横浜マタタビバージョンのFUNI WORLD

おバカショート劇場。

FUNI WORLD (6)


第、179話  もしかしたら  (2002.12.07)


クリーニングから帰って来た、お気に入りの白いオシャレ着に付着していた青い毛玉ちゃん。

これって、他のお客さんのシャツの毛玉が貼り付いてたんだよね。

よく超能力者が、他人の持ち物からその人の暮しや性格まで判断してしまうなんてあるけれど、

わたしにも出来るだろうか・・ どれどれ!

ふむふむ、この毛玉ちゃんのシャツの持ち主は、わたしよりちょっと年上で背が高くてハンサム。

ふむふむ、微笑うとエクボがキュートなスポーツマン、誠実そのもの☆、・・って、

なんだか、都合好すぎたかな・・。

後日、わたしは行き付けのクリーニングチェーン店の向かい側で張込んでいた。

そりゃ、この店はシャツを回収されるだけだから、

毛玉ちゃんのご主人がここを使っているなんて限らないけれど、

もしかしたら、イメージした人物が青いシャツを着て現れたりってことだってね。

・・なかったけれど、、あ〜ぁ、へとへと。

そして、毛玉ちゃんとの出会いからかれこれ・・

部屋の片隅で、ガラスの小瓶を我が家にした青い毛玉ちゃんを見つめているわたし。

おまえのご主人は、今、何をしているんだい?

好きなひとはいるの? まさか、結婚なんてしているの? わたしに断りもなく・・!

微笑うとエクボがキュートなスポーツマン・・

それは、中学生だったあの頃、わたしの、初恋のあのひと・・

私服の青いシャツがお似合いだった、初恋のあのひと・・


第、178話  ピクニックバスケット  (2002.11.29)


しとしとと、小雨が降っている。

祐太が交際一周年だとか言いながら、いままで見せたことのないような気配りで

わたしへのプレゼントとして衝動買いしてきた、ピクニックバスケット。

英国製で、結構いい値段だったらしい。

バカじゃなかろうか・・

いままで一年間交際していて、一度でもふたり、ピクニックなんて行ったことあるか。

それもこれも、祐太が出無精だからじゃないか。

しとしとと、小雨が降っている。

祐太は、今まさに勝手に予定した明日のピクニックが楽しみらしく、

小学生の遠足宜しく、お菓子ばかりを詰め込んでいる。

いっ、何時の間にやら手作りしていたガリ版刷りの歌詞カードまで・・

パソコンだってプリンタだってあるのに・・

何故かわたしは、別れ話を切り出すか悩んでいた相手の祐太の命令で、

いままで作ったことすらない照る照る坊主を作らされている。

「恋はママゴトなんかじゃないよ!」って、こないだの大ゲンカの時に、

わたし、祐太に怒鳴ったばかりじゃないの。

年下の子供っぽさに惑わされて惚れたわたしがバカだったのか・・

そう言えば、ふたり出会った頃、出無精のくせして祐太、わたしに言ってたよね。

「ぼくは、雨上がりには必ず外に出て行って、虹を探すんだ」って・・

しとしとと、小雨が降っている。

軒下の照る照る坊主は、わたしが描いた祐太似の笑顔。

そう言えば、ここしばらく、祐太の笑顔を見てなかったよなぁ。。

仕方がないから明日は晴れてもらうとするか。

しとしとと、小雨が降っている。

ふたりの心に虹を架けるために・・


第、177話  忘れてしまってたこと  (2002.11.22)


恋を打ち明けたのは、私のほうだった。

その頃、流行っていたアニメのキャラのレターセットに言葉を綴って・・

あれから5年も続いたんだね。

あなたは私のこと、始めは興味がないどころか、知りもしなかったくせして、

こんなワガママな娘を物好きに5年も抱えていて下さった。

最後の1年は、少し、ぎすぎすしてしまってたね。

忘れてしまってたこと、たくさんあるかも知れない。

2人で荷物を片付けていたら、あのアニメのキャラのレターセットが出てきた。

あなたに送った1セットを除いた、黄ばんだ残りの4セットが・・

あなたはあなたで、その除かれた1セットをまだこっそり持っていたことが発覚。

忘れてしまってたこと、たくさんあるかも知れない。

空き部屋をひとつこしらえたアパートを背にしてあなたと私、

『さよなら』だと言うのに手をつないで駅までの道、なんとなくゆっくり歩いて行った。


第、176話  たったふたり  (2002.11.16)


