バイザー付き防弾ヘルメット、防弾フェイスマスク、ポリカーボネート盾、etc.
後は、出来る限りの、人類への明るい未来を用意してあげたいのだが・・・・・・・・。


第、700話 船大工シンパシー (2012.12.01)
シャンプーやボディソープのポンプ式容器を二つ並べ、
お互いのノズルの先っちょを気持ちだけ内側に向けてごらんよ。
何だか、仲の良い鳥さんがさえずりあっているように見えるよ!
皆さんこんにちは。尿素でかぶれて地獄絵図こと、江戸更紗アンモナイトです。
18歳でアイドルの頂点を極めた少女が突然、某ドーム球場での公演中、
「わたしは、芸能界を引退して今後船大工を目指します」
と宣言するかの如く、または、あるアイドルグループのメンバーが、
「わたしは、女優になりたくて、アイドルグループのオーディションを受けました」
「わたしは、声優になりたくて、アイドルグループのオーディションを受けました」
「わたしは、モデルになりたくて、アイドルグループのオーディションを受けました」
「わたしは、船大工になりたくて、アイドルグループのオーディションを受けました」
・・・・・・・・・・の如く、また、可愛いすぎる船大工として世間で騒がれている
船大工見習いの娘がCDデビューして、某ウィークリーチャート1位を獲得するような、
そんな、島国日本に、今年も寒い冬がやって参りました。
可愛いすぎる船大工のデビュー曲、『船大工シンパシー』が流れる街に、
お揃いのマフラーを巻いたカップルが身を寄せ合って歩く、寒い冬がやって参りました。
冬の並木道の、葉を落とした木の枝に、二羽の鳥が身を寄せ合って停まり、さえずる中、
お揃いのコートを羽織ったカップルが繋ぎあった手を一つのポケットに突っ込んで歩く。
そんな、島国日本に、今年も寒い冬がやって参りました。
皆さんこんにちは。乾いた空気で荒れちゃうお肌、江戸更紗アンモナイトです。


第、699話 武装は平和を脅かす行為 (2012.11.25)
「諸君、良く集まってくれた。深く感謝する。
我々が一月後に迫ったクリスマスまでする事はただ一つ!
日本の腐敗したクリスマスに踊らされる朽ちた連中に鞭を叩き込む事だ。
奴らは、クリスマスに託つけて、クリスマスにカップルが夜通し浣腸し合う。
その時期、日本の各地では深刻な浣腸不足に陥る。
一年中、浣腸に励む我々にとっては、勘違いクリスマスの連中は害虫同然である。
だがしかし、実際に連中に鞭を叩き込む訳では決してない。我々はテロリストや軍隊ではない。
武器は人類を傷付ける道具。武装は平和を脅かす行為。戦争は限りなく醜い争い。
我々は浣腸と平和を愛する。なので、奴らへの鞭は、『おたいこぺんぺん』だ!!!
一月後に迫ったクリスマスまで、我々が日本各地に散らばり、奴らにおけつを曝けだし、
その丸出しおけつを叩きながらこのように叫ぶ!『あっかんべえ、おたいこぺんぺん』。
これが、愚かな連中への我々からの愛の鞭だ!!!」
そこへ、一組の親子連れが、このような会話をしながら横切った。
「ねえママ、クリスマスは幼稚園で一緒の○○ちゃんと浣腸し合いたいよ」
「坊や、ママはね、クリスマスは人々の平和を祈る日だと思うわよ」
「そうだね、ママ」
「・・・・・・・・・・諸君、人類の未来はあの親子に託そうではないか」
街を夕日が照らす中、そこに集まっていた集団は、明日の平和を信じて解散していった。


