Specially
第、154話 雨の色 (2002.06.15) 一年前、あなたを一度だけ迎え入れたことのある黄色い傘。 風が強い日になんて、差すことはなかった。 お店の傘立になんて、絶対、置かなかった。 学校帰り、紫陽花の咲く小径をふたりだけで歩いた。 あなたが傘を忘れると、あなたを傘に入れていく役目の彼女がお休みだった日。 その彼女の大親友で、一緒の帰り道の私の特権として・・ 雨の色。 傘に音を奏でて降り注ぐ、雨の色。 今日、彼女はお休みの日・・ 私は校門で、黄色い傘の下。 あなたは今回も自分の傘を差しながら『よっ!誰か待ってんのか?』って・・ ひとり、さっさと帰って行った。 私は今回も少しの間、待つことのない誰かを待ってから、ひとり、紫陽花の咲く小径を歩いて帰った。 |