「明日もまた逢えるよね。」

「明日もまた逢いたいね。」

"愛"かと聞かれても目に見えなくても分かち合える、

景色と風に溶け込んでいた、たったふたりの真実。


「明日も柴犬とコサックダンス。」

「明日も柴犬とコサックダンス。」

"何故"かと聞かれても歯をくいしばって踊るしかない、

景色と風に分離しまくる、"徹夜で柴犬とコサックダンス友の会"の真実。


第、175話  異次元で逢いましょう  (2002.11.09)


「博士、これが異次元で愛するひとと出逢えると言うマシンなんですね!」

「そうなんじゃ美奈子くん、おまえが『片想いをしていた頃の彼のほうが好き』なんて言っとったから」

「ありがとうございます。これで慎治とデートで大ゲンカなんてことがなくなります」

「では、片想いでイメージしていた慎治君とデートを楽しんで来なさい」

「はい、ではさっそく」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一週間後

「ねぇ、慎治、どうしたの、もっと慎治を伝えて・・ 『愛してるよ』だけじゃわからない・・」

二週間後

「・・・・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「コラ!慎治ぃ、また街で出逢ったおすもうさんに『試合で網タイツ履いて下さい』なんておねだりして・・」

「なんだよ、ただファンの声を素直に届けたかっただけだろ」

「あたし、そんなワガママ慎治が大キライ!!」


「やれやれ・・ 結局、わしの作った異次元マシンは錆だらけじゃ☆

あっ、そうそう、慎治君に網タイツのおすもうさんの試合を観に行かせてあげよう!」


第、174話  クリームシチュー  (2002.11.01)


「寒いね、温かいシチューがいいね。」

ひとりごとをつぶやきながら、私は食品売り場をうろついた。

今日は、ホワイトルーから作るんだ。手抜きなんて許されない。

鶏モモ肉は使わない。 わたしは大丈夫なんだけれど・・

代わりにプリプリのエビに決めた!ちょっとお高かったけれど。

慌てて帰って来たが、時計の針はすでに7時を回っている。

「やばいやばい」

ホワイトルーは焦がさないのが常識!ここで慌ててなるものか。

「ここで慌ててなるものか。」

牛乳を加えて、だまができないように混ぜ合わせて、ぷつぷつと煮立つまで加熱する。

「焦がさない・・ ぷつぷつと煮立つ・・ か、加熱・・」

私は、胸にそっと手のひらをあてて大きく深呼吸した。

たまねぎ、にんじん、じゃがいもを炒めて、水、ローリエを加えて煮込む。

野菜が半煮えになったらコンソメ、生しいたけ、しめじを入れる。

ルーを入れて、とろ火で煮込み、サラダ油でソテーしたえびと牛乳を加えて軽く煮込む。

ちょっと味見・・「う、旨い、上出来!!」


時計の針はすでに11時を回っている。

やっぱりココには来なかった・・

あいつが私に隠し続けている女は、きっと料理なんてうまいんだよね。

私は煮込みすぎて固くなったエビを噛み締めながら、

ココまで来る途中にある、大きな犬が吠える家の前で何時間も汗を掻いている

あいつの姿を無理やり想像しながら、「ママが料理音痴だったんだもの」なんて・・

ひとりごとを数回、つぶやいた。


第、173話  はてな  (2002.10.25)


ストレスを解き放つために、無意識なんだか・・ 結局、買い物に明け暮れている私。

『嫌い』だなんて、面と向かって言われるなんて事、覚悟していた範囲越えているよ・・

それでも、宝石好きブランド好きな私じゃなくてよかったと思う。

借金とストレスの追い掛けっこなんて、悪循環になるもの。

そんな訳で、今日は東急ハンズでへんな入浴剤とちょっとお高い石鹸を山程買って終了。

では、お風呂で気分すっきりと!入浴剤は"温泉紀行・イボ痔おやじが浸かった湯"

ん、はてな、ひょっとして『ぼくも君のこと、好き』だなんて言われてたら・・

それはそれでやっぱり入浴剤とちょっとお高い石鹸を山程買ってたんではなかろうか?