第、698話 それは干物に出来ない (2012.11.17)
おまえらも丸まってごらんよ!アルマジロそよかぜです。
『共に干物と呼ばれるまで』。
1960年代後半、そんな、古典フレーズを捩(もじ)ってプロポーズ
した男性と、そのプロポーズに笑いながら答えた女性がいました。
ヒッピー文化で溢れる街並み、それは楽しそうに笑い合うふたり、
ライカを持ったカメラマンに、ピントを合わせられたりもしました。
そんなふたりの現在は、・・・・・・・・・・???
「爺さんったらまた黒く髪染めて、若い女にモテたいってかい」
「婆さんこそ、髪を紫に染めて、ホストクラブにでも通うつもりかい」
因みにこのふたり、周囲に「プロポーズの言葉は?」と聞かれると、
「共に白髪の生えるまで」と、頑なに言い張って秘密を共有しています。
おまえら、もっと丸まってごらんよ!アルマジロそよかぜです。
ここに一冊の古い写真集があります。
ページを開くと、1960年代後半、ヒッピー文化で溢れる街並みに、
幸せそうに笑顔で見詰め合う一組のカップルの写真が載っています。
・・・・・・・・・・『共に干物と呼ばれるまで』。
1960年代後半、そんな、古典フレーズを捩(もじ)ってプロポーズ
した男性と、そのプロポーズに笑いながら答えた女性の写真です。
そして、孫がデジタルカメラで撮影してプリントアウトした、
『共に白髪を隠し合った』、現在のふたりが笑い合う写真が一枚、
その写真集に栞代わりに挟まれて、大切に、本棚に仕舞われています。


第、697話 ずんばら焼き (2012.11.09)
皆さんこんにちは。黄昏のせせらっちょこと、カンガルーせせらぎです。
2112年11月09日現在、日本発祥の世界的に有名なスイーツ、
あの、『ずんばら焼き』の発祥について語らせて頂きたいと思います。
あれは、いまからかれこれ、100年ほど昔の事・・・・・・・・・・・。
「一流大学出で父親が政治家だろうがなんだろうが、婿養子として
今川焼き屋を継ぐ気がなければ、うちの娘と婚姻させる訳にはいかぬぞ」
「お父さん、僕は、一流企業に入りたい訳でも、政治家になりたい
訳でもありません。是非、この僕に、今川焼き屋を継がせて下さい」
そして、惚れた女のお父さんから与えられた試練の十番勝負が始まった。
・第1戦 滝に打たれながら利き餡こを極める。
・第2戦 生地を焼き型に流し込みしながら千本突き。
・第3戦 無数に飛んでくる今川焼きを全て口でキャッチ。
・第4戦 うさちゃんピース&スマイルで、出会す幼児のハートを全て鷲掴み。
・第5戦 眉毛を剃り山籠もり。
・第6戦 横浜アリーナにて、ミルコ・ク○コップと対戦。
・第7戦 インディーズレーベルから『ラザニア入れたら今川焼きじゃネー』をリリース。
・第8戦 クレープ作りの達人と、炎の24時間対談。
・第9戦 西武ドームにて、セーム・シュ○トと対戦。
・第10戦 新開発の商品を必ずや大ヒットさせる事。
「こ、これが新開発の・・・・・・・・・・」
「はい、お父さん、たい焼きの尻尾を付けた今川焼きです」
「ず・ず・ず・ず・ず・ず・ず・ず・ず・ずんばらしい!!!」
「はい、ず・ず・ず・ず・ず・ず・で、ずんばらしいです!!!」
「今川焼きでも、『尻尾まで餡こ』をキャッチフレーズに出来るんだな」
「その通りですよ、お父さん」
「ず・ず・ず・ず・ず・ず・ず・ず・ず・ずんばらしい!!!」
「お父さん、これを、『ずんばら焼き』と名付けましょう!!!」
皆さんこんにちは。哀愁のせせらっちょこと、カンガルーせせらぎです。
そして、『ずんばら焼き』は、世界的に有名なスイーツとして、発展していったのです。
因みに、カンガルーせせらぎは、『尻尾までカンガルー』をキャッチフレーズにしています。


第、696話 全国ハーモニカ選手権 (2012.11.03)
何時の日からか、全国的にハーモニカブームである。
ブームに乗り遅れてなるものかと、ハーモニカに群がる老若男女。
ブームに乗り遅れてなるものかと、ハーモニカに飛びつく家電業界。
ブームに乗り遅れてなるものかと、ハーモニカを売り出す宗教団体。
今やハーモニカは慢性的な品不足状態が続き、2〜3ヶ月待ちとか当たり前。
なので、人々が行き交う街並みでは、至る所でハーモニカの音が響き渡っている。
交番で道を尋ねると、ハーモニカのメロディで答えてくれる警察官。
弱そうなオタクを取り囲み、ハーモニカのメロディで金銭を要求する不良共。
「どこかお痒いところはございませんか」と、ハーモニカのメロディでお尋ねする美容院。
凶悪バスジャック犯に対し、ハーモニカのメロディで時間を掛け説得を試みるSAT隊員。
有権者の心を掴もうと、ハーモニカのメロディで流暢に選挙演説をする立候補者。
ハーモニカでメロディを奏でる男と、その隣で、ハーモニカでメロディを奏でる女。
何時の日からか、全国的にハーモニカブームである。


