横浜マタタビバージョンのFUNI WORLD
★おバカショート劇場。★
FUNI WORLD (5)
第、150話 知らないうちに (2002.05.17)
「知らないうちに予定外の物で部屋が埋まっていくのは、片想いが叶わないことを本能が予感しているからよ」
妹のさつきは相変わらず姉の私に冷たく、私と正反対な性格を武器にチョッカイを出してくる。
同じ親から産まれておきながら、もて続ける妹・・ ふられ続ける姉・・
そんなさつきが最近、アメリカ通信販売腹筋トレーニング祭りを開催し始めた。
なるほど、美貌は努力を惜しまぬことか・・
そんなさつきが最近、アメリカ通信販売こりゃまた便利調理器具祭りを開催し始めた。
なるほど、料理の腕が女を引き立たせるか・・
そんなさつきが最近、アメリカ通信販売おどろきお掃除用品祭りを開催し始めた。
なるほど、きれい好きが男心をくすぐるか・・
ある日、さつきがさつきの部屋で埋まっていたのを発掘・・
姉の私はいつも妹さつきに甘いから、その日は泣いているさつきを一日中抱きしめた。
第、149話 恋をしていないと (2002.05.10)
ミカがこっそりわたしにこんなことを耳打ちした。
「この彼氏は60%ぐらい好きなんだけれど、90〜100%を探すまで止むを得ずかな・・
とりあえず恋をしていないとね」
また随分なこと、ミカらしいけれど。
その、彼氏さんこと高橋くんはミカのこと500%は好きって瞳をしているけれど。
今、わたしの瞳には、はたから見てどんな数字が弾き出されているのだろう・・
ミカの60%の好きじゃ、気付かれることはないかな。
そりゃ、恋をしていないとね、こっそりとお裾分けのプチ片想いでも。
ところで、のこりの40%って、なんなんだろう?
なんかミカの40%が、わたしの頭の中で増殖しまくるわ・・
不思議な高橋くんが、わたしの頭の中で湧くわ湧くわ・・
おぞましい高橋くん軍団が、わたしの頭の中で行進しているわ・・
あんな高橋くんが・・ こんな高橋くんまで・・
イボ痔の高橋くん・・そのイボ痔をはさみで切り取りミカに公開している高橋くん・・
やだ、なんか冷めちゃったじゃない。
なんか、とりあえず代わりのプチな恋でもさがさないと、まったく、やな高橋くん。
第、148話 雨の匂い (2002.05.03)
あなたと知り合ったのは、学生の頃の夏休みを利用してのバイト先だった。
はじめてのデートは夜中に行った、集団密航船発見ツアー。
はじめてのキスは、密航を手助けしていた奴らに怪しまれ、
縄でしばられてたのを警察に助けられて喜び合った1秒間のドサクサだった。
長い初恋の物語。
あしたは何度目のデートになるんだろう。
部屋の窓から夕焼けが見たかったけれど、少し雨粒が流れ落ちていた。
雨の匂いがしていたんだ・・
てるてるぼうずのストラップを無視して、あなたからデートのキャンセルメール。
春先のおしゃれといっしょに、またしばらく待ち惚け・・
第、147話 見失わないように (2002.04.26)
動揺していた・・
最初から片想いを決め込んでいたはずなのに・・
すきなアイドル歌手の話をされても、全然平気だった。
面食いのあなただけど、彼女になれるつもり、さらさらなかったから・・
見失わないように
学校の帰り道、自分のおこづかいで自分の化粧品を買った。
100円ショップの安いやつ・・
見失わないように
日曜日の美容院、もう少しでパーマヘアにするところだった。
学校で禁止されているのに・・
あなたがわたしの親友のリカに本気で告白するなんて・・
おかげで、学校にリカを連れて来る毎日・・
リカにはわたるくんがいるのに・・
そして、リカちゃんファミリーにたこ社長を手作り参加!
これには、あなたは怒った!怒った!
手作り御前様もよろしく☆
第、146話 蛸壷の中の道化師 (2002.04.19)
ある場所に、海のサーカス団が存在します。
そのサーカス団には、一匹のピエロ見習いの蛸さんがいました。
後輩のピエロ見習いのイカさんは、どんどん上達してステージに立っているのに、
そのピエロ見習いの蛸さんは、置いてきぼりです。
ある日、公園に出掛けた蛸さんは、一人の男の子と出会います。
陽が暮れ始めているのに取り残されている鍵っ子の男の子・・。
ピエロ見習いの蛸さんは、男の子にパントマイムを披露しました。
綱を引くパントマイム、壁のパントマイム、風呂覗きのパントマイム。
大喜びの男の子と、大喜びの蛸さん。
次の日も、次の日も、公園で大喜びの男の子と、大喜びの蛸さん。
でも、ある日、男の子のお母さんが早く迎えに来ていて、蛸さんが帰ろうとした時、一人のおばあさんが、
「いつも男の子にパントマイムを披露している蛸さん、よかったら、わたしにも披露しておくれ」
蛸さんは、またまた大喜びでパントマイムを披露。
綱を引くパントマイム、壁のパントマイム、風呂覗きで捕まるパントマイム。
「お上手、お上手」と、手を叩くおばあさん。
その時、蛸さんは思い出しました。
初めて海サーカスを観に行って、初めてピエロのパントマイムを観た時のこと・・
「おばあちゃん、ぼくはヘタクソなんだ、上手なピエロってのは、もっともっとすごいんだ」
その日から、ピエロ見習いの蛸さんは猛練習!