な〜んだ、じゃ、同じじゃない。ははは、、

・・違う。正反対。なんか、体洗う気力すらないもの。

手の中で産まれた泡が、ほんのり膨らみ弾けて消えた・・


第、172話  雲の流れ  (2002.10.18)


雲が流れていく。

草の上で寝転んでいた私の回りを、キンモクセイの匂いが風に乗って、さ迷っていた。

あなたのことを、考えていた。

秋に出会って、秋にさよならをした、あなたのことを・・

きっと、この空の雲は、あなたの町で、あなたの笑顔と出会うんだ。


その頃、"あなた"は、子供電話相談室で子供の質問に答えていた。

「もしもし、なんで雲はお空をながれていくのですかぁ?」

「もしもし、君はいくつかな?」

「5さい」

「あのね、キラー・トーア・カマタって知っているかな」

「しらな〜い」

「キラー・トーア・カマタは、過去、PWF認定世界ヘビー級選手権を・・」

「なんで雲はお空をながれていくのですかぁ?」

「じゃぁ、君は、ジャック・ブリスコを知っているかな」

「しらな〜い」

「ジャック・ブリスコは、過去、NWA世界ヘビー級選手権保持者で・・」


第、171話  陽射しは穏やかで  (2002.10.12)


「たぶん、恋をしていたのかも知れない。」

3日前、街でばったり遭った時・・

初めてバイト先以外でプライベートな笑顔を私だけに覗かせてくれたひと。

あの日のように、陽射しは穏やかで・・

知恵が『バイトやめちゃったみたいよ』なんて、軽い冗談を言う時と同じテンションで私に言った。

私は、店長のデスクの引き出しの中でこっそり見つけた従業員のファイルから書き写した彼の住所と、

店長が盗み撮りしていたと思われる、私が鼻をほじくっているズームどアップ写真を片手にバス乗り場へと走った。

3日前、街でばったり遭った時・・

「バイトやめるなんて、あの時、決して聞かされることのない立場でしかなかったんだな、私って。」

・・余りにも当たり前の事を勝手に思ってみたり、くちびる噛んでみたり。

あの日のように、陽射しは穏やかで・・ 陽射しは穏やかで・・

傷付いてもいいから、とにかく逢いたくて・・ 確かめたくて・・

あっ!ズームどアップ写真のネガは・・


第、170話  名バイオリニスト  (2002.10.05)


うちの合奏部の部長は、なんでこうもアガリ症なんだろう。

演奏前のスピーチでは、かならずパニックに陥り気を失いかける。

しかし、そんな時に奴にバイオリンを差し出すと・・

今までの緊張がウソのように解け、バイオリンを奏で始め、挨拶が成立する。

こないだも、部活メンバーと駅に向かっていた時のこと。

ひとりのお婆ちゃんが駅までの道を訊ねてきたが、部長は緊張して口をあんぐりと開けたまま。

そんな時にも、奴にバイオリンを差し出すと・・

今までの緊張がウソのように解け、バイオリンを奏で始める。

すると、お婆ちゃん、「はい、わかりました」と、駅に向かって歩きだす。

こないだも、部活メンバーとファミレスに行った時のこと。

店員が「ご注文は?」部長は緊張して口をあんぐり。バイオリンを差し出す。奏でる。

店員は、「ミルクセーキにチョコレートパフェにカレーライス・・ ですね!」

こないだなんて、ラジオを聴いていたら・・

「次の相談は、○○さん・・」

部長の名前だ!

