横浜マタタビバージョンのFUNI WORLD

おバカショート劇場。

FUNI WORLD (26)


第、832話 憧れのキャビンクルー (2015.06.14)
私はキャビンクルーを目指し採用試験を受け続けている。
短期間で学べると謳われているキャビンクルートレーニングを長期間学ぶ。
こんな私ではインターンシップでさえ夢のまた夢。
本日は苦手な機内アナウンス訓練だ。
先生「さあ、乗務員用マイクを握って、ゆっくり、しっかり発音するのよ」
私「はい。赤コーナーより、ダス○ィ・ローデス選手の入場です」
先生「あなたは何でマイクを持ったらリングアナウンサーになってしまうの?」
私「これにはいろいろと深い事情が・・・・・・・・・・」
先生「もういいから次、ドクターコール」
私「はい。あっ!乗客が額から流血している。
ヒールレスラーの凶器攻撃にやられたのね!!?
お客様の中にプロレスのレフェリーはいらっしゃいますか」
先生「あなたは何でプロレスから頭が離れないの?」
私「これには語り尽くせない複雑な事情が・・・・・・・・・・」
先生「もういいから次、機窓風景アナウンス」
私「はい。あの辺りが、1981年5月26日に、アントニオ○木&
ダスティ・ロー○スVSスタ○・ハンセン&ハルク・ホ○ガンの
試合が行われた、大阪府立体育会館かしら。アメリカン・ドリーム、
故ダ○ティ・ローデスさん、私たちはあなたの尻振りダンスを決して忘れない」
先生「あなたはの頭の中にはどうしてプロレスがへばり付いているの?」
私「私の頭の中は説明不可能な不思議で溢れているようです・・・・・・・・・」
先生「私たちもあなたのその説明不可能な不思議を決して忘れないわ」
私「では私はキャビンクルーになれるのですね?!!」
先生「あなたの頭の中は迷宮デンジャラスだわ!!!」
ー 故ダスティ・ローデス選手を偲んで ー


第、831話 爆発物 (2015.06.07)
刑事 A「爆弾処理班はまだ到着しないのか」
刑事 B「先輩、もう時間がありません」
刑事 A「よし、おまえが解体処理をしろ」
刑事 B「赤と青のコード、どちらかを切断って例のアレですね」
プルルルル プルルルル プルルルル
刑事 B「うわぁ!」
刑事 A「携帯の着信音だろ。あ、もしもし・・」
刑事 B「し、心臓に悪い」
刑事 A「え、今夜の夕飯のおかずに赤ピーマンのポン酢漬けを作る?」
刑事 B「赤ですね?!赤のコードでいいんですね」
刑事 A「え、青しそジュースも作って待っているってか?」
刑事 B「青なのですね?!青のコードでいいんですね」
刑事 A「焦げ茶のテーブルクロスも買って来ちゃった?」
刑事 B「こ、焦げ?!爆発?!木っ端微塵?!」
刑事 A「色とりどりサラダも?野菜ばっかりだな」
刑事 B「先輩、確かに箱を開けてみると色とりどりな
複雑に絡み合ったコードが起爆回路に繋がっています。
どれがダミー配線なのか?どれを切断すれば良いのか?」
刑事 A「冷凍しておいた肉もあるだろうよ、おいおい」
刑事 B「先輩、爆発物処理筒車が到着して爆弾を凍らせました」
刑事 A「とっとと解凍してしまえ!」
刑事 B「そりゃマズイです、先輩!」
刑事 A「確かにおまえの味付けではマズイ!即席タレがあっただろう」
刑事 B「先輩、爆弾処理班が爆弾を運び出していきましたよ」
刑事 A「電子レンジの中で肉が爆発しただとっ!」
刑事 B「・・・・・・・平和ですね、先輩の家庭」


第、830話 Christmas Songs (2015.05.31)
流れ星が消えるまでに願いを唱えるより
人の心変えられるのは人々の繋ぐ声
いつか君が笑顔になる 授けられた生命(いのち)に
ふと、見上げた空の向こう 聞こえない悲鳴はあるの?
平和を叶えていた国で作られた兵器で
他の国の、人々の生命(いのち)が消されている
子供達に捧げたい未来を叶えたい
伸ばしたこの手 通り過ぎる人々に
Christmas Holy Night
平和と信じていた国で作られた兵器で
他の国の、人々の生命(いのち)が消されていく
子供達に捧げたい未来を叶えたい
伸ばしたこの手 通り過ぎる人々へ
Christmas Holy Night


第、829話 初ワンマンライブ (2015.05.24)
アイドルA「マネージャー、わたし、緊張しすぎてダメ」
マネージャー「初ワンマンライブなのよ、頑張りましょう」
アイドルA「今日の朝、サイリウムが灯された会場で、
私たちが選挙演説をしている夢を見たの。私たちって、
もしかして、選挙演説アイドルユニットだったかしら?」
マネージャー「なに言っているのよ、あなたたちは、選挙
演説アイドルユニットではないでしょ!しっかりしなさい」
アイドルB「マネージャー、わたし、涙が止まらない」
マネージャー「こらこら、メイクが落ちてしまうでしょ」
アイドルB「今日の朝、サイリウムが灯された会場で、
私たちが木製のたらいと洗濯板で洗濯している夢を見たの。
私たち、ひょっとして、洗濯板で洗濯アイドルユニットなの?」
マネージャー「なに言っているのよ、あなたたちは、洗濯板で
洗濯アイドルユニットではないわよ!もう、早く準備して!」
アイドルC「マネージャー、わたしはとっても冷製よ」
マネージャー「その意気よ!張り切っていきましょう」
アイドルB「でも、今日の朝、サイリウムが灯された会場で、
私たちが肛門鑑別法でひよこの雌雄鑑別している夢を見たの。
私たち、気付いたら、初生雛鑑別師アイドルユニットなの?」
マネージャー「なに言っているのよ、あなたたちは、初生雛
鑑別師アイドルユニットではないのよ!さあ、ステージへ!」
そして、アイドルユニットの女の子たちは、サイリウムが
灯された会場で、鳴りやまぬ歓声の中、和傘作りの工程を紹介。
こうして和傘製造アイドルユニット初のワンマンライブ・・
・・そこで、某アイドルユニットのマネージャーは目が覚めた。
--------------------------------
マネージャー「ねえ、今日の朝、サイリウムが灯された会場で、
あなたたちが和傘作りの工程を紹介している夢を見たの。あなたたち、
わたしに内緒で、和傘製造アイドルユニットになってたのかしら?」
アイドルA・B・C「マネージャー、もう、しっかりしてよ、
私たち、和傘製造アイドルユニットじゃないよ!さあ、始まるよ!」
そして、フリーアナウンサーで結成されたアイドルユニット、
『女子アナドル報じ隊』は、サイリウムが灯された会場で、
鳴りやまぬ歓声の中、ニュース原稿をひたすら読み続けた。
「では、次のニュースです。盗撮のビデオカメラを
設置するため、コンビニのトイレに侵入し、その際、実弾
入り拳銃を置き忘れたとして、巡査部長が逮捕されました」
斯うして『女子アナドル報じ隊』初ワンマンライブは大成功!


第、828話 リラクゼーション (2015.05.17)
『覚えている限りの記憶を引き出す香り』
これ、本日購入したアロマビーズのこと。
どんな香りなのだろうかと嗅いでみると、
味噌と醤油を薄めたような『香り』である。
昭和の夕暮れ時にタイムスリップした感じ。
もうすっかり成人して長い年月が経つのに、
味噌や醤油は、未だ口にする調味料なのに、
ふわっと香りが漂うと幼い頃の記憶が蘇り、
青年期から20代、現代と記憶が突っ走った。
自らが傷付けてきた心の痛みを剥き出して、
我に返った部屋の中に薄汚れた自分がいた。
数日前に喧嘩をしていた彼女に電話を掛ける。
「貴方から謝ってくるなんて初めてよね?」
「・・・・・・・・・・そうだったけかな」
『覚えている限りの記憶を引き出す香り』
・・あれ、商品の謳い文句に偽り有り??!
おとぼけ顔でゆっくりと深呼吸するひととき。


第、827話 リズム村太蔵の世界 (2015.05.10)
『リズム村太蔵』
その名を聞いてピンと来る者は恐らく誰もいないであろう。
1941-44年、リズム歌謡を数曲披露し消えていった歌手である。
『ヤンキー・かっぽれ』『リパブリック・お手拍子』
『ヤーレン・ソーラン・アメリカン』などをレコーディング。
戦時下、内務省の検閲でひっかかり発禁処分を受け、
惜しくも世に出なかった貴重な名曲の数々である。
この度、リズム村太蔵本人が隠し持ち保存されてきた
テスト盤が発見され、CD音源に生まれ変わり発売されました。
《テスト盤SPレコード復刻によるリズム歌謡・蘇るリズム村太蔵の世界》
お煎餅にジェリービーンズを乗せて食べるように味わって聴きませう。