第、695話 謝って下さい (2012.10.28)
我が部屋の、ベットの下の通称『宝箱』から出て来た、木製メダル。
実はコレ、僕がまだ幼稚園児だった頃、独断で婚約を交わした女の子との
お揃いで、ウチの爺さんが器用に拵えてふたりにプレゼントしてくれた、
豆腐職人の仕事っぷりが見事に彫刻されている、おぞましい、メダル。
詰まりは、若かりし頃、彫刻家を目指していた我が家の爺さんが、代々続く、
豆腐屋家業を継ぐべく、泣く泣く彫刻家になる夢を捨てた恨みと憎しみが大量に
込められた?更には、孫の僕にまで、お父さんの後を付いて豆腐屋を継ぐようにと、
僕と、僕の独断による婚約者を、園児の段階から洗脳するための、忌まわしい、メダル。
案の定?僕とその女の子は、それから数日後には謎の破談。更には、その女の子は、
異国の地へお引っ越し。離ればなれ。爺さんは、僕の千倍は嘆き悲しみ、その後、
建前的には僕のためとほざき、その女の子の等身大立体彫刻を鮮やかに拵え、
その彫刻は、未だ、我が豆腐屋に店の中に、毎日ぴかぴかに磨かれ飾られている。
僕は現在高校生で、将来の夢は断じて豆腐屋を継ぐ事ではなく、高校を卒業した暁には、
即座にこの家を出て一人暮らしを始めたいと目論んでいる訳だけど、それに対し爺さんは、
『昔離ればなれになった許嫁を捜しに旅に出るおまえなら誰も止めはしないぞ』と、宣う。
そんなある日、我が豆腐屋に、女の子の等身大立体彫刻像を極めて良い方向に成長させ、
擬人化したかのような?と言うよりは、離ればなれになっていた、その例の女の子が、
極めて良い方向に成長され、姿を現し、その、嫌でも目に付くところに堂々と置かれた
等身大立体彫刻像を強制的に発見させられると、「え、この像って私?あなた、○○君よね?!、
私、あのメダル持ってきたのよ!ほらぁ!」と、最早、寸分の誤差も見付からないほど、
紛れもなく、僕の、元、独断による婚約者であることに、それはそれは、間違いはなかった。
若し、手相という占いが真実であったと仮定した場合、恐らく、その時、僕の手相は、
1秒を待たずして全く別人の手に入れ替わったかの如く、僕の未来を替えてしまったに違いない。
そして、「我が家の嫁が帰ってきたぞぉー」と泣きじゃくる、執念の塊と化した、怨念爺さん。
「もう、お爺ちゃんったらお久しぶり。もう私、嫁いでますよ」「え゛!!!」「え゛!!!」
若し、手相という占いが真実であったと仮定した場合、恐らく、その時、僕の手相は、
1秒を待たずして全く別人の手に入れ替わり、速効に元の自分の手に入れ替わっていたに違いない?
我が部屋の、ベットの下の通称『宝箱』から出て来た、木製メダル。
それは、若かりし頃、彫刻家を目指していた我が家の爺さんが、代々続く、
豆腐屋家業を継ぐべく、泣く泣く彫刻家になる夢を捨てた恨みと憎しみが大量に
込められた・・・・・・・・・・・・って、 爺さん、心底、僕に、謝って下さい。