「もしもし、どうしましたか?なにかお話しください」

するとラジオからバイオリンの音が・・

「そうですか、好きな女の娘に面と向かって告白出来ない。そんな時は・・」

こないだの日曜日、部長に呼び出された。

小刻みにケイレンしていた奴は、やがてバイオリンを奏で始めた。

わたしは、奴の大きな胸に飛び込んで行った。


第、169話  SMILE FOR ME  (2002.09.28)


愛里は、くすりとも笑わない。

朝、教室に入ってから、放課後、数人の女友だちとお喋りをしている時も・・

転校したての和樹は、まだ一度も愛里の笑顔に出会ったことはなかった。

そんなある日、愛里は帰宅途中に謎のマスクマンに遭遇する。

「愛里さん、お待ちなさい」

「なぁに、和樹くん?」

「えっ、なんで、いや、わたしは和樹ではない!ダジャレマンだ」

「でも、マスクから覗く、その変態を感じさせる目・・」

「布団がふっ飛んだぁ」

「何事にも自信なさげな、その体形・・」

「妖怪に用かい」

「そう、その妖怪チックな手の小刻みな震え・・」

「梅はうめえ」

「なんか、酸っぱさが漂って来そうな存在感・・」

「わ・・笑えた?」

「なにが・・」

「わ、わたしは和樹ではなく・・」

「べつに、誰でもいいわよ!」

「内臓がないぞう」

「ふ〜ん、たしかに病弱そうだものね・・」

「仏はほっとけ」

「ほっとく」

「あ、あの〜」

「私、これから洋画を観る用があるの」

「・・・・・・ぎゃはははははは☆」

「彼氏と」

「・・・・・・」

ダジャレマンは、大空に向かって飛び立っていった。

・・つもりでジャンプをして、そのまま駆け出し見えなくなった。

それから数週間は、和樹はくすりとも笑うことはなかったが・・

「美紀さん、お待ちなさい」

「なぁに、和樹くん?」

「わたしは和樹ではない!ダジャレマンだ」

「でも、マスクから覗く、その変態を感じさせる目・・」

「布団がふっ飛んだぁ」


第、168話  学芸会  (2002.09.21)


♪〜大きなイボ痔の古だぬき 生活指導の先生

学校帰りに睨んでた 嫌らしい眼差し

野良の仔猫 うまれた朝に その横でケイレン

今はもう動かない その先生

不良に殴られてピクピクピクピク 後頭部にダメージピクピクピクピク

今はもう動かない その先生〜♪


「はい、3年5組のみなさんの歌でしたパチパチ。次は、3年6組のみなさんの劇ですパチパチ。」


「理科室でホルマリン漬にされている生活指導の先生を中から出すの」

「そして、この生前愛用していたカツラを被せるんだね」

「そして、蘇った古だぬきとアホ校長の同士打よ!」

「竹子先生、ついに我々の・・」

「光弘教頭ぅ」

「竹子先生、ついに我々の、・・あれセリフなんだっけ」

「"大好き"って私に向かって叫べばいいのよ」

「そ・そんなだったっけ?」

「いいから"大好き"って叫びながら私を抱きしめて来なさいよ!」

「そんなシーンあったっけ?」

「あっ!まだカツラを被せていないのに蘇って来たらいけないんだ!!」

「おまえら劇めちゃくちゃにするなよ」

「光弘、今すぐ二人の恋路を邪魔するこいつを倒せ!!」

「そ・そんなんだったっけか?この劇??」


― そして、今年も無事学芸会が終了したのでした。パチパチ。(まる)

しかしその頃、理科室でホルマリン漬にされていた本物の生活指導の先生が・・


第、167話  天罰 (2002.09.14)


