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第、298話  うさぎの観察日記 (2005.03.13)


僕のクラスには、うさぎがいる。

教室の、校庭が見える窓側後方。

白くて小っちゃくて人見知りで・・

なんだかいつもさみしそうで・・

そんなうさぎが恋をしたみたいで・・

「ねえ、A組のよし君、また二股かけてたのバレたみたいで大変らしいよ」

「実は三股も四股もかけてんじゃないのぉ・・」

クラスで飛び交う噂?話。

うさぎの耳がぴくぴく動く。

それでも校庭で体育の授業を受けている"よし君"に釘付け。

うさぎの耳にはよくない噂ばかりが毎日飛び込んでゆく。

今日も赤い瞳(め)をして"よし君"を探す。

なんだか"よし君"に惚れてるのがこの所クラスではバレバレで・・

それにも気付かず、相変わらず、ひとりぼっちな、うさぎ。

まったく困ったうさぎな娘(こ)だ。

このクラスに・・ この学校に・・ きみは来たばかりだから知らないんだ。

"よし君"って言う奴は本当にプレイボーイなんだぜ!!

そんな奴に惚れてたって、きみは幸せになんてなれないんだぜ!!

きみは好きなひとを探すより、きみを好きなひとを探したほうがいい。

誰よりもきみを大切に想っているひとを・・

出来れば、むさくるしい男子連中には適当に顔が広い僕が誰か紹介してあげたいが、、

誰がいるんだ。 安心してきみに紹介出来る・・ きみを大切に想っているひとって・・

名乗り出て来いよ!悪いようにはしないぞ!僕の保証付きでキッチリ紹介してやるぞ!

でも誰がいるんだ・・ 善く善く僕が知るわけないじゃないか・・ 僕が・・ 僕が・・

僕が・・

数日後の朝。

教室のベランダ。

「おはよう、紺野佳奈さん」

紺野佳奈はちょっとだけ驚いたように僕を見上げた。

「転校して来た時は、きみは先生に後押しされて、みんなに自己紹介してたけど、

きみは僕のことは、まだ、ほとんど知らないだろ」

紺野佳奈はちょっとだけ不思議そうに僕を見上げている。

「僕は松崎康太って言うんだ。・・ずっと、よろしく」

紺野佳奈はちょっとだけ顔を赤らめ僕を見上げていた。

・・この娘(こ)が、僕の大切なうさぎ。

いつのまにか僕の心の中に住み着いていた、うさぎ。


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