第、694話 気まずいごっこ (2012.10.21)
この際、何でも、「これは、『ごっこ』なんだ」と思えば、
大抵の、『気まずい』って有り様を、一時的にでも楽に出来る!!?
この際、何でも、「これは、『ごっこ』なんだ」と思えば、
大抵の、『気まずい』って有り様を、一瞬にして白紙に戻せる!!?
例えば、道を歩いている時、野良糞を踏みそうになって間一髪避ける。
だがしかし、道で寝そべっていた、その野良糞の生みの親の尻尾を踏んでしまったとか。
例えば、友達の家でパーティーが行われ、「じゃぁ、あたしが一品作ってあげるよ」と、
ちょいとした料理を拵えて、みんな、「うん、おいしいよ;;」と言ってはくれたけれど、
自分で口にした時に、「塩っ気ねー」と叫び、キッチンに駆け込んで確認すると、
塩かと思って使用したブツが、実は、聖者の手から物質化された聖灰だった時とか。
例えば、大切な会議がある日に目覚ましが鳴らず、寝る前に目覚ましのスイッチを
入れ忘れていた事に気付くも時既に遅く、上司に叱られた時に何故か口から出た言い訳が、
「あなたが目覚ましのスイッチを切って部屋を出て行ったのではないですか?」で、
それを聞いていた周りの人々は、「何?このふたり、そんな関係?」「不倫」「男同士で」
上司に脂汗を掻きながら、「な、何を言っているんだ、貴様」と激怒されても、
発言した本人としては、慌てて無意識に出た言葉なだけに、時既に記憶が無く、
こんな時のためにと、スイッチを入れておいたICレコーダーを聞いてみて痙攣とか。
人それぞれ、それはアポ無しで訪れる、人生の不具合。地獄絵図。落とし穴。
「これは、『ごっこ』なんだ」と思えば、気まずい気持ちもリセット開始で元通り!!?
彼氏に「あたしの職業はフラワーデザイナーよ」とどうにか誤魔化し続けてきたけれど、
本業は、地下で暴れ牛と格闘する女性人気ファイター、デビル・デンジャラスと露見。
「これは、『ごっこ』なのよ」と、青白い顔をした彼氏に縋り付く、土俵際のあたし。
『ごっこ』は決して現実を修正してはくれない事を、身を以て感じてしまった、枯れ葉舞う季節。


第、693話 ポケットの奥のノスタルジー (2012.10.13)
「ビスケットが食べたいなぁ」
男は、幼い頃に記憶した歌を繰り返し口遊んでいた。
「 ポケットのなかには・・・・・がひとつ♪」
男は、何気にポケットのなかに手を突っ込んでみた。
男の手の中には子供服用と思われるキラキラしたボタンがひとつ。
「何だ。一瞬、高価な物ではないかと拾って、だが捨てるのももったいないと
ポケットに放り込んでおいた、あの時のボタンではないか・・・・・・・・・・」
男は、その、手の中のキラキラしたボタンを暫くはぼんやり眺めていた。
そして、男は、その、手の中のキラキラしたボタンの持ち主の事を考えてみた。
恐らくその子は女の子で、当然それは、余所行きの服だったのだろう。
家に戻った時に、ボタンがひとつ失われていた事に気付き泣いたかも知れない。
その時、男は、初恋の女の子の事を不意に思い出した。
ピアノの発表会当日、男とその女の子は自分の出番を待って緊張していた。
更に、男の方の緊張には、大好きな女の子の側という恵まれたドキドキが含まれていた。
そんな時、大好きな女の子が突然泣きだした。女の子を宥める母親。心配する先生。
どうやら、女の子が着ていた服のキラキラしたボタンがひとつ失われていたようだ。
動揺した女の子は、自分の出番の時、ミスタッチをし、更に泣いて戻ってきた。
なので、男は、自分の出番の時、わざとミスタッチをし、『ぼくも間違えちゃった』と、
女の子に向かって戯けて言うと、出来る限りにっこりと笑って見せた。
女の子はその時、漸く、キラキラした笑顔を取り戻してくれた。
・・男は、まだ、手の中のキラキラしたボタンを暫くはぼんやり眺めていた。
「 ポケットのなかには想い出がひとつ♪」
男は、暫くは、そう、繰り返し口遊んだ。
気付くと、樹木が立ち並ぶ深い森の中、景色はすっかり暗くなってしまったようだ。
男は、木の枝に結んだロープに己の首を掛け、そして、一気にそのロープにぶら下がった。


第、692話 今までの私と違う (2012.10.07)
今までの私と違う。
1度目の恋は、
燃え上がった炎の向こう側の景色を、想像すらしていなかった。
2度目の恋は、
着飾りすぎて、愛されていたのは真実から掛け離れていた自分だった。
3度目の恋は、
素直になりすぎて、お互いの心の保護層に、取り戻せない亀裂が生じてしまった。
『今までの私と違う。』
サヨナラが訪れる度に、思い返した言葉。
『今までの私と違う。』
好きな人が変わる度に、繰り返された気持ち。