そんなピエロ見習いの蛸さんに、大先輩のピエロが声を掛けてきました。
数ヶ月後の日曜日・・
今日は、ピエロ見習いだった蛸さんのデビューの日。
大先輩のピエロの厳しい指導の成果を遺憾なく披露する蛸さん。
綱を引くパントマイム、壁のパントマイム、覚せい剤逮捕で謝罪するパントマイム。
会場は割れんばかりの拍手です。
公園で出会った男の子も、おばあさんも大拍手。
この日、蛸さんは自分が初めて海サーカスを観に行って、初めてピエロのパントマイムを観た時に感動した気持ちを
会場の人々に解き放したのでした。
第、145話 初恋の唄 (2002.04.11)
あなたは何時からか私のことを 友だちの一人に加え始めた
言葉を交わせる距離だから 免疫のない痛みも知り始めた
時々現れる彼女の話題は あなたのそのステキな笑顔のエネルギー
壊したくないの このままで・・
心の中の幻の あなたとの距離が優しかった・・
会ったこともない あなたの彼女が近頃 私の心のあなたのすぐ隣・・
更にその隣で あなたの話題に現れる とても想像の付かない生物の影・・
第、144話 きっかけに過ぎない (2002.04.04)
「きっかけを作らなければ・・」
ちなみは、当初2か月の月日を要して計画を達成するべき事が、
気付けば、2年の年月を過ぎようとしているのに何も進展していない事実に改めて気付かされた。
初ときめきは入学式の日・・
あれから2年間、篠原裕作には彼女のうわさなど耳にはしてなかったのに・・
「きっかけを作らなければ・・」
用意していた計画はすでに使い物にならない。
立場は大きく変わってしまった。
2年前、計画のために用意していたバッファロー数万匹も、単なる無駄メシ喰いだ。
1年前、計画のために用意していた、天から舞落ちる竜の落し子数百万匹企画も中止だ!
今年中にと目論んでいた、無限のミント爺さん都会で大行進計画も、すべて練り直さなければ・・
「きっかけを作らなければ・・」
度々、廊下ですれ違う、篠原裕作とその彼女・・ 余りにもお似合い・・
「たとえ、きっかけすら私じゃきっかけに過ぎなく終わるのかな・・」
ちなみは、廊下の窓から、試しに連れて来ていたバッファロー数万匹を放った校庭を眺めては、ため息を吐いた。
第、143話 100倍の恋 (2002.03.26)
「100回告白して100倍気持ちが通じるのなら、声を嗄らしてでも告白するよね」
こないだ私が知恵に語った言葉。
今日、知恵は、私が告白したかった剛さんから難無く告白された。
「ねぇ、100回断ったら100倍いやな女だと思ってくれないかしら」
知恵は、私が告白したかったひとが剛さんとは知らず、壮大な贅沢を真顔で相談して来た。
どこかで耳にした、剛さんの好みのヘアスタイル・・
私がヘアスタイルを変えた日に、知恵に『わぁ、知恵とお揃いだぁ』って言われた時、
あの時、私は、やっぱり気付くことなんて無理だったと思う・・
「好きになる気持ちは自由でも、好きなひとの心は自由には出来ないんだ」
100回自分に言い聞かせたら、100倍の涙に変わってこぼれおちた。
翌朝、私は声だけは嗄らしていた。
クラスのみんなから『わぁ、ごっさんですって言ってみて』ってからかわれた。
そして、放課後、私は剛さんから始めて話し掛けられた。
そう言えば、知恵も私もちょんまげ頭。
第、142話 誕生石のイヤリング (2002.03.20)
今日は、デートのためのわたしとしては完璧だった。
いつもなら、もたもたしながら洋服選び。
結局デートに遅刻するし、暖かい日でコートが一日邪魔になったり。
急いで来たから、汗でメイクもどろどろだったり。
コートの下は、パジャマだったり・・
でも、今日は違ってた。
バーゲンだったけど、欲しかった薄手のコートを買ったばかりだったし。
涼しげな風が、程好く吹いていたし。
昨日は早めにぐっすり寝れて、お肌の具合もよく、春の新色でメイクも完璧だったし。
パジャマの上に巻いてたダイナマイトのレプリカは、今日はちゃんと外して来たし。
でも、今日は違ってた・・
去年の今日プレゼントされた誕生石のイヤリング。
飲み干したオレンジジュースの空き缶に入れて、くずかごにポイって捨てた。
もう、なくしたって、あなたは怒りはしないもの。
まだ午後2時を少し過ぎたばかりの誕生日。
粧し込んだ女がひとり、別れ話の帰り道・・