第、826話 パッキンパッキンパキパッキン (2015.05.03)
MC「アニメクイズ王選手権の時間です。
出題されるアニメの名セリフから、
そのアニメのタイトルをお答え下さい。
それでは第1問!!!じゃじゃん~♪。゜
『学校の敷地で穴を掘ってたら子猫の死骸が出て来たぞ』」
回答者「*******」
MC「はい、正解です。このアニメは、
とある高校にパッキンを取り替えに水道修理に
やって来た水道修理業者のお兄さんと、その高校に
突然迷い込んで来た桃菜ばあさんとの恋愛を描いた
学園アニメ、『シルバーピーチ』です。
それでは第2問!!!じゃじゃん~♪。゜゛
『下請け制度で日本の職人は消えてゆく』」
回答者「******」
MC「はい、正解です。このアニメは、
とあるパッキン製造工場でバイトする
女子高生と、10年前に妻に逃げられ独り身で
子供を育ててきたハゲ社長との恋愛を描いた
ラブコメアニメ、『夕日の町工場』です。
それでは第3問!!!じゃじゃん~♪。゜゛
『パッキンパッキンパキパッキン』」
回答者「******」
MC「はい、正解です。このアニメは、
パッキンを見るとザトウムシに変化する青年が、
子供らに発見され長い足をもぎ取られぬように
逃げ惑いながらも、己の特異体質を駆使し、
地球の平和のために何かと闘おうとする姿を描いた
変身ヒーローアニメ、『ムシ戦士美脚』です。
それでは、みなさん、この辺でごきげんよう~♪。゜゛


第、825話 応援するよ (2015.04.26)
「はづき、みつおくんのこと、どう思う?」
「え?りな、そうなの・・?」
「はやっ!わかった???」
「そうなんだ、応援するよ、わたし」
「でも自信ないんだ・・」
「りな、揚げたてのコロッケみたいにプルプルしないでよぉ」
「はづき、それ、『生まれたての子鹿』の間違いだよ。
文字数合ってないし。揚げたてのコロッケはプルプルしないし」
「取り敢えず告白するしかないよ」
「はづき、それが出来れば苦労しないよ」
「りな、生まれたてのハムカツみたいにプルプルしないでよぉ」
「はづき、それも、『生まれたての子鹿』の間違いだよ。
まだ『揚げたてのハムカツ』と言われたほうがしっくりくるよ」
「わたしが手紙届けてあげるよ」
「ラブレターなんて書いたことないもん」
「一言だけでもいいじゃん」
「だけど、自信持てないよ」
「りな、揚げたての子鹿みたいに・・あれぇ?」
「はづき、・・それはとっても残念だよ」
---------------------------------
ー はづき、自宅 ー
(こちら、WebラジオB級アニメ放送局です。本日のメールテーマは、
『友達と同じ人を好きになったら』という、B級路線しゅっぽっぽな、
ベタな話題ですけれど・・・・・・・)
「B級路線?ベタな話題?当事者にとっては『大事件』なんだぞー」
---------------------------------
「はづき、なんで隣町の神社に来たの?」
「この神社はね、縁結び神社なんだよ!」
「はづき、最終的には神頼みだね」
「りな、藁にもすがる神頼みだよ」
「はづき、向こうから、男性と腕を組んで
歩いてくる女性って、みつおくんに似てるね」
「りな、向こうから、男性と腕を組んで
歩いてきた女性、目を背けて擦れ違ったね」
「はづき、化粧濃かったけれど、みつおくんだったね」
「ロリータワンピ着てたけれど、みつおくんだったね」
---------------------------------
ー はづき、自宅 ー
(こちら、WebラジオB級アニメ放送局です。本日のメールテーマは、
『只今失恋真っ最中』という、B級路線しゅっぽっぽな、
ベタな話題ですけれど・・・・・・・)
「B級路線?ベタな話題?りなにも、わたしにも、『大事件』なんだぞー」


第、824話 のりひこ曾爺の大予言 (2015.04.19)
発見。
先日、天井裏に仕舞われていたままだった、
僕の曾爺さん『のりひこ』が子供の頃に
書かれたと思われる日記帳が発見された。
驚くことに、そこに書かれていた、後の社会現象に
関する出来事は、見事に?的確に?予言されていた。
1、道端に大量の菓子が捨てられる。
・・仮面ラ○ダースナックとか???
2、消せない消しゴムが売れまくる。
・・ス○パーカー消しゴムとか???
3、紐無し乳房ホルダーでヤッホー。
・・ヌ○ブラ??? モ○ヤン???
のりひこ曾爺さんは、予言者だったんだ。
しかし、腑に落ちない記述がこれ。
4、人類は人造人間に支配される。
・・機械知能の反乱???
確かに、便利と称して購入した製品のために、
支払いに四苦八苦している人間も存在するが。
流石に空想科学だよな、のりひこ曾爺さんよ。
---------------------------------
カスタマーセンター。
うさ耳付けたかんぴょう剥き職人フィギュアを
通販サイト『フィギュア萌え』で購入手続きを試みるが、
何とも手続きの流れが複雑でカスタマーセンターに電話。
「何故かサイトでの手続きがうまくいきません」
「まず、『フィギュア萌え』で検索して下さい」
「あの~、『フィギュア萌え』は既に開いてますが」
「まず、『フィギュア萌え』で検索して下さい」
「は、はいはい・・・・・・・・・・」
「『フィギュア萌え』のリンクをクイックして下さい」
「は、はいはい・・・・・・・・・;;;」
ー 中略 ー
「次に、住所を御記入いただき・・」
「あの~、ここからはもうわかりますけど」
「次に、住所を御記入いただき・・」
「は、はいはい・・・・・・・・・・」
ー 中略 ー
「あの~、もしかしてですが、電話でも申し込みが出来たのでしょうか」
「わたしは電話での申し込み担当では御座いませんから。
以上、○○が担当いたしました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・これって、自動音声応答じゃなかったよな?!!
・・・・・これって、生身の人間との対応だったよな?!!
---------------------------------
親会社の工務店。
通販サイト『フィギュア萌え』で購入した、
うさ耳付けたかんぴょう剥き職人フィギュアが無事届く。
そうなると、この、うさ耳付けたかんぴょう剥き職人
フィギュアにぴったりのディスプレイケースを特注したい。
ネットで検索し、アクリル加工販売の良さげなサイトがヒット。
住所を見ると、意外と我が家から近いではないか。
ならば、直接出向いて面と向かって交渉した方が的確だ。
そう思い出向くも、場所がわかりづらく、本屋の親父に訊く。
「最近この隣の工務店が親会社になったはずだよ」
本屋の親父にお礼を言い、隣の工務店に場所を訊ねるも・・
「こちらで全てお伺い出来ます」
「でも、この辺ですよね?」
「はい、そうです」
「場所はどの辺ですか?」
「こちらで全てお伺い出来ます」
・・・・・結局、その親会社の工務店から、
アクリル加工販売の店に電話を取り次がれ、その電話で
延々交渉って、あーた!これって出向いた意味無し!
帰り間際、「お客様のお帰りです」の声と共に、
スーツ姿の社員一同が起立し、訓練の賜物の如く、
『ありがとうございました』と、同じ角度で頭を下げ、礼。
電話で交渉した時の、アクリル加工販売の親父さん、
職人気質な雰囲気で、直接会って交渉したかったなぁ。
のりひこ曾爺さんよ。
『人類は人造人間に支配される』は、満更、間違っていなかったよ。
確かに人類はコンピューターの如く、プログラムに支配されている。
---------------------------------
未来を受け継ぐものたち。
日曜日の午後。
デパートのおもちゃ売り場で、
言葉に反応するロボットと遊ぶ子供たち。
無邪気な笑い声と、好奇心旺盛なその瞳。


第、823話 森を歩けば (2015.04.12)
「ねえ、好子、フラれた勢いで誰か見付けて結婚しちゃえば?」
「世話子ったら、あたしにそんな相手なんかいないったら」
「漁師さんとかどう?嫁不足みたいだから」
「漁師さんは嫌かな」
「そうか、何か、苦労が目に見えているわね」
「そうじゃなくって、漁師さんともし森を歩いていて
道に迷ったりしたら、お菓子の家を見付ける訳だけど、
そのお菓子の家は、きっと恐らく、壁はほっけの干物。
カーペットは鮭とば。珠のれんは干し貝柱よ、生臭そう」
「漁師さんと何故に森を歩く妄想するか・・・・・・・。
なら、木こりさんの嫁?バームクーヘンの家が出て来るよ」
「バッタ・コオロギ・ムカデ・カマキリなどが
壁に塗り込められた、お菓子の家が出て来るよ」
「もう、手堅く公務員ってどうよ???」
「えっ!公務員とお菓子の家を見付けたら、部屋のあちらこちらが、
盗撮写真や盗んだブラジャーとかの家だって。そりゃあ勘弁だって」
「公務員のお菓子って、盗撮写真や盗んだブラジャーかい!??
だったら、間違いがない!お菓子屋さんと結婚すればいいじゃん」
「世話子、あたしをブタにしたいの???」
「もう、おまえみたいな女はブタのヘソ毛になっちまえ」
「ブタのヘソ毛って、ヘソからどの辺りまでなの?」
「そりゃ、出来立ての恋人に即フラれる訳だ、此奴;;;」