第、691話 今は、秋。 (2012.09.29)
行楽の秋。
彼氏に連れられて山に行った。
如何に熊の攻撃を躱しながら食べられるキノコを大量ゲット出来るかが勝負だ!
但し、二人ともキノコにはド素人だ。
なので、キノコ図鑑と、後は、感だけが勝負だ。
そして、どちらが先に毒味をするのか・・・・・・・・。
スポーツの秋。
美味しくキノコ鍋を喰らうには、運動をしてお腹を空かせる事だ。
だがしかし、キノコ狩り&熊との壮絶な死闘の後なので、正直きつい。
彼氏は指相撲を提案してきたが、あたしはにらめっこを提案。
揉めている間に総合格闘技に発展!精根尽き果てた頃、キノコ鍋が完成!
そして、どちらが先に毒味をするのか・・・・・・・・。
食欲の秋。
二人、生存しています!
お腹が空きすぎて、毒味も糞もへったくれもなく、貪り尽くしました。
お腹一杯でもう動けない。手足の麻痺や痙攣や?おやおやおや???
読書の秋。
入院中の暇つぶしは読書に限る。
普段は活字が嫌いで目もくれない小説も片っ端に制覇。
そして、因縁のキノコ図鑑も、後れ馳せながら、読破。
それに寄れば、キノコの素人鑑定は危険って書いてあった。
こんな時、『てへぺろ (・ω<)』というフレーズは、実にしっくり来る。
芸術の秋。
あたしと彼氏を病院送りにしたとされる毒キノコの絵を描いている。
絵日記に、色鉛筆で。
やっぱり、秋といえば芸術だ。
今は、秋。
あたしと彼の、秋の夜長の過ごし方。
意気投合した熊との、総合格闘技の練習でしょう。


第、690話 半分だけ青空 (2012.09.23)
青空に雨雲が所々に漂い始めた待ち合わせの日。
空から雨がポツポツ落ち始める、休日の昼下がり。
あたしは彼氏と腕を組み、彼女であるという存在をまだ味わっている。
空から雨がポツポツ落ち始める、休日の昼下がり。
何時の日からか、奴は、あたしの彼氏データに無い携帯電話を隠し持っている。
何時の日からか、奴は、今まで好んで着ていたウェスタンファッションから、
衣・褌に美豆良ヘアーの、日本神話の神々ファッションと化していった。
ある日、奴のアパートに出向くと、奴曰く、幼い頃、アルマジロに育てられている
ところを保護され、その後、人間化のための教育を受け、立派に成人に成長した現在、
DNA鑑定により奴との血縁関係であることが判明したとされる、奴の妹が、いた。
立ち止まり、閉じていた傘を大きく広げる、休日の昼下がり。
青空が姿を消す前に、あたしから、『サヨナラ』の言葉を用意してきた。
半分だけの青空を、想い出に残すために。
大粒の雨が落ち始める頃、あたしは一人で傘を差し、新たな明日に歩み始める。


第、689話 背中 (2012.09.16)
なんだ?!なんだ?!
違うクラスのロメロくん(仮名)が、あたしのクラスで、
あたしの隣の席で、田悟作(仮名)と会話してやがる。
要するに、あたしは今、ロメロくん(仮名)の隣の席で、
ロメロくん(仮名)と背中合わせという突然のVIP待遇で、
おしゃべりペチャ子(仮名)との会話中なのである。
ペチャ子(仮名)とのおしゃべりは、一寸の油断も出来ず、
己の神経を最大限に研ぎ澄まし、ペチャ子(仮名)の心の中に
潜り込むような気持ちで絶えず集中し聞かなければならない。
今、ペチャ子(仮名)があたしに、果たして何を伝えようとしたのか?
そもそも、つい先ほど、ペチャ子(仮名)があたしに何を語って、今、
ペチャ子(仮名)が全身全霊全力で口にしているおしゃべりとどのような
繋がりがあるのかを読み解き、速効でペチャ子(仮名)に言葉を返していく。
それは、詰まり、おしゃべり好きな二人が休み時間の教室で繰り広げている、
おしゃべり好きと言うプライドを賭けた、正に、真剣勝負なのである。
な、なのに、ロ、ロメロくん(仮名)が、田悟作(仮名)と会話してやがる。
あたしの隣の席で、あたしと背中合わせに、田悟作(仮名)と会話してやがる。
あたしとロメロくん(仮名)との距離新記録は、学校の廊下で擦れ違った時の、約1メートル。
今は、あたしとロメロくん(仮名)、背中合わせに、約15センチぐらいかな???
ペチャ子(仮名)があたしに言う。
「ちょっと、私の話聞いてる?」
「え?昨日、羽織を纏ったカンガルーがペチャ子(仮名)の部屋で正座して、
ペチャ子(仮名)にはまだ幼かった頃に生き別れた双子の妹がいる事を必死に語り、
それを聞いたペチャ子(仮名)がパパとママに『どうして今まで教えてくれなかったの』と、
涙をボロボロと流しながら一晩中・・・・・・・・・・」
「違うぞ!昨日、私とペアを組み、二人羽織の世界大会を目指す事となった
羽織を纏ったカンガルーを見て、『あなた達って、双子の姉妹のようだわ』と、
パパとママが涙をボロボロと流しながら、一晩中踊りまくっていたって話しをしたのよ」
今、ロメロくん(仮名)が、田悟作(仮名)の冗談話に大笑いをして体を後ろに仰け反らせた。
その時、背中と背中が軽く触れた。
ペチャ子(仮名)があたしに言う。
「ちょっと、私の話聞いてる?」
「だから、カンガルーの背中と触れ合って、その柔らかな温もりに、
『やはり、あなたの事を、アンドロイドではないかと囁かれている噂は、
心ない人達の作り話だったって事、今、改めて思ったわ』と、涙をボロボロ・・・・」
「違うぞ!カンガルーの背中には、タイピングするためのキーボードが埋め込まれ・・・・」
・・・・・・・・・・そして、
昼休み終了のチャイムが教室に鳴り響くと、あたしの背中はこの教室に取り残された。