第、141話 暖かな場所 (2002.03.12)
「逢いたい」
佳恵は閉じこもった部屋の中、2分に一度は、ほぼ正確にその言葉を発していた。
先週の日曜日は、5分に一度だった。
おそらく来週の今頃は30秒に一度かと、佳恵にも薄々予想は出来た。
来年には、"「逢いたい」発言ワーク"を数十人雇わなければ・・
舗道に面して広い窓の喫茶店の中、
彼女である恵子と向かい合う祐二の姿を見掛けたのは、3週間前のこと。
べつに、学校でもうわさの祐二と恵子の仲を知らなかった訳ではないのだが・・
片想いの日曜日。
あの日から折角の休日、街に出るのがなんだか怖い。
「逢いたい」
だのにまた、気が付くと同じ時間、今週もまたあの喫茶店に面した舗道を歩いている。
けして、あの日以来、この店で祐二の姿を見掛ける訳ではないのだけれど・・
テーブルが空いていたのが見えたので、佳恵は衝動的に店に入り、紅茶を頼んでいた。
3週間前、祐二はこのテーブルの向こう側に座っていたんだ。
とても幸せそうに微笑みながら。
大きな窓からは陽が上手に差し込み、とても暖かだった。
「すみません、もうすぐ連れが来るので、紅茶をもう一杯」
テーブルの向こう側にも、紅茶の入ったカップがひとつ・・
佳恵は、そっとつぶやいた。
「とっても逢いたかったんだから、この暖かな場所で・・ 祐二さん」
佳恵は、小刻みに震え出すと、伝票をつかんで席を立った。
第、140話 笑顔の箱 (2002.03.06)
いろいろあった。
たぶん、あっちこっち、壊れていると思う。
失恋した日に、あいつの彼女が今日子だってこともわかってしまった。
だからって、私はあいつも今日子もキライになんてなれない。
良い子ぶっている訳じゃない。
当たれる者がいないから、私は結局、自分を恨んでしまっている。
小さかった頃、家にはおばあちゃんがいた。
私の心のどこかには、タイムカプセルの箱が行方不明になっていて、
おばあちゃんの笑顔を見つめて笑顔を返していた私がそこにはいるはずなんだ。
涙が浸水しているかも知れないけれど・・
夢を見た。
箱を開けて覗き込んだ私を怖がるように、幼い私が泣いてしまった。
目が覚めた場所は教室だった。時すでに遅く、涙が止まる気配はまったく訪れなかった。
同じクラスには今日子がいたけれど、当て付けのつもりなんてなかったけれど・・
「ねぇ、」
その夜、再び夢で、私は箱を開けた。
「ねぇ、」
幼い私が振り返る。
ついさっきまで泣いていた顔をしている。
「ねぇ、おばあちゃんは?」
「おばあちゃんの箱の中ぁ」
翌朝、目が覚めた私はおばあちゃんの仏壇の中にあった小さいオルゴールの箱を開けた。
私が唯一おばあちゃんにプレゼントしたオルゴールの箱。
少しだけゼンマイを回してみる。辛うじて、音が鳴った。
また少し、ゼンマイを回した。
私の心を軋ませながら、おばあちゃんが微笑った。
ママがおばあちゃんの写真がいっぱいのアルバムを持って来てくれた。
このママが男で、パパが女だったってことも、実は最近わかってしまった。
当たれる者がいないから、私は結局、自分を恨んでしまっている。
第、139話 雨になる (2002.02.27)
ある晴れた日の休日の街。
あのひとは前触れもなく私の前に現われた。
けして一度も交わることはなかったふたりの視線・・
あの数秒間の私だけの事件は、その日から私の心に住み着いた。
ある晴れた日の土曜日の午後。
学校の帰りに実奈子に誘われて、あんみつを食べに行った。
店員が注文を尋ねに来ると、「よっ、実奈子」と一声。
エプロン姿のあのひとだった。
ある曇り空の日曜日・・
こっそり昨日のあんみつ屋へ出掛けてみた。
いなかった。
店を出て、実奈子の携帯に電話しようとしたけれど・・ やめた。
ひとりでずっとぶらぶら歩いていたら、近頃、噂な"携帯掛けてねおじさん"がやってきて、
「ねっっ!おじさんのこの携帯に掛けて☆今すぐ掛けて☆寂しいから掛けて☆」
と、たまたま、お巡りさんに出会うまで私を追いかけてきた。
気象庁太鼓判の青空月曜日。
「ねぇ、実奈子、あんみつ屋にいた人、彼氏なんでしょ?」
「えへへ」
えへへじゃ、わかんないじゃないのさ!実奈子ったら・・
「彼氏ぃ」
勿体振って言うな・・
帰り道は雨の中、あのひとは実奈子を待っていた。
私には、"携帯掛けてねおじさん"が待っていた。