「ねぇ、みどり、恋をすることってやっぱり悪い事なのかしら」

「そうね、三智代みたいに美しい娘が恋をするって、場合によっては相手は不幸かもね」

「あぁ、胸が張り裂けそうだわ」

「そうね、三智代みたいにバストFカップだとね」

「みどり、恋ってものは持久戦だと思うのよ、私。」

「そうね、飽きやすい三智代が本当の恋に出会う事を考えたらね」

「じゃぁ、みどり、私、あの方を試しにデートにお誘いしてくるわ」

「そうね、きっと三智代が来るのを待っていると思うわ。少なくても、ここの学校の男子生徒諸君99%は・・」


あっけなく出来上がった恋をぶち壊し、

次の恋を探しては繰返す三智代が、何かに裁かれているのか・・

極秘な意中の人を次々とみごとな霊感?で三智代に取られ続けて

大親友をプチ恨んでしまっている私が何かに裁かれているのか・・


『ねぇ、みどり、恋をすることってやっぱり悪い事なのかしら』

そうね、恋が幾度もこんなに辛いのだから・・


第、166話  みつけた (2002.09.07)


突然、泣いていた。

まだ、明かりも付けていなかった部屋の中。

もしかしたら、街中で私、泣いていたのかも知れない・・

もしかしたら、電車の中で私、泣いていたのかも知れない・・

もしかしたら、家から近くのコンビニで、らっきょう漬の瓶片手に私、泣いていたのかも知れない・・

今日、コンビニで受け取ってきた写真のプリントには、私とあなたの笑顔のツーショット。

観覧車をバックに、らっきょう漬の瓶片手に笑顔のツーショット。

まだ髪が長かった頃の、らっきょう漬の瓶片手に幸せそうな私をみつけた。

もしかしたら、帰りに立ち寄った美容院で私、泣いていたのかも知れない・・

もしかしたら、さよならのあなたの目の前で、気付かずに私、泣いていたのかも知れない・・

もしかしたら、たくさん泣いていたのかも知れない・・


第、165話  とどけ!  (2002.08.30)


鈍い人間と言う奴は、いるものだ。

たとえば、東京23区を虚無僧に扮した園児軍団によるパレードが行われている様を

空撮しようと近代的ヘリを飛ばしている報道機関の連中とか・・

たとえば、バナナワニ園で突然カレーを作りだしたインド人に向かって

「ここのワニの肉は断じて使わせませんよ!」と血相を変えて言う動物愛護団体や・・

たとえば、木村浩和・・

学校が変わってしまった男子で唯一、私の誕生日パーティーに呼んだのに・・

配った手作りケーキの上に唯一、炒り大豆を3粒も乗せて置いてあげたのに・・

カラオケの時は唯一、デュエットに誘って膝に水が溜まるほど"かえるのがっしょう"を二人で輪唱したのに・・

誕生日も過ぎてしまった今では、どんな理由をつけて誘っていいものかどうか。

思い余って、奴にメールで"好きです"と、シンプルに・・

奴から帰ってきたメールには、"俺も好き!ケーキと一緒に食べる炒り大豆"

鈍い人間と言う奴は、いるものだ。


第、164話  枯葉色の街 (2002.08.24)


我が街の駅から三つほど先の駅を降りる。


ふと、立ち寄った本屋さんで目に止まった一冊の本。

半年前に、小説好きな同じ部活の一学年上の先輩から勧められた本。

あまり興味がないジャンルだったけれど、一晩で読み切った本。

先輩に、ありったけの感想を聞いてもらえるわずかな時間を過ごした。


中古のCDショップで手に取った、半年前のヒットアルバム。

好きな音楽じゃなかったけれど、予約してでも手に入れたCD。

聴いてみてもさえなかったけれど、全曲歌えるほど聴いた曲。

先輩と、そのアーチストのライブにいつか一緒に行くつもりだった。


先輩を射止めたのは四月に入部してきた、小説好きで同じアーチストをインディーズ時代から熱狂的ファンな女の子。


秋風の中、枯葉色の木々の間の坂道を上がると古びた小さなライブハウスがある。

今日、先輩と行きたかったアーチストのライブがある。

わたしは半年前に、好きだった先輩の影響ですっかり好んで読むようになっていた、

以前はあまり興味がなかったジャンルの小説を片手に、そのライブハウスの前を通り過ぎて行った。


・・しかしながら、先輩と行きたかった大事ボンブラザーズはやっぱり一発屋で終わるな。。


第、163話  ひとりごと (2002.08.17)