第、822話 深呼吸一つ (2015.04.05)
とあるスーパーマーケットにて。
『放射能汚染の心配な方への外国産日本米。
こりゃまた、おこげが美味しいパックごはん』
訳あり激安商品だそうで。安くてついつい衝動買い。
そそくさと家に帰りさっそく電子レンジでチン!
それからそれから・・・・・・・・・・。
油を敷かない熱したフライパンに、
温めたごはんを移し、強火でかりっと過熱!?
ん、それって、玄関開けたら、2分で温め、
フライパンを熱して、フライパンに移して、
おめでとうございます。おこげ完成、って、
おーーーーーーーーーーい!!!めんどくさ。
---------------------------------
荒れ果てた食品安全神話。
翌日、ネットでニュースサイトを見ていたら、
あの、詐欺おこげパックごはんのメーカーったら、
産地偽装発覚。外国産日本米は実は国産米。社長逮捕。
ほう、確かに、《訳あり》激安商品だった。
ってことは、この、詐欺産地パックごはんのメーカーが
逮捕寸前だって情報を、訳あり激安販売していた店は、
どこからか不正入手していたって、そういうこと???。
---------------------------------
巡る季節の中で。
昨日まで雨続きで、空気も湿気て、風呂場にはカビ。
だがしかし、今、自分が一番安心して口に出来る食品は、
いや、それはきっと、この目の前のカビなのかも知れん。
そう思いながら、カビいや~んスプレーを、シュッシュッ。
庭に出てみると、野の花に止まる一匹の蝶。
いやきっと、今、自分が一番安心して口に出来る食品は、
いや、それはきっと、この、目の前の蝶なのかも知れん。
そう思いながら、その蝶をよく見ると、此奴、何気に奇形。
見上げた空は昔から変わらぬ青空で、生きているが故の深呼吸一つ。


第、821話 ウサギの飼育 (2015.03.29)
亭主「おい、我が家のFAX機能付き電話機が壊れたぞ」
妻「FAXが世の中で活躍していた頃に買った年代物だし」
亭主「買い換えなくてはならないが、FAX機能はもういらんだろ」
妻「子機は必要よ。デジタルコードレス留守番電話機ね。それと、
最近の時代の変化に対応された、ウサギの飼育機能とか無いの?」
亭主「今、ネットで検索してみたが、残念ながら無いな。
ウサギの飼育機能を求める開発者だっているかも知れない。
アレクサンダー・グラハム・ベルが電話を発明して幾年月。
最先端の技術が求められながら可能に出来ない大人の事情。
それには、とても人には言えない深い理由があるのだろう」
---------------------------------
亭主「おい、このデジタルコードレス留守番電話機でいいだろ」
妻「最近は安くなったものね。でも、ウサギの飼育機能とか無いの?」
亭主「もう諦めろ!通販サイトを探し回ったがそれは無い。
ウサギの飼育機能を夢見る開発者だっているかも知れない。
東京~横浜間で電話サービス開始されて幾年月。
最先端の技術が求められながら可能に出来ない大人の事情。
それこそ、泣きながら夜を明かした切ない理由があるのだろう」
---------------------------------
亭主「遂に届いたぞ!最新のデジタルコードレス留守番電話機」
妻「子機にも充電台にも金属部の接点がないのに充電してるわよ」
亭主「こ、これは、宇宙人から授けられた技術に違いない!!?」
妻「でも、宇宙人から授けられた技術なんて説明書には書いてないわ」
亭主「一般家庭にも固定電話が普及して幾年月。
地球人は壁の向こう側の、禁断の技術に手を染めてしまった。
だからこそ、大っぴらに出来ない激しい理由があるのだろう」
小学6年生の息子「それ、非接触電力伝送って言うんだよ」
亭主・妻「お、おまえ、宇宙人だったのか!!!」
ウサギ「・・・・・・・・・・・(エサくれ);;;」


第、820話 ふうせんどんどん (2015.03.22)
公園の木の枝に幾つかの風船が引っ掛かっていた。
その色とりどりの風船は公園の近くで開催された、
『見直そう肥溜めエコイベント』で一斉に放たれた、
花の種が入れられたオブラート風船と思われる。
あたしは子供の頃からすこぶる木登りは得意だ。
ミナミコアリクイの如く木に登り、枝を揺らし、
木の枝に引っ掛かっていたその風船を救済してあげた。
・・・・・・・・・・その日の夜、おかしな夢を見た。
トイレに行きたくて目が覚めた。
トイレのドアの前には、色とりどりの風船を体に付けたおじさんがいた。
あたしはおしっこに背中を押され、おじさんなど気にせずトイレに入った。
トイレの天井には風船が備え付けられていて、おじさんの「ふうせんどんどん」
という掛け声と共にその風船は一気に膨らみだし、当然の結果、風船は破裂。
あたしは目が覚め直ぐに布団をチェックした。・・・・・・・・・・セーフ。
・・・・・・・・・・その次の日の夜も、おかしな夢を見た。
紅茶を頂くティータイム。色とりどりの風船を体に付けたおじさんがいた。
椅子に腰掛け、ダイニングテーブルの上のティーカップを持ち上げ、口に付け、
紅茶を飲もうと首を反らせた時、あたしの目は天井に備え付けられた風船を確認。
おじさんの「ふうせんどんどん」という掛け声と共にその風船は一気に膨らみだし、
当然の結果、風船は破裂。
目が覚めると、口の周りがよだれでびちょびちょになっていた。
・・・・・・・・・・更に次の日の夜も、おかしな夢を見た。
小さいおじさん化した、色とりどりの風船を体に付けたおじさんが、
天井から蜘蛛宜しく糸を垂らし、あたしの目の前に降りてきた。
そして今度は上に登って、あたしはそれを目で追い掛けると、
天井に備え付けられた風船が、おじさんの「ふうせんどんどん」
という掛け声と共に膨らみだし、破裂。
目が覚めると、終にあたしは声を上げて笑ってしまった。
あの日、木の枝に引っ掛かっていた幾つかの風船は、
あたしの住む家の庭に舞い落ちて生分解された夢も見た。
・・・・・・・・・・卒業式にコクって玉砕してしまった。
涙で家に辿り着くと、夢で風船が生分解された庭に小さな花が無数に咲いていた。
空を見上げると、夢で色とりどりの風船を体に付けていたおじさんの笑顔が
あちらこちらに浮いていて、あたしはその時、思わず声を上げて笑ってしまった。


第、819話 海底に沈んだ島 (2015.03.15)
昔、海底に沈んだ『日本』という巨大な島があり、
2515年○月○日、その海底遺跡から、防水加工収納された、
当時の日本が収められた貴重なデジタルデータが発掘された。
今から約500年前、匍匐前進ブームに沸き立つ日本の様子です。
映像では、町中で、大人から子供まで匍匐前進。
匍匐前進者専用道路が設置・管理され、
匍匐前進クラブ数・会員数も、軒並み増加。
ファンキーでポップな匍匐前進アイドルユニット、『腹ばい娘』も登場。
それを機に、走行装置が無限軌道の戦車ダンスユニット、『キャタピーズ』が現れ、
公道走行可能な個人向け電動立ち乗り無限軌道、『キャタピウェイ』が大ヒット。
更には、バズーカ砲アイドルユニット、『ロケットランチャー』が現れた頃、
日本の国民は次第に『戦争』に取り憑かれ熱狂し、そして現実に戦争へと向かった。
その数々のブームを仕掛けたのは、言わずと知れた、当時の日本政府であり、
その一つひとつの仕掛けが、国民を戦争へ導く為のマインドコントロールであった。
今回発掘された映像は貴重な歴史資料であり、軍事に染まり滅びた人種の記録である。


第、818話 道祖神 (2015.03.08)
最寄り駅までの行き帰りの道。
とあるアパートの外壁辺りに、何故なのか、
大きさな石が確かにそこに存在していた。
一応、ストーンオブジェではなさそうだ。
道祖神であろうか???
道祖神は外部から村に悪い霊が侵入するのを防いでくれる、
天宇受売神と猿田彦神による夫婦神だ。
・・・・・・・・・・いや、露骨に単なる石だし。
そこへ、一匹の猫がその石の上に飛び乗り、
更にアパートの二階のバルコニーに飛び移り、
一声「にゃん」と鳴くと、窓が開き、笑顔の女性が
そこから顔を覗かせ、猫は開いた窓から部屋に進入。
・・・・・・・・・・そうか。猫が二階のバルコニーに
飛び移るためにどこからかあの石を運んできたって訳か。
・・・・・・・・・・一応、運んできたのは猫ではなく人間が、だろうね。
なるほど、ここはペット可の賃貸アパートのようだ。
その日から、僕はそこを通る度に猫の姿を何気に探しながら歩いた。
何時の日も、僕はそこを通る度に猫の姿を何気に探しながら歩いた。
最寄り駅までの行き帰りの道。
とあるアパートの外壁辺りに、猫が二階のバルコニーに
飛び移るための大きさな石が確かにそこに存在していた。
その大きな石は、僕と、その二階に住む女性から、
何時からか、道祖神と呼ばれるようになった。
道祖神は外部から村に悪い霊が侵入するのを防いでくれる、
天宇受売神と猿田彦神による夫婦神だ。そして、婚姻や出産の神でもある。
確かに沢山生まれた。・・・・・・・・・・一応、仔猫が。