家に帰るとママが、「もう!乾していた洗濯物は濡れちゃうし、
おまえはおまえでずぶ濡れで帰って来て」と、愚痴る。
6時のニュースの天気予報では、今日の雨の言い訳をしていた。
明日こそ快晴と続太鼓判まで。
翌朝、私は雨の中を"携帯掛けてねおじさん"から逃げるように学校へ向かった。
第、138話 ひとり暮らし (2002.02.20)
「お世話さま」
子供の頃から二十歳になった今まで、大変お世話になった部屋。
春からひとり暮らしを始めます。
古びた机、鍵付きの引き出しに入ったままだった、数年前の日記帳・・
日記なんて夏休みの宿題じゃなければ、けして付けたりしたことはなかったけれど、
この一冊は、そのまま新しい部屋へと運んで行くつもり。
もう、跡形もない出来事なのに、さよならを知らなかった頃が蘇る。
もう、出逢えはしないあのひとだけど・・
まだ、微かに残るつらい気持ちといっしょに、新しい部屋へ連れて行こう。
愛を容易く傷つけないための優しさを、新しい部屋へ連れて行こう。
私は、ひとり暮らしを始めます。 あの頃の私を引き連れて・・
源次郎じいちゃんが、『じいちゃんも連れてって』と行って私に手渡した"源次郎ちゃん人形"は、
柱に縛りつけてから行こう。
第、137話 ハムちゃんの "飛んでイスタンブール経由" (2002.02.13)
5年前・・
帰り道、雪が降っていた。
「3年間、あっ、と言う間だったよ・・ 私。」
高3卒業間近、恋人として、最後の言葉・・
「ごめん」としか言えなかった彼の手には、私が編んであげた毛糸の手袋。
私は、彼の夢にはなれなかった女なんだ。
「描く未来に羽がはえたなら、ふたり、また出逢えるのかな」
彼には言えずに、心に閉じ込めた言葉・・
5年後・・
窓の外、雪が舞っている。
テーブルの上、数日前にイスタンブールから届いた、彼からの手紙。
"おれの夢がどこかへ飛んで行ってしまった"
「ごめんね、ちょっとだけそんな事、願ってたんだ、私・・」
窓の下から見上げながら古びた毛糸の手袋の手を降る彼に、こっそりと告白・・
あの頃の私の夢はやっと今、私の元へ舞い降りて、静かに羽を休めている。
それから5年後・・
窓の外、雪が積もっている。
彼は子供が作った雪だるまに、雪で作った鮮やかな羽を付けていた。
私は直ぐ様、熱湯でその羽を溶かした。
更に5年後・・
窓の外、雪が熔け始める。
私と子供を捨て、モンテカルロに逃げ出して乾杯しようとしていた彼の両乳首に、ハムスターを移植。
これには喜ぶ私と子供と、ぬくもりあったかハムスター。がっくりとひざまずく彼。
その後、彼の体で増殖して行くハムスター軍団。
そして、なぜか気になる、庄野真代の面影・・
第、136話 桜の花 (2002.02.07)
あなたと歩いたこの街の坂道を、今、わたしはひとりで歩いている。
肩に舞い降りた桜の花びらが、ひらりとわたしの手のひらをかわしていった。
「だって、恋に恋をしてた愚か者同士だったじゃない・・
大丈夫、なんとなくこんな日も予測してたんだ!
大丈夫、どちらに非があったかなんて、原因なんかじゃないし、
大丈夫、嫌われたなんて、けして思ってないんだから」
独り言・・
強がることばかりが、得意だったはずなのに・・
泣き虫な女の子になんて、なりたくなんかなかった。
人が行き交う街の中で、涙がこんなに零れるなんて、知らなかった。
ましてや、平日のこんな時間に、ペットショップの檻の中の仔犬にもたれかかって泣いている
三つ揃い高級スーツ姿のままのお父さんに出会すなんて、こりゃまた思わなかった。
第、135話 ピエロ (2002.01.29)
ぼくが子供の頃、観覧車の側で風船を配っていたピエロに弟子入りしたことがあった。
たぶん、精々、母親に発見されるまでの10分ぐらいの出来事だったけれど・・
ピエロと言っても、ただその遊園地でアルバイトをしていた学生さんだったと思う。
それでもぼくは、一緒になって、風船を配らせてもらった。
ピエロがぼりぼりおしりを掻くと、当然ぼくもぼりぼり掻いた。
ピエロが糠床に祈りを捧げると、当然ぼくは、糠床を鮮やかにかき混ぜた。
ピエロが釜から新作の陶器をぼくに差し出すと、ぼくは「まだまだ、甘いわ!!」と、言って陶器を叩き割った。
たぶん、女子大生ぐらいのお姉さん方が3人、ちっちゃかったぼくの頭を撫でに集まって来た。