ひとりだけの部屋で、あなたのこと考えていた。

友だちだとか、バイト仲間だとか、ただそれだけだったら笑顔も楽だわ。

ぎこちないあいさつだけ、それだけが毎日精一杯。

リクエストした曲がラジオで流れたら、その歌がわたしのひとりごと。

あなたが毎週聴いているって、小耳に挟んだ番組だから・・

誰もいないこの部屋、想いをつぶやいた・・ その言葉があなたに届け。

"昆虫ショップでバイト中の佐々原剛史、テメー、己の蜜も出ない乳首をかぶと虫に吸わせてんじゃネーよ"

・・が、わたしのペンネーム。

気付いて・・

あっ!あと、バイト中、肛門にオオクワガタ突っ込んでいたのを店長に其れと無くちくったのもわたし。

気付いて・・


第、162話  好きなことは仕様がない (2002.08.10)


今日は、デートのはずだった。

だって、家でゴロゴロするのが好きだし・・

コンビニで甘いもの買って来てひとり食べてたりするの好きだし・・

飼い猫の"さくら"と戯れてたりするの好きだし・・

なんだろう・・・

あなたとふたり撮ったプリクラは、どれもわたしはブサイクに写っている。

あれほど得意なゲームは、あなたと一緒だと芳しくはない。

デートのために時間をかけて選んだ服も、いつだって後悔ばかり。

なんだろう・・・

あなたが初めて手を繋ごうとしてきたあの日、うちの爺さんの手を握らせた。

あなたが初めて肩を抱いて来たあの日、透かさずうちの爺さんと摩り替わった。

あなたが初めてKISSをせがんできたあの日、うちの爺さん大喜び。

なんだろう・・・

そう言えば、うちの爺さんも我が家で幸せそうにゴロ寝。

好きなことは仕様がない!斯くしてわたしもたっぷりゴロ寝☆

エブリシング オーケィ? きゃはは☆


第、161話  なにもない日曜日 (2002.08.03)


朝起きて顔洗った。

歯、みがいた。

・・あと、なにしたかな、、

さっき、あなたのホームページ覗いたけれど、初めて書き込みもせずにブックマークも解除しちゃった・・

BBSに、"aya"って娘、2〜3日前から現れたでしょ。。

"はじめまして"なんて、現れてたけれど、、

なんの根拠もないけれど、あなたの新しい彼女なんだ・・ なぜか確信している。

さよならして、最初の日曜日。

なにもない日曜日。

あなたが思い出になっていくこと、考えたことなかった・・

紛らわすためにどうすればいいのかなんて、考えたことなかった・・

心の中身を解除する方法なんて、考えたことなかった・・

カマキリの卵とあなたの細胞がひとつの培養液の中で迂闊にも・・ 考えたことなかった・・

成虫になって出て来たあなたの細胞を加えてた蝉が迂闊にも・・ 考えたことなかった・・

あなたの細胞を加えてたカラス揉み婆さんが迂闊にも・・ 考えたことなかった・・

アメンボ漂白婆さんが・・ カエル伸ばし婆さんが・・ 考えたことなかった・・

さよならして、最初の日曜日。

なにもない日曜日。


第、160話  ゴメンナサイ (2002.07.27)


二人の恋のために・・。

あなたにとって少しだけ、困った娘を演じてみる。

安心な娘でいると、忘れられてしまいそうな気がするから。

心配してくれているのかしら・・

「ゴメンナサイ」が言えないままに、小さな亀裂がゆっくり広がって行く。

こうなったら、亀裂止め運動週間。

あなたにとって少しだけ、困った亀似おやじを演じてみる。

チョコボールで亀似おやじエンゼルが出たような気まずさ・・

10枚集めると、亀似おやじ缶詰が・・


第、159話  奇跡なんていらない (2002.07.20)


