Specially

第、218話  水色のビニール傘 (2003.09.07)


「借りてた水色のビニール傘を返しに行かなくっちゃ」

あの日は、午後から突然曇りだして、菓子パンを選んで料金払ってて、

突然、強い雨音に振り返ると豪雨&傘もなく慌てる街行く人々・・

パン屋さんの『新人バイトなんです』と、レジ番していたイケメンおにいちゃんったら、

嬉しいことに貸してくれた、一本の水色のビニール傘。

やった!イケメンおにいちゃんに傘を返しに行けるぞ〜♪゜゜

いや、べつにパン買いに立ち寄ればいいんだけど。

やっぱり、しっかりした口実が何かと味方になってくれればと願うばかりで。

と、返しには行くが、イケメンおにいちゃんったら姿がなく・・

レジのおねえちゃんにへたにもし尋ねたりしたら、『預かっておきますよ』なんて、、

いやぁああああ、もったいない!!! やっぱり、手渡しに限るわよ <( ´ ⌒`)ゞ

今日で空振り三度目だけど、まさか、もう、やめちゃってないでしょね。

空が目映い。

「借りてた水色のビニール傘を返しに行かなくっちゃ」

今日もいそいそと水色のビニール傘を手に青空の下をてくてくと歩く。

もう、あの日から一月は過ぎたんだ・・

予定では、今頃、この水色のビニール傘がきっかけでついに初デート。

青空の下、イケメンおにいちゃんと手をつなぎながら・・ なんて・・

とてもよく晴れているのに水色のビニール傘を持った女が一人、

通りすがりに挙動不信に、パン屋さんの中をさり気なく覗き込む午後。

あ、!!イケメンおにいちゃん、鼻の頭に粉つけて店の奥から出て来たよ〜♪゜゜

そうか、本来は厨房で働いていたんだ。

そして、よくいるレジのおねえちゃんといちゃいちゃと・・

え・・???

よくいるレジのおねえちゃんと、バイト仲間の線を超えた感じで、いちゃいちゃと・・

ううん、ただ、ふたり、ちょっと笑顔で会話していただけなんだけどさ。

でも、それだけでわかることだって、あるさ・・

わたしは、そそくさとパン屋さんに入って、

「何時ぞやは傘をありがとうございました」と、m(_ _)mペコリ

帰り道、空からポツポツと雨が落ちて来た。

家に辿り付く頃には本降りになった。

だったら、あの日の午後、傘なんて借りることなく雨に濡れておけばよかったんだ。

この一月ほど、玄関の横の傘立てにいたはずの水色のビニール傘・・

目映い空の下、わたしと共に街に繰り出していた水色のビニール傘・・

わたしの心の中のドキドキを、いつも傍らで聞いていた、水色のビニール傘・・


☆ 無断転載使用禁止 ☆ (C)copyright"横浜マタタビバージョン"all right reserved

第、154話  雨の色 を読む

ひとつもどる


HOME.jpg