1人ひとりに風船を配り終えると、ピエロは小首を傾げるようにして、軽く会釈をした。
弟子であるぼくも、軽く会釈をした。
女子大生ぐらいのお姉さん方は観覧車に乗った。
ピエロとぼくは、大空に向かって首を反り続けた。
あれから、10数年・・ なぜか同じ遊園地でぼくはピエロのアルバイト。
弟子のちびたちが現在3人。
当然、女子大生ぐらいのお姉さん方は、3倍☆・・ と、言う訳にはいかず、3人ほどやって来た。
その中の1人が、高校でクラスメイトだった飯田好美、姫・・
1人ひとりに風船を配り終えると、ぼくは小首を傾げるようにして、軽く会釈をした。
弟子のちび3人も、軽く会釈をした。
お姉さん方は観覧車に乗った。
ぼくとちび3人は、大空に向かって首を反り続けた。
"気づいてさえくれなかった・・"
ぼくが子供の頃、観覧車の側で風船を配っていたピエロに弟子入りしたことがあった。
あれから、10数年・・ 頬に一筋の肌色のメイクも引き継いで、ぼくは晴れてピエロになった。
第、134話 マリー (2002.01.24)
「ねぇ、マリー、今度、両国行司ブラザースのメルモちゃんがソロライブやるんだけれど一緒にどう?」
三智子はマリーこと榊真理子にさりげなく聞いてみた。
「三智子は、引退した行司さんが集まって結成されたダンスユニットのどこがいいの?」
「やっぱりマリーはこれにも興味がないか・・、いいですよぉ、ひとりでいくもん・・」
三智子の三智子による、特に男に興味を示そうとしない真理子への手探りだったが、
これで高校一年に真理子と知り合ってからの不発記録も途切れることを知らず更新し続けた。
「ねぇ、いい加減、マリーはどんな男の子が好きなのよ!イボ痔?三段腹?血を吐くリストラ社員?」
「ん、たぶん、三智子の趣味でない人」
「相変わらず、気難しい女ねぇ、あんたって・・」
「うん」
「学校でも、他校からも、マリーに言い寄る男どもが絶えることがないと言うのに・・
まさか、ものすごく好きだった人を忘れられず・・なぁんて?」
「・・・・・・」
「まぁ、話は変わるんだけれどさぁ、あんた、純な日本美人顔なのに、いつからマリーになっちゃったの?」
「え・・」
「ほら、私はあんたの中学からの友だちがみんなでそう呼んでいたからおぼえちゃった訳じゃない」
「うん」
「今から、"まりやん"とか、"まりどん"とかに変えない!?」
「三智子の趣味で?」
「GOOD!!でしょ☆」
「考えとく」
真理子は、乗り換えの三智子と手を振って別れ、一人、自動改札口に定期券を差し出した。
「あいつが中学一年の時、こてこてな日本人顔の私を、"マリー"なんて、呼び始めたりしたんだもの・・」
真理子は、定期券と背中合わせの写真の中で笑っている、
家族とアメリカへ帰って行ってしまった"変則イボ痔師匠"(真理子が付けたニックネーム)こと、"マイケル"に向かって
こっそり小声で愚痴ってみた。
第、133話 ラストシーン〔2〕 (2002.01.16)
初恋が、はじけて飛び散ったあの日・・
夢よりも架空な世界で、現実を突き付けられた出来事。
"ほんとに世の中にいる人との恋は、傷つくことがあるんだ"
あの、幼かったわたしからくらべれば、今のわたしは失恋を理解出きるだけの知識はある・・
「もう、終わりにしないか」
彼は、冷めてしまった側の気楽さからか、最後のお片付けを難無く決行してきた。
彼とは、最初から現実の世界で出会ったひと・・
わたしは、すでに二十歳を過ぎていたし、彼は、社会人だったし・・
「もう、終わりにしないか」
記憶の底に沈めていたはずの痛みが、わたしの両手を強く握った。
「もう、終わりにしないか」
"傷口は、理解でふさぐ事なんて不可能なんだって・・
包帯のように傷を包んでくれるひとが、いなくなっちゃうんだから・・"
「もう、終わりにしないか」
記憶の底に沈めていたはずの痛みが、再び、わたしの両手を力強く握った。
「もう、終わりにしないか」
わたしは、ただ、一回、こくりとうなずいた・・
盗み聞き爺さんも、マンションの隣の部屋で、ただ、一回、こくりとうなずいた・・
私は、その時、泣くことだけは辛うじて耐えた・・
爺さんは、泣いた・・
わたしの中で、何かが砕けて飛び散った・・
爺さんが、盗み聞きに使っていたコップを床に叩きつけて、砕けて飛び散った・・
第、132話 囁かれただけなのに (2002.01.10)
放課後、、学校の図書館にて、、