「ひろこ、もうお昼よ!いい加減に起きなさい」

「あ〜ぁ、ママったら、今とってもいい夢を見てたところなのに」

「やさしいママが夢に出て来たんでしょ?」

「ママじゃなくって、奇跡でもないと現実には出逢えそうにないひとよ」

「あら、男なのね、ママはステキな男だったらいつもパパに会っているじゃない。キャー、ママったらお得♪」

「なんで私、奇跡なんていらないママの性格が遺伝しなかったんだろう・・ うらやましい・・」

「あら、ひろこも理想を思いっきり落としてみると、ママみたいに奇跡を必要としなくなるわよ」

「ママったら挫折してパパだったのね・・ 納得。。」

「うん、挫折したらパパだったの・・ キャー、ママったら失敗!」

その日一日、私は、もし自分が男だったらママと出逢ってみたいとちょっぴり思った。


第、158話  流れ星 (2002.07.12)


なつき 「あっ!流れたぁ、・・」

良平「『あっ!流れたぁ、・・』って気付いた後から願い事3回言えないだろ」

なつき 「だからこそ、言えたら叶うのよ☆」

その頃、北印三郎太は、信楽焼のたぬきに共鳴して一人歌っていた。

「よ!たぬちゃん☆おれとおまえは似たもの同士 日本だ 人情なみだ船〜♪」

なつき 「あっ!流れたぁ、・・」

良平 「以外と迷信とか信じこむ女なんだよな、おまえ」

なつき 「あっ、結構ばかに出来ないんだよ」

その頃、北印三郎太は、エジプトのツタンカーメンに共鳴して一人歌っていた。

「よ!ツタンカ☆おれとおまえは似たもの同士 エジプト 人情なみだ船〜♪」

なつき 「あっ!流れたぁ、・・」

良平 「流れ星で何でも叶えば苦労はしないだろ」

なつき 「あっ、だって、なつきと良平を会わせてくれたんだよ、お星さま」

その頃、北印三郎太は、流れ星に共鳴して一人歌っていた。

「よ!流やん☆おれとおまえは似たもの同士 宇宙だ 人情なみだ船〜♪」

なつき 「・・・・・・」

良平 「で、何、願い事してんだよ」

なつき 「それがね、今日は日本のへんなおっさんにへんな歌を歌われて

調子が狂ったから願い事は勘弁だって!!」


第、157話  会いに行こう (2002.07.05)


ゆういちのペットのしろに会いに行こう。

ゆういちは、しろのホームページを作っているくらいだから、

しろを『わぁ、かわいい!』って撫でてあげるだけで喜ぶ。

ゆういちのペットの職人苦笑い生き地獄さんにも会いに行こう。

ゆういちは、職人苦笑い生き地獄さんのホームページを作っているくらいだから、

職人苦笑い生き地獄さんを『わぁ、かわいい!』って撫でてあげるだけで喜ぶ。

ゆういちのペットの南国気分で夜泣き地蔵殿にも会いに行こう。

ゆういちは、南国気分で夜泣き地蔵殿のホームページを作っているくらいだから、

南国気分で夜泣き地蔵殿を『わぁ、かわいい!』って撫でてあげるだけで喜ぶ。

喜ぶゆういちを見れて、わたしは一杯幸せになる。

ゆういちに、今直ぐ会いに行こう。

「・・あっ、もしもし、ゆういち、

ゆういちのペットの顔面ペイント水戸光國ちゃんに今から会いに行っていい?」


第、156話  空色 (2002.06.29)


「空に浮かんでいる空」

みさきは軽く背伸びをした後、なんとなく空を見上げた。

壊してしまっても誰も傷つかないものが、そこにはあった。

「さよなら」

みさきは、精一杯の笑顔で恭介のほうへ駆け寄ると、もう一度、

「さよなら」

と、つぶやいた。

恭介が待ち望んでいたシチュエーションを、大女優張りに演じてやった。

しかし、思わぬ展開が・・

チェック柄のスカートとライトブルーのストライプ柄のシャツ爺さんが現われ、

「さよなら」

と、恭介につぶやいた。

しかし、その短いシチュエーションは、にわか大女優みさきを遥かに越えていた。

挫折するみさき・・

10点満点の札を上げた恭介。

勝名乗りを揚げる爺さん。

そして、カラータイマーが点滅すると、爺さんは空へ帰っていった。

空は再び、現実の色を取り戻していった。


第、155話  何処へいったの (2002.06.22)


猫のマルキはいなくなっても、一週間後には家の庭先で発見される。

我が家の爺さんはいなくなっても、近所の某女子寮のぼっとんトイレの便器の中で発見される。

なくしていたお気に入りの手作りイヤリングも、パトロール中の警官の耳たぶで発見される。

わたしのあなたへの想いは何処へいってしまったのだろうか・・

片想い苦節一年と二か月!!