第、688話 お風呂場にて (2012.09.09)
お風呂場にて、髪を洗っている時、突然、何かの気配を感じ、
恐る恐る目を開けると、足下にカルガモの親子の大群がいたり、
育ち盛りの子犬軍団が母犬を求めクンクン泣き叫び始めたり。
そんな妄想に邪魔されながら、愛しのC君への想いに導かれる。
学校で姿を見掛けるだけで、未だ、一言の会話もした事がない。
思い切って告白したならば、C君はあたしになんて答えるのだろう。
『ならば、誰に気付かれることなく、お皿の上の絹ごし豆腐一丁を
お箸で挟み、決して絹ごし豆腐を崩すことなく引っ繰り返す技を習得してこい』
若しも、C君にそう言われたら、あたしは何としてもその技を習得するだろう。
人でごった返す都会の人気スポットにて、あたしは、用意したちゃぶ台にお皿を乗せ、
そのお皿には絹ごし豆腐一丁。一瞬、都会の人気スポットに埋もれる人々全ての目が、
ちゃぶ台の前に正座しているあたしから離れたその瞬間、あたしに箸で挟まれた
絹ごし豆腐一丁が、決して僅かにでも崩れることなく、宙を舞い、引っ繰り返される。
都会の人気スポットに埋もれる人々は皆誰も、まさか、お皿の上の絹ごし豆腐一丁が
引っ繰り返された事なんて夢にも思わない。あたしは、C君の想いに答える事が出来た。
・・・・・・・・・・なんて。
そんな事を、何時か、C君が友達と会話していた時、C君がファンだと語っていた、
あのアイドルの娘が使用していると評判の、某高級シャンプーの匂いに包まれながら、
お風呂場にて、あたしは、恐る恐る目を開けると、足下にカルガモの親子の大群がいたり、
育ち盛りの子犬軍団が母犬を求めクンクン泣き叫び始めたり。
そんな妄想に邪魔されながら、今日も、愛しのC君への想いに導かれている、あたし。