誤解するなんてわたし如きに、美佳の美貌を持ってすれば不必要もいいとこじゃない。
他愛ない話を今、美佳の彼氏からちょっと耳元で囁かれただけなのに・・
でも美佳は美しくって、お得よね。
前の彼氏とは、『奴は私の誕生日に東京タワーのカレンダーの置物をプレゼントしやがった!!』
と、怒って振ってたし・・
その前の彼氏は、『原宿でのデートで奴は"銘菓ひよこ"を箱を片手に食べ歩きやがった!!』
と、怒って振ってたし・・
更に前の彼氏は、『動物園に連れて行かれたら野毛山動物園だった!!』
と怒って振ってたし・・
わたしは、公園のガキに土下座して、あんず飴貰っているような彼氏ですら、いないもの。
あ〜ぁ今日もまた、美佳に小突かれたりしてる・・
『こないだ公園のガキに土下座して、あんず飴貰ったんだもん!』なんてこと、
こっそりわたしに耳打ちしたりなんてするから・・
美佳に捨てられたらかわいそうだから、誤解されたままでも、
わたしからは美佳には黙っていてあげるけれど・・
囁かれただけなのに・・ きっと・・ どうしよう・・ 綿棒・・ 温室スイカ・・ カメムシ・・ どきどき・・
第、131話 水鏡 (2002.01.02)
魔法の水の中に、私は今、"真実"を落とした。
叶奈子から頼まれていた、叶奈子のあなたへの"告白"を・・
あなたも叶奈子のことを好きでいたこと、そんなこと、気づいてた。
逆さに回り続けていた時計の針で、私は我が身を突き刺した。
あの日、あなたに告白したのは、あれは、水鏡の私。
波が立てば醜く歪み、 木漏れ陽を受けて目映く映れば、まやかしの微笑みを・・
水際から顔を上げたあなたが目にしたものは、
波に消えずに私の頬を濡らしてゆく、瞳から零れ落ちた血の涙。
やさしい叶奈子にはなれなかった、醜い顔した女の子の涙。
・・ではなく、湖に獅子舞被せたはみちんを映して遊んでいる、
はみちんじいさん"はみ出ましておめでとう"お正月バージョン!
こりゃ、めでたい☆謹賀新年!!
第、130話 愛がヘタクソ (2001.12.27)
あの頃の私は、あなたに何かと怒っていた。
あなたが学校ですることのすべてが、あなたのわがままに感じられて、
一日に一度はあなたと口ゲンカをしていた。
よく、あなたが無数の野良犬を山から連れて来ては、
『パールのリップグロスを塗って、犬さんをもっと美しくしてあげましょう』と、
生徒会で主張を繰返していた時も・・
あなたが、朝礼で『心から笑顔を見せられる人になろう』と
語っていた校長先生のパンツを脱がし、
『なら、心で己のケツの穴を笑わせてみろ!』と全校生徒の前で叫んだ時だって・・
その時の私の心には、それがあなたの単なるわがままとしか映らなかった。
中学を卒業して、あなたは私と同じ高校にいた。
しかも、またもや同じクラスにいた。
三年間、あなたは相変わらずで、私も相変わらずだった。
たぶん、前世で相当、仲違いをしていたに違いないと・・
高校三年の時、大学に行くことが決ってた私にあなたは、
『ぼくは家の稼業を継ぐので追い掛けっこはもう出来ない・・』と、元気なく打ち明けて来た。
その時、私は始めて、ずっと好きだったあなたが見えた。
今だって私は、愛がヘタクソ。
大学生になってもぎりぎりまで、愛されていたことも愛していたことすらも、
やはり気づけなかったりして来たから。
四年間の、遠距離恋愛を経て、
大学を卒業する前の帰省、一旦あなたが待つ故郷へ帰る。
見出した自分自信の答えを確認するために・・
第、129話 髪飾り (2001.12.19)
「髪を上げてみたりすると、わたし、結構感じが変わるんだって、、」
大親友だった麻紗子を引き連れて買いに行って選んでもらった幾つかの髪飾り・・
和樹の隣、ポニーテールのわたしの写真姿・・
そう、和樹に出会った頃から最近まで、わたしはずっとポニーテールだった・・
「ねぇ、和樹ぃ、夏の海と冬の幕末、どっちが好き☆」
「もちろん、雪の舞う幕末の江戸城天守台だぁ」
「じゃぁ、わたしを雪の舞う幕末に連れてってぇえ〜☆」
「いいよ〜!」
・・何が、『いいよ〜!』だ!!冬が来る前に、わたしを捨てたくせに・・
「ねぇ、和樹ぃ、夏の海と冬の鉄アレーGO!GO!、どっちが好き☆」
「冬に両手の鉄アレーで頬っぺた挟むと、最初、冷てーんだよ、、」
・・冷たかったのは、和樹のほうじゃない!!