第、817話 ランジェリー寺へようこそ (2015.03.01)
ランジェリー和尚「坐禅の体験研修へようこそ。
さあ、精神を統一して『妄想』してみましょう」
A「あの~、坐禅は、雑念や妄想を捨て『無心』になる事なのでは?」
ランジェリー和尚「様々な宗派があり、様々な考え方があります。
ランジェリー寺の坐禅は、『無心』になるなんてそんな事もったいない。
『妄想』こそが自己の正しい心の中を探し出し、自己を確認するための修行です」
B「あの~、坐禅は、自分の心を仏の心に近付かせる為の修行なのでは?」
ランジェリー和尚「様々な宗派があり、様々な考え方があります。
ランジェリー寺のとっての仏の心、詰まり、『悟り』とは、妄想で自己の
心の中と会話し、自己を確認する事。それこそが大切な修行なのです」
C「坐禅をすれば、直ちに自己を確認する事が出来ますか?」
ランジェリー和尚「以前、エリート官僚が東大生の子供を連れ、
ランジェリー寺に訪れました。同時にどこからか1人のバカが
迷い込んできました。エリート官僚と東大生の子供は、Cさんと
同じ事を訊ねられました。わたしは言いました。『わたしのハゲ頭で、
バケツ一杯分の水をそこの池から汲んでみて下さい』と。すると、
エリート官僚と東大生の子供は、『不可能な事を言うな』とお怒りになり、
帰られました。でも、どこからか迷い込んだ1人のバカは、わたしのハゲ頭で、
きゃっきゃと笑いながら池からバケツ一杯分の水を汲み始めました。
するとどうでしょう。やがて、わたしのハゲ頭に付いた水滴は、
バケツ一杯分の水を溜めたのです。少しずつでも、少しずつでも、
時間を掛けることで、求めていた目標はやがて達成されるのです」
D「その話って、底の無い桶で井戸の水を汲む話では・・・・・?」
ランジェリー和尚「様々な宗派があり、様々な考え方があります。
さあ、あなた方もランジェリーを身に纏い、坐禅の体験研修をどうぞ」
E「どんなことを妄想して良いかわかりません」
ランジェリー和尚「では、始めに、ランジェリーを身に纏った2メートルの大男が
猛吹雪の中、たった一人で黙々とスイカ割りを続ける姿を思い描いてみましょう。
そこから先はあなた方の自由です。誰にも咎め立てされる事なく思い描けるのです。
どうですか?おぼろげにでも自己の心の中と何かしら会話出来ましたでしょうか?」
A「おれは、公園でフルチン出して奇声を発したい自己の心に何気に出会いました」
B「ぼくは、婦人警官の制止を振り切って、その婦人警官を何気に轢き逃げしたい」
C「おれ、警察官になって、靴に仕込んだ隠しカメラで盗撮を何気に繰り返したい」
D「盗撮だったら、ぼくは何気に、小学校の教諭だなぁ」
E「政治家になって戦争起こして大手企業と仲良く稼ぎたい」
ランジェリー和尚「・・あなた方は直ちに『無心』になれるお寺に行って下さい」


第、816話 絶対認められません (2015.02.22)
『絶対』とは、例外がない事。
要するに、『原則』ではない事。
嫁にしたいと考えていた女の父親から、
「貴方にウチの娘を嫁になんて絶対認められません」
と、言われてしまった。
裁判官をしている、女の父親から、
お互い成人である男女の結婚に対して、
「貴方にウチの娘を嫁になんて絶対認められません」
と、言われてしまった。
『絶対』とは、例外がない事。
要するに、『原則』ではない事。
その発言に対し、嫁にしたいと考えていた女の口から、
「だったら諦めるしか仕方がないわ」との言葉が飛び出した。
生物の遺伝情報を担う主要因子の為せる技であろうか。
こんな、遺伝子の猛攻からは逃れるほかに道はなかった。
帰り道、野良猫が一匹僕に甘えてきた。
・・・・・・・・・・雌猫ではないか。
僕は、この猫を嫁にすることに決めた。
翌日、役所に、結婚手続きについてお伺いした。
「人間と猫との結婚は絶対認められません」
と、言われてしまった。
『絶対』とは、例外がない事。
要するに、『原則』ではない事。
確かに此れには納得ですよ、公務員殿。
ただ僕は、頭の中に都合良くへばりつけられた
法律をべりべりっと引っ剥がし、手短な役所に
剛速球で投げつけてやりたかっただけなんです。
翌々日、以前、嫁にしたいと考えていた女の一家に、
結婚式の招待状を郵送した。
---------------------------------
さて このたび 僕は 猫との結婚式を挙げることになりました
つきましては 僕と猫との門出を見届けていただきたく
お忙しいところ 誠に恐縮ではございますが
ぜひご出席いただきたくご案内申し上げます
---------------------------------


第、815話 おらのお兄ちゃん (2015.02.15)
中学校、某文芸部の部室として使われている一室。
4名の女子部員が部の主な活動である雑談をしていた。
忠左衛門(部活ネーム)は、中学2年生の伊達マスク娘。誰も素顔を見たことはない。
孫十郎(部活ネーム)は、中学2年生。目隠しをされても自由に動き回ることが出来る。
アッチャラー(部活ネーム)は、中学1年生だが、ハトの形態模写では老婆を漂わせる。
小兵衛(部活ネーム)は、中学1年生の甘えん坊キャラだが、常に目が笑ってはいない。
---------------------------------
忠左衛門「通学途中、良く出会った、髪の長い殿方がいてね、今どうしているかな?」
孫十郎「わたしが電車の中で出会ってた殿方も髪の長い素敵な学生さんだったけれど」
アッチャラー「わたしが最近、朝、最寄り駅で擦れ違う殿方は、スーツの似合う短髪よ」
小兵衛「おらのお兄ちゃんな、以前は長髪で、就職して髪切った腰抜けロック野郎」
忠左衛門「ヘッドホンでいつも音楽聴いてた。漏れてきた音に思わず聞き耳を立てたよ」
孫十郎「わたしが電車の中で出会ってた殿方も何時もポータブルヘッドホンしてたっけ」
アッチャラー「わたしが最近、朝、最寄り駅で擦れ違う殿方、耳たぶにピアス跡あったな」
小兵衛「おらのお兄ちゃんな、就職でヘッドホン外し、ピアスの穴塞いだ腰抜けロック野郎」
忠左衛門「雨の日は、『たれ鬼さん』の傘差してたっけ」
孫十郎「わたしが電車の中で出会ってた殿方、夏は、『たれ鬼さん』のTシャツ着てた」
アッチャラー「最寄り駅で擦れ違う殿方も、『たれ鬼さん』のキャラクターネクタイだ」
小兵衛「おらのお兄ちゃんな、『たれ鬼さん』コレクターだけど、さて、如何致します?」
忠左衛門「え゛っ?」
孫十郎「お゛っ?」
アッチャラー「ありゃ?」
小兵衛「おっほっほっ!」
---------------------------------
その頃、某オフィスのデスクで、『たれ鬼さん』の
キャラクターネクタイを締めた男が、大きなクシャミをした。
「:″;`;:″;`;・o(ロ≦〃) ぶふぇっくしょーんときたもんだ」


第、814話 三階から目薬 (2015.02.08)
奴は、わたしに気があるのではないかと思わせる行動を取る。
中学校でのお昼休み。わたしが、図書館から借りてきた本を開いて、
チャタテムシと御対面していると、チャタテムシメイクを施した奴が、
わたしの側をさり気なく通り過ぎては再び舞い戻ってきたりする。
奴は、わたしに好意を寄せているのではないかと思わせる行動を取る。
中学校での放課後。わたしは、清掃時間中にワラジムシと御対面。
ダンゴムシメイクを施した奴がさり気なく現れ、それが、ワラジムシと気付き、
慌てて立ち去り、ダンゴムシとの微妙な違いを修正後、舞い戻ってきたりする。
奴は、わたしに慕わしい気持ちで満ち溢れているのではないかと常に思う。
中学校からの帰り道、突然大粒の雨が降り出して右往左往していると、
ワラジムシメイクがまだちゃんと落とし切れていない奴から一本の傘が手渡された。
雨の中を濡れながらダッシュで駆け抜けて行く奴。それは、やがて、わたしの視界から消えた。
傘に叩き付けられる激しい雨音と、高鳴る鼓動。雨の中、駆け抜けて行った奴の足音。
わたしは、奴の常日頃の行動が、今後も続いて行く期待と、深い溜め息を必ず一つ。
中学校での始業時刻の数十分前。「昨日は、傘、ありがとう」って、奴に傘を手渡すと、
奴はからかさ小僧に扮し、頭の辺りをボリボリ掻きながら、そそくさと自分の席に着いた。