せっかく振り向かれたっていうのに振っちゃうなんて・・

あなたは呆気にとられてたけれど、わたしだって呆気にとられた。

どうしちゃったんだろう? わたし・・

家の庭先にも、某女子寮のぼっとんトイレの便器の中にも、警官の耳たぶにも、

探してみたって見つからない。

あっ!あの警官が制服の上から胸に付けているのって、探していたわたしのお気に入りブラじゃないのよ!!


第、154話  雨の色 (2002.06.15)


一年前、あなたを一度だけ迎え入れたことのある黄色い傘。

風が強い日になんて、差すことはなかった。

お店の傘立になんて、絶対、置かなかった。

学校帰り、紫陽花の咲く小径をふたりだけで歩いた。

あなたが傘を忘れると、あなたを傘に入れていく役目の彼女がお休みだった日。

その彼女の大親友で、一緒の帰り道の私の特権として・・

雨の色。

傘に音を奏でて降り注ぐ、雨の色。

今日、彼女はお休みの日・・

私は校門で、黄色い傘の下。

あなたは今回も自分の傘を差しながら『よっ!誰か待ってんのか?』って・・

ひとり、さっさと帰って行った。

私は今回も少しの間、待つことのない誰かを待ってから、ひとり、紫陽花の咲く小径を歩いて帰った。


第、153話  ありふれた恋 (2002.06.07)


結構、ありふれた恋なんだなって思う。

誰かに問い掛けたとしても、それは、

100も200も聞いてきた物語のように聞き流されるような恋。

どこにでも転がっているような、あなたとわたしの恋。

目を合わせると、互いに笑顔になれるのに、

でも、気が付くと絶え間なく、心に襲い掛る不安・・

そんなことを誰かに問い掛けたとしても、それは、

100も200も聞いてきた物語のように聞き流されるような恋。

どこにでも転がっているような、あなたとわたしの恋。

きっと恋って、そんなものなんだ。

だから、あなたにそれを問い掛けてみても・・

いつものやさしいあなたの笑顔のはずなのに、

ぎごちない笑顔のあなたが、ちょっと過ったり、感じたり・・

「妖怪、ぎごちない笑顔爺さんの悪戯だよっ」って、真顔で言われたり・・


第、152話  まいせるふ (2002.06.01)


あの頃の髪の長さになってきた。

だいぶ短く切っちゃったから、随分と時間がかかったけれど。

あなたと出逢っていた日々に比べれば、それでもとても短い期間。

和子なんかは『短いほうが似合うよ』なんて言ってくれてたけれど、

わたしは、もう切らなくたって大丈夫。

なんか、ほっとしている。

ひとりで輝きを見つけていた頃、わたし自身の髪の長さ。

鹿島晴子 19さい。 現在恋人募集中!

好きなもの 笑顔。

嫌いなもの 以外と泣き虫だった自分。

どちらでもないもの お風呂でアヒルと遊んでいる我が家の爺さん。


第、151話  ハムちゃんの"100の質問" (2002.05.25)


片想いだった頃、あなたをたくさん知りたくて100の質問を用意していた。

さよならを迎えて、ひとつとして訊いていなかった100の質問が独り言としてこぼれ落ちた。

3年間も付き合っていたのに、訊きたかったこと、まだ何も知らないでいた。

相手を失った100の質問を心に押し戻すと、片想いの頃の切ない幸せがあふれてきた。

両想いって、窮屈だったんだ。

あれから1年後・・

私は再び100の質問を跨いで見知らぬ恋に駆け寄ろうとしている。

せめて、いちばん肝心の"ハムスターの気持ちになってのメートル法について"ぐらい、質問しておくべきなのに・・


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