いまでも、ほんとは信じたくなんかない・・
「髪を上げてみたりすると、わたし、結構感じが変わるんだって、、」
大親友だった麻紗子を引き連れて買いに行って選んでもらった幾つかの髪飾り・・
麻紗子は学園でポニーテールNO.1だったからね。
麻紗子のコーチで、ポニーテールには随分自信がついたんだ。
和樹の隣、ポニーテールのわたしの写真姿・・
髪飾りと一緒にそろそろとっとと捨ててしまいましょう。
和樹と麻紗子をきちんと忘れてしまえるように・・
麻紗子の飾り役をきちんと終えるために・・
第、128話 泣いていた女の子 (2001.12.13)
チャイムの音が、どこからか聞こえて来たかと思えば何やら「きーきー、きゃーきゃー」
女子高生の波の中を逆行しながら、少し居心地の悪い男こと"ぼく"が、ひとり突き進む道。
そして、自称探検家こと"ぼく"は、みごと女子高を発見。
こうなったら、校庭のトラックを走る体操着姿の女子高生軍団を、
三輪車を漕ぎながら追いかける夢を果すしかないではないか。
しかしながら、イマイチ勇気が出ない・・
さすが、父上も祖父も挫折してきた偉大な夢だけのことはある。
空はこんなにも冬晴れなのに、ぼくのこんなイジイジとしたダメな心では、
男としてのこの些細な夢を永遠に叶えさせることなんて出来ないではないか・・
いままで、何のためにわざわざ出掛ける時はかならず背中に三輪車を背負って来たのか・・
『男の子ならここぞと言う時は勇気を出すものだ!』
小学1年の時、ぼくにこの言葉を教えてくれた担任の高橋先生にすら申し訳が立たない・・
そんな時、校門付近をさっきからうろうろしていた、
男のくせに如何わしい振る舞いな怪しい奴の側へ笑顔で駆け寄る女の子がひとり・・
寄り添いながら去って行く、そんなふたりの後ろ姿にこっそり視線を送っている女の子がひとり・・
帰宅途中で女子高生が落として行ったと思われるマフラーを首に巻いて佇んでいるぼくがひとり・・
数人の女子高生に指差されるまま、すごい形相でぼくのほうに駆け寄って来る、
この女子高の体育教師っぽい坊主頭でトレーナー姿の厳つい中年男がひとり・・
気持ちのいいほど雲一つない、ある冬の日の空の下で・・
第、127話 微風 (2001.12.05)
「この川って、ずいぶん子供の頃からあったのに・・」
君に、突然話し掛けられた、あの日・・
「埋め立てられてしまう計画らしいね。 岸辺のさくらの木も、ぜんぶ斬られてしまいそうだ」
初対面の君に、人見知りのぼくが無意識に答えていた。
「思い出が増えていってしまうほど、わたし、そんなに歳じゃないんだけどな。」
緩やかな風が揺らす、君の髪を感じていた。
あの日の面影は、この場所にはもうない。
二人で腕を組んで歩いた日々も・・
二人で同じ歌を口遊んだ道も・・
春に、宇宙語で何か叫んでいた、UFOじいさんも・・
夏に、のら犬とプロレスをしていた、はみちんじいさんも・・
秋に、コオロギに土下座して何かをあやまっていた、黄昏じいさんも・・
冬に、雪だるまに縦笛を挿して涙を流していた、我が家に長男授けろじいさんも・・
『思い出が増えていってしまうほど、わたし、そんなに歳じゃないんだけどな。』
緩やかな風が絶え間なく、ぼくに話し掛けてくる、この場所・・
第、126話 ピアノに触れた夜 (2001.11.29)
あなたがよく歌ってくれる、なつかしい歌を一人で口遊んでいる。
たった、数週間、会えないだけなのに・・ね、、
一緒に生活し始めて、あなたがピアノを弾き歌う夜に、
わたしの毎日が、いつもそこにあった。
ピアノに触れた夜、静けさに始めて気づいたの・・
弾けないピアノの音が、片言に、部屋の中に舞散る夜に、
5本の平行線に、"あいしているの"と、指先で書いた・・
弾けないピアノの音が、片言に、部屋の中に舞散る夜に、
"5本の平行線は、あなたの乳毛?"と、マジックで書いた・・
あなたの白いピアノに・・
第、125話 抱きしめてあげたい (2001.11.21)
ヒーターのスイッチを入れる。
とりあえず、部屋の中は少しずつ、あたたか・・
ゴールデンタイム、いつものチャンネルに約束通りの番組が映る。
テレビの中のお客さんは、決まって爆笑。
携帯にメール。敦子からだ。あいかわらず陽気な子、、
気が付くとママが、"美佳子、ごはんよ〜"って叫んでいる。
宿題だって、片付けて置かないと明日、たぶん怒られちゃう。
ペットの"犬のつもりながら、そろそろ限界"を、誰か、お散歩に連れて行ってあげたのかしら?