第、687話 告白大作戦 (2012.09.02)
遂に、A君に告白する決心が付いたけれど、
どんな事を言って告白して良いのかがわからない。
例え、その1『世界平和のために私と付き合って』
・・壮大なスローガンを掲げすぎ?
例え、その2『人類の野望のために私と付き合って』
・・これでは世界征服だ。
例え、その3『渡り鳥が渡りを無事に渡り終えるために私と付き合って』
・・早口言葉か!
ふむ、どれも私の想いがストレートに伝わらない気がする。
私はただ、A君に、『好き』という気持ちを伝えたいだけなのに。
でもなぁ、ボキャブラリーが貧弱な女だと思われるのもイヤだし。
例え、その4『私がどれほどの雨女か知りたければ、私と付き合って』
・・上手い事、興味を掻き立てられる?
例え、その5『私の家のペットが凶暴化する理由を知りたければ、私と付き合って』
・・これで興味を示さないなんて、有り?
例え、その6『私と付き合う男性の誰もが奇怪な死を・・・・』
・・あ!これボツ。
ふむ、どれも的確に奴のハートを射貫くには決定打に掛ける。
私はただ、A君に、『好き』って気持ちをパーフェクトに訴えたいだけなのに。
例え、その7『私とチュウしたければ、納豆喰らいながら掛かってきなさいよ!』
・・えっ、これ、私の願望?
例え、その8『私とチュウしたければ、生の虫を頬張りながら掛かってきなさいよ!』
・・えっ、これ、私の願望??
例え、その9『私とチュウしたければ、牛乳を拭いた雑巾・・・・』
・・あ!これイヤ。
と、あれこれ考えていたらA君が私の目の前までやって来ていた事に気付き、
こりゃまたびっくらたまげて、そんな私の口から飛び出した言葉が、「好き」。
A君、「オレも」。
案ずるより産むが易し←意味→牛乳を拭いた雑巾と、とりあえずチュウしてみろよ?


第、686話 振り向けば異常巻き (2012.08.26)
「別れよう」
僕は彼女にそう話を切り出した。
彼女は言う。
「異常巻きアンモナイト、ニッポニテスって知ってる?
最初は、滅び行くアンモナイトが進化の袋小路に入り奇形が生じたと言われていたわ。
でも、巻き方に規則性があるという見解から、現代では、様々な環境に適応して
進化した例とされいるのよ。さあ、出掛けるわよ!ニッポニテスの発掘地、北海道へ!!!」
「い、いや、僕たちもう、別れよう」
「そもそも、ニッポニテスは本当にアンモナイトなのかしら?
あれほどクリソツなダンゴムシとタマヤスデは甲殻綱と倍脚綱で、
分類的には違う生物なのよ。さあ、出掛けるわよ!北海道!!!」
「い、いや、僕たちもう、・・・・・・」
「さあ、北海道に着いたわ。ねえ、見て!これって、ニッポニテスの擬人化キャラかしら?」
「い、いや、それ、まり○っこりだし。巻かれてないし」
「ねえ、木彫りの熊よ!何故、木彫りの熊は異常巻きに進化しないのかしら?」
「本当に、僕たちもう、別れよう」
そして、僕と彼女は、単なる、北海道カップル旅行から帰ってきた。
「別れよう」
僕は彼女にそう話を切り出した。
彼女は言う。
「ねえ、イリオモテヤマネコのために、我々は何をしてあげられるのでしょうか?
イリオモテコキクガシラコウモリのために、我々は何をしてあげられるのでしょうか?
さあ、今すぐ出掛けるわよ!ネコとコウモリが待つ、西表島へいざ!!!」
・・・・・・最初に別れを切り出してからもう二年余りがたった。
良くもまあ、一々めんどくさい女と思って別れを切り出すが、それでも別れずにいる原因は、
彼女の方ではなく、僕の方にあるのだろう。恐らくは、彼女の僕に対する愛情よりも、
僕の、彼女に対する愛情の方が大きいのだろうと、本当は、既に気付き始めているのだ。
それでも、やはり、定期的の訪れるこのシチュエーション。
「別れよう」
僕は彼女にそう話を切り出す。
彼女は言う。
「ねえ、オオウミガラスは最後に確認されたつがいが抱卵中だったの。
でも、1羽は発見者に棍棒で殴り殺され、もう1羽は絞め殺され、
残された卵は殻が割れてしまい、オオウミガラスはこの世から絶滅したわ」
「それって、若しや、きみ、遠回しに、赤ちゃんが???」
「さあ、今すぐ出掛けよう!荒れ狂う北極海へいざ!!!」
「赤ちゃん違うんかい」
「木彫りのホッキョクグマは異常巻きに進化しないのかしら?」
「進化以前に、木彫りのホッキョクグマは恐らくは無い」
良くもまあ、一々めんどくさい女と思って別れを切り出すが、それでも別れずにいる原因は、
彼女の方ではなく、僕の方にあるのだろう。恐らくは、彼女の僕に対する愛情よりも、
僕の、彼女に対する愛情の方が大きいのだろうと、本当は、既に気付き始めているのだ。
このような遣り取りは、二人の環境に適応して進化した一つの例なのかも知れない。



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