第、813話 おばあさんがやって来た (2015.02.01)
今から10年ほど前、とある小舎制ユニットケアの児童養護施設では、
虐待で家庭から保護された児童や、失業によって起こった家庭崩壊による児童、
サラ金地獄の果ての、一家心中の生き残りの児童、幼くして両親に捨てられた児童など、
6名の児童が、1小舎に分けられて暮らしていた。
その小舎の女性保育士に気がある交番の巡査が巡回中にやたらと訪問してきては、
女性保育士から「ちゃんとこの町の平和のために仕事して下さいね」と、
日々、やんわりと説教を食らっていた。
ある日、この小舎の庭先に、どこから来たのか、おばあさんが迷い込んで来た。
そのおばあさんに、リアルな虎顔のリュックを背負った、
一人の女の子が近付いて、こう言った。
「わたしは青空ぴそみ。だ!ぴそみ。暇を持て余している人は、
おバカショート内を『ぴそみ』で検索だ!ぴそみ。おばあさんの名は?」
そこへ、慌ててやって来た、女性保育士。首からぶら下げている
認知症徘徊対策カードに気付いた。認知症徘徊対策カードは、
徘徊中に本人が犯罪被害に巻き込まれる可能性もあるため、
カードには氏名と住所は記載されていないケースもあり、記載された
市の地域包括支援センターに、認知症徘徊対策カードに書かれてあった
キーワード、『竹馬を乗りこなすダンゴムシ』で問い合わせをし、
市から家族に連絡をしていただくと、取り敢えず、家族が迎えに来るまで、
そのおばあさんを施設内で保護する事にした。
そのおばあさんを保護した小舎にいた6名の児童は、まるで熱帯雨林地域に
生息するグンタイアリの如く、おばあさんに群がり、きゃっきゃと騒いでいた。
すると、おばあさんは、一人の女の子の首から下がったネックレスを指差し、
「あれま、お揃いだね」と言った。
唯華と言う女の子は、「わたし、幼い頃にお母さんにねだって、
このオモチャのネックレスを買って貰った記憶があるの。おばあさんは?」
「あたしゃ、息子から母の日にプレゼントして貰ったんだよ、ほれ」と、
首から提げていた同じネックレスをシャツの中から引っ張り出して見せた。
その時、おばあさんは、頭の中に保存されていた記憶が幾つか蘇ったのか、
「おまえら、あたしの孫達じゃねーか。ばあちゃんに会うの、久しぶりだろ」
と笑顔で言うと、次には、「あんまりうるさく騒いでいたらダメじゃねーか」
と怒り、更に、「部屋のお片付けをちゃんとしないとダメじゃねーか。ていっ!」と、
少しばかり散らかっていた部屋の中を指差しそう言った。
それを聞いた児童達は、「おばあさん、うるさい!」と、おばあさんに背を向け始めた。
その上、「おばあさんの家の人、まだ迎えに来ないの?」と、女性保育士に訊いた。
女性保育士が児童達に「こらぁー」と言うのと同時に、ドアを強くノックする音。
おばあさんを迎えに来た人かと児童の一人が不用意にドアを開けてしまうと、
ナイフを持ったマスク姿の男が、即座にその児童を捕まえ、ナイフを突きつけ、
「コンビニ強盗に失敗したんだ。少しの間ここで匿え」と、震える声で叫んだ。
その時、一瞬だった。おばあさんが男に体当たりをして、男はよろけて倒れ込んだ。
そして、おばあさんは、「孫達に危害なんか加えさせてなるものか」と男に叫んだ。
更には、コンビニ強盗に失敗した犯人が逃亡していることを大慌てで伝えに来た、
女性保育士に気がある交番の巡査が物音を聞きつけ「おーい、何事だー!!!」と、
まだ開いたままのドアから飛び込んできて、起き上がり様に巡査に突進してきた
マスク姿の男に一本背負い!見事、その男に手錠を掛けて、巡査、大手柄!!!。
おばあさんは、おばあさんの胸に飛び込んできた6名の児童を包み込むように抱きした。
そんな騒ぎの中、「すいませーん、うちの母、厄介になってませんか?」と、
おばあさんの息子がやって来た。部屋の中にいる『母』を見付けると、
「かあさん、また勝手に外を彷徨いて、人様に迷惑掛けて、いい加減にしてくれよ!
どんだけ迷惑掛ければ気が済むんだよ!」と、大声で叫んだ。その言葉を耳にした
6名の児童からは、「おばあさんになんて事言うんだ」と、おばあさんの息子に非難囂々。
そして、『息子』は『母』から、「はて?あなたはどなた様で~?」と言われる始末。
おばあさんは、6名の児童にも、「はて?この子等はいったいなんなんだい」と呟いた。
6名の児童は「おばあさん、わたしらのこと忘れないでよ。わたしらのおばあさんでしょ」
唯華と言う女の子は、「ほら、わたしが幼い頃にお母さんにねだって、
買って貰ったオモチャのネックレスだよ。おばあさんも持っているんでしょ。
息子から母の日にプレゼントして貰った、わたしのとおんなじネックレス」
それを見て、おばあさんは、首から提げていた同じネックレスをシャツの中から
引っ張り出して、頭の中に保存されていた記憶が幾つか蘇ったのか、
「おまえら、あたしの孫達じゃねーか。みんな、大丈夫だったのかい」と叫んだ。
6名の児童は、「おばあさん、ゴメンね。『うるさい!』なんて言ってゴメンね」と、
泣きながら謝ると、おばあさんの息子も、「かあさん、まだそんなオモチャの
ネックレスなんか持ってたのかよ。とっくの昔に捨てちまったのかと思ってたのに・・」
と言った。おばあさんは「よさぼうじゃねーか、このバカたれ!親が子供から貰った
大切なプレゼントをそう簡単に手放す訳無いだろうが!ていっ! !」と息子に怒ると、
おばあさんの息子まで、終いにはいい歳をして泣きだしてしまった。
そんな時、青空ぴそみと言う児童が、おばあさんに向かってこう言った。
「おばあさん、家族のいないわたしたちのおばあさんになってくれてありがとう」
女性保育士に気がある交番の巡査がそれを聞いていろんな意味でキョトンとしていると、
女性保育士は巡査に、「おばあさんは、子供達を孫だと思いこんでいた時は、
実は正常だったんじゃない?」と、思ったことを口に出してみた。
手錠を掛けられたコンビニ強盗に失敗した男は巡査以上にキョトンとしていたが・・。
---------------------------------
あれから、10年ほどの年月が経った。
児童達とおばあさんはその後も児童がそれぞれ施設を出るまでは交流が続き、
児童達と会う度におばあさんの認知症も医者が驚くほど劇的に改善されていった。
そんなおばあさんが突然亡くなったとの知らせが施設宛に届いた。
『死んだら遺骨は海にまいて』と、散骨を希望するおばあさんの遺書に従い、
集まった、元・児童達は、船上で、生前、おばあさんに教わった、
息子のよさぼうが子供の頃に作って良く歌っていたと言う替え歌を大きな声で歌った。
よさぼうが木をきる
ヘイヘイホー ヘイヘイホー
へそ毛できれるかな
そりゃ無理だ そりゃ無理だ
ジャンジャンジャンジャン ヘイっ!
よさぼう よさぼう もうバカですね
よさぼう よさぼう バカですよ こんにちは
ホーホー ホーホー
おばあさんの息子、『よさぼう』は、己の家族の冷たい視線に、ただ苦笑いをするだけだった。


第、812話 箱の中身は日本の慣わし (2015.01.25)
MC「さあ、始まりました!『クイズ、箱の中身は日本の慣わし』
ゲストは、吹けば即飛んで消えるであろう若手野郎芸人2人と、
今もっとも勢いに乗っている6人組、女性アイドルグループ、
『日本の美☆慣わシスターズ』に来ていただきました。
芸人A・B「おいおい、またまたこれってデジャヴか???」
MC「わたしが箱の中から引き出した日本の慣わし2択問題に答えていただきます」
芸人A・B「おお、今回俺たちは箱の中に手を突っ込まなくて済むんだな」
MC「では、最初に引かれた問題です。数え年で61歳は還暦ですが、その理由は?
1、十二支に対し、十干十二支は、干支は全部で60種類で、
生まれて60年経つと最初の干支に還る。歴が還る。還暦。
2、時の流れに身をまかせ、女王様にムチで打たれて数え年で61周年。
では答えて下さい。どんどんぱふ~ぱふ~。・。・゜♪・。・。★・゜・。♪♪」
---------------------------------
MC「日本の美☆慣わシスターズチームが(1)。糞芸人チームが(2)で、
日本の美☆慣わシスターズチームが見事正解!!!10点加算されます」
芸人A・B「おいおい、『女王様』に反応しちまったじゃねーかよ!!!」
MC「では、次の問題です。ぽち袋などに描かれている『松の葉』の意味。
1、松の葉で包めるほどわずか。謙遜する習慣。
2、時の流れに身をまかせ、女王様から松の葉でチクチクされたい。
では答えて下さい。どんどんぱふ~ぱふ~。・。・゜♪・。・。★・゜・。♪♪」
---------------------------------
MC「日本の美☆慣わシスターズチームが(1)。糞芸人チームが(2)で、
日本の美☆慣わシスターズチームが見事正解!!!更に10点加算されます」
芸人A・B「だから、『女王様』に反応しちまうから止めれ!!!」
MC「では、いよいよ最後の問題です。
日本の慣わし?で、最後の問題は、30点。
旅立ちや門出に激励や祝いの気持ちを込める『はなむけ』の意味。
1、その昔、遠方に旅立つ者の道中の安全を祈願し、
旅立つ者の向かう先に馬の鼻先を向けた習慣から、
『馬の鼻向け』という言葉が生まれたことが由来。
2、時の流れに身をまかせ、馬に蹴られるように女王様から蹴られたい。
では答えて下さい。どんどんぱふ~ぱふ~。・。・゜♪・。・。★・゜・。♪♪」
---------------------------------
MC「日本の美☆慣わシスターズチームが(1)。糞芸人チームが(2)で、
日本の美☆慣わシスターズチームが見事正解!!!30点加算され、
日本の美☆慣わシスターズチームが貫禄で優勝!!!」
芸人A・B「日本の慣わしに精通するアイドルグループに対し、
女王様好きの芸人の心を弄んだ出来レースじゃねーかよぉ!!!」
MC「吹けば飛ぶような糞若手芸人A・Bさんの負け決定で、糞チームが罰ゲーム。
日本のバラエティ番組の慣わしで、熱湯風呂に入り、
女王様から松の葉でチクチクされながら、ムチで打たれ、蹴られ、
熱々おでんをこれでもかと食べさせてもらえます」
芸人A・B「なんだ!なんだ!女王様好きには願ったり叶ったりじゃねーかよぉ~!!!」
MC「それでは、体重180キロ、燃焼知らずな収まりきれない垂れ下がる脂肪!
歩けることが正に奇跡な熟女デブ!こりゃ、デブ専で熟女好きにはたまらない!
怒りが鎮まらない目が充血したデブ魔神こと、女王グレートブタ子様見参!!!」
芸人A・B「おいおい、俺たち、デブ専でも熟女好きでもないからなー!!!」
MC「それでは、糞チーム、今まさにグツグツと煮えたぎる熱湯風呂へどうぞ!」