ん、、もう番組が終わってたんだ。
携帯にメール。幸恵からだ。あっ、あのコート、早くもバーゲンするのか・・
ママが怒鳴りながら階段を上がって来る・・
ペットの"犬のつもりながら、そろそろ限界"が満月見ちゃったらしく、下で弟と妹が大騒ぎしている。
「ママ、ごはん食べたくない、、紅茶だけほしい」
願いは、受理された。
携帯にメール。『こちら、出会い・・・』
携帯にメール。『こちら、出会い・・・』
明日、学校、休めないかな・・
よしよし、隠しておいたブランデーを紅茶にちょっぴり・・
・・ママは千里眼。
お風呂、やだな・・
もう、汚くたっていいもんなぁ・・
なにも知らない昨日までの自分に逢えるのなら、とにかく、抱きしめてあげたい・・
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拝啓、、昨日までのアホな自分・・
私は、かねてより恋の病の治療中でございましたが、
薬石効かなく本日、我が恋は、永眠いたしました。
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「えっ!!ペットの"犬のつもりながら、そろそろ限界"が・・」
第、124話 天使が舞い降りた夜 (2001.11.15)
「雪を待っているの」
「えっ、、」
「雪。」
「降らないよ、まだ11月だから。。」
「積もって、身動きがとれないくらい・・」
「・・・・・・」
「愛しているの・・ 去年の雪の空の下、わたしを抱きしめてくれた暖かなあなたを、、」
「でも、さよならだよ、もう、これっきり・・」
「こうして、空を見上げているとね、」
「えっ、、」
「この涙が、零れ落ちずに済むんじゃないかなって・・」
「こうして、空を見上げているとな、」
「えっ、、」
「えっ、、」
「誰かが、手招きしてたりするんじゃ!」
「このじいさん、誰?」
「知らない」
「わしは、すこぶるぅ、108歳。 雪の夜に抱きしめてぇ、 連れて行かれないように・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・おれたち、やり直さないか」
「うん♪」
第、123話 冬の星座 (2001.11.07)
「ステファニー☆、あれが逆さ吊るしアンコウ座だよ。君の星座だ!」
「牛次郎ぅ☆、あれが職人板さん座よ。あなたの星座だわ!」
二人は、運命の出会いに・・・・・・
ぷちっ!
「佐知夫が借りて来たアニメのビデオ、つまんないの〜」
「牛次郎ぅ☆、わたしはあの日のアンコウなの・・ あなたの前世に解体されて・・」
「ステファニー☆、みなまで言うな!! 愛の輪廻転生だ」
・・・「なるほど、今回は昔の彼女の写真発掘じゃなくて、こんな、くそアニメでケンカしたって訳、、」
「ね、つまんないでしょ!佐知夫は、こう言うアニメ、好きらしいのよね・・」
「それで、大ゲンカって訳・・?」
「わたしたちって、めちゃくちゃ相性悪いみたい・・」
「で、毎回言わせてもらうけど、それでも付き合うの?普通・・」
「わたしは、フェニキアの王女エウロペなのよ、、佐知夫は、わたしに首っ丈な大神ゼウスなんだわ☆」
「めちゃくちゃ相性いいんじゃない!?」
ピンポ〜ン♪゜゜
「佐知夫くん、こりゃまた、牛の着ぐるみなんか着て・・」
「葉子先輩、エウロペを迎えに来ました」
「きゃぁ☆佐知夫ぉ、おぶってって」
「ゼウス佐知夫は王女エウロペを乗せて、猛スピードで走り去って行きました。・・・か、」
葉子はふたりに手を振ってから、ちょっと震えると、なんとなく見上げた冬の星空に問い掛けた。
「で、大神ゼウスは王女エウロペに飽きて、その後、一生愛した女っていないの?」
第、122話 なつみ (2001.11.01)
6時間、待っていたの・・
お店の従業員が、お掃除を始めた頃まで、、
あなたが前もって、"遅くなると思う・・"って、言ってたから・・
行くべきかを迷ってたのね。きっと・・
「なつみぃい〜、コラ!、また授業中に、こそこそ小説書いていやがって」
「あら、せっかく相手を先生のイメージで書いていたのに・・」
「そうか☆なら、よし」
あなたは、べつの女を愛し始めていた・・
うぅん、べつの生物を愛しはじめていた・・
嘘のへたな、あなただもの・・
私、少しずつ、気づいてたんだ。
「な・なつみ、先生のイメージは、へ・へんな生物を愛する趣味でもあると・・」
「へんな生物なんて書いてないでしょ!この変則スカトロおやじ!!」
「ふむ、、それなら、よし」
そして、あなたがその生物に食べられてしまったと風のうわさで・・
「な・なつみさん、、せ・先生のイメージ・・」
「ちょっと、黙ってなさいよ!授業中なのよ!!」
「はい。。」
その生物のうんこが、みるみる妖怪ハゲ先生に・・
「ハゲと書くな!!ハゲと・・」
みるみるスカトロ先生に・・
「ふむ、、それなら、よし」
なつみは、家に帰ると自分の部屋のベットに腰掛け、ため息をつきながらつぶやいた。
「まったく、5行め以後書き直しじゃない!私の昨日の出来事日記・・」
あなたは、べつの女を愛し始めていた・・
嘘のへたな、あなただもの・・
私、少しずつ、気づいてたんだ。
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第、121話 わすれもの (2001.10.25)
「あっ、ひさしぶりね」
「やぁ、ひさしぶり」
幼い頃の物語を、朝見た夢で思い出したような、
幻でも、現実でもないような、なつかしさ・・
「じゃぁ、元気でね」
「・・さよなら」
"すき"と言う、あの頃、言えなかった、わすれもの。
取りに帰る時間など、ぼくに授けるべき運命でもなく・・
「あの、こんど・・」
「あら、なぁに?」
振り向いた・・
こっちに来る・・
彼女ではなく、柴犬メイク桃色爺さんが・・
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