第、811話 オオアルマジロ横丁 (2015.01.18)
古き町並み、オオアルマジロ横丁。
今も昔も若者が行き来する町筋。
嘗てのモダンな建造物は、有り触れた
チェーン店に生息地を奪われ始めている。
君と僕との遠いとおい想い出なんて、
今の時代の主要な登場人物達にとっては、
それは、もう、知る由も無い過去の物語。
この横丁に現存する古い写真館に残された、
昔の横丁風景を記録した一枚の写真の片隅で、
少し照れながら微笑み合うあの頃のふたりの姿は、
数少ない、君と僕との、それは、一滴の歴史の跡。
訪ね歩いた、オオアルマジロ横丁。
忘れかけていた記憶が蘇る町筋。
嘗てのモダンな建造物は、次々と
取り壊され、消えてゆき、形態を変えてゆく。
君と僕との遠いとおい想い出なんて、
君と僕とが巡り合った出来事なんて、
今の時代の主要な登場人物達にとっては、
それは、もう、知る由も無い過去の物語。
この横丁で生き続けた古い喫茶店に残された、
あの頃、通い続けていた足跡が、数冊に及んだ落書き帳。
とても懐かしい丸みのある君の文字と僕の雑な文字。
数少ない、君と僕との、それは、一滴の歴史の跡。


第、810話 声 (2015.01.11)
中学校1年B組のクラス。詩花(ことは)と同じクラスのお調子者、栗原典久が、
毎度の事ながら宿題を忘れ、何とか笑顔でその場を乗り切ろうとしている。
詩花の席からは校庭を白い息を吐きながら走る2年生の姿がいつものように見渡せた。
校庭側に面した曇った窓ガラスを指先で拭い、そこから見える空は晴れ渡っているけれど、
冬の閉ざされた部屋からでは気持ちが触れ合えないほど向こうの風は冷たそうだ。
放課後、部活後にお調子者の栗原典久が自転車を押す詩花を見付けて手を振っている。
栗原典久は、2年生の部活のキャプテン、五十嵐大輝に媚び諂うように頭を深々と下げ、
詩花に駆け寄ろうと走り出したが宿題を忘れられた教師に襟首を捕まれ連行されていった。
五十嵐大輝はバスケット部のキャプテンだけあって直ぐに数人の女生徒に囲まれ始めていた。
詩花は俯くように通学用ヘルメットを被り、白い息を吐きながら自転車を走らせていった。
詩花は時折自転車を止め、学校の方向に振り向くと、一息入れ、すぐにまた自転車を走らせた。
冬の日の学校からの帰り道。頬に当たる風は冷たく、手袋をしていても手かじかんでしまう。
翌日登校すると、案の定、お調子者の栗原典久に見付かり、まるで儀式のように追い掛けられる。
栗原典久が担任に襟首を捕まれたところでホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り響く。
中学校1年B組のクラス。本日もまた、クラスのお調子者、栗原典久は、
毎度の事ながら宿題を忘れ、何とか笑顔でその場を乗り切ろうとしている。
詩花の席からは校庭を白い息を吐きながら走る2年生の姿がいつものように見渡せた。
校庭側に面した曇った窓ガラスを指先で拭い、そこから見える空は晴れ渡っているけれど、
冬の閉ざされた部屋からでは気持ちが触れ合えないほど向こうの風は冷たそうだ。
詩花の口元は微かに動いて、誰にも気付かれぬまま、そして直ぐにまた閉じた。
「はい、そこまで。次は・・・・・・・・・・、、」
突然差された詩花は教科書を数ページめくり、教師の御要望に応え、指定された箇所を読み始めた。


第、809話 始業式 (2015.01.04)
ー 某公立小学校にて ー
担任「みなさん、何故、君が代不斉唱したのですか」
生徒D「おいらのうち、正月用に買ったキャ○ツ太郎と、
親戚からお裾分けされたキャ○ツ太郎と、ダブっちまって、
余ったキャベ○太郎の活用法とか知らないかいなぁ???
ピザにしたりとか、ベーコン巻きはもう試したからいいよ」
生徒A「グラタンとか・・・・・・・・・・」
生徒B「お好み焼きとか・・・・・・・・・」
担任「天皇賛歌国歌君が代を、何故、不斉唱したのですか」
生徒D「食べきれなくて残ってしまった○ャベツ太郎って、
お正月の風物詩だものなぁ・・・・・・・・・・」
生徒A「食べきれなくて残ってしまったクッピ○ラムネも、
お正月の風物詩だものなぁ・・・・・・・・・・」
生徒B「食べきれなくて残ってしまったボ○タンアメも、
お正月の風物詩だものなぁ・・・・・・・・・・」
担任「おまえら、天皇陛下に命を捧げられる栄光ある
日本人に生まれてきたのに何と言う体たらくなんだ!」
生徒D「ネットで『お正月に余ったキャベツ○郎の活用法』って
検索してみても今一つピンと来るレシピに辿り着けないんだよ」
生徒A「インターネットって、情報豊富と思われがちだけど、
企業に寄生され尽くされていて広告塔と化しているからなぁ」
生徒B「検索しても、営利目的の塊に押しつぶされて終了だわ」
ー 数週間後 ー
生徒A「うちの担任、痴漢で逮捕されてたね」
生徒B「ネットで知り合った痴漢グループのリーダーだったてね」
生徒D「公務員だから僅かな停職処分で舞い戻ってくるんだなぁ」
生徒A「今日の給食の献立はなんだっけ」
生徒B「和風きのこソースの鶏肉ハンバーグ」
生徒D「・・・・きききききききき、キノコぉ;;
マタン○?マ○ンゴ?マタ○ゴ?○タンゴ?」


第、808話 終業式 (2014.12.28)
ー 某公立小学校にて ー
担任「みなさん、年越し蕎麦は食べますか?」
生徒A「年越しはチキンラ○メンだよな」
生徒B「わたしのうちはベビ○スター」
生徒D「おいらのうちは○タイ棒ラ○メン」
担任「なんだって?ではお正月は?」
生徒A「年明けはクッピ○ラムネだよな」
生徒B「わたしのうちは年明けボ○タンアメ」
生徒D「おいらのうちは年明けキャベツ○郎」
担任「年明けといったら普通は年明けうどんだろ!」
生徒A「なにいってんだ?『普通』ってなんだよ」
生徒B「きさま、さぬきの回し者か?」
生徒D「おいらのうちは年明けキ○ベツ太郎」
生徒A「この男、出身は香川県だったよな」
生徒B「やはりそういうことか」
生徒D「おいらのうちは年明けキャベ○太郎」
担任「1月7日は弱った胃を休める為七草粥を喰えよ!」
生徒A「弱った胃には百草○飲めよ!○草丸!」
生徒B「わたしのうちは陀羅○助丸よ!陀○尼助丸!」
生徒D「おいらのうちは煉熊○!○熊丸!」
担任「胃腸薬なら普通は征露○だ!征○丸!」
生徒A「ほんと、なにいってんだ?『普通』ってなんだよ」
生徒B「日露戦争に駆り出された兵士が異国で胃を壊して
戦力が落ちないように食後に飲ませるために開発された
という、最初から後々の戦士の健康など考えられてない、
毒性が強いグアヤコールや発癌性が強いフェノールが
含まれている、あの、○露丸のことをいっているの???」
生徒D「おいらのうちは○熊丸!煉熊○!」
生徒A「この男、そもそも公務員だよな」
生徒B「なるほどそういうことか」
生徒D「百も、助も、熊も、粒を数えるのが大変」
担任「おまえら売国民か!お国のために○露丸を飲み慣れておけ!」
生徒A「そういうおまえは、右翼政権の配下だろ」
生徒B「なるほどそういうことだ」
生徒D「数年後の今頃は年越しも年明けも食料は
『マ○タ○ン○ゴ』だけかいなぁ?こりゃこりゃ」


第、807話 私立探偵・元大工の能八シリーズ3『見立て殺人』 (2014.12.21)
ー シリーズ2は、第、803話 ー
行政から全国民に支給された、本人の氏名がでかでかと
書かれた、国民氏名入りプラカードを強制的に掲げさせられた、
冤罪雑吉警部は言った。
「いやぁ、大和民村の村長さん、村を挙げての
『栗住職際アベックパーティー』に呼んでいただいて
光栄で御座います。でも、自分は男やもめですし、
アベックではなく、彼此お世話になっているこの
探偵さんとむさ苦しい男二人でやって来ました」
『棟梁能八』と書かれたプラカードを掲げさせ
られた男は言った。「やあ、村長さん、あっしが、
鋸(のこぎり)で木材を切断加工するように、
鉋(かんな)で木材の表面を平らに削るように、
金槌(かなづち)で釘などを打ち込むように、
探索をこなす私立探偵・元大工の能八です」
『村井長助』と書かれたプラカードの男、村長は言った。
「元大工ですかい。実はわたしも元大工なんですがね。
実はその昔、メリケン町と言う大きな町の栗寺で住職が、
メリケン町長によって、町の反逆者とされ、栗の木に
両手首と両足首を釘で打ちつけられ磔刑され、だが、
その三日目に栗寺の住職は復活し、その後住職は
生き神さまとして崇められ、メリケン町では毎年、その住職の
誕生日を祝う『栗住職際』が。その後、『栗住職際』は我が大和民村
にも広がり、大和民村では、『栗住職際』にはアベックパーティー
をする習慣へと変わったんで御座いますよ」
そこへ、プラカードを振り回しながら、
この村の駐在が血相を変えて現れた。
「そ、そ、そ、村長!さ、さ、さ、殺人事件です!」
---------------------------------
栗の木に手首と両足首を釘で打ちつけられ、
男は既に亡くなられていた。
村長は言った。
「『栗住職際』にこんなことが・・・・・」
能八は言った。
「冤罪警部、あっしは、警部に誘われてこの村の
名を聞かされた時、この村で過去に起きた奇妙な
事件を思い出し、この村についていろいろと調べて
きたのですよ。まずは2月14日、メリケン町長の
迫害下で殉教したメリケン神社の神主、馬連泰次に
由来する記念日、『馬連泰次の日』に見立てられ、
男が殺されました。村長、この村では、『馬連泰次の日』
には、女性が男性に愛情の告白として、本命チョコレートを
好きな男性の顔に塗りたくる習慣へと変わったんですね。
殺害された男も、顔にチョコレートを塗られてました。
次には、10月31日、メリケン町で秋の収穫を祝い、
悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事で、
子どもたちが妖怪やお化けに仮装して近くの家々を
訪れて駄菓子をもらったりする風習を広めた人物の日、
『波呂宇印の日』に見立てられ、男が殺されました。
村長、この村では、『波呂宇印の日』には、村を挙げ、村人が
仮装パレードでバカ騒ぎをする習慣へと変わったんですね。
殺害された男も、お化けカボチャに仮装されていました。
冤罪警部、この一連の事件は、『見立て殺人』ですよ」
警部は言った。
「わかったぞ!犯人は駐在さん、あんたじゃな。」
駐在「な、な、な、なんでですじゃ」
警部「あんた、メリケン町から異動して来たと聞いておる。
メリケン町の風習を汚された恨みからの見立て殺人じゃな」
駐在「メリケン町から異動して来たのは本当だが殺人なんて」
能八「警部、この人は違いますよ。恐らく、メリケン町から
異動して来たこの駐在さんを煙たがった犯人が、駐在さんを
陥れるために、この見立て殺人を思いついたのでしょう。
一つひとつ振り返ってみましょう。まずは2月14日の殺人。
殺害されたのは、大和民村の行い・不正などの批判や告発の
記事で知られている『朝月新聞』の記者です。
次に10月31日に殺害されたのは、大和民村の因習を批判して
きた『社公党』の党首でした。そして、本日、12月25日、
『栗住職際』に殺害されたのは、村長さん、あなたが当選
されたこの村の選挙で開票作業をした選挙管理委員の一人。
村長さん、犯人は、あなたですね」
---------------------------------
能八「村長さん、あなたは選挙管理委員であった被害者に
揺すられたのではないですか?この村の選挙の少し前に、
某有名掲示板にて『その白票で大和民村を変えましょう』と、
この村の昔からの因習に嫌悪を抱くものの、昔からの因習が
変わることにも脅え、村を変えようと唱える候補者にも否定的。
そんな、若い村人達に白票投票を呼びかけるスレッドが立った。
村長さん、そのスレッド、一般人を装った、貴方の息が掛かった
人が立てたのでは?あっしは、その白票の多くが、貴方の息が掛かった
選挙管理委員によって、貴方の票としてカウントされ、そして貴方は
大勝利をおさめたのだと思っているのです。そうですよね?!!
何時の間やら此処に集まってきた、選挙管理委員の皆さん達。
選挙で無効票数は常に曖昧だ。操作しやすい票とも言える」
選挙管理委員「な、何をバカなことを・・・・・・」
能八「いいのでしょうか、皆さん、この事件が有耶無耶になり、
その後、命を狙われるのは、あなた達なのでは・・・・・・」
村長「き、貴様、いい加減にしろ!!!」
能八「ならば、村長さん、貴方のDNAを調べていただきましょう」
そう言うと、私立探偵・元大工の能八は、釘を口に含み、
金槌(かなづち)で素早くそれを栗の木に打ち込んだ。
能八「村長さん、スクリュー釘以前、昔の大工は、このように、
釘を口に含み、釘を錆びさせて抜けにくくしましたよね。
殺害された被害者の手首と両足首を打ちつけられた釘から
採取されるDNAと、貴方のDNAが一致するかも知れませんね」
村長「くそぉ、冤罪警部、あんた、とんでもない探偵を、
優れている探偵を、善くもこの村に連れて来なさったな」
---------------------------------
『冤罪雑吉』と、でかでかと書かれたプラカードを掲げさせられた男は言った。
「今回の事件ではまたまた私立探偵・元大工の能八さんにお世話になってしまった。
結局『栗住職際アベックパーティー』は中止になり、旨いもんも食えんかった」
『棟梁能八』と、でかでかと書かれたプラカードを掲げさせられた男は言った。
「大和民村は結局、新たな選挙の結果、逮捕された元村長の息子が当選したとか。
大和民村の、昔からの因習に嫌悪を抱くものの、昔からの因習が変わることにも脅え、
村を変えようと唱える候補者にも否定的な、そんな若い村人達の息苦しさが辛いです」


第、806話 綿棒企画会議 (2014.12.14)
「『糸綿棒』というのは如何でしょう」
「『糸綿棒』ですか???」
「通常、綿棒は、木や紙やプラスチックの先端に
脱脂綿を球状に巻き付けた長さ8センチ程の棒です。
『糸綿棒』は、糸の先端に脱脂綿などを巻き付けます。
糸の材質は、ナイロンやポリエステル、セレブ向けには高級シルク、
幼児や敏感肌向けに脱脂綿まで全てオーガニックコットンと、
豊富な製品ラインアップを実現する事で多様なニーズに対応。
更に、金糸・銀糸・ラメ糸、透湿防水加工、ストレッチ加工。
医療用に脱脂綿が巻き付けられた棒と棒の間を糸で繋げた製品も。
太さや長さも可能な限り取り揃えて、『糸綿棒』なら当社だと、
近い将来、世間から注目される日が来ることは間違いないでしょう」
「で、その『糸綿棒』とやらは、どのような使い道があるのですか」
「例えば、片方の脱脂綿を耳の穴にわくわくしながら押し込みます。
その片方の脱脂綿からは糸が垂れていて、その垂れた糸の先端には、
脱脂綿が巻かれている訳ですよ!耳の穴から垂れた脱脂綿付き糸が、
歩く度に、走る事に、ぶ~らぶら、ぶ~らぶら、ぶ~らぶら、と、
う゛っ、う゛~~~っ、た、た、た、楽しいじゃないですかぁ!!!
例えば、女性がメイク直しに、ぶ~らぶら、ぶ~らぶら、ぶ~らぶら。
DNAサンプルを取られる際、頬の内側をこすられながら、ぶ~らぶら。
赤い糸なら、恋人たちの耳と耳を繋ぐ運命の赤い糸。な~んて。ねっ!」
う゛っ、う゛~~~っ、た、た、た、楽しいじゃないですかぁ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・他にアイデアがある方は、、」


第、805話 未確認動物を探そう (2014.12.07)
男A「『UMA』って知っているだろ」
女B「『謎の未確認動物』の事ね。
『ビッグフット』とか『モスマン』とか『チュパカブラ』とか」
男A「『椅子をデコ乗せ親父』とか」
女B「・・なにそれ?『伊香保温泉獣人』よりもマイナー。
それってもしかしたら曲芸師のバランスの練習とかじゃないの?」
男A「顔が全てデコらしい。正確には、デコに乗せられた椅子に目や鼻や口がある。
そのデコでバランスを崩さず顔である椅子を乗せ続けていると言われている。
おれはその『椅子をデコ乗せ親父』を探す旅に出る」
女B「あなたの夢をあきらめないで」
男A「どこかで聞いたことがあるフレーズだな?」
---------------------------------
男C「『へそ毛蛙』を知っているかい」
女D「・・なにそれ?『南極ゴジラ』並みに微妙。
男C「『へそ毛蛙』を探す旅に出るぞ」
女D「負けないように悔やまぬように」
男C「どこかで聞いたことがあるフレーズだな?」
---------------------------------
男E「『宅八郎』って耳にしたことがあるかい?」
女F「・・なにそれ?『ウルトラブンブク』レベルな未知の領域」
男E「それは深海に住むウニの仲間だろ」
女F「実在するんだ。ブンブクの奴め」
男E「『宅八郎』を探す旅に出るからな」
女F「あなたらしく輝いてね」
「どこかで聞いたことがあるフレーズだな?」
---------------------------------
業者「本日は『UMA探検隊・参加費無料』にご参加いただいてご苦労様です。
此処に集まった皆さんは、恐らくは、『一攫千金』狙いと存じ上げる所存です」
男A「いや、おれは夢を追って・・・・・・・・・・」
男C「同じく・・・・・・・・・・」
男E「『UMA』を純粋に追い掛けたいと・・・・・・・・・・」
業者「そりゃ世の中お金です!そこで、当社としては、
皆さんにもっと手早く確実に大金を手に入れて頂きたく、
今後もっと簡単に稼ぐ方法をこっそりと伝授して差し上げたく・・」
男A「おい、これダメなやつだよな・・・・・・・・・・」
男C「これってだまされたんじゃね・・・・・・・・・・」
男E「『UMA』を純粋に追い掛けたいと・・・・・・・・・・」
業者「3年分の年会費を一括でお支払いされると入会金が割引きになります」


第、804話 寝坊してフラダンス (2014.11.30)
明日のデートは決して寝過ごしてはならない。
対策としては、目覚ましが鳴ったらとっとと起きる。
とっとと起きる事が出来なかったら起きられなかった罰として、
急いでいるにもかかわらずフラダンスを寝過ごした時間だけ踊る。
要するに、10分寝過ごしたならフラダンスを無駄に10分踊る。
もしかして、30分寝過ごしたならフラダンスを長々と30分踊る。
それだけはならぬ、1時間寝過ごしたならフラダンスを延々1時間。
・・・・・・・・これは是が非でも阻止しなければなるまいぞ。
更なるプレッシャーとしてフラダンスを踊るなら意地でも本格的に、
パウスカートと呼ばれるスカート。色も柄もトロピカルなムームー。
花柄のヘアゴムで長い髪を束ね、こりゃまた華奢なシェルロングレイ。
ウクレレサウンドが楽しめるハワイアンミュージックなCDも購入済み。
デートの前に寝坊してそんな格好している時間も踊っている時間もない。
・・・・・・・・これなら是が非でも阻止するために目覚めパッチリだ。
----------------翌朝-----------------
1時間寝過ごした!!!
えーとえーと、うわぁ、絶対あってはならない対策だったから、
実際、ハワイアンの衣装なんてクローゼットに収納したままだ。
えーとえーと、パウスカート、ムームー、ヘアゴム、レイ。
CD再生!・・・・・・・こ、こりゃ、『とんで○たバナナ』だ!!!
確かにウクレレサウンドでハワイアンアレンジだが;;CDショップのオヤジめ。
な、何が悲しくて、デート遅刻決定なのに、『と○でったバナナ』で
1時間も本格的にフラダンスを延々踊らなくてはならないんだ。
ボンボコツルリン アホツルリ バナナン バナナン バカァナ♪。゜゛
---------------------------------
「うわぁー、遅刻してごめんなさい;;;」
「いいよ、もう慣れっこだから。いくら何でも、まさか、
寝過ごしたのにハワイアン踊ってて遅れた訳でもあるまい」
「えへへ;;(こ、此奴、何を悟っているんだ)」
「で、本日は何で冬空の下、ハワイアンの格好???」
「げげっ!!!着替えずにやって来ちまった!!!
ふぇっくしょーん こんちくしょう :″;`;:″;`;・o(ロ≦〃=)」


第、803話 私立探偵・元大工の能八シリーズ2『密室』 (2014.11.23)
ー シリーズ1は、第、791話 ー
行政から全国民に支給された、本人の氏名がでかでかと
書かれた、国民氏名入りプラカードを強制的に掲げさせられた、
冤罪雑吉警部は言った。「やあ、私立探偵・元大工の能八さん」
『棟梁能八』と、でかでかと書かれたプラカードを掲げさせられた
男は言った。「やあ、冤罪警部。そうです。あっしが、
鋸(のこぎり)で木材を切断加工するように、
鉋(かんな)で木材の表面を平らに削るように、
金槌(かなづち)で釘などを打ち込むように、
探索をこなす私立探偵・元大工の能八です。
こちらは、仏、A夫さんの恋人、C子さんです」
私立探偵・元大工の能八の側には、『○○C子』と、
でかでかと書かれたプラカードを掲げさせられた女が一人、
泣き崩れんばかりにその場に佇んでいた。
「『恋人のA夫さんが別れたばかりの元恋人のB美に殺されるかも
知れない』と、近頃、あっしはC子さんから相談を受けてました。
C子さんは警察にも相談していたらしいのですが、A夫さんが
何らかの犯罪行為を受けたという訳ではないので、警察は一向に
動いてはくれなかったようです。今し方、C子さんとA夫さん宅に
訪れると、部屋の中で包丁で首を切られ血を流して倒れている
A夫さんを発見。ドアにも窓にも鍵が掛けられていて、あっし達は
窓ガラスを割り部屋の中に入り、A夫さんの死亡を確認した訳です」
「能八さん、ならば、自殺では?もしも殺されたのならば、それは、
『・・密室殺人』?!!」
---------------------------------
「冤罪警部、あっしは元職業柄この家の外見からとの間取りが
不自然で違和感を感じている。恐らくもう一部屋分のスペースが
この壁の向こうにあるはずだ。このタンスを一緒に退かしましょう」
「能八さん、これは木製の引戸。しかも開かないように
膠(にかわ)のようなもので固定されているようですじゃ」
「冤罪警部、どいてください」
私立探偵・元大工の能八は、固定されて動かない木製の引戸を、
鋸(のこぎり)で一瞬にして鮮やかに切断すると、そこには、一目瞭然、
所謂、女性が生活していたらしき部屋が現れた。
「能八さん、は、犯人は、この部屋から外に出たのではないじゃろか?」
「冤罪警部、この部屋には外に出るためのドアも窓もありません。
引戸は膠(にかわ)のようなもので固定され、引戸の前にはタンスもあった」
私立探偵・元大工の能八は、その部屋に置いてある机の引き出しから、
何冊もの日記帳を見付けた。それは紛れもなく交換日記であった。
机の上に置いてあった携帯にはA夫が自撮りしたと思われる画像が多数。
A夫の側にあった携帯からは化粧された女性が自撮りしたと思われる
画像が、後の捜査によるメモリーからの復元で多数確認された。
「冤罪警部、これは、『無理心中事件』ですよ」
---------------------------------
『冤罪雑吉』と、でかでかと書かれたプラカードを掲げさせられた男は言った。
「あの事件ではまたまた私立探偵・元大工の能八さんにお世話になってしまった。
まさか、A夫が『解離性同一性障害』だったとは驚きましたなぁ」
『棟梁能八』と、でかでかと書かれたプラカードを掲げさせられた男は言った。
「ある意味、幼い頃から不安定だった『性同一性障害』でしょうか。
自身が男性なのか?女性なのか?の自己の認識が持てず、切り離された
二つの人格が別々に創造され、A夫のほかにB美が表に現れ始めた。あの、
引き戸の奥の部屋は、B美の部屋だったんだ。その二人が何時しか愛し合い、
やがてA夫は正しく愛すべき人を見付け、B美はA夫を自分の存在諸共殺害した」
「あの交換日記の後半辺りのやり取りは余りに理解しがたいものだったですじゃ。
引戸を固定しタンスをその前に置いたのは、B美を永遠にそこへ閉じ込めたかった
A夫の仕業だったのでしょうな。でも、『彼女』はいつだって一番近い場所にいた」


第、802話 赤い風船 (2014.11.16)
僕の顔は学生の頃からビデオデッキに似ていると言われてきた。
しかも、VHSではなく、ベータだと、多くの人々から明言されてきた。
まあ、テープサイズがVHSだと僕の顔にあるテープの挿入口に入らないか。
いや、ベータの幅だって余裕で入るほど僕の口はデカくはないのだけれど。
僕の顔は学生の頃からビデオデッキに似ていると言われてきた。
では、何故に僕の顔はビデオデッキに似ていると言われてきたのだろう?
似顔絵を描かれるとしたらもう間違いなく『点』として描かれる僕の目も、
美術の授業で自画像を描かされた時に、自ら迷いもなく描いた団子っ鼻も、
別にビデオデッキの再生ボタンにも一時停止ボタンにも似ても似つかない。
でも、学生の頃はまだマシだった。今や主流は、HDやDVD・Blu-rayである。
今や僕の顔は、過去の産物、昭和レトロ、ジェネレーションギャップあるある。
ごみ収集車の側を通ったら『回収出来ません』とのステッカーを肩に貼られた。
ビデオデッキだから粗大ごみなんだ。僕を処分するにしてもお金が掛かるんだ。
もっとも人間なんて誕生から亡くなった後までお金を徴収され続ける生き物だ。
女の子が貰ってきた赤い風船を手から離してしまい風船を目で追い掛けていた。
空高く飛んでいく風船を首を後ろに反らしながら女の子は目で追い掛けていた。
僕は今度生まれ変われるのなら、是非、あの赤い風船に生まれ変わりたいと願う。
空高く飛んでいった風船が見えなくなるまで女の子は目で追い掛け続けていた。



次へ    戻る

HOME.jpg

☆ 無断転載使用禁止 ☆ (C)copyright "横浜マタタビバージョン" all right reserved